RESULTS

成果

新型コロナワクチンの有効性


論文


日本におけるオミクロン株(BA.5)流行時の新型コロナワクチンの新型コロナウイルス感染症の発症予防・重症化予防における有効性:Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2

国内でオミクロンBA.5が全国的に流行した2022年7月1日から11月30日に、新型コロナウイルス感染症を疑う症状で医療機関を受診した16歳以上、呼吸器感染症を疑う症状または新たな肺炎像があり入院加療を受けた16歳以上を対象に検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行ない、同期間における国内での従来型の新型コロナワクチンの発症予防・入院予防における有効性を評価した。発症予防の有効性の評価では、6,014人の陽性者を含む10,746人が解析に含まれた。年齢中央値は41歳、45.5%が男性であり、22.4%に基礎疾患があった。16歳から59歳の発症予防の有効性は、2回接種の接種後180日以降の有効性は26.1%(95%CI:10.6–38.8%)であった。1回目の追加接種のワクチン接種後90日以内の有効性は58.5%(95%CI:48.4–66.7%)であったが、接種後91~180日では41.1%(95%CI:29.5–50.8%)に減少した。60歳以上では、1回目の追加接種の有効性はワクチン接種後90日以内で42.8%(95%CI:1.7-66.7%)であったが、接種後91~180日では15.4%(95%CI:-25.9-43.2%)に低下した。2回目の追加接種後は44.0%(95%CI:16.4-62.5%)に上昇した。入院予防の有効性の評価では、60歳以上の384人の陽性者を含む935人が解析に含まれた。年齢中央値は82歳、62.5%が男性であり、71.3%に基礎疾患があった。60歳以上において、1回目、2回目の追加接種の入院予防の有効性は接種後90日以内で77.3%(95%CI:61.2-86.7%)、接種後91日以降は55.9%(95%CI:23.4-74.6%)であった。入院時呼吸不全があった患者に限定した解析では、1回目、2回目の追加接種の有効性は接種後90日以内で76.7%(95%CI: 51.4-88.8%)、接種後91日以降は59.6%(95%CI: 16.2-80.5%)であった。入院時CURB-65で評価した重症度で中等症以上のあった患者に限定した解析では、1回目、2回目の追加接種の有効性は接種後90日以内で80.6%(95%CI: 64.0-89.6%)、接種後91日以降は58.7%(95%CI: 23.1-77.8%)であった。入院時に肺炎のあった患者に限定した解析では、1回目、2回目の追加接種の有効性は接種後90日以内で85.3%(95%CI: 71.2-92.5%)、接種後91日以降は70.5%(95%CI:41.4-85.1%)であった。新型コロナワクチンの追加接種は日本におけるBA.5流行時に、発症予防に対して中等度の有効性と重症化予防に対して高い有効性を認めた。


Haruka Maeda, Nobuo Saito, Ataru Igarashi, Masayuki Ishida, Mayumi Terada, Shingo Masuda, Ryosuke Osawa, Naoto Hosokawa, Kei Nakashima, Hiroshi Kamura, Haruki Imura, Hiroki Inoue, Suguru Matsuzaka, Yukihiro Sugimoto, Osamu Kuwamitsu, Iori Motohashi, Toru Morikawa, Rentaro Oda, Yuiko Hoshina, Takashi Matono, Osamu Teshigahara, Eiichiro Sando, Sadaharu Asami, Satoshi Kudo, Noboru Akizuki, Yoshikazu Muto, Tomoichiro Hayakawa, Tomoo Kishaba, Yasuji Ohara, Yoshinao Kubo, Motoi Suzuki, Konosuke Morimoto


Effectiveness of primary series, first, and second booster vaccination of monovalent mRNA COVID-19 vaccines against symptomatic SARSCoV-2 infections and severe diseases during the SARS-CoV-2 omicron BA.5 epidemic in Japan: vaccine effectiveness real-time surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS)
Expert Rev Vaccines. 2024 Jan-Dec;23:213-225.
https://doi.org/10.1080/14760584.2024.2310807



日本におけるオミクロン株(BA.1・BA.2)流行時の新型コロナワクチンの新型コロナウイルス感染症の発症予防における有効性:Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2

新型コロナワクチンの有効性を国内で評価することは、ワクチン政策を評価する上で不可欠である。本論文では、国内でオミクロン株(BA.1、BA.2)が流行した2022年1月1日から6月26日に、新型コロナウイルス感染症を疑う症状で医療機関を受診した16歳以上を対象に検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行ない、同期間における国内での新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価した。3,055人の陽性者を含む7,931人が解析に含まれた。年齢中央値は39歳、48.0%が男性であり、25.0%に基礎疾患があった。16歳から64歳において、新型コロナワクチン2回接種完了(接種後14日以上経過)後90日以内の発症予防における有効性は35.6%(95%信頼区間: 19.0-48.8%)であったが、3回目接種(追加接種)を受けた場合には、有効性は68.7% (60.6-75.1%)に上昇した。65歳以上では、新型コロナワクチン2回接種完了の発症予防の有効性は31.2% (−44.0–67.1%) 、3回目接種完了では76.5% (46.7–89.7%)であった。新型コロナワクチン2回接種完了と比較した3回目接種完了の相対的な有効性は、16歳から64歳では52.9% (41.0–62.5%)、65歳以上では65.9% (35.7–81.9%)であった。日本においてオミクロン株(BA.1・BA.2)流行期において、新型コロナワクチン2回接種の発症予防の有効性は中程度であり、3回目接種(追加接種)が必要であった。


Haruka Maeda, Nobuo Saito, Ataru Igarashi, Masayuki Ishida, Mayumi Terada, Takayasu Ito, Hideko Ikeda, Hiroshi Kamura, Iori Motohashi, Yuya Kimura, Masaru Komino, Hiromi Arai, Osamu Kuwamitsu, NobuhiroAkuzawa, Eiichiro Sando, Toru Morikawa, Haruki Imura, Hiroki Inoue, Tomoichiro Hayakawa, Osamu Teshigahara, Yasuji Ohara, Motoi Suzuki, Konosuke Morimoto.


Effectiveness of mRNA COVID-19 vaccines against symptomatic SARS-CoV-2 infections during the SARS-CoV-2 Omicron BA.1 and BA.2 epidemic in Japan: vaccine effectiveness real-time surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS)
Expert Rev Vaccines
https://doi.org/10.1080/14760584.2023.2188950



日本におけるデルタ株流行時の新型コロナワクチンの新型コロナウイルス感染症の発症予防における
有効性:Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2

新型コロナワクチンの有効性はいくつかの研究で報告されているが、アジアからの報告は限られている。今回、国内の多施設の医療機関と協力して、国内でデルタ株が流行した2021年7月1日から9月30日の間に新型コロナウイルス感染症を疑う症状のある16歳以上を対象として、検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行い、国内での新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価する研究を行った。396人の陽性者を含む1936人が解析に含まれた。年齢中央値は49歳、53%が男性であり、34%に基礎疾患があった。新型コロナワクチンを2回接種完了(2回接種後14日以上経過)した割合は、陽性者では6.6%であったが、陰性者では38.8%であった。新型コロナワクチン2回接種完了の発症予防における有効性は、16歳から64歳では88.7%(95%信頼区間:78.8-93.9%)、65歳以上では90.3%(95%信頼区間:73.6-96.4%)であり、国内でも高い有効性があることが示された。


Haruka Maeda, Nobuo Saito, Ataru Igarashi, MasayukiIshida, Kazuya Suami, Ai Yagiuchi, Yuya Kimura, Masaru Komino, Hiromi Arai, Toru Morikawa, IoriMotohashi, Rei Miyazawa, Tetsu Moriyama, Hiroshi Kamura, Mayumi Terada, Osamu Kuwamitsu, Tomoichiro Hayakawa, Eiichiro Sando, Yasuji Ohara, Osamu Teshigahara, Motoi Suzuki, Konosuke Morimoto.


Effectiveness of mRNA COVID-19 vaccines against symptomatic SARS-CoV-2infections during the Delta variant epidemic in Japan: Vaccine Effectiveness Real-timeSurveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS)
Clin Infect Dis.
https://doi.org/10.1093/cid/ciac292

報告書


Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第11報
掲載日:2024年5月24日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。第11報では、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の国内接種開始後の2023年10月1日から2024年3月31日の調査結果から、同期間の国内でのオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の発症予防および入院予防の有効性をまとめた。
 発症予防の有効性の評価では、16歳以上の6,311名 (うち検査陽性者1,330名)が解析対象となった。年齢中央値は43歳、22.4%が65歳以上、46.8%が男性、26.9%に基礎疾患があった。16歳~64歳において、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種なしと比較したオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種完了 (接種から7日以上)から90日以内の有効性は29.6% (95%信頼区間: 0.5~50.2%)、90日以上の有効性は-26.9% (95%信頼区間: -109.5~23.1%)、新型コロナワクチン未接種と比較した有効性は接種完了後90日以内で35.9% (95%信頼区間: 3.0~57.6%)、90日以上で-18.0% (95%信頼区間: -105.0~32.1%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種と比較した有効性は接種完了後90日以内で27.9% (95%信頼区間: -4.5~50.3%)、90日以上で-32.6% (95%信頼区間: -123.3~21.2%)、オミクロン対応2価ワクチン接種と比較した有効性は接種完了後90日以内で26.8% (95%信頼区間: -7.3~50.0%)、90日以上で-34.8% (95%信頼区間: -128.4~20.5%)であった。65歳以上において、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種なしと比較したオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種完了 (接種から7日以上経過)の有効性は8.5% (95%信頼区間: -29.0~35.1%)、新型コロナワクチン未接種と比較した場合の有効性は-11.1% (95%信頼区間: -93.1~36.0%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種と比較した場合の有効性は17.2% (95%信頼区間: -38.1~50.4%)、オミクロン対応2価ワクチン接種と比較した場合の有効性は0.5% (95%信頼区間: -52.5~35.1%)であった。
 入院予防の有効性の評価では、60歳以上の1,110名 (うち検査陽性者221名)が解析対象となった。年齢中央値は83歳、59.6%が男性、77.0%に基礎疾患があり、29.2%が高齢者施設入所者であった。60歳以上において、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種なしと比較したオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種完了 (接種から7日以上経過)の有効性は44.7% (95%信頼区間: 8.0~66.7%)、新型コロナワクチン未接種と比較した場合の有効性は57.9% (95%信頼区間: 20.6~77.7%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種と比較した場合の有効性は33.3% (95%信頼区間: -33.6~66.7%)、オミクロン対応2価ワクチン接種と比較した場合の有効性は32.6% (95%信頼区間: -28.5~64.7%)であった。入院時呼吸不全のある患者、中等症以上の重症度の患者、肺炎がある患者に限定した分析も行ったが、ほぼ同等の値であった。
 本報告はオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の発症予防および入院予防の有効性を評価したものである。オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)を接種することで発症予防については限定的ではあるが、入院予防に関しては追加の予防効果が得られる可能性があることがわかった。一方、接種からの時間経過により有効性が低下する可能性が示唆された。本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2023年10月1日から2024年3月31日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第10報
掲載日:2024年2月28日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。第10報では、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の国内接種開始後の2023年10月1日から2024年1月31日の調査結果から、同期間の国内でのオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の発症予防および入院予防の有効性をまとめた。
 発症予防の有効性の評価では、16歳~64歳の2,060名 (うち検査陽性者284名)が解析対象となった。年齢中央値は35歳、45.9%が男性、23.3%に基礎疾患があった。16歳~64歳において、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種なしと比較したオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5) (接種から7日以上経過)の有効性は43.1% (95%信頼区間:-11.9~71.0%)、新型コロナワクチン未接種と比較した場合の有効性は49.0% (95%信頼区間:-11.2~76.6%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種と比較した場合の有効性は41.2% (95%信頼区間:-20.4~71.3%)、オミクロン対応2価ワクチン接種と比較した場合の有効性は42.6% (95%信頼区間:-19.3~72.4%)であった。
 入院予防の有効性の評価では、60歳以上の548名 (うち検査陽性者75名)が解析対象となった。年齢中央値は83歳、60.2%が男性、77.0%に基礎疾患があり、29.4%が高齢者施設入所者であった。60歳以上において、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)接種なしと比較したオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5) (接種から7日以上経過)の有効性は64.0% (95%信頼区間:7.9~85.9%)、新型コロナワクチン未接種と比較した場合の有効性は73.2% (95%信頼区間:11.4~91.9%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種と比較した場合の有効性は58.7% (95%信頼区間:-33.9~87.3%)、オミクロン対応2価ワクチン接種と比較した場合の有効性は53.6% (95%信頼区間:-38.8~84.5%)であった。
 本報告はオミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の発症予防および入院予防の有効性を評価したものである。オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)を接種することで追加の予防効果が得られる可能性があることがわかった。また入院予防に関しては、オミクロン対応1価ワクチン (XBB.1.5)の追加接種により60%程度の有効性を認めた。本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2023年10月1日から2024年1月31日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第9報
掲載日:2023年7月25日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。第9報では、オミクロン対応2価ワクチンの国内での接種開始後の2022年10月1日から2023年3月31日に、研究参加医療機関で新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上の患者情報を用い、国内での同期間の発症予防および入院予防におけるオミクロン対応2価ワクチンの有効性をまとめた。
 発症予防の有効性の評価では、16歳以上の7,893名 (うち検査陽性者3,394名)が解析対象となった。年齢中央値は43歳であり、27.5%に基礎疾患があった。16歳~64歳において、ワクチン未接種と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了(接種後14日以上経過)の有効性は55.7% (95%信頼区間:42.1~66.1%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種完了(接種後14日以上経過)と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了の相対的な有効性は、従来型のみ接種完了(接種完了後91~180日以内)との比較では、29.7% (95%信頼区間:7.1~46.8%)、従来型のみ接種完了(接種完了後181日以上)との比較では、36.9% (95%信頼区間:20.2~50.1%)であった。65歳以上では、ワクチン未接種と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了の有効性は73.0% (95%信頼区間:51.2~85.1%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種完了と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了の有効性は31.2% (95%信頼区間:-2.8~53.9%)であった。
 入院予防の有効性の評価では、16歳以上の1,306名 (うち検査陽性者316名)が解析対象となった。年齢中央値は83歳であり、74.6%に基礎疾患があり、88.6%が65歳以上であった。ワクチン未接種と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了の有効性は79.6% (95%信頼区間:57.1~90.3%)、従来型新型コロナワクチンのみ接種完了と比較したオミクロン対応2価ワクチン接種完了の相対的な有効性は、従来型のみ接種完了(接種完了後91~180日以内)との比較では、38.5% (95%信頼区間:-35.1~72.0%)、従来型のみ接種完了(接種完了後181日以上)との比較では、41.8% (95%信頼区間:-26.4~73.2%)であった。
 本報告はオミクロン対応2価ワクチンの発症予防および入院予防における有効性を評価したものである。ワクチン未接種者と比較した場合の有効性は、発症予防・入院予防において高い有効性を認めたが、従来型のみを接種した場合と比較した場合には、発症予防・入院予防において中程度の相対的な有効性を認めた。本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年10月1日から2023年3月31日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第8報
掲載日:2023年2月2日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。第8報では全国的に新型コロナウイルスのオミクロン株の亜系統であるBA.5が流行した2022年7月1日から9月30日に、急性呼吸器感染症を疑う症状または新規の肺炎像があり入院を要した16歳以上の患者情報を用い、検査陰性デザインの症例対照研究を用い、国内での同期間の16歳以上における新型コロナワクチンの入院予防の有効性を評価した。加えて、オミクロン株が流行した2022年1月1日から9月30日に新型コロナウイルス感染症で入院した16歳以上の患者情報を使用し、国内での同期間の入院患者における新型コロナワクチンの重症化予防の有効性をまとめた。
 入院予防の有効性の評価では、16歳以上の727名 (うち検査陽性者299名)が解析対象となった。年齢中央値は80歳であり、71.4%に基礎疾患があった。ファイザー社製 (BNT162b2)またはモデルナ社製 (mRNA-1273)いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了 (接種後14日以上経過)の入院予防の有効性は58.2% (95%信頼区間: 2.7~82.0%)、3回接種完了の有効性は72.8% (95%信頼区間: 46.6~86.2%)、4回目接種完了の有効性は84.8% (95%信頼区間: 66.4~93.1%)と推定された。
 重症化予防の有効性の評価では、16歳以上の789名 (うち重症者98名)が解析対象となった。年齢中央値は79歳であり、67.4%に基礎疾患があった。ファイザー社製 (BNT162b2)またはモデルナ社製 (mRNA-1273)いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了の重症化予防の有効性は16.3% (95%信頼区間: -70.0~58.8%)、3回接種完了の有効性は56.9% (95%信頼区間: 8.7~79.6%)、4回目接種完了の有効性は78.2% (95%信頼区間: 18.2~94.2%)と推定された。
 本報告は2022年7月1日から9月30日の16歳以上における新型コロナワクチンの入院予防の有効性および2022年1月1日から9月30日の16歳以上の入院した新型コロナウイルス感染症患者において、新型コロナワクチンの重症化予防の有効性を評価したものである。上記期間において、2回以上の新型コロナワクチン接種の入院予防の有効性および3回以上の新型コロナワクチン接種の入院患者における重症化予防の有効性を確認した。接種回数が増えるにつれて、有効性が上昇しているが、接種回数の少ないものは最終接種日からの経過日数が長い傾向にあるため、最終接種日からの時間経過による有効性の低下を示している可能性がある。
 本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年1月1日から9月30日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第7報
掲載日:2022年12月21日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があり、研究参加医療機関を受診し、新型コロナウイルス検査を受けた患者の情報を用いて、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。今回、新型コロナウイルスのオミクロン株の亜系統であるBA.5による感染が全国で拡大した2022年7月1日から10月31日に、研究参加医療機関で新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上において、発症予防における有効性をまとめた。
 16歳以上の6,919名 (うち検査陽性者3,914名)が解析対象となった。16歳~64歳において、ファイザー社製 (BNT162b2)またはモデルナ社製 (mRNA-1273)いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了 (2回接種後14日以上経過)後181日以上経過の発症予防の有効性は20.5% (95%信頼区間: 1.2~36.1%)、3回接種完了 (3回接種後14日以上経過)の有効性を完了後の経過日数別に見ると、完了後90日以内では50.9% (95%信頼区間: 37.5~61.5%)、完了後91日~180日では35.5% (95%信頼区間: 21.1~47.3%)、完了後181日以上では35.4% (95%信頼区間: 13.9~51.5%)と推定され、4回目接種完了の有効性は47.8% (95%信頼区間: 21.6~65.3%)と推定された。65歳以上において、ファイザー社製またはモデルナ社製いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了の有効性は38.1% (95%信頼区間: -43.6~73.3%)、3回接種完了では41.2% (95%信頼区間: -10.5~68.7%)、4回接種完了では67.0% (95%信頼区間: 33.9~83.5%)であった。
 2回接種完了に対する3回接種完了、3回接種完了に対する4回接種完了の相対的な有効性も評価した。16歳~64歳において、ファイザー社製またはモデルナ社製いずれかのワクチンについて、2回接種完了後181日以上経過を比較対象として3回接種完了の相対的な有効性を評価したところ、3回接種完了後90日以内では38.2% (95%信頼区間: 22.1~51.0%)、91日~181日では18.9% (95%信頼区間: 1.9~32.9%)、181日以上では18.7% (95%信頼区間: -7.5~38.5%)と推定された。同様に3回接種完了後181日以上経過を比較対象として4回接種完了の相対的な有効性を評価したところ、19.2% (95%信頼区間: -22.6~46.8%)であった。65歳以上において、ファイザー社製またはモデルナ社製いずれかのワクチンについて、3回接種完了に対する4回接種完了の有効性は43.8% (95%信頼区間: 15.0~62.9%)であった。
 本報告は全国的にBA.5による感染が拡大した2022年7月1日~10月31日の16歳以上における新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価したものである。16歳以上において、本研究で評価したBA.1/BA.2流行期の新型コロナワクチンの有効性と比較して、2回接種、3回接種ともに点推定値では低下がみられた。16歳~64歳において、3回接種により有効性が上昇するが時間経過により再度低下する可能性が示された。加えて、4回接種により点推定値では有効性が上昇したが、3回接種と比較して有意な有効性は示されなかった。65歳以上においては、3回接種と比較して4回接種が有効であると推定された。
 本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年7月1日から10月31日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第6報
掲載日:2022年9月13日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があり、研究参加医療機関を受診し、新型コロナウイルス検査を受けた患者の情報を用いて、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から行っている。今回、新型コロナウイルスのオミクロン株の亜系統であるBA.5による感染が全国で拡大した2022年7月1日から8月26日に、研究参加医療機関で新型コロナウイルス検査を受けた16歳~64歳について、発症予防における有効性をまとめた。
 16歳~64歳の1,294名 (うち検査陽性者844名)が解析対象となった。16歳~64歳では、ファイザー社製 (BNT162b2)またはモデルナ社製 (mRNA-1273)いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)後181日以上経過の発症予防の有効性は50.6% (95%信頼区間: 14.4~71.5%)、3回接種完了 (3回接種後14日以上経過)の有効性を完了後の経過日数別に見ると、完了後90日以内では75.3% (95%信頼区間: 56.9~85.9%)、完了後91日~180日では70.7% (95%信頼区間: 51.5~82.3%)、完了後181日以上では56.8% (95%信頼区間: 6.6~80.1%)と推定された。また、2回接種完了後181日以上経過を比較対象として3回接種完了の相対的な有効性を評価したところ、3回接種完了後90日以内では50.1% (95%信頼区間: 18.4~69.4%)、91日~181日では40.7% (95%信頼区間: 9.0~61.3%)、181日以上では12.7% (95%信頼区間: -81.2~57.9%)と推定された。
 ファイザー社製新型コロナワクチンに限定した解析では、新型コロナワクチン2回接種完了後181日以上経過の発症予防の有効性は40.0% (95%信頼区間: -13.9~68.4%)、3回接種完了では接種完了後90日以内では70.4% (95%信頼区間: 39.4~85.5%)、91日~180日では71.8% (95%信頼区間: 47.7~84.8%)、181日以上では48.8% (95%信頼区間: -26.1~79.2%)と推定された。一方、モデルナ社製新型コロナワクチンに限定した解析では、新型コロナワクチン2回接種完了後181日以上経過の発症予防の有効性は57.5% (95%信頼区間: 12.1~79.5%)、3回接種完了では接種完了後90日以内では79.2% (95%信頼区間: 51.6~91.1%)、91日~180日では54.0% (95%信頼区間: 7.2~77.2%)と推定された。1、2回目がファイザー社製新型コロナワクチン、3回目がモデルナ社製新型コロナワクチンを接種した対象者に限定した解析では、3回接種完了後91日~180日の有効性は67.0% (95%信頼区間: 20.3~86.3%)と推定された。
 本報告は全国的にBA.5による感染が拡大した2022年7月~8月の16歳~64歳における新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価したものである。前回の第5報で報告したBA.1流行期の新型コロナワクチンの有効性と比較して、2回接種、3回接種ともにその有効性は同等と考えられた。3回接種後には有効性が上昇したが、時間経過により再度低下する可能性が示された。
 本報告は暫定値であるが公衆衛生学的意義を鑑みつつ報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年7月1日から8月26日の対象期間内でも未集計の情報も多数あるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第5報
掲載日:2022年6月8日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価する研究を2021年7月1日から開始した。今回、新型コロナウイルスの変異株B.1.1.529 系統 (オミクロン株)が全国で拡大した2022年1月1日から3月31日に新型コロナウイルス検査を受けた患者情報を用いて、この期間の16歳以上における発症予防における新型コロナワクチンの有効性について暫定値をまとめた。
16歳~64歳では、ファイザー社製 (BNT162b2)またはモデルナ社製(mRNA-1273)いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)による発症予防の有効性を36.0% (95%信頼区間: 23.2~46.7%)、3回接種完了 (3回接種後14日以上経過)の有効性を68.7% (95%信頼区間: 55.6~77.9%)と推定した。2回接種完了群においてワクチン接種からの時間経過で分けた解析では、接種完了後から90日以内の有効性は35.6% (95%信頼区間: 16.2~50.6%)、91~180日では34.5% (95%信頼区間: 20.6~45.9%)、181日以降では34.8% (95%信頼区間: 13.3~50.9%)と推定され、時間経過による有効性の明らかな低下は見られなかった。ファイザー社製新型コロナワクチンに限定した解析では、ワクチン2回接種完了による発症予防の有効性を34.2% (95%信頼区間: 20.0~45.9%)、3回接種完了の有効性を66.1% (95%信頼区間: 50.4~76.8)、モデルナ社製新型コロナワクチンに限定した解析では、ワクチン2回接種完了による発症予防の有効性を43.3% (95%信頼区間: 29.2~54.7%)、3回接種完了の有効性を75.8% (95%信頼区間: -50.5~96.1%)と推定した。1,2回目ファイザー社製新型コロナワクチンを接種、3回目モデルナ社製新型コロナワクチンを接種した場合の有効性は、81.7% (95%信頼区間: 39.9~94.4%)と推定された。
65歳以上では、ファイザー社製またはモデルナ社製いずれかの新型コロナワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性を23.3% (95%信頼区間: -75.3~66.5%)、3回接種完了の有効性を80.5% (95%信頼区間: 46.5~92.9%)と推定した。ファイザー社製新型コロナワクチンに限定した解析では、ワクチン2回接種完了による発症予防の有効性を43.2% (95%信頼区間: -38.5~76.7%)、3回接種完了の有効性を78.8% (95%信頼区間: 33.1~93.3)と推定した。1,2回目ファイザー社製新型コロナワクチンを接種、3回目モデルナ社製新型コロナワクチンを接種した場合の有効性は、77.9% (95%信頼区間: -7.7~95.4%)と推定された。
本研究の第4報での報告と比較して、解析対象者数が増えたことにより、16歳~64歳においてはより正確な値を出すことができ、65歳以上においても評価することができた。16歳~64歳では2回接種完了群において、2回接種完了後3か月以内であっても有効性は約35%であったが、3回目追加接種により、68.7%まで上昇することが明らかになった。一方、2回接種に関しては、海外で認められるような接種後の時間経過による有効性の明らかな低下は認められなかった。65歳以上でも同様に3回目接種による有効性の上昇が認められた。本報告では、65歳以上を含む16歳以上において、オミクロン株に対しては、新型コロナワクチン2回接種による発症予防の有効性はデルタ株流行期と比較して低下がみられるが、3回目接種を行うことによりオミクロン株であっても発症予防における有効性が上昇すると確認した。
本報告は公衆衛生学的意義を鑑みつつ、暫定値を報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年1月1日から3月31日においても、集計できていない情報もあるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第4報
掲載日:2022年3月25日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価する研究を2021年7月1日から開始した。今回、新型コロナウイルスの変異株B.1.1.529 系統 (オミクロン株)が全国で拡大した2022年1月1日から2月28日に新型コロナウイルス検査を受けた患者情報を用いて、この期間の発症予防における新型コロナワクチンの有効性について暫定値をまとめた。 16歳~64歳において、ファイザー社製あるいはモデルナ社製いずれかのワクチンの2回接種完了 (2回接種後14日以上経過)による発症予防における有効性を42.8% (95%信頼区間:23.6~57.1%)、3回接種完了 (3回接種後14日以上経過)における有効性を68.7% (95%信頼区間:37.1~84.4%)と推定した。2回接種完了による有効性について、ファイザー社製ワクチンに限定すると41.8% (95%信頼区間:21.1~57.1%)、モデルナ社製ワクチンに限定すると46.4% (95%信頼区間:24.1~62.2%)と推定した。2回接種完了群においてワクチン接種からの時間経過でわけて解析したところ、接種完了後から90日以内の有効性は41.4% (95%信頼区間:16.2~59.0%)、91~180日では43.0% (95%信頼区間:22.6~58.0%)、181日以降では31.7% (95%信頼区間:-17.6~60.4%)であり、時間経過とともにワクチンの有効性が減弱している可能性があると考えられた。本研究の第2報で報告した、デルタ株が流行した2021年7月1日から9月30日における発症予防の有効性と比較したところ、接種からの時間経過を加味しても新型コロナワクチンの有効性は低下していると考えられ、オミクロン株への置き換わりによる有効性の低下と考えた。 本報告は極めてサンプルサイズが限られているが、公衆衛生学的意義を鑑みつつ、暫定値を報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、2022年1月1日から2月28日においても、集計できていない情報もあるため、今後結果が変わる可能性があり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第3報
掲載日:2022年1月26日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所)

要約

長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関(病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から開始した。今回、新型コロナウイルスの変異株B.1.1.529 系統(オミクロン株)が全国で広がり始めた2022年1月1日以降に新型コロナウイルス検査を受けた患者情報を用いて、この期間の発症予防における新型コロナワクチンの有効性について暫定値をまとめた。16歳~64歳において、ファイザー社製あるいはモデルナ社製いずれかのワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)による発症予防における有効性を51.7% (95%信頼区間:2.0~76.2%) と推定した。デルタ株が流行した2021年7月1日から9月30日における同値は88.7% (95%信頼区間:78.8%~93.9%)であり、新型コロナワクチンの有効性は低下していると考えられた。 本報告は極めてサンプルサイズが限られているが、公衆衛生学的意義を鑑みつつ、暫定値を報告した。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、随時アップデートした結果を報告する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第2報
掲載日:2021年12月1日 / 最終版掲載日:2022年2月2日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所 臨床研究部門)

要約

長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関 (病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの発症予防における有効性を評価する研究を2021年7月1日から開始した。今回、2021年7月1日~9月30日の登録患者情報を用いて結果をまとめた。16歳~64歳において2回接種完了 (2回目接種後14日以上経過)による発症予防における有効性は、ファイザー社製あるいはモデルナ社製いずれかのワクチンでは88.7% (95%信頼区間:78.8~93.9%)、ファイザー社製ワクチンに限定すると86.7% (95%信頼区間:73.5~93.3%)、モデルナ社製ワクチンに限定すると96.6% (95%信頼区間:72.8~99.6%)と推定された。65歳以上においては、ファイザー社製あるいはモデルナ社製いずれかのワクチンの2回接種完了による発症予防における有効性は90.3% (95%信頼区間:73.6~96.4%)、ファイザー社製ワクチンに限定すると85.8% (95%信頼区間:59.4~95.0%)と推定された。今回、ワクチン接種後の時間経過による有効性の減弱を評価することを目的として、16歳~64歳において、ファイザー社製あるいはモデルナ社製ワクチン2回接種完了後1~3か月と4~6か月でわけた解析を実施した。その結果、発症予防における有効性はワクチン2回接種完了後1~3か月で91.8% (95%信頼区間:80.3~96.6%)、4~6か月で86.4% (95%信頼区間:56.9~95.7%)と推定された。 本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、10月以降も研究は継続しており、随時アップデートした結果を報告する予定である。なお、長期サーベイランスを行うことで、接種後からの時間経過、ブースター接種や変異株によってワクチンの有効性がどのように変動するかを評価する予定である。

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第1報
掲載日:2021年10月5日
報告者

前田 遥、森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所 臨床研究部門)

要約

現在、国内において実臨床上での新型コロナワクチンの有効性を評価した研究は十分ではない。長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関(病院および診療所)と協力し、新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を2021年7月1日から開始した。2021年7月1日~8月31日のデータを用いて暫定結果をまとめたところ、16歳~64歳において、ファイザー社製あるいはモデルナ社製いずれかのワクチンの2回接種による発症予防における有効性は86.8%(95%信頼区間:71.0~94.0%)、ファイザー社製ワクチンに限定すると、2回接種による発症予防における有効性は85.6%(95%信頼区間:67.6~93.6%)と推定された。本報告は長期サーベイランス研究の一部であり、9月以降も研究は継続しており、随時アップデートした結果を報告する予定である。なお、長期サーベイランスを行うことで、変異株やブースター接種によってワクチンの有効性がどのように変動するかを評価する予定である。