結核臨床研究

言語切り替え

世界最大規模の結核臨床研究フィールドを、ケニアに

長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点では、臨床感染症専門家の齊藤信夫、彦根麻由が中心となり、ケニアの医療機関と共同で世界最大規模の結核臨床研究フィールドを構築しています。多剤耐性結核から肺外結核まで幅広い症例が集まるケニアの医療環境を活かし、肺外結核患者検体のバイオバンクを整備するとともに、ケニア国内の医療機関・研究機関と大規模な前向き臨床研究を継続的に実施しています。

こうした研究基盤のもと、日本国内の学術機関および国内外の民間企業との連携を積極的に進め、新規診断技術の開発と臨床応用を推進しています。

最大の強みは、重症から軽症まで、3次医療機関から1次医療機関までを一貫してカバーできる研究体制にあります。多剤耐性結核が集まる3次医療機関、幅広い症例に対応する2次医療機関、外来患者数の多い1次医療機関までを研究フィールドとし、あらゆる重症度・病型の結核症例にアクセスできる点が、他に類を見ない特長です。

さらに、抗酸菌培養(BSL3)ラボと、次世代シーケンサー(MiSeq)による全ゲノム解析まで実施できるラボを自前で保有しており、検体の採取から培養、薬剤感受性試験、ゲノム解析までを一気通貫で行える研究基盤を有しています。

こうした研究フィールドとラボ基盤をもとに、肺外結核患者検体のバイオバンクを整備し、日本国内の学術機関、国内外の民間企業との連携のもと、大規模な前向き臨床研究を継続的に実施しています。

研究サイト(3次〜1次医療機関を網羅)

  • ケニヤッタ国立病院(KNH)(3次医療機関):東アフリカ最大規模。最重症例が多く、多剤耐性結核の搬送機関
  • ムバガティ郡病院(MCH)(2次医療機関):軽症〜重症例。キベラスラムから多くの患者が来院
  • Rhodes Chest Clinic(1次医療機関):最も多い結核外来患者数

ラボ基盤

  • 抗酸菌培養、薬剤感受性試験(BSL3)
  • Xpert MTB/RIF Ultra
  • 全ゲノム解析(MiSeq)(40株実施)
  • qPCR、CRISPR assay、抗原検出
  • 検体保存システム(−80℃冷凍庫)

主な研究プロジェクト

1. 肺外結核患者 前向き登録研究(Biotube)(2024〜2028)
非喀痰検体(特に尿)を用いた新規診断薬開発を目的とした大規模な前向き登録研究です。2025年4月〜11月に149症例が登録され(確定74例)、内訳は髄膜炎46例、胸膜炎49例、リンパ節炎4例、肺結核50例。系統的に収集された検体は、ガラス繊維(QuickConc)・スマートポリマーによる濃縮技術と、CRISPR-GEL・MPT64-ELISA・PATHFAST-LAM Agによる検出技術を組み合わせた診断開発研究に活用されています。

2. One-Pot RPA CRISPR-Gel TB Assay
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科ウイルス学分野・宇野准教授との共同研究。単一チューブ・等温反応(40℃)で結核菌を検出し、ヒートブロックのみで実施可能な手法です(Uno N, et al. Anal Chim Acta. 2023)。Xpert MTB/RIF Ultraとの比較検討の結果、ほぼ同等の性能が確認されています。

3. 核酸濃縮技術(ガラス繊維 QuickConc)の結核臨床診断への応用
AdvanSentinel社との共同研究。ガラス繊維による核酸濃縮法で、Ct値を約7〜8サイクル低下させ、約100倍の濃縮効果を確認(Kuroita et al., under revision)。

4. 全自動LAM測定装置(PATHFAST TB-LAM Ag)を用いた治療効果判定研究
PHC Group、AMEDとの共同臨床研究。喀痰中LAM濃度の減少から治療予後を予測できるかを、Mbagathi County HospitalとRhodes Chest Clinicで評価。2026年2月より患者登録を開始し、300人の登録を予定しています(Orina F, Hikone M, Saito N et al. TMH 2025; Takaizumi, Yu et al. BMJ Open 2026)。

学術連携・民間連携

学術機関との強力な共同研究
結核研究所(RIT/JATA)御手洗先生村瀬先生ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene & Tropical Medicine)Katarina教授と強い協力関係のもと研究を推進しているほか、KEMRI、KNH、University of Zambia、慶應義塾大学、新潟大学とも連携しています。

現在実施中の民間企業連携

  • TAUNS
  • AdvanSentinel
  • PHC Group
  • SPHinX

このほか、アドテック株式会社、株式会社タスク(TSK Laboratory)とも連携しています。

今後の方針

  • 小児結核研究(診断開発)の推進
  • 多国籍共同研究の展開(アフリカ・アジア)
  • アカデミア・民間企業との連携強化
  • 若手医師の熱帯医学研究者の育成