長崎大学熱帯医学研究所は、ザンビア大学獣医学部(University of Zambia)、ザンビア中央獣医研究所(Central Veterinary Research Institute: CVRI)、ザンビア水産・家畜省(Ministry of Fisheries and Livestock)、北海道大学、大分大学との共同プロジェクトとして、2026年6月から7月にかけて、ザンビア3州で狂犬病迅速診断キット(Lateral Flow Device: LFD)の導入トレーニングを実施しました。
今回の活動では、首都ルサカから車で約12時間、800 km以上離れた遠隔地域を含む約2,600 kmを車で移動し、わずか1週間で3州を巡回しました。訪問した地域はいずれも狂犬病の発生が多く、現地獣医当局からLFD導入への強い要望が寄せられていた地域です。
これまでこれらの地域では、狂犬病疑い動物が発生しても確定診断を実施できる施設が近くになく、診断やサーベイランス体制の整備が課題となっていました。本プロジェクトでは、各Districtの獣医アシスタントを対象にトレーニングを実施し、DistrictレベルでLFD診断を実施できる体制の構築を進めました。

また、今回訪問したLuapula ProvinceおよびNorthwestern Provinceは、国立公園や野生動物保護区に隣接しており、野生動物、犬、家畜との接触機会が多い地域です。野生動物と犬・家畜との間で狂犬病ウイルスのスピルオーバー伝播が起きている可能性がありますが、その実態は十分に明らかになっていません。
本プロジェクトでは、各地でLFD診断を実施するとともに、陽性となったLFDキットを全国から回収し、キットから抽出したRNAを用いて狂犬病ウイルスのゲノム解析を実施します。これにより、ザンビア国内における狂犬病ウイルスの伝播経路や地域間の感染拡大、さらに野生動物と犬・家畜間のスピルオーバー伝播の解明を目指しています。
Luapula Province(6月29日)
Luapula Provinceでは、10 Districtから15名の獣医師・獣医アシスタントが参加しました。
LFDを用いた迅速診断、脳検体の安全な採材方法、バイオセーフティ、検査結果の報告方法、陽性LFDキットの保管・輸送方法について講義と実習を実施しました。
研修終了後には、州内でのサーベイランス開始に向けてLFDキット100セットを供給しました。


Copperbelt Province(7月1日)
Copperbelt Provinceでは、10 Districtから15名が参加しました。
Districtレベルで迅速な狂犬病診断が実施できるよう、実技を中心としたトレーニングを行い、検体採取から結果判定、報告までの一連の流れを確認しました。
研修終了後には、LFDキット80セットを供給しました。


Northwestern Province(7月3日)
Northwestern Provinceでは、3 Districtから12名が参加しました。
同州は広大で人口密度が低く、検体を中央検査施設まで搬送することが困難な地域です。現場で迅速診断を実施し、陽性LFDキットをゲノム解析へつなげるサーベイランス体制について研修を行いました。
研修終了後には、LFDキット70セットを供給しました。


今後の展望
今回の3州でのトレーニングには、23 Districtから42名の獣医関係者が参加し、合計250セットのLFDキットを供給しました。
2025年から2026年にかけて、本プロジェクトではザンビア国内8州でLFDサーベイランス体制を整備し、121名の獣医師・獣医アシスタントを対象にトレーニングを実施しました。また、各州でのサーベイランス開始に向けて、約650セットのLFDキットを供給しました。首都ルサカから最大約800 km、車で約12時間かかる遠隔地域にも導入を拡大し、Districtレベルで狂犬病迅速診断を実施できる体制を構築しました。これにより、全国規模で陽性LFDキットを回収し、狂犬病ウイルスのゲノム解析につなげるためのサーベイランス基盤が整備されました。
今後は、各Districtで実施されたLFD診断で陽性となったキットをCVRIへ集約し、狂犬病ウイルスのゲノム解析を実施します。これにより、これまで十分に把握されていなかったザンビア国内の狂犬病ウイルスの伝播経路や地域間の感染拡大、さらには野生動物と犬・家畜間のスピルオーバー伝播の実態を明らかにし、科学的根拠に基づく狂犬病対策やワクチン接種戦略の構築に貢献することが期待されます。

Funding
本活動は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点活用研究領域)(基礎的研究)「ザンビアにおける狂犬病ウイルススピルオーバーと感染伝播解明に関する研究」(研究代表者:齊藤信夫、課題番号:JP26wm0225043h0001)の支援を受けて実施されました。
また、本活動は北海道大学ザンビア拠点と長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点の協力のもと実施されました。同拠点には、現地での活動に際し多大なるご支援・ご協力をいただきましたことを心より感謝申し上げます。
