5年間の草の根技術協力プロジェクト最終報告会を開催しました

5年間の草の根技術協力プロジェクト最終報告会を開催しました

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2025年12月16日、ケニア・Homa Bay郡のHotel Twin Towersにて、JICA・長崎大学(NUITM)による草の根技術協力プロジェクトの最終報告会(End-term Meeting)を開催しました。本会合には、郡およびサブカウンティの保健関係職員37名、国家保健省(MOH)職員2名、JICAケニア事務所職員2名、長崎大学関係者6名が参加しました。なお、神谷教授および元プロジェクト専門家の鈴木氏はオンラインにて参加しました。

本会合の主な目的は以下のとおりです。

  • 5年間にわたる介入プロジェクトの最終成果報告
  • プロジェクト開始から終了までの活動内容、成果、インパクトの共有
  • 関係者全体での持続可能な取り組みの検討
  • プロジェクト終了後の今後の方針(Way forward)の整理

プロジェクト全体の成果報告は、プロジェクト専門家である原志帆氏と現地スタッフのSharon Anam氏が担当しました。これまでに実施してきた一連の活動内容が紹介され、プロジェクトの対象地域である2つのサブカウンティにおいて、スナノミ症の症例数が約97%減少したことが報告されました。

発表は以下の構成で行われました。

  • プロジェクト成果の概要
  • プロジェクトの枠組みとアプローチ
  • 成果1:マッピングおよびサーベイランス
  • 成果2:人材育成・能力強化
  • 成果3:地域における実装
  • インパクト
  • 制度化(郡レベル・国家レベル)
  • 結論および提言

続いて、各サブカウンティからは、プロジェクト終了後の持続可能性に関する取り組みについて発表が行われました。
Ndhiwaサブカウンティからは、Focal PersonのAnne Kabaraka氏、Suba-Southサブカウンティからは、公衆衛生担当官(Sub-county Public Health Officer)のLeonard Wauna氏が登壇し、以下の内容が共有されました。

  • 現在のスナノミ症の状況
  • プロジェクト期間中に実施された主な介入
  • 郡政府および国家政府の関与

持続可能性に関する主な合意事項として、以下が挙げられました。

  • スナノミ症対策を公衆衛生サービスの中に制度化すること
  • 流行地域における分野横断的な連携の強化
  • 国家レベルのスナノミ症対策方針の郡レベルでの適用
  • 地域における継続的なマッピングおよび治療の実施
  • 学校保健クラブの生徒をスナノミ症対策の担い手として活用し、地域での継続的な健康教育を行うこと

さらに、郡政府および国家政府の役割についても整理されました。

郡政府の役割

  • スナノミ症治療薬・資材を公的な保健医療供給体制に組み込むこと
  • 治療および対応能力向上のための人材育成の継続
  • スナノミ症管理方針の制度化
  • マルチセクターによる連携体制の推進

国家政府の役割

  • 国家レベルのスナノミ症管理ガイドラインの整備・提供

会合を通じて、すべての関係者から、5年間のプロジェクトによって顕著な成果が得られたことへの感謝の言葉が述べられました。

神谷教授は、郡保健局、JICAケニア事務所、JICA九州、長崎大学をはじめとするすべての関係者に対し、プロジェクト成功への深い謝意を表明しました。また、JICA-NUITMからは、今後の持続可能性の観点から、WASH(給水・衛生)分野や住環境改善プログラムとの連携強化への期待が示されました。

井上教授は、疾病対策における協働においては科学的アプローチと人材育成が不可欠であり、実行可能な公衆衛生政策の策定が重要であると強調しました。また、地域住民の主体的な関与が、今後の持続可能性を支える重要な要素であることにも言及しました。

国家保健省からは、感染症予防およびリスクコミュニケーションの重要性、ならびに国家政府との継続的な協議の必要性が改めて示されました。あわせて、スナノミ症ガイドラインを含む関連政策の見直しが予定されていることが共有され、「顧みられない熱帯病(NTDs)の撲滅は可能であり、今後はより対策が困難な疾患にも重点を置いていく必要がある」とのメッセージで会合は締めくくられました。

郡保健局、教育省、内務省関係者、JICAケニア事務所、長崎大学関係者が参加した最終報告会の様子

オンライン参加した神谷教授の発言に耳を傾ける参加者たち

(プロジェクトの持続可能性についての説明)

サブカウンティによる、地域レベルでの持続可能な取り組みに関する発表の様子