免疫病態制御学分野
スタッフ
- 教授
- 由井克之
- 准教授(有期)
- 水上修作
- 助教(有期)
- 簡君宇
- 特任研究員
- Sukhbaatar Odsuren
- 技能補佐員
- 谷口真由美
- 技能補佐員
- 野口亜紀子
・水上グループ
研究活動
本分野は、マラリアに対する宿主応答の解析を担当し、特にマラリアワクチン開発研究に注力している。
マラリアの原因となるマラリア原虫の生活環は、ヒトの体内では大きく肝細胞期、赤内期に分かれており、そのステージにより形態などを大きく変える。
マラリアに対しては多くのワクチン開発研究がなされており、既に、RTS,S/AS-01, R21/Matrix-MというWHOに事前認証されたワクチンはあるものの、効果・供給可能量ともに十分では無いと考えられており、未だに更なる開発が求められている。
肝細胞期マラリアに対しては、Tリンパ球が主体となる細胞性免疫がその防御に重要であると考えられている。しかしながら、これまでのワクチン開発研究の多くは抗体が主体となる液性免疫の誘導を目指したものであり、これと対をなす細胞性免疫の誘導に重きを置いたものは多くなかった。
本分野では、これまでに、全身を循環せずに肝臓に常在する組織常在性記憶T細胞(TRM ;tissue resident memory T cell)のマラリア防御免疫における重要性を確認するとともに、mRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNP; mRNA containing lipid nanoparticles) を用いた感染防御に十分なTRMの誘導にマウスモデルで成功している。現在、これらの知見に基づき、より良いマラリアワクチンの開発を目指して研究を続けている。
・由井グループ
研究活動
マラリア流行地の住民は、感染を繰り返すことにより長時間かけて抵抗性を獲得し、多くの場合無症候性感染となる。この免疫記憶は、持続感染と共に維持されるが、マラリア原虫が完全に排除されると失われやすい。しかしながら、感染抵抗性の獲得になぜ複数回の感染が必要なのか、抵抗性の維持がなぜ長く続かないのか、詳細は不明である。私たちは、次世代型マラリアワクチンの開発や流行地のマラリア再感染対策に貢献することを目指し、以下の研究を展開している。
- マラリア免疫記憶のサイトカインIL-27による制御機構
マウスマラリアの実験モデルを用い、マラリアの免疫記憶維持の制御機構に関する基礎研究を行なっている。特に、制御性サイトカイン、インターロイキン27が免疫記憶を抑制的に制御することを見出し、その制御メカニズムの解明と応用研究に取り組んでいる。 - マラリア制御地域における免疫記憶の持続に関するフィールド調査研究
東南アジアでは、近年マラリア対策が進み撲滅された地域が増加している。しかしながら再感染のリスクは絶えず、以前の感染により獲得した免疫記憶がどの程度持続するか理解することは重要である。フィリピン熱帯医学研究所(RITM)及び英国LSHTMとの共同研究により、マラリア感染対策の進むフィリピンをフィールドとして、マラリア感染の免疫記憶細胞がどの様に維持されているのか調査研究を実施している。
最近の主な業績
- Macalinao et al. EMBO Mol Med 2023; 15 (12): 10.15252/emmm.202317713.
- Ganley et al. Nature Immunol 2023; 24 (9): 1487‒1498.
- Macalinao et al. Lancet Reg Health West Pac 2023; 10.1016/j.lanwpc.2023.100792.
- Ntita et al. Int Immunol 2022; 34: 21-33.
- Enders et al. Curr Res Immnol 2021; 2: 79-92.