国際保健学分野

疫学調査を実施しているムスタンのチベット高地民族(標高3560m) 性産業における顧客の移動を反映した都道府県間のネットワーク日本地図
前身を熱帯感染症研究センターに持つ。「博物館・資料館」としての機能と研究センターとしての機能を担っていたなかから、国際保健学分野は、研究機能を引き継ぐと同時に、社会貢献を行っていくことを、その使命として定めた。
スタッフ
- 准教授
- 伊東啓
- 助 教
- 有馬弘晃
- 客員教授
- 吉村仁
- 客員教授
- 和田崇之
- 客員教授
- 宮城島一明
- 客員教授
- 小松隆一
- 客員准教授
- 山道真人
- 客員准教授
- 蔡国喜
- 客員研究員
- スウェタ コイララ
- 客員研究員
- アキンティジェ シンバ カリオペ
- 事務補佐員
- 前田香代
- 大学院生
- 高山義浩
- 大学院生
- 猪股晋作
- 大学院生
- 河内宜之
- 大学院生
- カンバレ マセ ポール
研究活動
ヒトの健康という概念を理解するためには、人体や病原体という対象だけでなく、人々が適応してきた自然環境にも目を向ける必要がある。また感染症流行の様相を理解するためには、病原体を媒介する生き物の生態学的な側面や、人々の行動の相互作用、社会ネットワークと呼ばれる個人間の繋がりを含む社会構造を解明しなければならない。なぜなら、ヒトとヒトとの繋がりを介して集団全体に広がっていく感染症もまた社会に適応していると考えることができるからだ。
当分野は、適応・進化というキーワードを土台にして、ヒトの健康や感染症の拡散現象を理解するための研究を展開している。ヒト社会と病原体の双方向の適応を総合的に考慮することで、「病原体が社会に適応し、社会も病原体に適応する」という時間的に動的な生命現象の理解を目指してきた。
具体的には、数理モデルを用いた性感染症の拡散理論の構築と、ウェブ調査による性行動に関するデータ収集から、性感染症の存続性の解明を目指している。さらに行動経済学や進化生物学で盛んに研究されているゲーム理論の視点から、抗菌薬の使用と薬剤耐性化の背景にある社会的ジレンマの研究を進めている。
国外調査では、チベット高地民族の低酸素適応の実態や、彼らの疾患脆弱性を明らかにする研究をネパールのムスタン地区(標高3560m)で行ってきた。近年はルワンダ共和国にて妊婦口腔内の歯周病菌保菌や向精神物質(アルコール・タバコ・薬物など)と早産や低体重児出生との関連を調べると同時に、ネパールにおいてトキソプラズマ感染率や感染リスクを把握することで妊婦や家族への教育プログラムの構築を進めている。国内に関するものでは、大気汚染物質や火山噴出物の観測値と出生データを用いて、妊婦がこれらの物質に曝露された際に出生性比がどのように変動しているかを検証している。これらの取り組みから妊娠・出産に負の影響を与える因子を探索し、母子保健に係る実態把握や問題提議を行っている。
最近の主な業績
- Yamanouchi et al. Parasitology Research 2024; 123: 163.
- Inomata et al. Scientific Reports 2024; 14: 4701.
- Kambale et al. Parasitology International 2024; 100: 102866
- Arima et al. BMC Public Health 2023; 12: 2471.
- Dhakal et al. Pathogens 2023; 12(8): 1045.