感染生化学分野

基礎研究を基盤とした臨床応用を通して人類の向上と福祉をめざしている。エネルギー代謝とその調節、酵素、タンパク質や生体膜の生化学、分子生物学など実験室における純粋でオリジナルな基礎生命科学研究とこれに基づくマラリア、トリパノソーマ症などの寄生虫感染症を中心とした創薬研究を進めている。さらにグローバルな医療問題に対する研究室外での活動を東南アジア・アフリカ・中南米の途上国や欧米の国々と積極的に展開している。
スタッフ
- 教 授
- 稲岡健ダニエル
- (兼)教授
- 北 潔
- 助 教
- 佐倉孝哉
- 事務補佐員
- 松本海奈
研究活動
研究としては代謝調節、とくにエネルギー代謝における「低酸素適応の分子機構」についてヒト、寄生虫および細菌類を用いて呼吸鎖成分の構造と機能、核とミトコンドリアの協調的遺伝子発現の調節機構、遺伝子や酵素の進化について明らかにする目的で研究を行っている。またこれらの研究から得られる情報をもとに5- アミノレブリン酸などの新型コロナウイルス感染症などに対する新規の「抗感染症薬の開発」を試みている。さらに、分子進化の原理に基づいた「新しい生物機能の探索と創製」をめざしている。また「顧みられない熱帯病NTDs」に関する取り組みを進め、東アフリカの奇病「うなづき病」の原因候補として興奮性アミノ酸を見出した。今後は流行地における検証研究を進める予定である。さらに、中南米の風土病であるシャーガス病の宿主内環境適応機構、病態発症機構、宿主・原虫間の代謝クロストークなどの基礎研究を行い、創薬研究へと展開している。2023 年度からはブラジル拠点と連携し、南米で流行している感染症の実態調査と新規診断法の開発も行っている。
本分野ではトリパノソーマ科原虫を主な研究対象としているが、他の病原体やモデル生物を用いた研究も行っている。具体的にはアイメリア(Eimeria tenella)、タイレリア(Theileria spp.)といった寄生原虫の他、ブタ回虫(Ascaris suum)、アニサキス(Anisakis spp.)、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、肝蛭(Fasciola spp.)等の蠕虫、そして、細菌では結核菌(Mycobacterium spp.)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、カンピロバクター(Campylobacter jejuni)や大腸菌(Escherichia coli)の中枢代謝を理解するための研究を行っている。
最近の主な業績
- Tashibu et al. Front Cell Infect Microbiol 2024; 13: 1302114.
- Yoshino Tun et al. Trop Med Health 2023; 8(29): 25850-25860.
- Kobayashi et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2023; 120(28): e2214765120..
- Enkai et al. Antimicrob Agents Chemother 2023; 67: e0142822.
- Kabongo et al. Front Mol Biosci 2023; 10: 1095026.