アフリカでの狂犬病制圧に向けて

アフリカでの狂犬病制圧に向けて

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ザンビアでキックオフミーティングとトレーニングを実施!

このたび、齊藤信夫准教授は、狂犬病制圧に向けたプロジェクトをザンビアで始動しました。
大分大学、北海道大学ザンビア拠点、ザンビア大学、水産畜産省中央検査室と連携し、全国的な検査体制の導入に向けて、キックオフミーティングと現地トレーニングを実施しました。

迅速診断法と革新的ゲノムサーベイランスシステムの導入

アフリカでは、今もなお毎年多くの人が狂犬病で命を落としています。その最大の原因のひとつが、「検査実施が難しい」こと。多くの地域では、検査施設や輸送手段が限られており、狂犬病の実態すら把握できていないのが現状です。さらに、アフリカでは犬や牛などの家畜と野生動物の間でウイルスが相互に伝播する「スピルオーバー」が頻繁に起こり、制圧をより複雑にしています。

このような中、長崎大学 熱帯医学研究所 ケニア拠点の齊藤准教授は、フィリピンJICA/AMED SATREPS 事業で成功を収めたモデルをアフリカにも導入しようとしています。それは、「どこでもできる狂犬病検査」と「陽性キットを使ったゲノムサーベーランス」という革新的な手法です。使用されているキット(LFD:Lateral Flow Device)は、株式会社アドテック(日本・宇佐市)と大分大学によって共同開発されたものです。

通常、狂犬病の診断には死亡動物の脳を凍結保存し、厳重な管理のもとで輸送する必要があります。しかし、これには高いハードルがつきものです。そこで齊藤准教授は、陽性反応が出た迅速診断キットをそのまま通常輸送し、中央検査室でゲノム解析を行う方法を確立しました。

ザンビアでのキックオフミーティング開催

2025年6月19日、ザンビアの首都ルサカにて本プロジェクトのキックオフミーティングを開催しました。会議にはザンビア保健省・水産畜産省の高官、ザンビア大学獣医学部、世界的狂犬病対策機関GARC(Global Alliance for Rabies Control)の専門家2名を含む、多くの関係者が出席。
今後のザンビア全国への導入戦略について、活発な議論が交わされました。

キックオフミーティングの様子

現地スタッフへの迅速診断トレーニングを実施 (ルサカ州、中央州)

キックオフ翌日の6月20日には、ルサカ州から狂犬病対策スタッフ15名を集め、迅速診断法の導入トレーニングを実施しました。さらに6月22日には、同様のトレーニングを中央州でも実施し、計30名の現地スタッフが新しい検査手法を習得しました

今回のトレーニングでは、簡易脳検体採取法、迅速診断キットを用いた診断法の習得に加えて、安全対策にも重点を置きました。具体的には、手袋やガウン、フェイスシールドなどの個人防護具(PPE)の正しい着用方法、脳検体など感染性の高いサンプルの安全な取り扱い、使用済みキットや廃棄物のバイオハザード管理について、実践的に学ぶ内容となりました。研修終了後には、迅速診断キットとPPEを含む診断セットがプロジェクトから各参加者に供与され、今後の現場での検査活動に活用される予定です。

狂犬病フィールド診断トレーニングの様子
中央州トレーニング参加者と全体写真

今回のトレーニングは、今後ザンビア全州への診断システム展開のための第一歩です。今後も各州で順次トレーニングを行い、現地スタッフの育成と検査体制の強化を進めていきます。

本プロジェクトは、長崎大学ザンビア大学が主導し、北海道大学ザンビア拠点長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点の連携により実施されています。
また、日本医療研究開発機構(AMED)「新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点活用研究領域)」の支援を受けています。

「ザンビアにおける狂犬病ウイルススピルオーバーと感染伝播解明に関する研究」(代表 齊藤 信夫)