アフリカの気管支鏡レベル向上へ ― 長崎大学が気管支鏡トレーニングをケニアで実施―

アフリカの気管支鏡レベル向上へ ― 長崎大学が気管支鏡トレーニングをケニアで実施―

2025-12-01

言語切り替え

2025年11月25日~27日、長崎大学より専門家8名がケニアを訪問し、ケニア最大の国立病院であるケニヤッタ国立病院(KNH)において、気管支鏡トレーニングを実施しました。
本プロジェクトは、長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点が主幹となり、齊藤准教授・彦根助教がプロジェクト代表として運営している取り組みで、長崎大学病院の専門家チームが講師として参加しています。

本研修は、ケニアにおける肺がん診断体制および気管支鏡医療の強化を目的として、長崎大学が代表機関となり実施しているものです。本事業は、国立健康危機管理研究機構(JIHS)が実施する「医療技術等国際展開推進事業」に長崎大学が採択されて実施されています。

竹本医師による気管支鏡指導風景

副大臣・日本大使・KNH CEOが参加する盛大なオープニングセレモニー

11月25日のオープニングセレモニーは、
ケニア保健副大臣、在ケニア日本国大使、KNH CEOが出席する、非常に盛大な式典となりました。
本セレモニーはケニア国内の複数メディアでも取り上げられ、本プロジェクトへの期待の高さがうかがえました。

オープニングセレモニー右より、KNH CEO, ケニア保健省副大臣、松浦大使、松本教授、関様(オリンパス)

当日は、

  • Dr. Ouma Oluga(ケニア保健副大臣)
  • 松浦博司 在ケニア日本国大使
  • Richard Lesiyampe ケニヤッタ国立病院 CEO

の各氏からスピーチがあり、ケニアの医療向上のために本プロジェクトが重要な位置づけにあることが強調されました。
さらに、長崎大学からは松本桂太郎教授が出席し、学長からの祝辞を代読しました。

副大臣自ら臨席したことは、
「ケニア政府が本プロジェクトを国家レベルの優先課題として重視している」
ことを象徴する出来事でした。

ケニア保健省副大臣よりスピーチ
集合写真、長崎大学関係者、オリンパス関係者、AAHD関係者

会場は、ケニアの医療を前進させるための期待と熱意に満ちあふれていました。


ケニアの医療現場に寄り添う、実践的トレーニング

本研修は、長崎大学病院チームと長崎大学ケニア拠点(熱研)チームの完全連携により実施されました。

講師として参加したメンバーは以下の通りです:

  • 医師5名
    (松本教授〔呼吸器外科〕、竹本医師・本田医師〔呼吸器内科〕、田中教授〔総合感染症科〕、増田医師)
  • 看護師1名(石川看護師)
  • 臨床工学技士2名(林技師長、野田技師)
ケニア気管支鏡プロジェクト日本チーム(長崎大学、オリンパス、AAHD)集合写真

研修全体の企画・調整・現場運営は、
長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点の齊藤准教授・彦根助教、および現地スタッフが中心となって担当しました。

研修の柱は以下の3つです

  1. EBUS-TBNA / EBUS-GS の手技指導
  2. 内視鏡看護ケアの実践トレーニング
  3. 機器メンテナンスとトラブルシューティング

EBUSは肺がん診断を大きく変える可能性を持つ技術であり、ケニアにおける導入効果は非常に大きいと期待されています。


3日間で7症例を指導 ― “本物の現場で学ぶ研修”

竹本医師・本田医師の指導のもと、
KNHの呼吸器内科医5名に加え、近隣病院の医師3名、さらに看護師・臨床工学技士が参加しました。

重症例が多いケニアでは、日本では珍しい症例も多く、極めて実践的な学びとなりました。
丁寧で的確な指導により、参加したケニアの医師たちは確実に技術を吸収し、日々成長を遂げていました。

本田医師よりEBUS指導風景
検体処理指導風景

オリンパス・AAHDとの強力なパートナーシップ

本プロジェクトは、

  • オリンパス社による機材提供・技術サポート
  • AA Health Dynamics(AAHD)による教育動画制作・現地運営支援

という強力な支援のもと実施されています。

現場での実技映像は記録され、KNH自身が研修を継続できるよう教材化が進んでおり、トレーナー養成(ToT)を通じた持続可能な研修体制の構築が前進しています。

ケニアでも実践可能な気管支鏡洗浄のマニュアル動画撮影風景(AAHD)

限られた資源でも成り立つ気管支鏡診療体制を

1,800床を誇るケニヤッタ国立病院ですが、機器不足やメンテナンスの課題が大きく、継続的な教育体制の整備が求められています。

今回の研修では、

  • 限られた資源でも持続可能な診療体制を作ること
  • ケニアの現場に適した教育体制を構築すること

をテーマに、長崎大学ケニア拠点が現地と協働して取り組みました。

今後は、この成功モデルをケニア全土、さらにはアフリカ諸国へ段階的に展開していく計画です。


長崎大学の継続的コミットメント

長崎大学は独自予算も活用し、

  • 日本国内で使用されなくなった気管支鏡のケニア再活用
  • シミュレーターを用いた教育体制の構築

など、長期的な視点で支援を続けています。

これにより、KNHが自立して研修を運営し、周辺病院への技術波及が期待されています。

研修終了後、全体写真、日本人専門家はプレゼントされたケニア民族衣装をまとって。

おわりに

ケニアの医療従事者の情熱と学ぶ姿勢は非常に高く、日本側チームにとっても大きな刺激となりました。
本プロジェクトはまだ始まったばかりですが、
長崎大学とケニア拠点(熱研)は、現地と共に歩みながら、アフリカの肺がん診断体制を変えていく覚悟で取り組んでいます。

最後に、本オープニングセレモニーの開催にあたり多大なるご尽力を賜りました。在ケニア日本国大使館の能登様、ケニア保健省JICA専門家の駒澤専門家、長崎大学熱帯医学研究所ケニア拠点事務職員の吉野さん、に深く御礼申し上げます。