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研究課題 平成18年度

課題名:寄生虫の宿主適応機構の分子情報解明に基づく新しい治療戦略開発およびその寄生虫対策への応用に関する研究

研究の要約

アジアの寄生虫疾患制圧を目指して、アジア地域に蔓延する各種寄生虫の宿主適応機構を分子レベルで解析を進めた前年度の実績に基づき、18年度は症状発現、感染防御、治療標的などの問題解明にまで進めて着せ抽象のより効率的な予防・治療戦略の確立を汎太平洋規模の国際研究協力体制の構築を図りながら目指す。その結果得られるデータを総合して正確な流行把握や疾病対策法を強化して日本を含むアジア地域住民の健康福祉の向上を推進する。

研究の目的

アジア地域に蔓延している寄生虫症流行制圧はわが国の輸入感染症監視や渡航邦人の健康管理の寒天からわが国の厚生行政上重要な問題である。寄生虫症の発症や流行には複雑な要因が関与し疾病制圧に不可欠な医学生物学的情報が依然として未解明であるものも少なくない。特に寄生虫の宿主適応や宿主特異性の決定機構、発祥のメカニズム、感染防御機構とワクチン標的分子の探索、治療薬開発などは流行根絶のために解明が急務であり、さらに診断法や新しい疫学監視方法の開発など応用研究も推進しなくてはならない。本研究では主にアジア地域の寄生虫を対象として、その宿主適応機構に関わる寄生虫及び宿主の責任分子探索に関する最近の研究成果をさらに進捗発展させるとともに、流行現場での制圧プログラムへの応用を国際協力体制下に進めることを目的とする。

研究の特色

寄生虫感染では、宿主・寄生体相互作用に基づいて防御免疫、寄生適応、病態発現などが決定され、そこで機能する寄生虫側と宿主側分子の同定と解析が予防・治療に直結する情報を提供する。マラリアではワクチン開発による流行制圧が課題であるが、欧米の研究室がアフリカでの疾病制圧に集中している一方、アジアに特徴的な三日熱マラリアの伝播阻止ワクチンの開発が手がけられており、新規標的分子の同定と効率的な蛋白合成系の確立及びその野外試験が進められている。また、アジア・環太平洋地域マラリア原虫に見られるクロロキン耐性遺伝子やワクチン標的分子の遺伝子多型解析から原虫の宿主適応のための分子進化を追跡するユニークな情報についてもわが国から発信している。蠕虫感染では日本住血吸虫ワクチン標的分子の検討とその野外試験を中国と共同で行うなど、わが国ではアジアの住血球虫に的を絞った研究が展開されてきた。ユニークな研究としては、住決吸虫感染による汗腺維症発症誘導分子の同定を試み、発病阻止ワクチンに予防応用するアプローチもある。フィールド研究としては寄生虫の遺伝子解析を基にした分子疫学研究進展しており、前述のマラリア原虫の多型遺伝子解析から島嶼マラリアの分子進化を考察する研究や赤痢アメーバ多型遺伝子のアジア地域内の地理分布情報から汗腺地の特定などが可能になりつつある。治療薬開発研究としては安全で有効な治療薬の開発が望まれていた鞭毛類原虫、特に取り派のソーマ症について、TAOを治療標的とした極めて効果の高い新規薬剤が日本の研究グループによって得られつつあるし、プラジカンテルにかわる住血吸虫治療薬開発も活発である。このようにアジアの寄生虫を対象とした病態解明、ワクチン、治療薬、寄生虫または宿主の標的分子探索が本研究班のユニークなアプローチを通じて進むことになり、日本からの寄生虫症制圧に向けた情報発信として国際的に大きな期待が寄せられている。

研究の現況

ワクチン標的分子研究:マラリア、住血吸虫
特性:アジアの寄生虫に特化

三日熱マラリアのPvs25を標的とした電場阻止ワクチンでは原虫の株間権威を克服する画期的な成績が得られている。熱帯熱マラリアの赤内型原虫を標的としたワクチンでは抗原分子の遺伝的多型が問題となるが、野外分離株の遺伝子多型を簡便に判定する方法を確立してその地理分布を明らかにしてワクチン開発戦略の取り込む事を行った。また、参加ストレスにさらされる血管内寄生の成立に働いていると思われるマラリア原虫や住血吸虫ノレドックス機構を解析し、その機能解析を行ってきた。日本住血虫ワクチンでもパラミオシンやカルパインなどが実験室内試験ではWHO基準をクリアする結果を示し、野外で大型家畜動物でも試験を進めた結果一定の防御効果を観察した。ワクチン開発研究に関連してコレラワクチン標的分子を小麦胚芽の無細胞システムで合成する系を開発しており従来しばしば困難であったワクチン分子のリコンビナント蛋白の作成効率が改善できた。トリパノソーマ科原虫に固有の呼吸代謝系を標的とした新規治療薬開発も手がけ哺乳類宿主には存在しないシアン耐性酸化酵素(TAO)を阻害する治療薬アスコフラノンの効果を証明した。同罪は家畜動物でも著効を示し、実際の流行対策に有望な武器であることを示した。その後の研究で従来は有効な駆虫薬が得られなかったクリプトスポリジウムにも効果のあることを証明した。病態解析のために腸管寄生虫寄生のとき宿主消化管粘膜の免疫病理学的解析を行った。寄生虫と媒介節足動物の相互作用を検討しマラリアのハマダラカ!の適応機構を遺伝子ノックダウンの系で研究を進めている。これらの新知見を流行現場での対策に応用するための応用研究も進めており、住血吸虫やマラリアのワクチン分子に対する血清疫学研究、非観血的免疫診断法開発、新規PCR診断法などを流行の現場で検証してきた。

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