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研究課題 平成19年度

課題名:寄生虫疾患の病態解明及びその予防・治療をめざした研究

研究の要約

アジア地域は多様な地理環境と多様な民族により構成されているが、東南アジアを中心に熱帯地域が広がっている。これらの地域ではいまだに寄生虫感染症の患者が多数存在し、住民の健康に重大な影響を与えているばかりではなく、社会経済的な影響も大きい。これら主要な寄生虫疾患の制圧を目指した新たな治療・予防法の開発を最終目標として、医科学からの基礎研究を推進する。
対象となる疾患は以下のものである。

  1. マラリア
  2. 住血吸虫症
  3. フィラリア症
  4. 住血原虫症(トリパノソーマ、リーシュマニア症など)
  5. 新興・再興感染症(腸管寄生原虫症、腸管寄生ぜん虫症、エキノコックス症、人獣共通感染症など)
  6. 媒介昆虫領域

上記の対象疾患の制圧に資する学術的な知見を得るために以下のようなアプローチで多様な研究を展開する。

a) 保有宿主や媒介動物を含めた感染動態や伝播経路に関わる基礎研究
b) 病原体の寄生適応の分子メカニズム
c) ヒトの防御免疫および病態生理

研究の目的

アジアに拡がる寄生虫疾患に関する基礎研究を推進し、その抑圧、予防、治療に資する革新的な知見を集積することを目的にしている。

多くの寄生虫疾患は「見捨てられた病気」として分類され、途上国や研究環境の貧弱な地域で流行したくさんの命が奪われ、あるいは脅かされ続けている。この分野に光をあて、現地の研究者も含めて新しくより効率的な制圧法を開発することは日本や欧米先進国の役割である。

本研究課題を推進することにより、アジア地域の研究者を巻き込んだ共同研究を活性化することが可能となる。また、寄生虫疾患という環境に密着した感染症に関する研究に日本やアジア地域の若手研究者が参加することで、新たな医科学領域の後継者を育成することが可能となる。

研究の特色

国内の当該分野の第一線の研究者がすべて分担研究者として参加し、各研究分野における最新の情報を交換し、国内外の若手研究者の育成をはかる組織となっている所が最も特色的である。非常に限られた予算の中で、この研究組織でしかなし得ない学術レベルの高さと活力を有した研究活動を可能としており、その根本には、常にこの領域をリードしている米国の研究者との交流が大きな力として存在している。また、日米医学協力研究会の他のパネル特に免疫や遺伝疫学、他の感染症などとの情報交換も今後の発展に大きく貢献するものと思われる。

研究の現況

国内では、新興再興感染症研究ネットワークが、平成17年度より文科省のプロジェクトとして開始し、北海道大獣医学部、東京大医科研、大阪大微研、長崎大熱研の4大学を中心として、アジア地域に北京、バンコク、ハノイの3ヶ所の海外拠点を設置して、流行地に常駐する研究者を中心とした本格的な感染症研究が始まっている。対象疾患には、マラリア、人獣共通感染症、媒介動物など寄生虫疾患も含まれている。国外では米国CDC及びNIHによる世界的な感染症研究ネットワークが機能しており、特にNIHの熱帯感染症研究センターや、NIAID、ICTDRなどの拠点やプロジェクトを利用した流行地の研究者との2国間共同研究が盛んに推進され、多くの新知見とそれによる医薬品開発が進んでいる。また、英国やEC(欧州機構)でも同様の取組が英国 MRC(Medical Research Council)、ウエルカム財団、パスツール研究所を始めとして数多くの拠点を介して強力に進められ、特にアフリカ地域の課題であるマラリア、 AIDS、TB対策の他、見捨てられた病気であるトリパノソーマ症や住血吸虫症研究に力が注がれている。

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