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相手国機関とのネットワークの構築

相手国拠点機関の選定理由

ベトナム・カンホア省保健局マラリアコントロールセンター研究部とオランダーベトナム医学委員会(MCNV)は、カンフー・コミューンにおいて1993年から19年間に亘り、住民約3000人(主として少数民族)を対象としてマラリア対策とマラリア調査を行ってきた。ところがコントロールの推進にもかかわらず、2003 年からはヒトの罹患率は減少する傾向が認められる一方、蚊の原虫保有率は減少せず却って上昇するという乖離現象を認めた。この現象の背後にあるメカニズムを明らかにし、マラリア対策をさらに徹底するための、分子生物学に強い共同研究のパートナーを積極的に求めており、今回、日本側コーディネーターとの共同研究に合意することとなった。本地域は長年にわたる調査の結果、全世帯の位置と全住民が登録され、これまでのマラリア罹患の記録が保管されている。また、蚊のサンプリングと住民の血液採取もベトナム側が全面的に行うことが出来る。さらには、昆虫学的にも考えられる限りの調査がなされており、多量のデータと経験が蓄積されている。また、オランダのMCNVは意思決定が速く、応答が良好で、ヨーロッパにも研究ネットワークを維持しており、西欧の研究者との連絡も密である。以上より、サルマラリアを共同で調査する機関としては考えられる最大限の魅力を持つ。

準備状況

すでに、日本側のマラリア学者、文化人類学者と霊長類学学者が研究調査の実施可能性を評価するためにベトナムを訪問し、ベトナム側研究者とともに予備調査を行った。サルマラリア原虫のヒトへの感染を確認し、本年に入って増加している傾向を観察している。文化人類学者はベトナムの民俗学者とともに住民のマラリアに対する意識調査を実施し、霊長類学者は野生サルを追跡し糞の採取を行った。この費用は長崎大学熱帯医学研究所の共同研究の予算を用いた。国際霊長類学会が本年9月京都で開かれた際に、霊長類学者と本申請に関わる研究者を日本およびベトナムから招へいしてシンポジウムを開催し、プロジェクトの初期段階の進捗状況と今後の展望について、共同研究者間で意見交換を行った。その後、マシャンとグエン博士は長崎大熱研を訪問し、さらに詳細な計画を立てた。ゆえに、準備状況は完全に整っている。

ベトナム側はカンホア省保健局の研究部門がマラリア調査を実施するように組織の編成をしている。これまで、主としてEUとMCNVの資金で調査が行われてきたが、現在それらによる支援は終了した。さらなる研究資金の確保のために、ヨーロッパやベトナムの学術振興機関を含めた種々の団体へ研究費申請を行っている。研究体制および研究の推進状況により、ベトナム国立マラリア寄生虫学昆虫学研究所との学術協定締結も視野に入れる。

研究協力体制の構築

2009年の8月9日にサルマラリアに関する共同研究の実施に合意をして以来、ベトナム側拠点も日本側拠点の長崎大熱研も独自の資金で、ソフト・アライアンスの関係でサンプル採取・解析を行ってきた。その結果、サルマラリアがカンホア地区の住民に広く流行していると言う興味深いデータが得られ、さらに研究を発展させるためには、より学際的な研究組織を構築する必要があると認識した。

ベトナム側はカンホア地区の住民情報、蚊の情報を豊富に有する。一方、日本側は分子生物学・マラリア免疫に関して強い専門家を中心メンバーに有し、かつ、森林環境評価、文化人類学、霊長類学のフィールド調査に強い専門家を加えた。日本からはこれらのフィールド研究者がベトナムを訪問し、ベトナム側研究者と共同で調査を行い、得られたサンプルを日本の分子生物学に強い研究者が詳細に解析する。その際には、ベトナム側若手研究者を中心に日本に招へいし、技術移転も行う。得られたデータを全員で共有し、解析、発表できるよう両方向に情報が流れる体制を整える。前述したように、本事業が終了後もマラリアコントロールと言う次のステップがあるため、構築する日本・ベトナム共同研究チームは、継続して共同研究体制を保持し、定期的に合同セミナーを開催するとともに、研究を継続する研究資金を積極的に獲得する努力を続ける。

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