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研究交流計画の概要

共同研究・研究者交流

初年度に、環境、ヒトとサルの行動、媒介蚊分布、サルマラリア原虫分布の調査を開始し、次年度から調査を継続するとともに、感染源の評価とサルマラリア感染の特徴を明らかにすることを中心に事業を進める。最終年度には、蓄積した原虫サンプルを集団遺伝学的に解析することにより、サルマラリア伝播の動態を明らかにするとともに、住民の生活に組み込みやすいサルマラリア感染予防手法を検討する。日本・ベトナムの研究者はすでに、10 年にわたり小規模な共同研究を行ってきたが、本事業のように本格的な学際的共同研究に展開するにあたり、今まで以上の緊密な連携関係・研究者交流が要求される。日本側マラリア研究者、昆虫学者、霊長類学者、人類学者、森林生態学者が、ベトナムのカンホア省カンフー・コミューンにおいてベトナム側研究者とともに調査・研究を行い、ベトナム側マラリア研究者、昆虫学者が日本の研究所に滞在し、分子生物学的な解析手法を用いてサンプルの解析を日本側研究者とともに行うことを予定する。これらにより、日本・ベトナムの研究者間のパートナーシップがより強化されることが予想される。

セミナー等学術会合の開催

電子メールやチャット機能を利用したIT 設備による情報の交換と共有を頻繁に行い、初年度は長崎にて、次年度はベトナムにて合同国際セミナーを開催し、両国の研究参加者が参加発表を行う。最終年度には、長崎で国際シンポジウムを開き、調査研究の成果を発表すると同時に、今後の研究の展開に関する意見交換を行う。

平成23年度研究交流計画概要

(1)共同研究

環境、ヒトとサルの行動、媒介蚊分布、サルマラリア原虫分布の調査を開始する。

  1. カンフー・コミューンの森林利用状況、蚊の繁殖する水場についての環境調査に着手する。
  2. カンフー・コミューン住民の行動調査を行う。特に、森林資源利用の頻度の高い家族を数家族選択し、家族全体のマラリアの罹患調査を行う。比較のために同コミューン内の森林利用をしない家族全員の罹患調査をする。
  3. 野生サルの分布と行動調査を行い、野生サルの生息地域を明らかにする。
  4. 実験的条件で糞から原虫を検出する方法を確立し、ベトナムの野生サルおよびペットサルの糞からの原虫検出に応用し、サルにおけるマラリア流行地域を明らかにする。
  5. 蚊を採集し、サルマラリアを検出し、サルマラリア感染蚊の存在地域を明らかにする。
  6. 環境およびヒトの行動情報、サルと蚊の間においてサルマラリアの流行が成立している地域情報を総括し、感染のリスクアセスメントを行う。


野生サルが出没する焼き畑、尾根に森、斜面にバナナ、トウモロコシが見える


Malaria station 2Fバルコニー、採取した薬草類を住民の治療師と検討している

(2)セミナー

  1. 国内セミナーの開催

    分担研究課題の計画と進展の確認および領域推進のすり合わせのため、獨協医科大学の主催で2011年7月に国内セミナーを開催する。

  2. 国際シンポジウムの開催

    分担研究課題の成果発表を行い、議論を深化することを目的として、ベトナム・ニャチャン市でベトナム・カンホア省保健局研究部カンフーマラリア研究部の主催で2012年3月に国際シンポジウムを開催する。

    申請時にはスリランカのマラリア調査に対しては研究者交流を予定していた。その後、日本とスリランカ双方の研究者が積極的に共同研究実施を主眼としたシンポジウムの開催を企画した。マラリア伝播の研究にとって好機であるので、スリランカの霊長類の調査地域を視察するとともに、スリジャヤワルデネプラ大学と「アジアの霊長類、マラリアそしてヒトに関する総合的研究」のタイトルでシンポジウムをスリジャヤワルデネプラ大学において2011年6月に開催する。スリランカは南アジアに位置するため、スリランカで得られる情報やデータはベトナムにおける調査研究にとって非常に有用である。本シンポジウムは、本申請のベトナム・カンフー地域の研究調査をアジア地域に拡大する第一歩であるとともにベトナムにおける研究調査を強化し、新たな研究調査課題が生じることが期待される。

    また、本シンポジウムに付随して総括会議を開催する。シンポジウムでの分担研究者の発表に基づき、事業全体としての達成度を総括するとともに、次年度以降の事業推進方針について議論を行う。

(3)研究者交流(共同研究、セミナー以外の交流)

異なる地域におけるサルマラリア流行の現状と、ベトナムにおけるサルマラリア流行の状態を比較検討することにより、マラリア伝播環境の変容と人獣共通感染性マラリアの出現の理解を深化させるために、スリランカのスリジャヤワルデネプラ大学社会人類学部社会人類学教室、同大学医学部寄生虫学教室、および同大学理学部動物学教室を訪問しマラリアに関する将来の共同研究の可能性を検討する。

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