研究・社会貢献
急性発熱患者検体を採取し、ウイルス遺伝子、ウイルス血漿、抗体活性の解析を行い、ベトナム全土のデング熱流行における背景因子の解明、デング熱の重症化の原因の解明を目標としています。
ベトナム南部におけるデング熱患者数の季節変動について、雨量・気温等との相関を調査しています。得られた情報とともにデング熱流行メカニズムをより明らかにし、将来の流行予測につなげることを目標としています。
中部ベトナムにおける重症肺炎、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪の住民ベースの疾病負荷を推定しています。
ライノウイルス、RSウイルス、新興ウイルスの役割および重症肺炎、喘息および慢性閉塞性肺疾患増悪のリスク因子を検討しています。
※コホート研究とは…病気の要因と発症の関連を調べるために、特定のグループ(=コホート)の健康状態の変化を追跡する研究
野生動物の体内に潜んでいる病原体を解析し、ヒトや他の動物への感染のリスクなどの検証することを目標としています。
人間にはない未知の病原体とコウモリが、共生している可能性があります。2000年以降にアジアで大流行したSARSやニパウイルスは、コウモリが自然宿主として注目されています。
コウモリ種は全哺乳類の約2割を占め全世界に分布し、ベトナムにも食虫コウモリやフルーツコウモリなど、様々なコウモリが生息しています。ベトナム拠点では北部の洞窟から、南部のソックチャン(Soc
Trang)省にあるコウモリが集まる寺など、全土で捕獲したコウモリの血液や尿の採取・解析を行い、これまで、ニパウイルスの近縁ウイルスの存在や、新種のαヘルペスウイルスなどを発見しています。
アジア諸国での下痢症病原体のトレンド解明を目的に調査を進めています。
下痢症を引き起こす微生物の遺伝学的な特徴・変遷を明らかにし、流行の要因を探ることを目標としています。
そのために、
1)腸管病原細菌感染症の発生動向調査と比較ゲノム解析
2)ビブリオ属細菌の世界流行に寄与する因子の同定と機能解析
3)下痢症患者におけるノロウイルスおよびロタウイルスの分子疫学的解析
を行っています。
2020年1月のベトナムにおけるCOVID-19感染第1例確認以来、NIHEと協力して臨床検体の採取、保存、血清疫学解析、分子疫学解析を実施する一方、横断的研究及び拠点活用研究に供与する検体情報を共同研究者に共有し、調査・研究データを継続的に蓄積しています。
感染者の免疫応答の網羅的な状況の把握、種々のウイルス遺伝子検出、抗体検出、患者の重症化を促進しうる他の呼吸器感染症やその他の環境因子を研究期間中に明らかにすることを目標としています。
交差免疫調査やワクチン接種者の免疫応答調査、罹患後追跡調査等を通して、ベトナムにおけるCOVID-19の初期の低流行とその後の流行の要因を解明することを目標としています。
ベトナム拠点では、長崎大学がベトナムで活動を行っている感染症研究について皆さまへ分かりやすくお伝えしたいとの思いから、市民公開講座を2008年から毎年実施しています。
これまでに、「ベトナム駐在における感染症対策」などの駐在邦人向けの感染症に関する講義や「蚊と蚊がもたらす病気について知ろう」というテーマで小中学生向けの実習などを行ってきました。
2019年には、日本人学校に通う生徒や保護者を対象に、「子供の病気と予防接種ができること」というテーマでWHOベトナムの専門家をお招きし、講演をしていただきました。
講演後はベトナムでの予防接種の接種時期や必要性について、活発な質疑応答があり、保護者の皆様の関心の高さもうかがえる有意義な講演会となりました。
2020年1月、新型コロナウイルス感染症が世界各地で流行し始めた際には、NIHEの要請に応じ、診断試薬の提供と診断法に関する技術協力を行いました。
また、ベトナムと共同で、感染の有無を迅速に調べられる検査キットの開発に成功しました。この検査キットは社会実装され、ベトナムにおける新型コロナウイルス感染症検査体制の確立と感染拡大防止に大きく貢献しました。
ジカ熱は、ジカウイルスに感染することで引き起こされる、蚊媒介性の感染症です。妊婦が感染した場合は胎児が先天性小頭症を発症することがあり、2015年・016年に南米で大流行をおこした際には国際的に要注意の感染症として注目を集めました。
ウ
熱帯医学研究所とNIHEの研究グループは、ベトナムでのフィールド調査でジカウイルスの流行状況を明らかにするとともに、南米で流行したジカウイルスがベトナムに侵入した時期の推定に成功しました。これにより、ベトナムへのジカウイルスの伝播様式及び世界的な流行動態の一端が明らかとなりました。
本研究の成果に基づき、ジカ熱の伝播が拡大する要因および対策における課題を抽出し、感染症対策の提言を考案、ベトナム保健省やWHOに情報を提供しました。
中部ベトナムにおけるコホート研究により、肺炎球菌、RSウイルス、インフルエンザウイルスが肺炎の重要な病原体であることを解明しました。吉田レイミント教授は本成果をもとに、肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV)導入をベトナム保健省に推薦しました。
また、ニャチャン市で実施した出生コホート研究の結果、調査対象の妊婦の3割が風疹抗体を持たないことが明らかになりました。その後、ベトナム保健省は、本研究の成果を参考に、風疹ワクチンの定期接種を導入しています。