新型コロナワクチンの有効性に関する研究
〜国内多施設共同症例対照研究〜

Vaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2 (VERSUS) Study、第13報
長崎大学熱帯医学研究所
掲載日:2026年7月21日
要約

 長崎大学熱帯医学研究所を中心とする研究チームは、全国の医療機関(病院および診療所)と協力し、2021年7月1日より新型コロナワクチンの有効性を評価する研究を実施しており、2024年10月からはインフルエンザワクチンの有効性の評価も開始した。本報告(第13報)では、2025年4月1日から2025年9月30日の調査結果をもとに、JN.1系統対応1価ワクチンの発症予防および入院予防の長期的な有効性を報告する。
 発症予防の有効性の評価には、18歳以上の3,411名(うち検査陽性者959名)を解析対象とした。対象者の年齢中央値は51歳で、65歳以上が32.6%、男性が46.6%、基礎疾患を有する者が33.7%であった。18歳以上において、JN.1系統対応1価ワクチン接種なしと比較したJN.1系統対応1価ワクチン接種(接種後7日以上経過)の発症予防の有効性は27.2%(95%信頼区間:−13.4~53.3%)であり、65歳以上に限定した解析では、有効性は26.0%(95%信頼区間:−33.3~59.0%)であった。
 入院予防の有効性の評価には、60歳以上の746名(うち検査陽性者106名)を解析対象とした。対象者の年齢中央値は84歳で、男性が58.3%、基礎疾患を有する者が80.6%、高齢者施設の入所者が29.9%であった。60歳以上において、JN.1系統対応1価ワクチン接種なしと比較したJN.1系統対応1価ワクチン接種(接種後7日以上経過)の入院予防の有効性は72.1%(95%信頼区間:10.7~91.3%)であった。
 本解析では、JN.1系統対応1価ワクチンの発症予防の有効性は、以前報告した2024年10月から2025年4月までの報告と比較して低下していた。一方で、入院予防の有効性については、接種後、時間が経過した時期においても一定程度維持されている可能性が示された。国内では夏季と冬季で流行が繰り返し認められており、接種時期の最適化は今後も重要な課題である。本解析結果は、現行の10月から翌年3月にかけての接種スケジュールにおいて、夏季流行期まで入院予防の有効性が一定程度維持される可能性を示唆する一方、発症予防の有効性は限定的となる可能性を示している。接種時期や接種対象について継続的に検討する必要がある。

背景

 2021年7月1日より、長崎大学熱帯医学研究所を中心とした研究チームは、全国の医療機関(病院および診療所)と協力し、検査陰性デザイン(test-negative design:TND)を用いた症例対照研究により (1, 2)、新型コロナワクチンの有効性を経時的に評価するサーベイランス研究(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2 [VERSUS] study)を実施している (3)。これまでに、国内で導入されている新型コロナワクチンの発症予防・入院予防・重症化予防の有効性を評価し、その結果を公表してきた。また、2024年10月1日からは、新型コロナワクチンに加えて、インフルエンザワクチンの有効性評価も開始している。
 国内では、2024–2025年シーズンにJN.1系統対応1価ワクチンが使用された。同シーズンの10月から翌年4月における有効性は一定程度確認された (4)。一方で、国内では夏季にも流行が認められており、接種後時間が経過した時期まで有効性が維持されるかは十分に明らかではない。
 本報告では、2025年4月1日から2025年9月30日までの結果をもとに、JN.1系統対応1価ワクチンの発症予防および入院予防の長期的な有効性を評価した。

方法

1) 発症予防の有効性に関する研究

 2025年4月1日から2025年9月30日までの期間に、全国8都県(東京都、神奈川県、千葉県、愛知県、奈良県、高知県、福岡県、長崎県)に所在する計13か所の病院または診療所を、新型コロナウイルス感染症が疑われる症状(注1)で受診し、新型コロナウイルス検査を受けた18歳以上の患者を対象とした。なお、受診時に新型コロナワクチンの接種歴が不明の場合は、登録対象としていない。対象者からは、患者基本情報、症状、新型コロナワクチン接種歴(接種の有無、接種回数、接種日、接種したワクチンの種類)、新型コロナウイルス検査結果に関する情報を収集した。新型コロナウイルスの検査法として、核酸増幅法、抗原定量検査、抗原定性検査を対象とした。新型コロナウイルス検査陽性者を症例群、陰性者を対照群とする検査陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を実施した(図1)。

図 1. 発症予防の有効性に関する研究の研究デザイン
(検査陰性デザインを用いた症例対照研究)

 本報告では、JN.1系統対応1価ワクチンの有効性を評価することを目的としており、JN.1系統対応1価ワクチンを接種していない場合と比較した、JN.1系統対応1価ワクチンの有効性(接種後7日以上経過)を算出した。JN.1系統対応1価ワクチンの接種の有無が不明な場合はワクチンの有効性の解析から除外した。発症から15日以降に検査を受けた患者および同一患者の複数回登録は、定義(注2)に基づいて除外した。また、ワクチン接種に対する態度が交絡となる可能性を考慮し、インフルエンザ陽性者は対照群から除外した (5, 6)。
 検査結果(陽性・陰性)に接種歴を含む種々の要因が与える影響を、混合効果ロジスティック回帰モデルを構築し、調整オッズ比と95%信頼区間を算出して評価した。新型コロナワクチンの有効性は、(1-調整オッズ比)×100%で算出した。回帰モデルには、検査結果(陽性・陰性)を被説明変数とし、説明変数としては、新型コロナワクチン接種歴、年齢、性別、基礎疾患(注3)の有無、検査が実施されたカレンダー週、医療従事者であるかどうか、新型コロナウイルス感染症の既往歴を固定効果(fixed effect)とし、検査を実施した医療機関を変量効果(random effect)として組み込んだ。
 本研究は、長崎大学熱帯医学研究所の倫理委員会で中央一括倫理審査を受け、承認された後に実施された(承認番号: 240919316 「呼吸器感染症ワクチンの有効性研究」)。


2) 入院予防の有効性に関する研究

 2025年4月1日から2025年9月30日の期間に、全国8都府県(東京都、神奈川県、千葉県、京都府、奈良県、高知県、福岡県、沖縄県)に所在する計10か所の病院において、急性呼吸器感染症が疑われる症状(発熱、咳、喀痰、胸膜痛、呼吸苦、頻呼吸、急性疾患による酸素投与)のうち2つ以上の症状がある、または新たに出現した肺炎像が認められ、入院した60歳以上の患者を対象とした。なお、入院時の新型コロナワクチンの接種歴が不明の場合は、登録対象としていない。対象者からは、患者基本情報、症状、新型コロナワクチン接種歴(接種の有無、接種回数、接種日、接種したワクチンの種類)、新型コロナウイルス検査結果、入院時のバイタルサインなどの情報を収集した。新型コロナウイルスの検査法として、核酸増幅法、抗原定量検査、抗原定性検査を対象とした。新型コロナウイルス検査陽性者を症例群、陰性者を対照群とした検査陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行った(図2)。検査陽性群と陰性群で入院時の重症度が異なる可能性を考慮し、市中肺炎の重症度分類に用いられるCURB-65スコア(注4) (7)を用いて入院時の重症度の評価も行った。

図 2. 入院予防の有効性に関する研究の研究デザイン
(検査陰性デザインを用いた症例対照研究)

 本報告では、発症予防の有効性の研究と同様に、JN.1系統対応1価ワクチンの有効性の評価を目的としており、ワクチンの有効性として、JN.1系統対応1価ワクチンを接種していない場合と比較したJN.1系統対応1価ワクチンの有効性を算出した。また、発症から15日以降に検査を受けた患者および、14日以内に同一患者が複数回入院していた場合は除外した。加えて、ワクチン接種に対する態度が交絡となる可能性を考慮し、インフルエンザ陽性者は対照群から除外した (5, 6)。
 新型コロナウイルス検査結果(陽性・陰性)に、新型コロナワクチン接種歴を含む種々の要因が与える影響を、混合効果ロジスティック回帰モデルを構築し、調整オッズ比と95%信頼区間を算出して評価した。新型コロナワクチンの有効性は、(1-調整オッズ比)×100%で算出した。回帰モデルには、検査結果 (陽性・陰性)を被説明変数とし、新型コロナワクチン接種歴、年齢、性別、基礎疾患(注3)の有無、入院月を固定効果(fixed effect)とし、入院医療機関を変量効果(random effect)として組み込んだ。
 本研究は、長崎大学熱帯医学研究所の倫理委員会で中央一括倫理審査を受け、承認された後に実施された(承認番号: 240919316 「呼吸器感染症ワクチンの有効性研究」)。

結果

1) 発症予防の有効性に関する研究

 全国8都県に所在する計13か所の医療機関において、2025年4月1日から2025年9月30日までの期間に、新型コロナウイルス感染症が疑われる症状(注1)があり、新型コロナウイルス検査を受けた18歳以上の患者3,564例が登録された。このうち、同一患者(注2)の重複と判定された44例、インフルエンザ陽性の47例、発症日から15日以降に検査を受けた62例を除外し、合計3,411名を解析対象とした(図3)。このうち、新型コロナウイルス検査陽性者は959名(28.1%)であった。

図3. 研究フローチャート

 解析対象者の基本情報および新型コロナワクチン接種歴を表1に示す。年齢中央値(四分位範囲)は51歳(32~71歳)であり、男性は1,591名(46.6%)、1,148名(33.7%)に基礎疾患(注3)があった。また、医療従事者は332名(9.7%)であった。解析対象者のうち、JN.1系統対応1価ワクチン接種あり(接種後7日以上経過)は183名(5.4%)、JN.1系統対応1価ワクチン未接種は2,019名(59.2%)、新型コロナワクチン接種歴はあるが、JN.1系統対応1価ワクチン接種の有無が不明であったものは1,209名(35.4%)であった。

表 1: 発症予防の有効性に関する研究における解析対象者(18歳以上)の基本情報と新型コロナワクチン接種歴
全体
(n=3,411)
検査陽性
(n=959)
検査陰性
(n=2,452)
年齢 n. (%)
18-29歳 679 (19.9)171 (17.8)508 (20.7)
30-39歳 520 (15.2)152 (15.8)368 (15.0)
40-49歳 411 (12.0)135 (14.1)276 (11.3)
50-59歳 492 (14.4)177 (18.5)315 (12.8)
60-69歳 401 (11.8)129 (13.5)272 (11.1)
70-79歳 452 (13.3)124 (12.9)328 (13.4)
80-89歳 340 (10.0)56 (5.8)284 (11.6)
90歳以上 116 (3.4)15 (1.6)101 (4.1)
年齢 n. (%)
18-64歳 2,300 (67.4)701 (73.1)1,599 (65.2)
65歳以上 1,111 (32.6)258 (26.9)853 (34.8)
性別 n. (%)
男性 1,591 (46.6)427 (44.5)1,164 (47.5)
女性 1,820 (53.4)532 (55.5)1,288 (52.5)
高齢者施設の入所 n. (%) 84 (2.5)9 (0.9)75 (3.1)
基礎疾患の有無 n. (%)
1,148 (33.7)230 (24.0)918 (37.4)
2,054 (60.2)659 (68.7)1,395 (56.9)
不明 209 (6.1)70 (7.3)139 (5.7)
基礎疾患詳細 n. (%)
慢性心疾患 365 (10.7)71 (7.4)294 (12.0)
慢性呼吸器疾患 393 (11.5)69 (7.2)324 (13.2)
肥満 83 (2.4)20 (2.1)63 (2.6)
悪性腫瘍 286 (8.4)47 (4.9)239 (9.7)
糖尿病 342 (10.0)68 (7.1)274 (11.2)
慢性腎疾患 148 (4.3)22 (2.3)126 (5.1)
透析 31 (0.9)5 (0.5)26 (1.1)
肝硬変 10 (0.3)1 (0.1)9 (0.4)
免疫抑制剤の使用 86 (2.5)19 (2.0)67 (2.7)
妊娠 21 (0.6)7 (0.7)14 (0.6)
新型コロナウイルス感染症の既往 n. (%) 1,111 (32.6)275 (28.7)836 (34.1)
医療従事者 n. (%) 332 (9.7)87 (9.1)245 (10.0)
新型コロナウイルス感染症患者との接触歴 n. (%)
あり 394 (11.6)245 (25.5)149 (6.1)
なし 2,521 (73.9)557 (58.1)1,964 (80.1)
不明 496 (14.5)157 (16.4)339 (13.8)
検査方法 n. (%)
核酸増幅法検査 81 (2.4)17 (1.8)64 (2.6)
抗原定量検査 1,369 (40.1)291 (30.3)1,078 (44.0)
抗原定性検査 1,961 (57.5)651 (67.9)1,310 (53.4)
検査月 n. (%)
2025年4月 510 (15.0)72 (7.5)438 (17.9)
2025年5月 440 (12.9)37 (3.9)403 (16.4)
2025年6月 418 (12.3)59 (6.2)359 (14.6)
2025年7月 562 (16.5)189 (19.7)373 (15.2)
2025年8月 846 (24.8)372 (38.8)474 (19.3)
2025年9月 635 (18.6)230 (24.0)405 (16.5)
新型コロナワクチン接種歴 n. (%)
JN.1系統対応1価ワクチン接種あり
(接種後7日未満)
000
JN.1系統対応1価ワクチン接種あり
(接種後7日以上)
183 (5.4)31 (3.2)152 (6.2)
JN.1系統対応1価ワクチン接種なし 2,019 (59.2)563 (58.7)1,456 (59.4)
JN.1系統対応1価ワクチン接種の有無不明a 1,209 (35.4)365 (38.1)844 (34.4)

a 新型コロナワクチン接種歴はあるが、JN.1系統対応1価ワクチンの接種の有無がわからないもの

 18歳以上において、JN.1系統対応1価ワクチン接種なしと比較したJN.1系統対応1価ワクチンの発症予防の有効性(接種後7日以上経過)は、27.2%(95%信頼区間:−13.4~53.3%)であった。JN.1系統対応1価ワクチン接種者のうち接種日が確認できた者において、接種から発症までの日数の中央値(四分位範囲)は211日(166~258日)であり、検査陽性者では264日(224~310日)、検査陰性者では205日(156~244日)であった。65歳以上に限定した解析では、有効性は26.0%(95%信頼区間:−33.3~59.0%)であった。接種から発症までの日数の中央値(四分位範囲)は225日(180~267日)であり、検査陽性者では263日(226~310日)、検査陰性者では214.5日(174~257.5日)であった。

2) 入院予防の有効性に関する研究

 全国8都府県に所在する10か所の医療機関において、2025年4月1日から2025年9月30日の期間に、急性呼吸器感染症が疑われる症状(発熱、咳、喀痰、胸膜痛、呼吸苦、頻呼吸、急性疾患による酸素投与)のうち2つ以上の症状がある、または新たに出現した肺炎像が認められ入院した60歳以上の患者757名が登録された。登録された患者のうち、インフルエンザ陽性の7名、発症日から15日以降に検査を受けた3名、入院後3日以上経過して検査を受けた1名を除外し、合計746名を解析対象者とした(図4)。14日以内に同一患者が再入院した例はなかった。このうち、新型コロナウイルス検査陽性者は106名(14.2%)であった。

図4. 研究フローチャート

 解析対象者の基本情報および新型コロナワクチン接種歴を表2に示す。年齢中央値(四分位範囲)は84歳(76~90歳)、男性は435名(58.3%)、601名(80.6%)に基礎疾患(注3)があり、高齢者施設入所者は223名(29.9%)であった。市中肺炎の重症度分類に用いられるCURB-65スコアに基づく重症度が一般的に入院治療が検討される中等症以上と判定された者は、解析対象者のうち637名(85.4%)、検査陽性者では96名(90.6%)、検査陰性者では541名(84.5%)であり、中等症以上の重症度の割合は、検査陰性者と比較して検査陽性者でやや高かった。入院時に呼吸不全を伴った者は528名(70.8%)、入院時肺炎があった者は604名(81.0%)であった。新型コロナワクチン接種歴に関して、66名 (8.8%)がJN.1系統対応1価ワクチンを接種しており(接種後7日以上経過)、288名(38.6%)がJN.1系統対応1価ワクチンを接種していなかった。392名(52.5%)は新型コロナワクチン接種歴はあるが、JN.1系統対応1価ワクチンを接種したかどうかは不明であった。

表 2: 入院予防の有効性に関する研究における解析対象者(60歳以上)の基本情報と新型コロナワクチン接種歴
全体
(n=746)
検査陽性
(n=106)
検査陰性
(n=640)
年齢 n. (%)
60-69歳 77 (10.3)7 (6.6)70 (10.9)
70-79歳 205 (27.5)29 (27.4)176 (27.5)
80-89歳 277 (37.1)40 (37.7)237 (37.0)
90歳以上 187 (25.1)30 (28.3)157 (24.5)
性別 n. (%)
男性 435 (58.3)76 (71.7)359 (56.1)
女性 311 (41.7)30 (28.3)281 (43.9)
基礎疾患の有無 n. (%)
601 (80.6)79 (74.5)522 (81.6)
144 (19.3)27 (25.5)117 (18.3)
不明 1 (0.1)01 (0.2)
基礎疾患詳細 n. (%)
慢性心疾患 328 (44.0)48 (45.3)280 (43.8)
慢性呼吸器疾患 189 (25.3)24 (22.6)165 (25.8)
肥満 3 (0.4)1 (0.9)2 (0.3)
悪性腫瘍 179 (24.0)17 (16.0)162 (25.3)
糖尿病 158 (21.2)25 (23.6)133 (20.8)
慢性腎疾患 85 (11.4)16 (15.1)69 (10.8)
透析 13 (1.7)2 (1.9)11 (1.7)
肝硬変 11 (1.5)2 (1.9)9 (1.4)
免疫抑制剤の使用 18 (2.4)2 (1.9)16 (2.5)
高齢者施設の入所 n. (%)
223 (29.9)23 (21.7)200 (31.3)
521 (69.8)83 (78.3)438 (68.4)
不明 2 (0.3)02 (0.3)
喫煙歴あり n. (%)
喫煙歴なし 283 (37.9)42 (39.6)241 (37.7)
過去に喫煙歴あり 235 (31.5)38 (35.8)197 (30.8)
現在喫煙している 55 (7.4)8 (7.5)47 (7.3)
不明 173 (23.2)18 (17.0)155 (24.2)
新型コロナウイルス検査方法 n. (%)
核酸増幅法検査 76 (10.2)8 (7.5)68 (10.6)
抗原定量検査 486 (65.1)74 (69.8)412 (64.4)
抗原定性検査 184 (24.7)24 (22.6)160 (25.0)
入院時のCURB-65スコア n. (%)
0-1点(軽症) 100 (13.4)8 (7.5)92 (14.4)
2点以上(中等症・重症) 637 (85.4)96 (90.6)541 (84.5)
不明 9 (1.2)2 (1.9)7 (1.1)
入院時呼吸不全あり n. (%) 528 (70.8)74 (69.8)454 (70.9)
入院時肺炎像あり n. (%) 604 (81.0)67 (63.2)537 (83.9)
入院月 n. (%)
2025年4月 154 (20.6)16 (15.1)138 (21.6)
2025年5月 140 (18.8)5 (4.7)135 (21.1)
2025年6月 130 (17.4)8 (7.5)122 (19.1)
2025年7月 112 (15.0)26 (24.5)86 (13.4)
2025年8月 111 (14.9)29 (27.4)82 (12.8)
2025年9月 99 (13.3)22 (20.8)77 (12.0)
新型コロナワクチン接種歴 n. (%)
JN.1系統対応1価ワクチン接種あり
(接種後7日未満)
000
JN.1系統対応1価ワクチン接種あり
(接種後7日以上)
66 (8.8)4 (3.8)62 (9.7)
JN.1系統対応1価ワクチン接種なし 288 (38.6)53 (50.0)235 (36.7)
JN.1系統対応1価ワクチン接種の有無不明a 392 (52.5)49 (46.2)343 (53.6)

a 新型コロナワクチン接種歴はあるが、JN.1系統対応1価ワクチンの接種の有無がわからないもの

 60歳以上において、JN.1系統対応1価ワクチンを接種していない場合と比較した、JN.1系統対応1価ワクチン接種(接種後7日以上経過)の入院予防の有効性は72.1%(95%信頼区間:10.7~91.3%)であった。JN.1系統対応1価ワクチン接種者のうち接種日が確認できた者において、接種から発症までの日数の中央値(四分位範囲)は178日(143~226日)であり、検査陽性者では175日(104.5~253日)、検査陰性者では178日(143~226日)であった。

考察

 本報告では、国内におけるJN.1系統対応1価ワクチンの長期的な有効性を評価するために、2025年4月1日から2025年9月30日までのデータを用いて、発症予防および入院予防の長期的な有効性を評価した。本期間は、国内においてJN.1系統のXECおよびNB.1.8.1が主流となった時期であった (8)。18歳以上を対象とした発症予防の有効性は、JN.1系統対応1価ワクチン接種なしと比較して、接種後7日以上で27.2%(95%信頼区間:−13.4~53.3%)であり、以前に報告した2024年10月1日から2025年4月までの期間における有効性(55.1%、95%信頼区間:35.0~69.0%) (4)より低下していた(図5)。一方、60歳以上を対象とした入院予防の有効性は72.1%(95%信頼区間:10.7~91.3%)であり、以前の報告における有効性(61.8%、95%信頼区間:21.5~81.4%) (4)と同程度であった(図6)。なお、入院予防の有効性の解析では、発症予防の有効性の解析と比べてJN.1系統対応1価ワクチン接種から発症までの期間の中央値が約1か月短かったため、この違いについても結果の解釈に際して考慮する必要がある。本解析の結果から、JN.1系統対応1価ワクチンの発症予防の有効性が接種後の時間経過とともに減弱する可能性がある一方で、入院予防の有効性は一定程度維持される可能性が示唆された。

図5. JN.1系統対応1価ワクチンの発症予防の
有効性:2024–2025年秋冬期と2025年春夏期の比較

図6. JN.1系統対応1価ワクチンの入院予防の
有効性:2024–2025年秋冬期と2025年春夏期の比較

 海外においても、JN.1系統対応1価ワクチンの長期的な有効性を検討した研究は限られている。米国の研究では、救急外来受診予防の有効性および入院または死亡予防の有効性が、接種後の時間経過とともに徐々に低下する可能性が示されている (9)。一方で、本研究では、接種後、時間が経過した後も、入院予防の有効性は一定程度維持されている可能性が示された。流行状況、ワクチン接種や感染による免疫獲得状況、医療体制は国や地域によって異なるため、海外研究との直接比較には慎重な解釈が必要である。

 現在、国内の新型コロナワクチンの定期接種は、定期接種対象者に対して年1回、10月から翌年3月にかけて実施されている。一方で、国内では夏季と冬季の流行が繰り返し認められており、ワクチンの有効性が時間経過とともに減弱することを考慮すると、接種時期の最適化は重要な検討課題である。本研究の結果から、現行の接種スケジュールにおいても、高齢者における入院予防に関しては、夏季流行期まで一定程度維持される可能性が示された。一方で、発症予防については限定的である可能性があり、今後の接種時期の検討においては、予防すべきアウトカムを明確にしたうえで議論する必要がある。また、冬季の接種ではインフルエンザワクチンとの同時接種が可能であり、被接種者および医療者双方への負担軽減につながるという利点もある。

 本解析は、2025年夏のNB.1.8.1の流行期を含んでいる。2024–2025年冬季には、国内ではXEC、KP.3系統を含むJN.1系統が主に流行しており、この時期におけるJN.1系統対応1価ワクチンの国内の有効性は一定程度確認されていた (4)。一方、2025年春以降に国内で拡大したNB.1.8.1は、JN.1系統であるXDVの子孫系統であり、Ala435SerおよびLys478Ileなどの変異を有することから、免疫逃避能を有する可能性が示唆されている (10)。一方で、JN.1系統対応1価mRNAワクチン接種後の血清を用いた中和試験では、XEC、LP.8.1、NB.1.8.1に対する50%中和抗体価は同程度であったという報告もある (11)。検索した範囲では、NB.1.8.1流行期におけるJN.1系統対応1価ワクチンの有効性(vaccine effectiveness)を評価した研究は確認できておらず、本解析結果は、NB.1.8.1が流行した時期を含むワクチン有効性を検討するうえで、参考となる情報と考えられる。

制限

 本報告にはいくつかの制限がある。1つ目は、サンプルサイズが限られていることである。そのため、95%信頼区間が広く、点推定値のみで結果を解釈することには注意が必要である。2つ目は、ワクチン接種歴の誤分類の可能性である。現在、日本では医療機関において受診者のワクチン接種歴を正確な記録として確認できるシステムは整備されていない。そのため、本報告における接種歴は主に患者または患者家族からの申告に基づいており、誤分類の可能性は否定できない。3つ目は、選択バイアスが生じている可能性である。上記のワクチン接種歴の収集の限界により、新型コロナワクチン接種歴が確認できた患者のみを解析対象としており、このことが結果に影響している可能性がある。4つ目は、新型コロナウイルス検査結果の誤分類の可能性である。本報告では、実臨床に即して、核酸増幅法検査より感度が低いとされる抗原定性検査も研究対象に含めている。そのため、偽陰性が一定数含まれる可能性があり、ワクチンの有効性の推定に影響した可能性がある。

注釈

(注釈1)発熱(37.5℃以上)、咳、倦怠感、呼吸困難、筋肉痛、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、下痢、味覚障害、嗅覚障害

(注釈2)同一患者の扱いは、以下の定義を使用した。

  • 陽性結果が出る前、または陽性結果が出た後3週間以内に採取した陰性検査は、偽陰性の可能性があるため除外する。
  • 同じ発症日に対して行われた陰性の検査は除外する。
  • 前回の陰性判定から7日以内に実施された陰性の検査は除外する。
  • 各人については、無作為に選んだ3回までの検査を含める。
  • 90日以内に複数回陽性になった場合は、初めての陽性のみを組み込む。

(注釈3)慢性心疾患、慢性呼吸器疾患、肥満(BMI≧30)、悪性腫瘍(固形癌または血液腫瘍)、糖尿病、慢性腎不全、透析、肝硬変、免疫抑制薬の使用、妊娠

(注釈4)CURB-65スコア(7)

意識レベルの異常、尿素窒素値 >20mg/dL、呼吸回数≧30回/分、収縮期血圧 <90mmHg、 年齢65歳以上をそれぞれ1点とし、合計点が0~1点の場合を軽症、2点の場合を中等症、 3点以上の場合を重症と定義する。

国内の臨床現場では、呼吸状態を評価する際に、呼吸回数ではなく、 酸素飽和度(SpO2)や酸素投与の必要性を使用することが多いため、 本研究では呼吸回数≧30回/分に加えて、SpO2<90%または酸素投与が必要な場合の いずれかを満たせば1点とした。

研究チーム
長崎大学熱帯医学研究所 呼吸器ワクチン疫学分野

前田 遥、森本 浩之輔、増田 真吾

長崎大学熱帯医学研究所 ケニア拠点

齊藤 信夫

慶応義塾大学大学院 経営管理研究科

五十嵐 中

東京大学大学院 薬学系研究科 医療政策・公衆衛生学

藤澤 あずさ

飯塚病院

的野 多加志

沖縄県立中部病院

喜舎場 朝雄

亀田総合病院

大澤 良介、細川 直登、中島 啓

KARADA内科クリニック福岡天神

沖中 友秀

川崎市立多摩病院

本橋 伊織

五本木クリニック

桑満 おさむ

市立奈良病院

森川 暢

社会医療法人春回会 井上病院

高木 理博、吉嶺 裕之、山下 嘉郎

仁さくらクリニック

大原 靖仁

近森病院

石田 正之

東京都立多摩総合医療センター

織田 錬太郎

奈良市立都祁診療所

西村 正大

虹が丘病院

寺田 真由美

早川内科医院

早川 友一郎

福岡青洲会病院

杉本 幸弘

みずほ通りクリニック

勅使河原 修

武蔵野徳洲会病院

淺見 貞晴、工藤 智史

洛和会音羽病院

井村 春樹

ロコクリニック中目黒

嘉村 洋志

浴風会病院

阿部 庸子、小竹 慶子、雨宮 志門

研究協力
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 感染症疫学センター

鈴木 基

研究資金

本研究は、厚生労働省委託事業「COVID-19をはじめとする呼吸器感染症に対する 予防接種の有効性と科学的知見の創出に関する調査研究事業」による支援を受けた。

利益相反の開示

長崎大学熱帯医学研究所呼吸器ワクチン疫学分野は、ファイザー社より本研究に関連のない研究助成金の受託および共同研究を行っている。

前田遥はMeiji Seikaファルマ社と本研究とは関係のない共同研究を行っている。また、武田薬品工業株式会社からコンサルト料を受けている。

前田遥、五十嵐中はモデルナ社より講演料およびコンサルタント料を受けている。

森本浩之輔はモデルナ社よりコンサルタント料を受けている。

森本浩之輔は、ファイザー社、武田薬品工業株式会社より講演料を受けている。

参考資料
  • Hahne S. Vaccination Programmes: Routledge; 2022.

  • World Health Organization. Evaluation of COVID-19 vaccine effectiveness. Available from: https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-vaccine_effectiveness-measurement-2021.1 .

  • VERSUS Group. VERSUS (Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2) Available from: http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/versus/ .

  • Maeda H, Saito N, Igarashi A, Ishida M, Terada M, Osawa R, et al. Effectiveness of JN.1-adapted COVID-19 vaccine against medically attended SARS-CoV-2 infection and COVID-19 hospitalization in adults in Japan, from October 2024 to April 2025: VERSUS. Vaccine. 2026;80:128544.

  • World Health Organization. Evaluation of COVID-19 vaccine effectiveness in a changing landscape of COVID-19 epidemiology and vaccination. Available from: https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-vaccine_effectiveness-VE_evaluations-2022.1 .

  • Payne AB, Ciesla AA, Rowley EAK, Weber ZA, Reese SE, Ong TC, et al. Impact of accounting for correlation between COVID-19 and influenza vaccination in a COVID-19 vaccine effectiveness evaluation using a test-negative design. Vaccine. 2023;41(51):7581-6.

  • Barlow G, Nathwani D, Davey P. The CURB65 pneumonia severity score outperforms generic sepsis and early warning scores in predicting mortality in community-acquired pneumonia. Thorax. 2007;62(3):253-9.

  • 国立健康危機管理研究機構. SARS-CoV-2変異株について(過去のデータ). Available from: https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/covid-19/past-variants/index.html

  • Du Y, Paritala S, Xu Y, Maloney P, Lin DY. Durability of 2024-2025 COVID-19 Vaccines Against JN.1 Subvariants. JAMA Intern Med. 2025;185(12):1501-4.

  • Guo C, Yu Y, Liu J, Jian F, Yang S, Song W, et al. Antigenic and virological characteristics of SARS-CoV-2 variants BA.3.2, XFG, and NB.1.8.1. Lancet Infect Dis. 2025;25(7):e374-e7.

  • Uriu K, Okumura K, Uwamino Y, Chen L, Tolentino JE, Asakura H, et al. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 NB.1.8.1 variant. Lancet Infect Dis. 2025;25(8):e443.

問い合わせ先

長崎大学熱帯医学研究所 呼吸器ワクチン疫学分野:前田 遥
mharuka*nagasaki-u.ac.jp (*を@にして送信して下さい)