60歳以上を対象に、検査陰性デザインを用いて2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの発症予防の有効性を評価した。2025年10月1日から2026年3月31日の1,036エピソードを研究対象とした。2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの発症予防の有効性は72.7%(95%信頼区間:41.4–87.3)であった。LP.8.1対応ワクチンに限定した解析では72.9%(95%信頼区間:6.2–92.2)、XEC対応ワクチンに限定した解析では70.4%(95%信頼区間:24.3–88.4)、XEC対応自己増幅型mRNAワクチンに限定した解析では76.0%(95%信頼区間:28.4–92.0)であり、点推定値は概ね同様であった。以上より、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンは、60歳以上の成人において発症予防に有効であったと推定された。
2025年1月から本研究グループは、検査陰性デザイン(test-negative design:TND)を用いた症例対照研究により (1, 2)、新型コロナワクチンの有効性を経時的に評価する研究(Evaluation of Vaccine Effectiveness in Older Adults Against Viral Infections:EVOLVE Study)を開始した (3)。現在までに、2024–2025のJN.1対応新型コロナmRNAワクチンの発症予防の有効性を評価し、その結果を公表した (3, 4)。
新型コロナウイルスは変異を続けており、流行株に応じて、各シーズンに使用するワクチンの抗原組成が決定されている。国内では、2025–2026年シーズンには、LP.8.1対応ワクチンおよびXEC対応ワクチンが使用され、mRNA、組換えタンパク、自己増幅型mRNAのプラットフォームからなる計5種類の新型コロナワクチンが使用可能であった(表1)。定期接種の対象者は、65歳以上の者および60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器に機能障害があり、身の回りの生活が極端に制限される者、またはヒト免疫不全ウイルス (HIV)による免疫機能障害を有する者とされている (5)。
| 企業名 | ワクチンプラットフォーム | 対応株 |
|---|---|---|
| ファイザー株式会社 | mRNA | オミクロン株LP.8.1 |
| モデルナ・ジャパン株式会社 | mRNA | オミクロン株LP.8.1 |
| 武田薬品工業株式会社 | 組換えタンパク | オミクロン株LP.8.1 |
| Meiji Seikaファルマ株式会社 | 自己増幅型mRNA | オミクロン株XEC |
| 第一三共株式会社 | mRNA | オミクロン株XEC |
本報告では、2025年10月1日から2026年3月31日の調査結果をもとに、60歳以上における2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの発症予防の有効性を評価することを目的とした。
2025年10月1日から2026年3月31日までの期間に、全国12都道県(北海道、埼玉県、茨城県、東京都、神奈川県、千葉県、静岡県、石川県、福井県、香川県、福岡県、長崎県)の18医療機関を、新型コロナウイルス感染症が疑われる症状 (注1)で受診し、新型コロナウイルス検査を受けた60歳以上を対象とした。なお、受診時に新型コロナワクチンの接種歴に関する情報が得られなかった場合は、研究対象としていない。研究対象者からは、患者基本情報、症状、新型コロナワクチン接種歴 (接種の有無、接種回数、接種日、接種したワクチンの種類)、新型コロナウイルス検査結果に関する情報を収集した。新型コロナウイルスの検査には、核酸増幅法検査、抗原定量検査、および抗原定性検査を用いた。新型コロナウイルス検査陽性者を症例、陰性者を対照とする検査陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を実施した。
本報告では、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの有効性を評価することを目的としており、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンを接種していない場合と比較した、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの有効性 (接種後7日以上経過)を算出した。接種後7日未満は別カテゴリーとして回帰モデルに含めたが、本報告では接種後7日以上のワクチン有効性のみを示した。2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン全体の有効性に加え、LP.8.1対応ワクチン、XEC対応ワクチン、XEC対応自己増幅型mRNAワクチンに限定した解析も実施した。発症から15日以降に検査を受けたエピソードおよび同一患者の複数回エピソードについては、定義 (注2)に基づいて除外した。また、ワクチン接種に対する態度が交絡となる可能性を考慮し、インフルエンザ陽性エピソードは対照群から除外した (6, 7)。
検査結果 (陽性・陰性)に新型コロナワクチン接種歴を含む種々の要因が与える影響を、混合効果ロジスティック回帰モデルを構築して調整オッズ比と95%信頼区間を算出して評価した。新型コロナワクチンの有効性は、(1-調整オッズ比)×100%で算出した。回帰モデルには、検査結果 (陽性・陰性)を被説明変数とし、説明変数としては、新型コロナワクチン接種歴、年齢、性別、基礎疾患(注3)の有無、検査実施カレンダー月、新型コロナウイルス感染症の既往、高齢者施設入所の有無を固定効果(fixed effect)として組み込み、検査を実施した医療機関を変量効果(random effect)とした。
本研究は、長崎大学熱帯医学研究所の倫理委員会で中央一括での倫理審査を受け、承認された後に実施された(承認番号: 241219323 「新型コロナワクチンの有効性研究」)。
合計1,235エピソードが登録され、そのうち同一患者(注2)の複数エピソードと判定された34エピソード、インフルエンザ検査陽性の161エピソード、発症から15日以降に検査を受けた4エピソードを除外し、1,036エピソードを研究対象とした。このうち新型コロナウイルス陽性は205(19.8%)であった。さらに、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの接種歴の有無が確認できなかった149エピソードを除外し、887エピソードをワクチンの有効性の解析対象とした(図1)。
研究対象者の背景を表2に示す。年齢中央値は74歳(四分位範囲:66–84)、女性54.8%、介護施設入所18.0%、基礎疾患あり42.6%であった。2025–2026年シーズンのワクチンを接種(接種後7日以上経過)があったのは165(15.9%)で、LP.8.1対応ワクチン50(4.8%)、XEC対応ワクチン109(10.5%)(うち自己増幅型mRNA:90)、いずれか不明であるが2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンを接種したものが6エピソードであった(表2)。
| 全体 (n=1,036) |
検査陽性 (n=205) |
検査陰性 (n=831) |
|
|---|---|---|---|
| 年齢 n. (%) | |||
| 60-69歳 | 366 (35.3) | 84 (41.0) | 282 (33.9) |
| 70-79歳 | 292 (28.2) | 60 (29.3) | 232 (27.9) |
| 80-89歳 | 257 (24.8) | 44 (21.5) | 213 (25.6) |
| 90歳以上 | 121 (11.7) | 17 (8.3) | 104 (12.5) |
| 性別 n. (%) | |||
| 男性 | 468 (45.2) | 87 (42.4) | 381 (45.8) |
| 女性 | 568 (54.8) | 118 (57.6) | 450 (54.2) |
| 高齢者施設の入所n. (%) | 186 (18.0) | 26 (12.7) | 160 (19.3) |
| 基礎疾患の有無 n. (%) | |||
| 有 | 441 (42.6) | 66 (32.2) | 375 (45.1) |
| 無 | 517 (49.9) | 126 (61.5) | 391 (47.1) |
| 不明 | 78 (7.5) | 13 (6.3) | 65 (7.8) |
| 基礎疾患詳細 n. (%) | |||
| 慢性心疾患 | 238 (23.0) | 34 (16.6) | 204 (24.5) |
| 慢性呼吸器疾患 | 78 (7.5) | 12 (5.9) | 66 (7.9) |
| 肥満 | 8 (0.8) | 1 (0.5) | 7 (0.8) |
| 悪性腫瘍 | 53 (5.1) | 8 (3.9) | 45 (5.4) |
| 糖尿病 | 172 (16.6) | 24 (11.7) | 148 (17.8) |
| 慢性腎疾患 | 58 (5.6) | 5 (2.4) | 53 (6.4) |
| 透析 | 9 (0.9) | 0 | 9 (1.1) |
| 肝硬変 | 2 (0.2) | 0 | 2 (0.2) |
| 免疫抑制剤の使用 | 9 (0.9) | 1 (0.5) | 8 (1.0) |
| 新型コロナウイルス感染症の既往 n. (%) | 241 (23.3) | 30 (14.6) | 211 (25.4) |
| 新型コロナウイルス検査方法 n. (%) | |||
| 核酸増幅法検査 | 137 (13.2) | 40 (19.5) | 97 (11.7) |
| 抗原定量検査 | 13 (1.3) | 2 (1.0) | 11 (1.3) |
| 抗原定性検査 | 886 (85.5) | 163 (79.5) | 723 (87.0) |
| 新型コロナワクチン接種歴 n. (%) | |||
| 2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種あり(接種後7日未満) | 13 (1.3) | 1 (0.5) | 12 (1.4) |
| 2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種あり(接種後7日以上) | 165 (15.9) | 9 (4.4) | 156 (18.8) |
| LP.8.1対応ワクチン | 50 (4.8) | 3 (1.5) | 47 (5.7) |
| XEC対応ワクチン | 109 (10.5) | 6 (2.9) | 103 (12.4) |
| XEC対応自己増幅型mRNAワクチン | 90 (8.7) | 4 (2.0) | 86 (10.3) |
| いずれか不明 | 6 (0.6) | 0 | 6 (0.7) |
| 2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種なし | 709 (68.4) | 155 (75.6) | 554 (66.7) |
| 2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種の有無不明a | 149 (14.4) | 40 (19.5) | 109 (13.1) |
a 新型コロナワクチン接種はあるが、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの接種の有無がわからないもの
新型コロナウイルス検査陽性において、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種歴あり(接種後7日以上経過)は9、未接種は155であった。検査陰性においては、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種歴あり(接種後7日以上経過)は156、未接種は554であった(図2)。
60歳以上において、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン未接種と比較した2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの有効性 (接種後7日以上経過)は、72.7% (95%信頼区間:41.4–87.3)であった (図2)。LP.8.1対応ワクチンに限定した解析では、有効性は72.9% (95%信頼区間:6.2–92.2)、XEC対応ワクチンに限定した解析では、有効性は70.4% (95%信頼区間:24.3–88.4)、自己増幅型mRNAワクチンに限定した解析では、有効性は76.0% (95%信頼区間:28.4–92.0)であり、ほぼ同等であった。
60歳以上の成人において、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンは、発症予防に対して72.7% (95%信頼区間:41.4–87.3)の有効性を示した。また、LP.8.1対応ワクチン、XEC対応ワクチンの有効性は概ね同様であった。
本研究の推定値は、米国で報告された2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの有効性と比べて高かった。65歳以上の医療機関を受診した新型コロナウイルス感染症に対する2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン(LP.8.1対応ワクチンおよびJN.1対応ワクチン)の有効性は48% (95%信頼区間:37–56) (8)、LP.8.1対応BNT162b2では54~57%(9)、LP.8.1対応mRNA-1283またはBNT162b2では41~42%と報告されている(10)(表3)。この違いは、流行変異株、ワクチンの種類、感染やこれまでのワクチン接種による免疫の違いなどが関与した可能性がある。加えて、日本では2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの接種率が米国より低いと考えられ(11)、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンの接種者と未接種者の感染予防行動に違いがあった可能性があり、これがワクチンの有効性を過大評価する方向に影響した可能性も考えられる。
| 国 | 研究対象の 新型コロナワクチン |
アウトカム | 年齢 | ワクチンの有効性 % (95%信頼区間) |
参考文献 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 2025–2026年シーズン (LP.8.1, XEC) |
症候性感染 | 60歳以上 | 72.7 (41.4–87.3) | 本研究 |
| 米国 | 2025–2026年シーズン (LP.8.1, JN.1) |
医療機関受診 | 65歳以上 | 48 (37–56) | 8 |
| 米国 | ファイザー社製 (LP.8.1) |
救急受診 | 18歳以上 (53.7%が65歳以上) |
57 (39–70) | 9 |
| 外来受診 | 54 (15–75) | ||||
| 米国 | モデルナ社製 (LP.8.1) |
医療機関受診 | 65歳以上 | 41.2 (36.2–45.8) | 10 |
| ファイザー社製 (LP.8.1) |
42.0 (35.0–48.3) |
研究期間中に同定された新型コロナウイルスの90%以上をNB.1.8.1が占めていた(12)。本研究では、LP.8.1対応ワクチンおよびXEC対応ワクチンのいずれについても有効性が推定された。中和抗体を評価した研究では、LP.8.1対応ワクチンおよびXEC対応ワクチンのいずれも、NB.1.8.1を含むJN.1系統に対して中和抗体が誘導されることが報告されており (13, 14)、本研究の結果はこれらの報告と整合していた。
本報告にはいくつかの限界がある。1つ目は、現時点ではサンプルサイズが極めて限定的であり、ワクチンの種類を限定した解析では、95%信頼区間が広いため注意が必要である。2つ目は、現在日本では医療機関において患者のワクチン接種歴を正確な記録として確認できるシステムは整備されていないため、接種歴は主に患者 (または患者家族)に対する問診で得られた記録に基づいており、思い出しバイアスの影響を否定できない。3つ目は、新型コロナウイルス検査結果について、偽陽性/偽陰性の可能性がある。特に本報告では実臨床に即して核酸増幅法検査より感度が低いとされる抗原定性検査も研究対象に含めているため、偽陰性が一定数含まれワクチンの有効性を過小評価している可能性がある (15)。4つ目は、ワクチンの有効性の解析には、2025–2026年シーズンの新型コロナワクチン接種の有無が確認できたエピソードのみを含めており、結果に影響している可能性がある。
本報告は2026年8月27日時点での暫定結果であり速報値であるが、公衆衛生学的に意義があると判断して公開した。
2025–2026年シーズンの新型コロナワクチンは、日本の60歳以上の成人において、発症予防に対して有効であったと推定された。LP.8.1対応ワクチンとXEC対応ワクチンの有効性の点推定値は概ね同様であった。特に高齢者では新型コロナウイルス感染症による疾病負荷が依然として大きいことから、新型コロナワクチンの継続的な接種が必要と考えられる。加えて、有効性を継続的に評価することが重要である。
前田 遥、森本 浩之輔
五十嵐 中、藤澤 あずさ
内藤 俊夫、齋田 瑞恵、内田 卓郎、仁科 翼
三井 慎也
一木 美英
駒﨑 敏昭
木田 聡
鈴木 研也
藤野 浩
小野江 為人
吉永 治彦
木村 晃朗
香西 博之
真崎 宏則
中井 義仁
佐藤 博紀
阿部 庸子、雨宮 志門、小竹慶子
石田 和也
石田 和也
今村 明、溝口綾子
天野 教之
南須原 宏城
本研究は、長崎大学とMeiji Seikaファルマ株式会社との共同研究として実施されており、同社から研究費の提供を受けている。
長崎大学熱帯医学研究所呼吸器ワクチン疫学分野は、ファイザー社より本研究に関連のない研究助成金の受託および共同研究を行っている。
前田遥はMeiji Seikaファルマ株式会社から講演料を受けており、武田薬品工業株式会社からコンサルタント料を受けている。
五十嵐中はモデルナ社より講演料およびコンサルタント料を受けている。
森本浩之輔は武田薬品工業株式会社より講演料を受けている。