国際保健学分野
国際保健学分野

平成21年度第1回国際連携セミナー


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開催: 平成21年6月4日 熱帯医学研究所 大会議室(坂本キャンパス)

講師: 小林敏明専門機関課課長補佐

演題: 3大感染症対策世界の潮流?世界基金の現状と課題


 2000年のG8九州・沖縄サミットで日本が提唱し、翌年のイタリアが議長国をつとめたジェノア・サミットで設立が合意されたエイズ・結核・マラリア対策基金(以下、世界基金:GFATM:The Global Fund to fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)の現状と課題、また、世界3大感染症対策の潮流も含めて小林敏明氏に講演していただいた。小林氏は外務省国際協力局で世界基金を担当し、また、世界基金理事国である日本政府の理事代理でもある。セミナー参加者は約60名であった。

■ 世界基金設立の流れとその活動と成果
1.日本は世界基金の「生みの親」1990年代、HIV/エイズを始めとする感染症に国際社会として取り組む必要性高まった。G8九州・沖縄サミットでサミット史上始めて感染症対策が重要課題の一つとして取り上げられた。これが契機なり、2002年1月ジュネーブで、世界基金はスイス国内法に基づく民間財団として設立されることになった。

2.三大感染症の脅威
 全世界でHIV/エイズ、結核、マラリアの三大感染症は毎年500万人の死者を出している。また、HIVでは3,300万人、結核では20億人の感染者がいると推定されている。毎年莫大な数の感染者が新規に増加している。三大感染症は途上国に住む人々にとって重大な健康問題であるばかりではなく、途上国における開発発展の阻害要因となっている。さらに、日本が推進する「人間の安全保障」への重大な脅威にもなっている。

3.世界基金の活動
 世界基金自体は事業を実施しない。開発途上国における三大感染症対策(関連する保護システム強化も含む)に対する案件を審査し、資金援助を行う。三大感染症対策への国際支援のうち、世界基金の支援の内訳はHIV/エイズに1/4、結核およびマラリアに2/3になる。世界基金は140か国の740案件に151 億ドルの資金援助を承認している。疾病別には世界基金の支援の約6割がHIV/エイズ向けである。地域別には世界基金の支援の約6割がサブサハラ・アフリカ向けである。

4.世界基金による支援の成果
 世界基金の支援により、200 万人が抗エイズ治療を受け、460万人がWHO推奨の結核治療を受け、7000万張りのマラリア予防用の長期残効型蚊帳が配布されている(2008年末現在)。世界基金の支援はこれまでに全世界で350万人の人々の命を救っている。

■ まとめ
 世界基金は、国際的に協調しながら感染症の予防、治療、ケアに取り組んでいる。その動向は今後の国際保健の大きく左右することになる。その意味でも、世界基金から目が離せない。


参加者からの質問
Q 日本での世界基金の知名度が低い。知名度を上げるには?
A 日本での感染症に対する関心が低いことも原因の一つかもしれない。セミナーや知的交流などの啓発活動を通じて知名度を上げていく努力をしたい。また、世界基金職員への(外務省ホームページ参照)日本人職員の積極的採用を働きかけていくことも重要だと考えている。

Q 基本11年、最大延長6年の援助期間に関して 支援終了後の治療のサポートはあるのか?
A 未来永劫ということはないが、事業の終了後,再び世界基金に申請(関連他事業として)することで事業の継続はありえる。

                                   


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