概要Outline

multiplex技術とは?

ここでは、抗体の検出を例に説明します。

直径 5.6μmほどの小さな球体(マイクロビーズと呼んでいます)に検出したい病原体の抗原を固定します。一つの病原体抗原に対し、特定の色のついたマイクロビーズを割り当て、固定します。つまり、一つの色のビーズに、一つの病原体抗原となり、病原体抗原とビーズの色は、1:1の対応になります。要するに、ビーズの色が解れば、その色に固定した病原体抗原の種類が特定できるようになります。

例えば、10種類の異なる病原体の抗原のそれぞれに、10種類の異なる色のマイクロビーズを割り当てたとします。それらのビーズを混ぜ合わせ、ヒト血清と反応させます。すると、抗原に血清中の抗体が反応します(抗体抗原反応)。

さらに蛍光をつけた抗ヒト抗体を反応させるとマイクロビーズに固定した抗原についたヒト血清中の抗体に、さらに蛍光を付けた抗体が結合します。

このような状態で、測定器に流して、測定します。測定器は2種類のレーザービームを持っており、一つは、マイクロビーズの色のを把握し、ビーズの数を数えます。もう一つのレーザービームは、蛍光度を測ります。つまり、何個のマイクロビーズを測定したのかが解ると共に、そのマイクロビーズに固定された抗原に反応した抗体がどのあるのかを蛍光度により判定することが可能となります。

10種類の場合は、10種類を一度に行うことが可能となります。このようにして、一括の診断が可能となります。

現在、100種類の異なる色のマイクロビーズが販売されていることから、理論上は、100種類の異なる抗原を一括に診断する事が可能となります。

 

※本研究では、Lumiex社の機器を用いて現在、顧みられない熱帯病の一括診断を開発しています。

 

研究の内容

 課題期間内に、multiplex解析法を各種熱帯感染症に応用するためのマイクロビーズへの抗原・抗体固定の手法を確立し、「顧みられない熱帯病」の一括診断用のmultiplex解析用マイクロビーズを作成する。さらには、ケニア中央医学研究所と長崎大学熱帯医学研究所ケニア教育研究拠点のフィールドにおいて、住民を対象とした熱帯感染症調査を実施し、開発した一括診断キットの評価を行う。

研究の意義

・政策的ニーズ
  アフリカにおける「顧みられない熱帯病」対策は、G8北海道洞爺湖サミットにおいても、重要課題とされている。その課題に対応するための基礎技術の開発を行う研究であり、本研究の成果が対象国の感染症対策の推進につながり、両国政府間の協力関係が強化されるものと期待できる。
・共同研究内容の先進性
  感染症の実態把握は、アフリカにおける疾病コントロールのために必要であるにもかかわらず、容易な手法がないが故、未だ不明な点が多い。本研究は、それを可能とする新しい技術を実態把握に用いるという先進性を有する。
・制度の付加価値
  本技術を現場に適用することにより、多くのアフリカ諸国の感染症対策の問題を解決する糸口を見つけることができることだけではなくアフリカにおける「顧みられない熱帯病(NTD)」の実態把握に関する国際標準への発展、さらには、国境を越えた地球規模の課題である感染症対策への展開が可能となる。
・過去の蓄積
  長崎大学熱帯医学研究所は、これまで、熱帯病研究機関として、多くの研究を重ねてきた。ケニアにおいては、ケニア中央医学研究所(KEMRI)創設当時から国際協力機構(JICA)を介した事業協力並びに、研究協力を継続している。2005年には、ナイロビ研究教育拠点の設置に関してKEMRIの間で共同研究実施の協定(MOU)の取り交わしを行い、大学より常駐研究者を数名派遣、バイオセーフティ・レベル3ラボによる研究事業の展開、西ケニアのフィールド在住の全住民5万5千人の登録と追跡調査を基盤とした疫学研究事業を展開している。

開発研究の工程

 

フィールドでの試験

 今回のプロジェクトで開発した技術は、ケニア共和国において我々が展開しているフィールドにおいて地域の感染率調査を行い、技術の評価を行うことを計画しています(2011年8月18日現在、進行中)。

 

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