日本脳炎について
1935年、日本でウィルスが発見されたので日本脳炎と名づけられたこの感染症は、日本では予防接種の普及、農薬散布によって媒介蚊の減少、生活様式の変化によって蚊に刺されなくなったことなどの理由で、1965年以来激減している。しかし、蚊が繁殖する水田が広がり、また、蛋白源のブタを養豚している地域が多く見られる南アジア(タイやベトナムなど)では、まだ日本脳炎が多く発生している。
日本脳炎の概要 |
兆 候 | 高熱、頭痛、意識障害 |
致命率 | 20〜50% |
後遺症 | 生存者の約半数(精神神経障書) |
病原体 | 日本脳炎ウィルス=フラビウィルス科、フラビウィルス属、蚊媒介性 |
増幅動物 | プタ、野鳥 |
媒 体 | コガ夕アカイエカ |
予防接種方法 |
1〜2週間の間に2回接種した後、約1年後に1回。それから3年位ごとにブースターを接種するとよい。副作用の出る確立は、0.43/l,000,000。 |
マレーシアにおける日本脳炎及びNipah Virusについて
昨年、9、10月頃ペラ州にて発生した病気の患者からは、日本脳炎が陽性と出ていた。罹患者主に中国系の成人で特に養豚関係者。その後、Negeri Sembilan のBukit Pelanduk で多数の患者が出たが、その患者の日本脳炎の抗体を調べてみると、あまり抗体ができてないことが分かった。今年3月になってマラや大学で1994年にオーストラリアで発見されたHendraに似ている新種ウィルスを発見。Nipah Virusと名づけられた。4月に入ってから患者数は激減している。調べた結果、今回のマレーシアにおける病気は、日本脳炎は一部で、ほとんどはこの新種ウィルス(Nipah Virus)の感染症(新興感染症)によるものと考えられる。
Nipah Virusの概要
|
症 状 |
発熱→頭痛→脳炎→髄膜炎 |
|
症状(日本脳炎の症状と似ている) |
感染経路 |
感染しているブタの分泌物や尿などに直接接触した場合や、傷口から感染すると考えられる。昨年10月発生以来病院関係者に患者が出ていないことから、人から人には感染しないと考えられる。症状が出たら早く対処することが必要。 |
質疑応答
日本脳炎に関連するもの
Q 日本脳炎の予防接種についてですが、上の子供は初めの2回は接種をしましたが、1年後の接種をしないで当地に来ました。もう4年が経ちました。下の子供は接種していません。どうしたらいいでしょうか?
A お二人とも、最初から接種した方が安全ですね。
Q 日本脳炎の予肪接種を3回まで済ましていますが、後は全く受けていません。免疫はあるのでしょうか?
A 時間が経つに従い、免疫力が下がってきます。3年以内であればブ―ス夕ーを受ければいいでしょう。3,4年以上経っている場合は、最初から接種した方がいいでしょう。
Q 日本脳炎は感染しても発病することは少ないと聞きました。大人もワクチンをした方がいいのでしょうか?
A 感染しても、ほとんどの人は脳までいきません。脳に至るケ―スは300人に1人の割合です。ウィルスが脳へ到達するまでににBlood Brain Barierというバリアがありますが、それが壊されて脳炎になるのです。誘因のーつは過労といわれていますので、過労しないように気をつけて下さい。老人がかかりやすいのは免疫力が下がるからです。大人も予防接種は大事です。
Nipah Virus に関連するもの
Q 新しいNipah Virus はどういう形で感染し、その予防措置はあるのでしょうか?
A ワクチンはありません。罹患しているブタの分泌物や尿などからウィルスが見つかっていますから、それら分泌物などに直接接触するとか傷口から感染すると思われます。今回、マレーシア政府がブ夕を処分したのは、感染源を絶つためには有効だったのではないでしょうか。
Q ブタ肉は食ベていいのでしょうか?
A ウィルスは熱をかければ死にますから、熱を充分に通したものは食べてもいいですが、途中で生肉に触る時、血液中にウィルスがないとは言えないので注意が必要でしょう。
Q Nipah Virus はブタの尿でも発見きれたということですが、養豚場から感染したブタの尿が川に流れ、その川の水が飲み水になるとすれば、ウィルスはどうなるのでしょうか?
A Nipah Virus については調査中なので確認できていませんが、恐らく水の中では生きられないと思います。日本脳炎のウィルスは蚊の体内で増殖しますが、外にでれば死滅してしまいます、石鹸などの活性剤には大変弱いものです。
Q 日本脳炎の予防接種はNipah Virus には効果がないのですか?
A 日本脳炎とNipah Virus は全く違うものです。
Q 豚以外他の動物が感染しているとか感染する可能性はどうでしょうか?
A これから調査を始めるようです。
Q Nipah Virus の増幅作用は?
A 全くわかりません。現在CDCが調査中です。
Fruit Bats(こうもり)など自然界も調べていますが、まだ出てきていません。
Q ブタからブタに感染するのですか?
A そうでしょうね。現在研究、調査中です。発見されて約1ヶ月ですが、人から人に感染した例はありません。風が吹いてウィルスがクアラルンプールに飛んできて...などのレベルでの心配はありません。
Q マレーシアでの日本脳炎、Nipah Virus は終息といっていいのでしょうか。他の地域に広がっていきそうでしょうか?
A ブタが大量に処分された地域では、かなり抑えられていると思います。他の地域については、現在、ブタのスクリーニング(検査)が継続中で、その結果に注意しないといけませんね。日本脳炎は、これからも発生することはあると思います。
その他(主にデング熱に関するもの)
Q 基本的な質問なんですが、蚊はどのくらいで繁殖するのでしょうか?
A 気温が高いと速く成長し、速く死にます。気温が低いとゆっくりと成長しますから、生きている期間が長くなります。約2週間でしょう。蚊は死ぬまで伝播カがあります。日本脳炎のウィルスが蚊の体内に入ってから繁殖し蚊の睡液に至って伝播力ができるまでに約1週間位かかります。
Q デング熱について、どういう注意をすベきでしょうか?
A ワクチンがありませんし、難しい問題です。予防としては、やはり露出部分を少なくするとかして、蚊にさされないようにすることでしょうね。罹患したら出血熱を避けるために早期にしかるべき医療機関で治療することだと思います。
Q セレンバンに住んでいます。月に1〜2回殺虫剤が散布されますが、人への害はないのでしょうか。また薬の効き目はどの程度でしょうか?
A 許可された殺虫剤でしょうから心配はないでしょう。効き日は窓を開ける回数なので一概には言えないでしょうが、数日間ではないでしょうか。
Q 蚊の活動時間などから、朝は6時半頃まで窓を開けないように、また夕方は早く窓を閉めるようにと言われましたが、どうなんでしょうか?
A デング熱を媒介する蚊は日中活動します。ネットに殺虫剤を練り込んだものなどがありますから、そんなものを利用するとか、ご自分で予防することが大切です。
新興.再興感染症について
(New Emerging and Re-emerging Communicable Disease)
今回新しく発見されたNipah Virusは新興感染症の一つだと言われているが、その新興感染症についての説明は次の通り。
世界における現在の死因の33%は感染症であるといわれている。その内、人から人に感染するものが65%、食べ物、水、土などから感染するものが22%、虫から感染するもの(日本脳炎など)がl3%、動物から感染するものが03%である。
新しい感染症は世界のいたる所で発生していて、過去20年の間に30種類ほどの新興感染症が発生している。1994年にオーストラリアで発生したHendraもその一つ。13頭の馬が感染死、3人の人間が感染し、内2名が死亡しました。1997年の香港でのインフルエンザも新興感染症である。
新興感染症が発生する原因は、
- 都市化
- 飛行機が発達し、世界中どこにでも行けるようになった。即ち、病気もすぐに入って来やすいということ
- 自然の開発が進んだことで病原菌に人間が近づいたこと
- 誤った安心感(水痘が全滅したこと、予防接種が盛んになったことなどから、感染症はなくなってきているんだという誤った安心感)
- 抗生物質の乱用、などがあげられる。
Home[Text Version]へ戻る