現在実施中
フィリピン
デング熱感染者では、幼若血小板 (Immature Platelet Fraction: IPF)が特異的に上昇していることを発見!!! 血小板減少機序の解明に貢献!!(2022年) 
長崎大学 熱帯医学研究所臨床感染症学教室(熱研内科)
安田 一行
(現:福島県立医科大学 総合内科・臨床感染症学講座 講師)
Unique characteristics of new complete blood count parameters, the Immature Platelet Fraction and the Immature Platelet Fraction Count, in dengue patients.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0258936
Yasuda I, Saito N et al
デング熱に感染すると、血小板減少がおこり重症化します。近年、幼若血小板 (Immature Platelet Fraction: IPF)の測定が可能となり、血小板減少をきたす様々な疾患の病態評価に使用されるようになりました。すなわち、血小板減少時にIPFがもし増加していれば「末梢での血小板消費の亢進」を、IPFがもし減少していれば「骨髄での血小板産生抑制」を示唆するとされます。今回我々は、デング熱患者におけるIPFを評価しました。フィリピンのマニラにあるサンラザロ病院に入院したデング熱患者152名と細菌感染症と診断された患者180名及び臨床的に細菌感染症と診断された患者274名の入院時と入院中のIPFを測定しました。入院時のIPFは、デング患者は細菌感染症患者より統計学的に有意に高く(中央値 3.7% vs 1.9%; p < 0.001)、また入院経過でのIPFは、第1~3病日ではデング熱患者と細菌感染症患者で差はありませんでしたが(中央値 1.9% vs 2.4%; p = 0.488)、デング熱患者で血小板減少が顕在化する第4~6病日ではデング熱患者でIPFが高いことを統計学的に明らかにしました(中央値 5.2% 対 2.2%; p <0.001)。

このことからデング熱患者の血小板減少は、末梢での血小板消費亢進の寄与が大きいことが示唆されました。IPFを使用してデング熱の血小板減少のメカニズムに迫ったのはこの研究が初めてです。デング熱患者でのIPFは、本研究で示されたように血小板減少の病態解明に役立つ他にも、重症化や血小板回復の予測などの臨床応用の可能性のある有意義なパラメーターと考えられます。
※本研究は長崎大学熱帯医学グローバルヘルス研究科の研究費で行われました。シスメックス社からの研究費助成を一部受けていますが、同社の研究プロセスへの関与は一切ありません。
フィリピンのサンラザロ病院におけるCOVID-19対応に関する
長崎大学熱帯医学研究所の協力体制について(2020年) 
長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学教室(熱研内科)
医員 鵜川 竜也
(元 長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科 戦略職員)
はじめに
サンラザロ病院は、フィリピンのマニラに位置する500床程度の規模の国立感染症専門病院である。頻度の高い疾患としては、デング熱、レプトスピラ症、ジフテリア、髄膜炎菌血症、腸チフス、麻疹、狂犬病などが挙げられ、近隣の、時には遠方の医療機関からも患者の紹介や搬送を受け入れている。スラム街があるトンド地区にも近い立地であり、貧困層の患者の割合が多く、慈善病院としての役割も併せ持っている。
長崎大学熱帯医学研究所は以前からサンラザロ病院と協力関係にあり、研究のフィールド、若手医師の熱帯病トレーニングの場として、同学から多くの研究者や臨床医が訪問している。特に近年では、サンラザロ病院の中に長崎大学オフィスを設置し、「フィリピンマニラにおける市中発症菌血症」、および、「結核と栄養」に関する研究を行っている。同オフィスでは、長崎大学から派遣されている日本人スタッフ2人(鵜川の他に、長崎大学熱帯医学・グローバル研究科 特任研究員 鈴木秀一氏)、および、現地採用のフィリピン人スタッフ9名が研究のため勤務していた。
2020年1月時点での長崎大学の状況
前述のように長崎大学が主導する研究が先行しており、私(鵜川)は、2019年後期より前任者より引き継いだ「市中発症菌血症の研究」におけるマネージメント業務を行っていた。すでに長崎大学が設置した研究用の検査室が、長崎大学オフィスによって運用されており、研究に取り込んだ菌血症疑いの入院患者から採取した検体はそこで検査を行っている。あくまで研究を主目的とした検査ではあるが、時には検査結果を即座に報告し、現地の臨床医のマネージメントに役立っている側面もある。長崎大学検査室は大きくはないが、従来法と称される細菌培養や感受性測定のみならず、細菌名を即座に同定する質量分析器や遺伝子検査のためPCR・リアルタイムPCRといった設備もそろっている。適切な検査のためには、それだけでは十分ではなく、病原体ごとに最適な検査方法を考え、検査試薬を日本から持参し、実際の検査プロトコルを考え遂行する必要があり、これらは決して簡単ではないが、すでに先代の研究者によって洗練されたプロトコルが用意され、現地スタッフによって検査を行う体制が確立されていた。そのため、この時点ですでに、長崎大学は複数年にわたって順調に研究を進めていた。


サンラザロ病院におけるCOVID19の対応
2020年1月、中国はじめ近隣諸国で新型コロナウイルスの流行が確認された。フィリピンは中国からの渡航も多く、もしフィリピン国内で渡航歴のある呼吸器感染症を呈するCOVID19疑い患者が発生した場合、臨床検体はフィリピン熱帯医学研究所に輸送し、患者自身は同研究所またはサンラザロ病院へ搬送されることとなっていた。そして、その時は間もなくやってくることとなった。1月25日に疑い患者がサンラザロ病院に紹介となり、個室隔離とするためICUに入院となった。しかし、ここで問題となったのは検査体制であった。当時この時点ではフィリピン国内でSARS-CoV2のPCR検査を行うことができる施設が存在しなかったのだ。フィリピン熱帯医学研究所では、呼吸器感染症の原因微生物として頻度が高い病原体のマルチプレックスPCRを行い、その結果を参考にして、オーストラリアの連携施設に検査を依頼するかどうか選別していたようであった。そのため、サンラザロ病院には数日後にマルチプレックスPCRの結果が届き、肺炎球菌やインフルエンザウイルスが検出されたということは確認できたが、肝心のSARS-CoV2の結果について一切述べられていないため、現場は混乱していた。患者は個室隔離としたままで、医療従事者は適切なPPE(個人防護用具)装着を継続していた。約1週間後、オーストラリアでの検査結果より、入院中の2人が陽性であることが判明した。検体の発送から結果が戻ってくるまで時間差があり、特に隔離が可能な個室病室の数が限られている状況であったため、感染管理の視点からも迅速な検査が必要であった。そこで、サンラザロ病院の院長および検査部から、長崎大学に検査面でのサポートの依頼があった。長崎大学フィリピンチームでインターネットを介したミーティングをもち、長崎大学 熱帯医学研究所臨床感染症学教室 有吉紅也 教授および長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科 クリス・スミス 教授をはじめ、長崎大学病院感染症内科の医師たちと話し合い、サンラザロ病院の長崎大学検査室でのSARS-CoV2のPCR検査を確立する方針で進めることとなった。

長崎大学フィリピンチームのテレビカンファレンス
SARS-CoV2 リアルタイムRT-PCRの準備
しかし、当時のマネージャーであった私(鵜川)はPCR検査の技術面についてあまり精通しておらず、必要な試薬はそろえたものの、1からの準備は困難であった。そこで、有吉教授からの依頼のもと、長崎大学 熱帯医学研究所ベトナム拠点 竹村太地郎 助教、長崎大学 熱帯医学研究所ウイルス学教室 井上真吾 准教授にフィリピンまでお越しいただき、多大なサポートを頂いた。まずは、2月5日より竹村先生が来比され、PCRプロトコルの確立、現地スタッフへの技術的指導、必要な物品の選定、サンラザロ病院スタッフへの講義など行っていただいた。そして、2月9日には井上先生にお越しいただき、主に検査室のバイオセーフティーに関して、検査中の安全面の確立やPPEの着脱についてご指導いただいた。この際、ぬぐい液検体からウイルスのRNA抽出を行う作業は長崎大学検査室での安全の担保が難しいことから、井上先生にも専門家としてサンラザロ病院検査部の会議に同席いただき、RNA抽出はサンラザロ病院で当時完成したばかりであった新興・再興感染症用(ERID)病棟を用いることを決定した。2人の先生方のご尽力もあり、検査を行うことができる体制が整ってきた。


フィリピン国内における一時的な患者数の減少
一方で、いくつか課題もあった。ERID病棟は完成したばかりであり、建物の他は何も機器が用意されていなかった。必要な機器をリストアップし、長崎大学検査室やサンラザロ病院検査室から、それらを移動させた。また、病院周辺に構えている医療問屋をいくつか渡り歩き、消耗品を揃えた。しかし、なかなか解決しなかったのが安全キャビネットであった。2月には届いていたものの、3月初旬になって不備が見つかってリコールとなり…と、結果的に使用可能になったのは3月10日頃であった。この時、フィリピン国内でのCOVID19の状況は、患者数が増え続けている日本とは一線を画しており、疑い患者は減少の一途をたどっていた。すでにフィリピン熱帯医学研究所ではSARS-CoV2のPCR検査が可能になっており、フィリピン国内の臨床検体はそちらで検査が行われていたが、ほぼ全ての疑い症例のPCR検査は陰性の結果であった。そのため、2月中はサンラザロ病院でも常に10人前後のCOVID19疑い患者が入院していたが、同時期の3月初旬にはついに0になっていた。病院内も含め「フィリピンではCOVID19の患者はいなくなった、もう心配しなくても大丈夫」という空気が拡がっていた。

フィリピンにおけるCOVID19確定患者数の推移
(保健省の発表をもとにスー氏が作成)
ロックダウン
しかし、そんな希望的観測の中にいたのもつかの間であり、すでに世界的な流行が確認されていた3月6日、フィリピンでも患者数の増加が報告され始めた。それも外国人だけではなく、渡航歴のないフィリピン国籍の患者が含まれており、国内での2次感染がおこっていることが示唆された。それを受けてCOVID19を疑う閾値も下げざるを得ない状況となった。間もなく、他院で診断された患者が紹介搬送されるようになり、サンラザロ病院の個室病棟は疑い患者も含め20人を超え、フル稼働になっていった。時を同じくして、保健省およびフィリピン熱帯医学研究所が主導となり、フィリピン国内でサブナショナルレファレンスセンターを冠する病院での検査体制が構築され、サンラザロ病院の検査部でも検査が開始されていた。サンラザロ病院のPCR検査の規模としては、当時は検査技師2人のみで運用されており、依頼される検体の数が実際の検査可能数を超える事は明白であった。長崎大学としてもサポートを検討していたが、ちょうどその議論をしていた3月14日夕に、現地スタッフから「明日より全ての公共交通機関がストップし、他の街からマニラに入るのが困難になる」という旨の情報が入った。この時はロックダウンという言葉もそれほど浸透しておらず、「今日まで全て普段通りに動いているのにそんなわけはない」と思いながらも、万が一のことを考えてオフィスに置いてある貴重品は一応持ち帰った。翌日、3月15日朝に出勤しようとすると、普段は人であふれている大通りですら人はまばらになっており、いつも通勤に使用している電車のホームは封鎖されていた。1日での変わり様に唖然としたが、しかたなく徒歩で出勤することとし、途中で運よく捕まえることができたジプニー(現地の乗合バスのような乗物)で病院に向かった。同日は簡単なミーティングだけで業務を終了したが、政府の方針で公共交通機関のみならずタクシーやジプニーも全面的に禁止されたため、夕には5駅分の帰路をすべて徒歩で帰宅した。さらにショッピングモールなど含め、食料品店を除いて、すべての店舗の営業が中止された。国民は自宅での待機が義務付けられ、屋外では軍隊や各自治体による見回りが行われていた。検査の協力体制を作るどころか、外国人である自分たちが生き延びることも難しい状況になってしまうかもしれない。明日からどうやって仕事を続ければいいのだろうか、軽い絶望感を覚えずにはいられなかった。



長崎大学フィリピンチーム
ロックダウンが断行される中でも、日本とテレビ会議を介して長崎大学フィリピンチームのミーティングは続いていた。長崎大学が協力するうえで課題となっていたのは、長崎大学の検査がフィリピン国内での正式な検査結果になりえないため誰を被検者とするか判断が難しいこと、PCR検査の前段階であるRNA抽出の作業に慣れたスタッフがいないこと、の2点であった。後者の技術的な問題をクリアするため、有吉教授の下で研究を行っている長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科博士課程 スー ミャット ハン氏が3月19日に派遣された。研究の一環としてウイルスのPCR検査を行っているためRNA抽出作業に精通しており、さらに国境なき医師団で働いた経験を活かして緊急事態においても着実に任務を遂行することが期待されていた。スー氏の来比から4日目の3月22日は日曜日であったが、サンラザロ病院の医師から急遽の相談を受け、私たちは病院にいた。サンラザロ病院の医療従事者1人がCOVID-19と診断され、たくさんの濃厚接触者が出てしまい、その中には30人近くの医師が含まれていた。院内感染が拡がることを防ぐため、症状に関わらず接触歴のある医療従事者のPCR検査を行って感染制御部で出勤の調整を行いたいが、すでに院内の検査は完全に余力がなくなっていたため、長崎大学検査室に検査を依頼された。そういうことであれば、検査結果がフィリピン国内で正式な検査結果として扱われなくとも院内の感染制御に利用することが可能であり、検査を行う必然性も高いため、その場で即座に依頼に応じることを決定し、検査を開始することにした。
長崎大学検査室で検査を開始
同日より検体収集を始め、翌日の3月23日よりPCR検査を開始した。実際には、検体採取のスワブや輸送培地を用意するところからはじめ、3月の時点ですでに30度を超える灼熱の環境下でPPEを着用して検体を採取し始めた。被検者に説明を行い、順番に並べ、テントまで誘導する作業も必要であった。その後はERID病棟に設置された安全キャビネットの中でRNA抽出を行い、長崎ラボラトリーで試薬を準備してPCR検査を行った。結果の返却方法も工夫を重ね、できるだけ早くかつ誤解が生じないような体制を整えた。長崎大学からの派遣スタッフである我々は週末も病院に出勤し業務を行っていたが、検査や研究をスムーズに進めることができたのは、長崎大学の現地採用スタッフの貢献も大きい。彼ら自身も大変な状況に身が置かれていることに変わりはなかったが、自国に貢献したいとの想いから、皆が協力して業務を分担し勤務を継続したため、途切れることなく検査をはじめ研究を続けることができた。「自分にできることがあればいつでも声をかけて」「本当に病院の役に立ちたい」彼らからそんな言葉をもらう度に、この緊急事態にも関わらず皆が同じ方向を向いて頑張っていることを再確認することができ、私自身も大いに勇気づけれられていた。


検査数増加と試薬不足のジレンマ
3月下旬には、フィリピン保健省の発表によると、フィリピン国内で1日200から300人のCOVID19患者が診断されていた。それらの対応に当たる「フロントライナー」と称される医療従事者やその他スタッフのため、マニラではシャトルバスの運行が開始された。また、病院には院外からも食物の寄付が届くようになり、業務の継続は初期段階と比較すれば容易になってきていた。長崎大学検査室では引き続き、サンラザロ病院の安全管理部門や従業員用クリニックと連携をとりながら被検者の優先度を加味し、1日20人ほどを研究に組み入れし検査を行った。サンラザロ病院の検査であれば結果が判明するまで1週間前後を要していたのと比較して、長崎大学検査室では1日から2日後に結果を返却し、サンラザロ病院におけるスタッフマネージメントの支援を行っていた。また、当初は300検査分の試薬を揃えていたが、検査が順調に進むにつれて、試薬の補充を行う必要があった。同オフィス勤務の鈴木秀一氏が日本に帰国して、試薬の運送を試みたが、3月20日より外国籍の渡航者へのビザの支給が中止されたため、試薬の補充ばかりか鈴木氏の入国の目途が立たなかった。フィリピン保健省や在フィリピン日本国大使館に状況を説明し、入国を許可してもらえるよう支援をお願いした。関係者のご尽力もあり500検査分の試薬とともに4月1日にサンラザロ病院に帰還することができた。
長崎大学の貢献
検査の過程でとある病棟のスタッフで陽性が判明し、その周囲のスタッフの検査を行うと、同一病棟に勤務するルームメイト2人の陽性も併せて明らかになった。サンラザロ病院の医師より追加で依頼があり、彼らが勤務する病棟の患者も30人ほど長崎大学の検査でスクリーニングすることになったが、全て陰性であった。他の病棟スタッフや患者が陰性であったことを考慮すると、病棟スタッフは院内感染でなく、市中からの感染であったと推測した。何より、陽性が判明後に勤務管理の点で適切な対処をとることができたため、そこから院内でスタッフや患者への2次感染を防ぐことができた。その後もいくつか小さなトラブルはあったものの順調に検査を継続し、4月22日の時点で、約300人の医療従事者、約40人の患者の検査を完了した。その間に、私の鼻咽頭ぬぐい液検体採取やスー氏のRNA抽出など、現地スタッフへ技術移行を行った。現地スタッフのみで検査を遂行できる体制が整ったため、4月24日に私とスー氏は日本へ帰国の途に就いた。サンラザロ病院では鈴木氏のマネージメントの下で、現在も検査および研究が進行中である。
おわりに
COVID19の検査と診断、特に感染制御にあたる際の問題は複雑であり、多くの病院やコミュニティーで問題になっている。その背景には、検査を用いて診断に至るまでには、検査前確率や感度といった検査の概念を理解している必要があり、検査を行えばそれで全て解決するわけではない、ということが挙げられる。それでも尚、診断に検査が必要不可欠であることは間違いない。研究の一環であったとしても、外部から検査を導入し結果を返すうえで、どういった患者にどういう手順で検査を行えば、現地でのマネージメントに最大限の貢献をもたらすことができるのか。特に緊急事態かつ資源が限られている状況では、これらの判断が一層大切であり、長崎大学フィリピンチームで何度も話し合った。特に私が一番重要視していたことでもある。それらの成果として、私たちの活動が、現地の医療にわずかではあるが貢献できたのではないかと考えている。

とある日早朝のサンラザロ病院玄関前で
サンラザロ病院研修で学んだこと(2019年) 
熱帯医学、グローバルヘルス研究科
熱帯医学コース(MTM) 大谷 誠司
私は長崎大学熱帯医学グローバル医学研究科MTMコースに入学し熱帯医学の勉強中です。今回2019年1月から約2か月間、フィリピンマニラの国立感染症病院であるサンラザロ病院で研修させてもらう貴重な機会を得ることができ、ここに報告させてもらいます。
2018年10月入学時から長崎で熱帯医学の講義を3か月受けていましたが、いままでtropical disease の患者は一度も診たことがなく、またその病気の背景にある自然、社会にも触れた経験もない私にとって、当地での実習は大変実り多いものとなりました。
サンラザロ病院での研修は次のようなものでした。
- 成人感染症熱帯医学病棟(adult infectious disease tropical medicine ward):毎朝8:00amから担当医とともに病棟回診します。毎日入院中の患者の症状、理学的所見をフォローし、前日入院した重症例、貴重な症例、あるいはICU入室例についても担当医師から詳細な説明を受けることができました。週一回Director であるSolante先生による病棟回診があります。疾患の鑑別診断、所見、検査、治療の進め方等bed side teaching があり非常に勉強になりました。病棟ではわたしがお世話になったとき、ちょうどmeasles outbreakであり、麻疹はもちろんですが、デング熱、ジフテリア、髄膜炎菌感染症、狂犬病、腸チフス、3期梅毒、破傷風、レプトスピラ、水疱、HIV+合併感染症、アメーバー赤痢、マラリア(輸入例)等非常に貴重なの症例を多く経験できました。
- 結核病棟回診は一日おきに参加しました。サンラザロ病院入院患者の15%弱は結核患者、また重症例、HIV合併例が多いそうです。日本ではほとんど診たことがなかった結核性髄膜炎、収縮性心外膜炎の症例も経験することができました。DOT(direct observation therapy) を見学させてもらい、現地でのどのように診療をすすめているか非常に参考になりました。
- カンファレンスとresearch presentation:成人感染症科, 家庭医学小児感染症科 から症例報告、mortality review, 各疾患のレクチャーが週一回病院の大会議室で、参加させてもらいました。また外国を含め外部からの講師を招いてのlecture があり教育的な話から、熱帯医学の最新情報まで多岐にわたる情報に触れることができました。不定期に結核部署からの胸部Xpの読影のカンファレンスもあり集中して大量の肺結核XPを見る機会がありました。
- 動物咬傷外来(animal bite OPD) 半日をかけてanimal biteの外来を見学しました。一日500例から日曜明けの月曜には1000例の外来患者がくるそうです。私も2時間半の間に40例の動物咬傷の患者について、咬傷箇所の診察、病歴、入院適否を含めたmanagementを集中的に短時間に診せてもらい、忙しい中、最後に30分ほどのlecture をしていただきました。
- リサーチ MTM に入学する前は循環器を専門にしていましたので、ジフテリアと心筋炎に興味を持ち、午後は長崎office でジフテリア患者の心電図解析を行っていました。ジフテリア患者を診たのはマニラで初めてでしたし、その臨床症状を関連付けて多数のジフテリア患者のECGを解析する機会がえられました。 特にジフテリア心筋炎の経時的変化の詳細はいままで論文でも接したことがなく非常に興味深いものでした。またこの結果を成人感染症科、家庭医学小児科のドクターと、ジフテリアの臨床経過をフィードバックしてもらいながら、discussion できたことは非常に勉強になりました。

サンラザロ病院

救急外来

麻疹アウトブレイク

動物咬傷外来
サンラザロ病院での研修報告(2018年) 
堀谷 亮介
私は2018年10月よりTMGHの熱帯医学コース(MTM)に入学し、2019年1月から3月までの約2か月、フィリピンのマニラにあるサンラザロ病院で研修させていただきました。MTMコースでは自分の研究テーマを決め、そのテーマに沿った研修・研究を、短期間ではありますが海外の病院や研究所でできることが一つの魅力です。
病院研修では感染症フェローとともにラウンドを行い、新入院の患者を診察したり、診断がつかない患者のマネージメントについてディスカッションする機会が多く、日本との違いを感じることが多々ありました。私が滞在していた時期は、麻疹のアウトブレイクがフィリピン全体で起こり成人病棟も小児病棟もほとんどが麻疹の患者でした。日本では麻疹の患者をみることはほとんどなく、麻疹の臨床経過や皮疹・コプリック斑といった典型的な身体所見を多く経験することができました。ただしアウトブレイクした原因の一つはワクチン接種率の低さにあると言われており、感染症フェローたちは一般市民に向けたワクチンの重要性を説明するのが難しいとも言っておりました。麻疹以外にも狂犬病、髄膜炎菌性髄膜炎、破傷風、ジフテリアといった日本ではなかなか遭遇しない疾患もみることができましたが、検査も限られている中で確定診断をつけるのは難しく、臨床診断に頼るしかありません。感染症部門の部長であるSolante先生の回診では、検査するまえに臨床経過から疾患の確からしさを考えなさいと常々おっしゃっておりました。このような環境でこそ、問診・身体所見が重要であると認識させられました。フィリピンでは感染症フェローになる前に内科のトレーニングが数年ありますが、その中で超音波検査を自らすることはないようで、何度か腹部エコーや心エコーの依頼を受けました。簡便で侵襲度も低いため、日本では当たり前のように使っているエコーも、こちらでは技師に依頼する必要があり、検査を受けられるまでにかなりの時間を要します。そのため腹水や胸水の有無もエコーの結果が返ってくるまでわからず、穿刺や培養といった次の手技・検査が入院して数日後になることもよく見受けられました。治療薬に関しても、供給が一定ではなく抗菌薬が使える日と使えない日があり、診断方法を確立するだけでなく、医薬品の供給体制を整えることも課題の一つと思われました。
研修中に一度、サンラザロ病院から車で30分ほどのところにあるCaloocan cityのヘルスセンターへ行く機会がありました。そこでスタッフとの話をした際に予防接種の接種率の低さを挙げておられました。予防接種は無料ですが、貧困によりヘルスセンターまでアクセスできないことや、両親がワクチンの重要性を理解していないことが原因のようです。実際にヘルスセンター周囲の川沿いに暮らす貧困層の生活をスタッフとともに見に行きました。スタッフ曰く、「2年前に比べればここの環境はだいぶ良くなった」とのことでしたが、川からは悪臭が立ち込め、道沿いには犬や鶏などの家畜が飼育され、動物の糞が道のあちこちに落ちています。このような劣悪な衛生環境では、レプトスピラ症、腸チフスや狂犬病などが蔓延するのは当然だなと感じました。ただ、それでもたくさんの子供がその環境の中で楽しそうに遊んでいます。フィリピン社会の現実を垣間見た貴重な経験でした。

麻疹アウトブレイクにより病院駐車場に建てられたテント
サンラザロ病院での研修を終えて(2018年) 
市川 麻理
私は、平成30年4月から3ヶ月間、長崎大学熱帯医学研修課程に参加しました。しかし、講義で出会った多くの疾患を自分自身で実際に診療したことはなく、それらの疾患を実際に経験したいと思い、長崎大学の先生方の力をお借りして、フィリピン サンラザロ病院で短期研修をさせていただくことになりました。
サンラザロ病院は、フィリピンの首都マニラにある感染症専門病院です。国立病院であり、貧しさのため医療費を支払うことが困難な患者さんには、経済状況に応じて治療費が減額、免除されます。そういった特徴もあり、首都マニラだけでなく、マニラ周辺の広い地域から連日多くの患者さんが受診されていました。病院では、私は主に成人感染症科でお世話になり、フェローの先生の毎朝の回診に同行させていただきました。研修の時期が乾季であったこと、また、フィリピンは現在麻疹のアウトブレイク中で入院患者の6割が麻疹症例であったことから、疾患のバリエーションが少ないのではないかという心配もあったのですが、様々な疾患を診ることができました。成人感染症科のフェローの先生方がとても親切に指導してくださり、この疾患を勉強したい等希望を伝えると、担当の患者さんでなくとも、診察できるように配慮してくださいました。おかげで、麻疹、デング熱、破傷風、レプトスピラ症、ジフテリア、水痘、腸チフス(疑い)、クリプトコッカス髄膜炎疑い(HIV患者)、脊椎カリエス、など、様々な疾患を診ることができました。中でも、麻疹については、大人から子供までたくさんの症例を経験することができました。実は私は、日本では麻疹患者さんを経験したことがありません。ですので、自分の中ではツチノコ的存在になっていたコップリック斑を見れた時は、思わず興奮してしまいました。フィリピンでは多くの患者さんが皮疹が出てからの受診でしたが、医療アクセスの良好な日本では、皮疹が出る前、コップリック斑でしか麻疹を疑えない時期に受診される可能性が高く、それを複数回目にすることができたのは、非常に有意義な経験でした。それとともに、ワクチン接種率の低さという問題も知ることができました。フィリピンでは、デング熱ワクチン問題によりワクチン接種に対する拒絶感が生じ、それにより麻疹のワクチン接種率も下がったという経緯があり、それが今回のアウトブレイクと関連しているとのことでした。日本でもしばしば輸入症例による麻疹の流行が問題になっていますが、ワクチン接種の重要性を認識しました。
また、研修中に一度、スモーキーマウンテンというスラム街へ行く機会をいただきました。ゴミとゴミを燃やした灰でできた山、その山に複数のscavengers houseがあり、おそらく日本の1DK程度の広さに5-8家族が居住されていました。住居の周辺では子供たちが遊んでいますが、その周りにはおむつやビニール袋などのゴミがまた山積みとなっています。その山で野菜を育て、それをまた食べるそうです。結核やその他疾患の蔓延の背景、ワクチンや薬での治療だけでは解決できない問題を目の当たりにしました。ただ、スラム街というともっと悲壮な様子を想像してしまっていたのですが、子供達の表情は明るく、大人からも悲壮感のようなものは感じられなかったのがまた印象的でした。
病院での研修が充実していただけでなく、現地での生活からも途上国と日本の様々な違いを知ることができ、総じてとても学びの多い研修でした。最後になりましたが、このような貴重な研修を御許可くださいました北先生、有吉先生、細やかに研修全体の調整とご指導をくださいました阪下先生、現地での生活のことや研修の細部でサポートくださいましたMTM課程の先生方、サンラザロ病院スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
サンラザロ病院研修(2018年) 
南 建輔
私は2017年10月に長崎大学大学院熱帯医学グローバルヘルス研究科MTMコースに入学し、2018年9月に卒業しました。在学中の講義の一環で熱帯病に関するケースカンファレンスが何度かあり、フィリピンのサンラザロ病院から提示される症例が、自分では全く経験したことがない興味深い症例ばかりでしたので、是非一度見学に行きたいと思い、卒業後の2018年10月に1ヶ月間研修させていただくことになりました。
主に成人病棟の入院患者を中心に診る機会を得ました。興味ある患者に対しては、実際に問診し、診察させていただきました。成人病棟部門のトップであるSolante先生の病棟回診やカンファランスにも参加することができ、日本とセッティングが異なる中で、診断に至るプロセスや治療方針を共有することができたのは、大変有意義でした。デング熱患者は毎日数例入院しており、成人病棟の約半数を占めておりました。雨期が終わりかけていた時期だったので、レプトスピラ症は少なかったですが、他に腸チフスや、狂犬病、破傷風、麻疹(成人および小児)、ジフテリア、赤痢アメーバ性大腸炎(HIV患者)、クリプトコッカス髄膜炎(HIV患者)、帯状疱疹(HIV患者)、2期梅毒、髄膜炎菌敗血症、重症熱帯熱マラリア(輸入症例)など、多彩な症例を診ることができました。中でも、髄膜炎菌敗血症の特徴的な紫斑は初めて経験し、severe caseでしたが、幸い病状とともに皮疹が回復していく過程を連日フォローすることができました。また日本では、時々輸入麻疹のアウトブレイクが起こって問題になっていますが、サンラザロ病院では毎日のように小児、成人麻疹がやってきます。妊婦の方の麻疹もいて、まだまだvaccine preventable diseaseがコントロールできていない現状を目の当たりにしました。
研修中に一度、サンラザロ病院から車で30分ほどのところにあるCaloocan cityのヘルスセンターへ行く機会がありました。そこでスタッフとの話をした際に予防接種の接種率の低さを挙げておられました。予防接種は無料ですが、貧困によりヘルスセンターまでアクセスできないことや、両親がワクチンの重要性を理解していないことが原因のようです。実際にヘルスセンター周囲の川沿いに暮らす貧困層の生活をスタッフとともに見に行きました。スタッフ曰く、「2年前に比べればここの環境はだいぶ良くなった」とのことでしたが、川からは悪臭が立ち込め、道沿いには犬や鶏などの家畜が飼育され、動物の糞が道のあちこちに落ちています。このような劣悪な衛生環境では、レプトスピラ症、腸チフスや狂犬病などが蔓延するのは当然だなと感じました。ただ、それでもたくさんの子供がその環境の中で楽しそうに遊んでいます。フィリピン社会の現実を垣間見た貴重な経験でした。

成人病棟で特にお世話になったフェロー達

Caloocan cityの川沿いに暮らす方達の生活風景
フィリピン、マニラにおける低所得者層の地域での抗菌薬乱用(2018年) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
Frequent Community Use of Antibiotics among a Low-Economic Status Population in Manila, the Philippines: A Prospective Assessment Using a Urine Antibiotic Bioassay
Nobuo Saito, Noriko Takamura, Christopher M. Parry et al
The American Society of Tropical Medicine and Hygiene
DOI: https://doi.org/10.4269/ajtmh.17-0564
世界的に抗菌薬耐性菌の蔓延が大きな問題となっています。
マニラを含め東南アジアの多くの地域では、いまだに医師の処方箋なしに抗菌薬を購入することができ(over-the-counter:OTC drug)、耐性菌流行の一因となっていると考えられています。また、安価なジェネリック抗菌薬の流通に伴い、低所得者層でも抗菌薬の入手が簡単になっております。
マニラにおける薬局抗菌薬処方について(過去記事)

マニラ貧困街にある薬局、安価なジェネリック抗菌薬が処方箋なしに売られている。
そこで我々はマニラにおいて、地域における抗菌薬使用の実態を把握するためフィリピンマニラ国立感染症病院において、発熱患者のどの程度がすでに抗菌薬を内服しているか調査しました。多くの患者が抗菌薬であると理解せずに内服している可能性があり、質問票による検討だけでは不十分であります。多くの抗菌薬は腎臓から尿中に排泄されます。我々はUrine antibiotic assay という簡便な手法を用いて、尿中の抗菌薬活性を検出し、病院受診前抗菌薬使用率を検討しました。

尿中抗菌薬活性検出検査方法
本研究では410人の発熱患者を調べた結果、40%もの患者が病院受診前に抗菌薬を内服しており、その多くはデング熱を含むウイルス感染症、つまり抗菌薬の適応のない患者でした。さらに、受診前に抗菌薬を服用していた患者は、低収入の世帯に多いことも判明しました。今後、このようなグループに対する啓蒙活動が必要だと思われます。
まとめ
〇マニラ低所得者層において病院受診前に抗菌薬を内服している発熱患者の割合は40%であった。
〇最も収入が低い患者層が最も病院前抗菌薬内服率が高かった。
サンラザロ病院研修の感想(2016年) 
長崎大学病院 熱研内科
後期研修医 池田 恵理子
熱帯感染症を学ぶため、この約1か月間、フィリピンのサンラザロ病院で研修中の池田です。サンラザロ病院は首都マニラに位置する国立の感染症専門病院です。国立であるため、入院患者さんにはソーシャルワーカーが面接し、貧しくて治療費が支払えない人は状況に応じて減額もしくは無料で医療が受けられるシステムになっています。そのため大人から子供まで、貧しい患者さんが毎日沢山来院します。私は主に成人感染症病棟で研修をし、日本では経験できないような熱帯感染症を多数経験することができました。私の業務は、入院患者さんをチェックすることから始まります。興味のある症例をピックアップし、カルテを見つけ、患者さんの部屋を訪問します。フィリピンでは多くの人が英語を話せますが、入院患者さんの中には貧困層でタガログ語しか話せない方もいるので、その場合はフェローに通訳を頼みます。直接治療方針に介入することはなかなかできませんが、毎日患者さんを問診し身体所見をとり、それぞれの臨床経過を追うことができるのは、教科書を読むだけでは得られない、この研修ならではの非常に貴重な経験であると思います。ただ、医療資源も人材も限られており、いかに問診と身体所見から情報を得るか、いかに少ない選択肢から最善の治療法を選ぶかがとても重要な現場でありました。私が経験した疾患はデング熱が最も多く、その他に破傷風、レプトスピラ症、結核、ウイルス性髄膜炎、動物咬傷、小児の髄膜炎菌血症、ジフテリアなどです。どの症例も印象深く、特に重篤な経過を辿り死亡したレプトスピラ症の例や、特徴的な皮膚の壊死を認めた髄膜炎菌血症の例は一生忘れられない衝撃的な症例でした。毎日の勤務で私を囲んでくれたのは、にぎやかなフェローたち。8割以上が女性のためか、集まればすぐにおしゃべりに発展し、高確率で巻き込まれます。フィリピン人の声は明るくて大きく、笑い声はよく響くのでうるさいくらいなのですが、表情豊かで冗談好きな彼女たちといると、とても楽しい時間になるのは間違いありません。ほとんどが年上でみんな私を妹のように可愛がってくれました。もちろん業務中も、彼らはとても丁寧に、熱心に指導してくれました。たった1か月の間でしたが、過ごした時間が一番長いのはフェローたちとの時間であり、振り返っても楽しい思い出しかないのはきっと彼らのおかげであると思います。また、この研修中、将来、治る病気で死んでいく発展途上国の子供たちを救いたいという夢を持つ私に、スラム地区のHealth Centerの見学やスラム地区の視察をコーディネートして下さったり、成人病棟のフェローからは無理だと言われた小児の感染症疾患も積極的に紹介して下さった齊藤先生には、とても感謝しています。私にとっては、まさに毎日が夢に近づく日々のようでした。初めての海外での臨床研修で右往左往する私にたくさんアドバイスもいただき、自然な形で患者さんと触れ合えることがひたすら幸せでした。ひとえに齊藤先生のご尽力の賜物であり、心から感謝いたします。また、最後になりましたが、このような機会を作っていただいた有吉教授をはじめ、快く送り出していただいた医局員の先生方にも、心からお礼申し上げます(写真上段右端が池田Dr)。

サンラザロ病院での研修を終えて(2016年) 
熱帯医学・グローバルヘルス研究科
熱帯医学コース(MTM) 安田 一行
2016年9月下旬にフィリピンのサンラザロ病院で約2週間の臨床研修をさせていただきましたのでご報告いたします。
2私は長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科熱帯医学修士過程(2015年入学)に在籍し今回の研修は過程修了直後のタイミングでありましたので、熱帯地・途上国における疾患と医学的課題について一通りの基本的な知識を持ち臨むことができました。そのため、病院スタッフとのディスカッションではスムーズに共通認識を持つことができ、また各症例については修士過程での講義内容や資料と対比することで典型的所見や相違点をつぶさに確認することができました。従いまして今回のサンラザロ病院研修では、1年間の座学内容の実地での確認という意味で大変貴重な時間を過ごしました。そして現実は講義よりもかなり衝撃的であり、非常に良いタイミングで研修させていただいたと思っています。
具体的な研修内容をご紹介させていただきます。2週間のスケジュールのうち約半分を成人感染症病棟で、もう半分を結核病棟で研修いたしました。回診への参加、担当症例の問診と診察、カンファレンスやレクチャーへの参加、地域診療所や極貧層の過密住居区への訪問等の機会を得ました。
個人的に特に印象に残った症例を以下に短く列記いたします。腎障害を伴った重症レプトスピラ症・典型的な咽頭周辺の偽膜を伴うジフテリアの成人症例・咬傷後受診せず発症を予防できなかった狂犬病の症例・道端の釘を踏み抜き発症に至った破傷風の症例・点状出血性皮疹を伴う髄膜炎菌性髄膜炎が疑われた症例・皮膚瘻孔を伴いHIVと粟粒結核の合併と考えられた症例・腹部エコー及び内視鏡検査で疑われた日本住血吸虫症、等々。その他、重症化サインを伴う何人ものデング熱症例が毎日入院し、また結核病棟では酸素吸入を要する結核患者が既存ベッドに収まりきらず簡易ベッドまで使用して満杯に入院し、多剤耐性結核の患者が別棟とはいえ専用の隔離装置もなくすぐ隣の建物に居ります。今まで見たこともないような光景に何度も衝撃を受けました。
また実臨床も日本のものとは当然大きく異なります。ほとんどの症例は臨床診断であり確定診断に至るものが、例え致命的な疾患であったとしても、かなり少ないことは特に衝撃的でした。それは主に診断のための技術・機器が限られていることによります。一方で、サンラザロ病院と長崎大学との連携と協力体制により、例えば微生物同定システムやリアルタイムPCR装置等がすでに敷地内に導入され現地スタッフとともに運用されていて、診断レベルの向上に寄与しております。そのような設備を利用して診断に至る症例を病棟で目の当たりにし、両施設のコラボレーションが実地の臨床に利益をもたらす実例として心に感じるものがありました。
さて、長崎大学熱研内科では熱帯医学を志す熱意溢れる医局員が後期研修医の段階で1ヶ月程度サンラザロ病院へ派遣され研修し、それは貴重な実地訓練の場となっております。一方、私はこれまで公衆衛生や発展途上国での国際協力などに漠然とした興味を抱きながらも具体的に関わる機会は無く、国内で内科医としてのトレーニングを受け専門医を取得した後にやはりそちらの分野に進みたいと考えて熱帯医学・グローバルヘルス研究科熱帯医学コース(MTM)へ入学いたしました。そんな私にとってMTM及び今回のサンラザロ病院での研修は、新たな領域へ踏み出す一歩を力強くサポートしてくれました。すでに心決まっている学生さんや初期研修医の先生はもちろんですが、医師としてのキャリアをある程度積んでこられた先生で熱帯医学や国際医療はどんなものかちょっと体験したい・面白そうならそちらに首を突っ込みたいと思っている方がおられましたら一つの選択肢として考えていただけたらと存じます。
最後になりましたが、研修を御許可いただきました有吉紅也教授、研修全体の調整と現地でのご指導をいただきました齊藤信夫先生、貴重な症例とご指導をいただいた現地スタッフの皆様に深く御礼申し上げます。
SLH研修を終えて(2016年) 
長崎大学病院 熱研内科
後期研修医 増田 真吾
2016年9月、マニラにあるサンラザロ病院にて2週間の研修をしました。主には、日本ではなかなか見ることのできないような疾患を診ること、また途上国との様々な違い(医療だけではなく、社会・文化の違いなど)を体験することが目的です。雨季にあたるこの時期は、デング熱はもちろんのことレプトスピラ症も非常に多く、そのほかにも破傷風や住血吸虫症、寄生虫疾患、ハンセン氏病(疑い症例も含めて)なども見ることができました。もちろん結核やAIDSの患者も多く、外来で診る患者は結核罹患・治療歴がある方も多くいました。
フィリピンでは日本と比べて少ない検査で診療を行います。背景には経済的な事情が大きくあり、より問診や身体所見を重視し治療にあたっています。時に、これは本当にその疾患なのかと思うこともありますが、日本ではあまり意識できていなかった所見のとり方・考え方はとても勉強になりました。
また、地域の診療所やスラムの見学は非常に印象的でした。ある疾患に対するアプローチとして治療はもちろん大事ですが、その疾患に罹患しないための予防することも大切です。予防をより効率的かつ低コストで行う、これは将来的に私がやりたい事でもあるのですが、こういった考えやその必要性をよりリアルに感じることができた研修でした。
2週間の研修はとても刺激的でした。まだまだ勉強しなければいけないことは山積みですが、ひとつひとつ積み重ねていこうと思います。
*写真は川沿いにあるスラムの様子です。


2016年サンラザロ病院院長、長崎招聘、覚書調停(2016年) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
11月サンラザロ病院よりゴー院長、ラザロ看護部長、ディマピレス教育部部長、ディマピレス救急部部長を長崎に招聘しました。
今回の招聘の目的は、教育と研究に関する新たな覚書の調印を行い、サンラザロ病院での教育と研究がさらに発展することを目的としています。
覚書内容
- 長崎大学の学生がサンラザロ病院で研究を行う場合、倫理委員会は学生向けに迅速に診断するようにする
- 長崎大学は、サンラザロ病院の倫理委員会の発展のため寄与する
- 長崎大学は、サンラザロ病院のラボ診断(PCR診断や抗菌薬耐性菌の診断システムの構築、菌株の保存)に寄与していく
一行は、TMGH校 北学科長との調印式の他、片峰学長表敬訪問、長崎大学病院 医療教育開発センター見学などを行いました。
熱研内科では、大学病院見学や懇親会を行いました。今後のさらなる協力体制が期待できるものと思われます。

以下、関連サイト
日経メディカル つぶやきコラム 崎長ライト、フィリピンを行く(その5) 
長崎大学病院医療教育開発センター長
濱田久之
サンラザロ病院での研修を終えて(2015年) 
熱帯医学・グローバルヘルス研究科
熱帯医学コース(MTM) 柳川 愛実
MTMコースのプログラムの一環として2016年1月から3月中旬までフィリピン・マニラにあるサンラザロ病院で研修、研究を行う機会を頂きました。初めの1ヶ月は病棟での研修、残りの1ヶ月半は長崎大学が病院の敷地内に所有する実験室で研究を行いました。
【病棟研修】
私は最初の2週間は小児科病棟で、残りの2週間は成人病棟で研修に参加しました。いずれの病棟でも日本の病院では見ることのない病気を多く経験することができ、大変勉強になりました。
サンラザロ病院の小児科で見かける頻度の高い疾患のうち、特に印象的だったものは、破傷風、百日咳、ジフテリアなどです。フィリピンでは破傷風、百日咳、ジフテリアの三種混合ワクチンを無料で受けることができます。それにも関わらず、病棟には常にいずれかの疾患の患者さんが入院している状況でした。原因としては①無料でワクチン接種できることを母親が知らない、②接種しても免疫が付かない、③接種しても日常生活でのこれら原因菌との濃厚接触が不可避であり感染が成立してしまう、などが挙げられるとのことでした。入院した段階ですでに亡くなることが避けられない状態になっているお子さんを何人か経験したこともあり、予防の難しさと重要性を改めて認識させられる研修でした。
成人病棟で多く遭遇した疾患には、デング熱、肺結核、肺外結核(結核性髄膜炎など)、HIV感染症などが挙げられます。小児科病棟と同様、常に病棟には多くのデング熱患者が入院しており、発症から軽快・増悪の一連の過程とそのマネジメントを学ぶ貴重な機会となりました。また、サンラザロ病院が感染症に特化した病院だということもあり、他病院からしばしば紹介される不明熱の患者さんの診察も経験することができました。長引く発熱、複数の病原菌への同時感染が疑われる患者さんは免疫不全状態が背景にあることが多く、限られた医療資源の中で問診・全身検索を行う難しさを感じました。
上記に挙げた疾患以外にも、レプトスピラ症、腸チフス、狂犬病など、日本では目にする機会のほとんどない疾患も経験することができました。どのように疑い、診断し治療を行うのかを一つ一つ現地の先生方に教えて頂き、大変勉強になりました。実際にそれぞれの疾患の患者さんを目にすることができなければ、罹患する大変さ、過酷さを想像することは難しく、なぜ焦点を当てて研究に取り組むのか、その動機付けも乏しいままだったと思います。研究だけではなく、まず初めに1ヶ月間病棟研修をする機会を頂けたことは、本当にありがたかったです。

ジフテリアの症例をプレゼンテーションする機会を頂きました。
ローテーターは全員、いずれかの症例をプレゼンテーションします。
【研 究】
私はサンラザロ病院敷地内にある長崎大学のラボでPCRを使用した腸チフスに関する研究を行いました。ラボでは従来のPCRとゲル電気泳動ができる他、キャピラリー電気泳動やリアルタイムPCRも行うことができ、研究の目的に応じて多様な選択肢があるのが特徴です。また、このラボは長崎大学の先生方(現在は主に熱帯医学研究所臨床感染症学分野)が使用される他、病院内の検査技師のPCR勉強会場として使用されたり、このラボにしかない試薬を使って入院中の患者さんの診断を行ったりと、長崎大学とサンラザロ病院を繋ぐ橋渡しとしての役割も担っています。長崎大学の関係者だけではなく、サンラザロ病院内の現地ドクターや細菌検査室で働く検査技師なども出入りするラボです。
私はMTMに入学した時点で全くのラボ初心者だったのですが(今でも初心者ですが)、研究のため常駐されている齋藤先生(熱帯学グローベルヘルス研究科所属兼、熱帯医学研究所臨床感染症学分野(熱研内科))がやるべきことを教えて下さったおかげで、当初予定していた実験を終わらせて帰国することができました。また、長崎大学雇用の現地スタッフがいろいろとサポートして下さりました。私と同時期に同じMTMコースの岩元先生もフィリピンにいました。岩元先生の研究内容は臨床に則したものでした。臨床に基づいた研究を行うにしても、私の様に実験がメインになる研究を行うにしても、研究を始める前の段階から研究の進め方まで一連の流れを齊藤先生が現地でサポートして下さり、本当に恵まれた環境だったと思います。

お世話になった齋藤先生、検査技師、リサーチナースと
レプトスピラ症の黄疸について(2015年8月20日) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
MTMコースのプログラムの一環として2016年1月から3月中旬までフィリピン・マニラにあるサンラザロ病院で研修、研究を行う機会を頂きました。初めの1ヶ月は病棟での研修、残りの1ヶ月半は長崎大学が病院の敷地内に所有する実験室で研究を行いました。
2015年7月初旬フィリピンでは、台風による大雨が降り、街中は水で溢れかえった。サンラザロ病院周辺では、排水が悪く低地にあるため、降水量が急激に増加すると容易に洪水状態となる。
周辺には多くの貧困層が住み、水との接触を余儀なくされる。レプトスピラ症(leptospirosis)は、ドブネズミなどの保菌動物から尿中に排泄され、汚染された水や土壌から経皮的あるいは経口的に人に感染する。降水量の増加と共に患者数が増加する疾患である。
2015年7月19日の週よりレプトスピラ症の患者が増加、急性腎不全や肺出血で亡くなる患者もみられた。

現在、我々はサンラザロ病院新規入院患者を対象に菌血症の研究を行っており、レプトスピラ症も対象疾患となる。レプトスピラ症はワイル病が有名で、黄疸、急性腎不全をきたす感染症である。 これまでも、レプトスピラ症の黄疸はみたことがあったが、実際にビリルビン値を測定したことはなく、今回測定して驚いた。

53歳男性
既往疾患特になし、水との接触有
入院6日前、倦怠感、水様性下痢、咽頭痛、腹痛が出現、急に黄疸が出現した。
改善ないため、サンラザロ病院を受診、入院となった。
黄疸、肝腫大あり、下肢腓腹筋把握痛あり
(血液検査)
WBC 14.12*10*9/L , PLT 54*10*9/L
T-bil 26.9 (D-bil 23.7, I-bil 3.13) AST 47 ALT 42 BUN 107.42mg/dl, Crea 5.66 mg/dL
PH 7.34, PO2 87.3, PCO2 24.7, HCO3 13, BE 12.8
PT inr 1.18 PT 15.2
著名な直接ビリルビンの上昇がみられた。
我々が測定した他の症例でも 直接ビリルビン値が20mg/dLを超える症例があり、なかには30mg/dLを超える症例もみられた。特記すべきは、AST,ALT上昇は軽度のみで、PTなどもほぼ正常である。つまり、肝合成能は保たれており、肝障害も少ない、しかし胆管閉塞によるビリルビン値の上昇がみられる感じがみてとれる。
これ程著名なビリルビン値上昇は急性肝炎(A型、B型)などではみられるが、AST,ALT上昇を伴わないところが全く異なっている。
ビリルビン上昇患者では、腎不全を伴っている事が多いが、ビリルビン上昇のみで腎機能障害を伴わない症例は予後が良いようであり、実際に黄疸のみの患者では重症感はみられず、早期に退院できる症例が多かった。
臨床的な、印象としては肝臓でダメージをきたさず、細胆管で何かがつまり、黄疸が急激にでている印象であった。総胆管での閉塞では右季肋部疼痛をきたすとことが多いが、レプトスピラ症では右季肋部痛はほとんどみられない。総胆管での閉塞ではなく、細胆管での閉塞が疑われる。このように急激に直接ビリルビンが上がる感染症がレプトスピラの特徴だ。(間接ビリルビンんが急激に上がる疾患:マラリアなど溶血性の疾患。sepsisに伴う黄疸に似ているが、腎障害以外はsepsis程重症感がない。)
マンデル(熱帯病教科書)では、直接ビリルビンが80mg/dLを超える症例がアルトの記載と、AST/ALT上昇は軽度のみで、200U/Lを超える事はまれであると記載されている。
マンデルでの病態の説明は、レプトスピラ症の病態はまだ解明されていない事が多いが血管炎、トキシン、人間の免疫反応などの可能性があるとされている。
レプトスピラLPSが人間のinnate immune system (TLR4)に反応示さないとされており、レプトスピラ症が人間のinnate immune systemを躍起されないためというのは興味深い病態であった。
肝構造(hepatic architecture)の破壊は肝壊死を伴ったり、伴わなかったりするとされている。
Lancet Infect Dis 2003; 3: 757–71 の記載では、レプトスピラ症の黄疸は肝細胞の障害ではなく、sepsisの胆汁うっ滞 (ATP-dependent secretionの細胆管への排出不良)
(本論文は共同研究者小泉先生に教えて頂きました)
なるほど、やはり細胆管での閉塞が原因か、、、
もう少し文献を探していったところ面白い論文に出くわした。(研修医時代にお世話になった肝臓専門家の長岡先生より紹介して頂いた)
しかも、筆者は6月サンラザロ病院に来ていた九州大学の学生である宮原くんではありませんか!!(彼は大学を休学し、学生のうちに先にPhDを終わらせるというコースを取得し、レプトスピラでPhDを取得したそうです)

フィリピンのレストランで食事を一緒にしている写真。
奥が宮原君、この時は単なる医学生だと思っていました。
彼の論文によると、レプトスピラの菌体は類洞からディッセ腔や細胞間結合に侵入し、肝細胞の結合を緩め、肝細胞間構造の破壊(細胞の破壊ではない)を引きおこし、これが細胆管の閉塞に繋がると報告しています。
“私が臨床で感じていた病態と一緒であり、鳥肌が立ちました。”
Miyahara et al. Int. J. Exp. Path. (2014), 95, 271–281 宮原君に了解を得て、論文の中身を簡単に紹介します。

細胞と細胞の間にスピロヘータが侵入している像

こちらも細胞間にスピロヘータ(緑)が入っているのがわかる

マウスにレプトスピラを感染させ、肝臓を電顕でみたもの
左から正常時、黄疸前、黄疸時
肝細胞間にスピロヘータが侵入(白)、肝細胞間が疎になり、BC(細胆管)がつぶれているのがわかる

機序を説明した図
偶然の出会いと臨床的に疑問に思った事に見事にこたえてくれた素晴らしい基礎研究に感謝しています。サンラザロ病院はいろいろな出会いがあります。
今後とも宮原君の活躍に期待しています。
レプトスピラ研究(2015年7月4日) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
レプトスピラ症(leptospirosis)は、ドブネズミなどの保菌動物から尿中に排泄され、汚染された水や土壌から経皮的あるいは経口的に人に感染する。時に、肝障害、肺出血、腎不全などを引きおこし致死的な感染症となりうる。フィリピン・マニラでは人口が過密し、衛生環境が悪い地域に多数の人々が暮らしている。雨季になると、排水処理が限界を超え、道は汚染水で溢れかえる。我々が研究を行っているフィリピン・サンラザロ病院では年間300~500人のレプトスピラ症の入院患者があり、死亡例もみられる。

雨季に外で遊ぶ子供達

マカティ周辺の河でネズミが走っている写真
熱研内科では、これまで鈴木助教、有吉教授が中心となり、フィリピン・サンラザロ病院でレプトスピラ症の研究を行ってきた。
2009年には、氏家医師(当時研究室所属)、鈴木が中心となり台風後におきたレプトスピラ症のアウトブレイクを詳細に報告。(Emerg Infect Dis. 2012 Jan; 18(1): 91–94)
2015年には、当研究室の北庄司が、2011年10月から2013年9月までのレプトスピラ症疑いの患者より血液と尿検体を集め、感染研 小泉博士が開発されたLigA-IgM ELIZAが臨床診断に非常に有用であるということを報告した。(PLoS Negl Trop Dis 9(6): e0003879.)
我々は、今後、この素晴らしい技術を現地の臨床現場で役立てられるように研究を進めている。新しく立ち上げたサンラザロ病院内長崎大学研究検査室では、レプトスピラ症の診断技術である、LigA-IgM ELIZA法, Lamp法, real-time PCR法のセットアップを現在行っている。当研究室の北庄司、国立感染症研究所の小泉博士が2015年6月~7月にかけてサンラザロ病院に来られ、現地スタッフに指導をして下さっている。
これまでの長崎大学とサンラザロ病院との関係はこちらをご覧ください
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/internal/international/philippines.html#2015-01
サンラザロ病院内長崎大学研究検査室についてはこちらをご覧ください
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/internal/international/philippines.html#2015-06
フィリピン大学マニラ校レプトスピラ研究室との話し合い
2015年6月30日フィリピン大学マニラ校のレプトスピラ研究所を訪問し、今後の参考のため検査室の見学と今後の協力体制について話し合いを行った。
フィリピン大学よりグロリアーニ教授、長崎大学よりクリス・パリ―教授、安波博士、鈴木、齊藤、北庄司サンラザロ病院よりリボ先生、国立感染症研究所より小泉博士が参加した。

フィリピン大学マニラ校レプトスピラ研究室にて
今後は、フィリピン大学マニラ校レプトスピラ症研究室とも協力しあい、少しでもレプトスピラ症で被害を被っている人々のため頑張っていきたい。
マニラにおける薬局抗菌薬処方について(2015年7月4日) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
現在我々は、フィリピン・マニラで抗菌薬耐性菌の問題に取り組んでいる。フィリピン・マニラでは、医師の処方なしでも薬局で安価に抗菌薬が入手可能である。現地の医師曰く、貧困層の人々は病院を受診するとお金がかかるため、薬局に直接行き、安価な抗菌薬を入手する傾向があるという。
長崎大学熱帯医学修士課程の高村先生は、発熱した人々のどれくらいが病院受診前に抗菌薬を内服しているのかをみる研究を2015年1月より行っている。抗菌薬内服を検討する上で質問による確認では不十分であり、本研究では尿中の抗菌薬活性を調べることで正確に抗菌薬内服状況を調べるものである。
これまでの途中結果では、約4割の患者が病院受診前に抗菌薬を内服しており、その半数が薬局で処方箋なしに抗菌薬を入手し内服している状況が明らかになった。5歳以下の子供でも4割程度の子供たちが病院受診前に抗菌薬内服をしていた。病院受診後の診断はほとんどがデング熱であり、抗菌薬内服が必要ない疾患であった。また、間違った用量で内服していたり、抗菌薬と理解せず内服したりする患者も多々みられた。サンラザロ病院に来院するほとんどが貧困層であり、本研究でも月収5000ペソ未満である患者が多くを占めていた。貧困層の子供たちとその親は発熱をすると、まず薬局に行き抗菌薬を購入するという現状が示された。
このような抗菌薬の乱用は、現在世界的に問題となっている抗菌薬耐性菌の流行という問題へと寄与していると考えられる。
どの程度簡易に抗菌薬を入手できるのか、価格はどの程度なのかという、簡易調査を今回行った。サンラザロ病院周辺の3つの薬局で調査を行ったが、入手はとても容易であり、価格は日本で入手するより、低価格で入手可能であることがわかった。

病院近くの薬局で売られている様子

サンラザロ病院周辺の薬局

多数の抗菌薬が売られている。
多数の薬のなかで多くが抗菌薬である。

我々が入手した抗菌薬

主な抗菌薬の実際の入手価格(1PHPは約2.7円)
現在、我々はサンラザロ病院に入院する患者のうち、どの程度が抗菌薬耐性菌で苦しんでいるのかを検討する研究を進めている。病院受診前抗菌薬内服は、菌の抗菌薬耐性化の問題や、適切な診断と起因菌同定を難しくするという問題を含んでいる。我々はマニラにおけるこのような問題に今後も取り組んでいく予定である。
これまでの長崎大学とサンラザロ病院との関係はこちらをご覧ください
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/internal/international/philippines.html#2015-01
サンラザロ病院内長崎大学研究検査室についてはこちらをご覧ください
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/internal/international/philippines.html#2015-06
サンラザロ病院内研究検査室完成式典
「SLH-Nagasaki Collaborative research laboratory」(2015年) 
熱帯医学グローバルヘルス校
戦略職員 齊藤 信夫
2015年5月25日サンラザロ病院内新研究検査室の完成式典が行われました。長崎大学熱帯医学グローバルヘルス校(TMGH校)では、熱帯地域での研究、教育の拠点として、2014年より研究検査室を設置するため活動してきました。長崎大学とサンラザロ病院のこれまでの活動はこちらをご覧ください。
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/internal/international/philippines.html#2015-01
新研究室の正式名称は「SLH-Nagasaki Collaborative research laboratory」としました。
式典には長崎大学から、有吉教授、クリス教授、シャロン教授、安波先生などが参加しサンラザロ病院からは院長始め、各部署幹部が参加しました。院外からもフィリピン外務省、東北大学、フィリピン大学マニラ校、フィリピン保健省などの方々に列席頂きました。
式典では、サンラザロ病院院長ゴー先生より開幕の言葉、有吉教授、クリス教授より挨拶がありました。その後、検査室設立の責任者である齊藤より、機材の説明と今後の展望の説明を行いました。その後、新検査室の見学会を行いました。
新検査室は 微生物同定システム(MALDI-TOF)、リアルタイムPCR装置などが設置されています。これらの機器により、これまでサンラザロ病院内検査室では行うことが出来なかった迅速微生物同定や抗体検査などが行えるようにしたいと考えております。
現在、市中感染菌血症と薬剤耐性菌に関する臨床研究を開始しました。今後はレプトスピラ症、ジフテリア、結核などの臨床研究を進めていく予定です。熱帯・亜熱帯地域の感染症の臨床研究を進めていき、広く感染症制圧に向けた取り組みを行っていきたいと思います。

サンラザロ病院ゴー院長より挨拶

有吉教授より挨拶

テープカット

新検査室見学会

式典の様子
サンラザロ研修について(2015年) 
長崎大学病院 熱研内科
修練医 山本 優美
私は1月12日から2月6日までの4週間、サンラザロ病院の成人の熱帯感染症部門でお世話になりました。
教科書でしか見たことのない熱帯感染症症例が数多くあり、また日々診察しているフィリピンのDrたちはとても生き生きとしていました。
日本とは違い病院にかかるお金がない患者や、病院を受診したとしても高価な検査はできない患者が多く、限られた検査や時間の中で、身体所見を重視した診察や今までの豊富な経験を基にした治療からは学ぶことがとてもたくさんありました。
疾患としては、日本ではほぼ見ることがない破傷風や狂犬病など、衛生環境やワクチン、治療への認識によって予防・救命しうる感染症で患者が亡くなっていくのを目の当たりにして、公衆衛生などの大切さを実感するとともに興味が湧きました。
漠然と海外で仕事をしたい、と思い熱研に入局した私にとって、この研修はとても有意義なものとなりました。



サンラザロ病院における1症例(2015年) 
長崎大学病院 熱研内科
修練医 山本 優美
症例) 42歳、男性
主訴)嘔吐、狂水症状
現病歴)入院1ヶ月前に右手を犬に噛まれ、近くの民間診療所に相談し水牛の骨による治療を受けていた。犬の行方は不明。入院1日前に嘔吐を認め、近医受診、急性胃腸炎の診断で対症療法となっていた。入院数時間前に近医再診したところ狂水症状を認めていることから狂犬病が疑われたためサンラザロ病院紹介、救急搬送。咬傷歴と症状から狂犬病と診断され、同日入院となった。
入院時現症)BT37.1 HR72 RR24 BP130/90 SpO2 98%
血液検査)WBC7.7(seg74 Lym20) Hb145Ht0.43 RBC4.6 Plt205
診察所見)(病室外から観察)意識清明 右腕咬傷痕の疼痛あり 送風による筋攣縮あり 四肢麻痺なし
入院後経過)狂犬病隔離室に入院、上肢拘束とし、ジアゼパム・ハロペリドール投与。入院当日の深夜に呼吸器障害により死亡。
考察)狂犬病はイヌ、ネコ、オオカミ、キツネ、ジャックル、スカンク、コウモリに咬傷されることで感染し、潜伏期間はウイルスが脳に達するまでの期間で平均数ヶ月であるが4日から数年の報告もあるそうです(小児や顔面や頸部の咬傷では早い)。
初発症状としては咬傷痕の疼痛や掻痒感などでその後、頭痛、発熱、混迷、幻覚など。疼痛を伴う筋攣縮が特に問題となり、水分摂取による咽頭筋の攣縮(hydrophobia)、横隔膜・呼吸筋攣縮、送風による顔面の攣縮(aerophobia) が生じ、最終的には攣縮による心臓・呼吸器障害により死に至ります。
診断としてはその他ウイルス同定(唾液、脳、CSF)、抗原測定(皮膚生検)やPCR(唾液、皮膚生検)、抗体価などありますが、神経学的症状と流行地域での動物咬傷歴で臨床的に診断されている例が多いようです。治療としては痛みや恐怖に対する鎮痛・鎮静薬などの対症療法が中心となります。サンラザロ病院ではコレラ、腸チフス、ポリオ、髄膜炎菌感染症、狂犬病、ジフテリア、SARS、新型インフルエンザ、エボラ患者は強制入院の対象となっており、本症例も家族は帰宅を希望していましたが、Rabies roomでの隔離入院となっていました。ほとんどが動物からの感染で、ヒトヒト感染は臓器移植による感染の報告例があるようです。感染対策としては処置の場合はPPEを装着していました。また家族には暴露後ワクチンの接種が行われます。
狂犬病はつい数日まで元気な方が突然発症し、数日で命を落とすというとても痛ましい症例でした。
サンラザロ研修について(2015年) 
長崎大学病院 熱研内科
修練医 岩田 知真
当医局の修練医は毎年、教室の 先生方のご尽力の元、フィリピンはマニラにある国立の感染症病院サンラザロ病院で1ヶ月の研修を行わせて頂いております。私も2015年2月から1ヶ月の間、研修をさせて頂きました。当然現地での医療行為はできず、患者と医者間の会話も主には現地の言葉であるタガログ語でされるため、1ヶ月の研修で習得できる熱帯医学の知識には限界があります。しかし、実際に文字の上でしか知らなかった熱帯感染症を目のあたりにし、ドクターたちの診療に同行することで、教科書で勉強しているだけでは決してできない多くの発見がありました。1ヶ月は短い期間です。しかし、日本でいくら熱帯医学の本を読んでいても決して「熱帯医学」は理解できないと思います。なぜなら、医療は経済、社会そして文化的背景を無視しては語れないからです。今回の研修は実際にフィリピンでの医療を肌に感じ、さまざまな疑問や興味が生じました。幸いにしてフィリピンでは英語が第2公用語であるため、医者を始めとして患者さんにも英語がよく通じる国であり、生じた疑問や興味のある事柄についてはその都度、彼らに聞くことができました。熱帯医学に関わりたいと考えて当医局の門を叩いた自分にとってこの研修はかけがいのないものでした。最後に自分の経験した症例を1例紹介します。

IEのJaneway lesions

結核性脊柱彎曲症、結核性膿瘍
サンラザロ病院における1症例(2015年) 
長崎大学病院 熱研内科
修練医 岩田 知真
Thyphoid feverの1例 34歳 女性
主訴)発熱
現病歴)入院1週間前からの発熱、乾性咳嗽、入院前日からの筋肉痛を主訴にサンラザロ病院を受診。
既往歴)Tyhpoid feverで2回 の治療歴あり(詳細不明)、Leptospirosis(2001)
入院時身体所見)体温 39.2度、血圧 90/60mmHg、脈拍119bbpm 呼吸数 20/min、酸素飽和度95%(RA)、眼球突出あり、両側肺底部にCrackles聴取、その他特記所見なし
検査所見)BUN 5.8 Cr 0.61 TP 6.26 Alb 2.49 Na139 K 3.0 AST 122 ALT 154 ALP 128 WBC 12.85(Neut 89.6%) RBC 3.97 Hct 33 Hb11.6 plt 21 甲状腺T4 30.89(11-23), TSH 1.29(0.27-3.75) Salmonella RAPID IgG, IgM: negative マラリアスメア:1回のみ。陰性。Chikungunya: negative 胸部レントゲン、心電図、腹部エコー:特記所見なし 血液培養:入院後数回取られているがすべて陰性。便培養、尿培養:陰性
入院後経過)既往歴、および間欠的な腹痛が ありThypoid fever、また両側肺底部にCoarse cracklesを 聴取したことから肺炎の合併が疑われ、CTRX3g×1(5日間)にAZM 500mg(1週間)を加えて治療開始。しかし改善なく、入院5日目のレントゲンで両下肺野に浸潤影が出現したことからもTyphoid feverではなく、肺炎をより強く疑い抗生剤をCTRXよりPIPC/TAZ、次いでMEPM1g×3(14日間)に変更がするも39~40度台の発熱が遷延。入院16日目に提出したELISA法のサルモネラ抗体が後日、IgG 1.12(>1.0) IgM 1.34(>1.0)と陽性であったことから、薬剤耐性サルモネラによるTyphoid feverの可能性を考え、入院27日目にクロラムフェニコール500mg×4で治療を開始。その後も発熱が続いたため、入院30日目に1g×4に投与量を増量。その後は徐々に解熱傾向となり退院。診断は薬剤耐性サルモネラによるTyphoid feverとなった。
考察)東南アジアにおけるTyphoid feverの罹患率は1000 /100,000人年とされます。サンラザロ病院には2013年の統計では88人の患者が入院となっています。Salmonella感染症は診断のためには血液培養、血清学的検査および分子学的検査が用いられますが、感度、特異度ともにゴールドスタンダードとなるものはなく、診断はしばしば臨床経過から判断されます。 本症例では培養は陰性、来院時の迅速検査も陰性でしたが、16日目の血清学的検査でSalmonella抗体IgM, IgGが共に弱陽性で、ごく短期間だけですが間欠的な腹痛もあり、また発熱も1ヶ月近く遷延し、最終的にSalmonellaの治療薬であるクロラムフェニコールで改善したことからThyhoid feverと 診断されています。この診断には納得の行かない点も多く、抗体価が弱陽性でしかなかったこと、症状としては腹痛がごく短期間のみで他には明らかな症状がなかったこと、またクロラムフェニコール投与前にSalmonellaに対してより感受性をもつセフトリアキソンやアジスロマイシンが無効であったことからは本当にSalmonellaであったのかを疑いたくなります。しかし、クロラムフェニコールで解熱しておりやはりThyphoid feverであったのかもしれません。なんとなくもやもやの残る症例ではありますが診断はつかなくとも患者さんはひとまず解熱後に退院となっています。研修中、このようなもやもや症例は数例経験しました。サンラザロ病院での医療の一面をご紹介できればと思い今回掲載させて頂きました。
サンラザロ病院と熱研内科の事業について(2015年) 
熱帯医学研究所 臨床感染症学分野
大学院生 齊藤 信夫
【サンラザロ病院について】
フィリピン首都マニラに位置するサンラザロ病院は病床数500床程の国立感染症専門病院である。フィリピン最貧層のための慈善病院でもあり、比較的低所得層の患者が小児から成人まで多く入院している。フィリピンでの感染症診療の中心的な役割を担い、稀な感染症や治療困難な感染症の治療を行っている。


【主な疾患】
感染症専門病院であり、入院患者はほとんどが感染症である。年間1万5千人程の入院があり、そのほとんどが低所得者層の人々である。デング熱の入院が最も多く、次いで結核、肺炎、消化管感染症などが入院の多くを占める。熱帯感染症としては、デング熱、レプトスピラ症、腸チフスなどがみられる。稀な疾患としては、破傷風、狂犬病、ジフテリアなども見られる病院である。結核は死亡率が高く、入院後2~3割程の患者が亡くなっており、大きな問題となっている。

【長崎大学・サンラザロ病院共同リサーチラボラトリー構築】
サンラザロ病院はフィリピンでの感染症診療の中心的な役割を担い、世界的にみても稀な感染症や治療困難な感染症が数多くみられる。熱帯医学、熱帯感染症の教育や研究の場として、最適な病院である。しかし、診断検査・分析システムのための機材の設置場所や十分な研究を行える場所が存在しなかった。
また、長崎大学も熱帯医学・グローバルヘルス研究科の開設にあたり、熱帯地域での研究、教育を現場で行っていく海外拠点が必要とされた。
2014年2月サンラザロ病院院長(Dr.Go)が長崎に来日した際、サンラザロ病院内に研究・教育を行うことができる、リサーチラボラトリーを建設することを相手側と同意した。
サンラザロ病院内微生物棟のカンファレンスを改修し、微生物同定質量分析系システム(MALDI-TOF), PCRシステム、抗体検査システムの構築を行った。
2015年3月改修工事、機材の搬入設置が完成した。今後現地スタッフの育成、研究の推進、学生の受け入れを行っていく予定である。
リサーチラボラトリーの構築により、今後、研究、教育の発展のみならず、フィリピンの感染症予防およびコントロールを目指していきたい。




【長崎大学との歴史】
1999年 本学五十嵐章教授(元熱研所長)がサンラザロ病院を訪問
2004年 長崎大学とサンラザロ病院との間での学術交流協定締結
2004-2007年 21世紀COEプログラムにてサンラザロ病院での熱帯感染症臨床研修(毎年医師5名3週間)
2007年より毎年、熱研内科新入局員が1~2名が約1か月間臨床研修
2008年 熱帯医学専攻(MTM)にサンラザロ病院医師が入学
2009 学術交流協定更新(2014年8月19日まで5年間)
2010 - 2014 熱帯医学専攻(MTM)遠隔講義及び学生研究受入れ(6名)
2014年2月 院長Dr Go, 検査室長 Dr Tria招聘、 長崎大学訪問
2014年2月 熱帯医学グローバルヘルス研究科設立準備の一環としてサンラザロ病院内に長崎大学・サンラザロ病院共同リサーチラボラトリーを設置事業開始(感染症診断・分析システム構築)
2014年3月3日~3月12日熱帯医学ベットサイド研修(熱帯学・グローバルヘルス校開校イベント、参加者 日本人6名、フィリピン人2名、ベトナム人2名、ロンドン大学よりロビン教授、クリス教授が講師として参加)
2014年12月~2015年3月長崎大学修練医2名のベットサイド研修、熱帯医学修士課程学生受け入れ(尿抗菌薬活性の研究)
2015年2月 微生物検査室長 Dr Ribo, 内科 Dr Frayco招聘、熱研内科にて2週間研修
2015年3月 長崎大学・サンラザロ病院共同リサーチラボラトリー完成
【業績】
Amilasan, A. T., Ujiie, M., Suzuki, M., Salva, E., Belo, M. C. P., Koizumi, N., . . . Ariyoshi, K. (2012). Outbreak of leptospirosis after flood, the philippines, 2009. Emerging Infectious Diseases, 18(1), 91-94.
Dimaano, E. M., Saito, M., Honda, S., Miranda, E. A., Alonzo, M. T. G., Valerio, M. D., . . . Oishi, K. (2007). Lack of efficacy of high-dose intravenous immunoglobulin treatment of severe thrombocytopenia in patients with secondary dengue virus infection. American Journal of Tropical Medicine and Hygiene, 77(6), 1135-1138.
Honda, S., Saito, M., Dimaano, E. M., Morales, P. A., Alonzo, M. T. G., Suarez, L. -. C., . . . Oishi, K. (2009). Increased phagocytosis of platelets from patients with secondary dengue virus infection by human macrophages. American Journal of Tropical Medicine and Hygiene, 80(5), 841-845.
Oishi, K., Inoue, S., Cinco, M. T. D. D., Dimaano, E. M., Alera, M. T. P., Alfon, J. A. R., . . . Nagatake, T. (2003). Correlation between increased platelet-associated IgG and thrombocytopenia in secondary dengue virus infections. Journal of Medical Virology, 71(2), 259-264.
Putong, N., Agustin, G., Pasubillo, M., Miyagi, K., & Dimaano, E. M. (2011). Diphtheria-like illness due to corynebacterium ulcerans infection. Tropical Medicine and Health, 39(1), 1-2.
Saito, M., Oishi, K., Inoue, S., Dimaano, E. M., Alera, M. T. P., Robles, A. M. P., . . . Nagatake, T. (2004). Association of increased platelet-associated immunoglobulins with thrombocytopenia and the severity of disease in secondary dengue virus infections. Clinical and Experimental Immunology, 138(2), 299-303. Retrieved
Shimazaki, T., Marte, S. D., Saludar, N. R. D., Dimaano, E. M., Salva, E. P., Ariyoshi, K., . . . Suzuki, M. (2013). Risk factors for death among hospitalised tuberculosis patients in poor urban areas in manila, the philippines. International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, 17(11), 1420-1426.
フィリピン国立感染症専門病院(サンラザロ病院)での熱帯感染症ベッドサイド研修(2014年) 
長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科創設準備室
戦略職員 齊藤 信夫
期間:2014年3月3日~3月11日
主催:長崎大学熱帯医学研究所熱帯医学教育室・臨床感染症分野(熱研内科)
協力施設:サンラザロ病院、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院
コース参加者:フィリピン人医師2名、ベトナム人医師2名、日本人医師6名
外部講師:Robin Bailey教授(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)
Christopher M. Parry先生(リバプール熱帯医学校)
2015年10月開講予定の長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科創設準備の一環として、フィリピン首都マニラに位置する国立感染症専門病院であるサンラザロ病院において、熱帯感染症ベッドサイド研修を開催しました。この研修の目的は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院と連携して、熱帯地域のベッドサイドにて、世界水準の熱帯感染症に関する臨床教育と研究を推進することです。
研修の特徴:
・実際の熱帯感染症症例を通して熱帯医学の臨床研修ができること
・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院と連携し世界水準の教育を受けることができる
・ベッドサイドの疑問から臨床研究へ結びつける道筋を学べること
・多国籍の医師で構成されたチームで症例検討することにより、診療マネージメントの相違を理解する
・英語での教育
などが本研修の特徴となっています。詳細の日程は別紙1に示しています。
コース内容:コース内容は講義、病棟回診、チーム診療、ディスカッションから成り立っています。
〇講義
講義はフィリピン人医師による熱帯感染症講義(レプトスピラ症、デング熱、破傷風、髄膜炎菌、マラリア)とイギリス人医師からの臨場感あふれる講義(ロビン教授はアフリカの熱帯医学について;クリス先生は熱帯地域での感染症診断、腸チフス、メリオイドーシス)が行われました。世界的にみても非常に多くの熱帯感染症症例を診ている現地医師からの講義とその講義の後に実際の症例を現地医師と一緒に診る事により、教科書では学ぶことができない貴重な体験を得ることができました。日本では診る機会の少ない実際の熱帯感染症症例を通して、世界トップクラスの熱帯感染症専門医と共に学ぶことは非常に有用な教育効果があったと思います。
〇チーム診療、ディスカッション
参加者を2チームに分け、それぞれに新規入院患者を振り分け、イギリス講師がサポート役で参加しました(1チーム:日本人医師3名、フィリピン人医師1名、ベトナム人医師1名、イギリス人講師1名)。1週間で1チームにつき4症例が割り当てられます。振り分けられた患者より、病歴、身体所見をとり、アセスメント、プランを検討します。アセスメントとプランについては、先進国のような診断機材が豊富にある場合と途上国で最低限の診断機材しかない場合と二つのセッティングでそれぞれどのようにマネージメントするかをまとめる作業を行いました。また、それらの症例を通して臨床課題を浮き彫りにし、その課題に対してどのような臨床研究をデザインすればいいのかについても議論しました。非常に難しい課題についても、外部講師のサポートにより、効率よくまとめることができました。また、細かな病歴聴取の仕方、身体所見の取り方、鑑別疾患、臨床研究の設計方法など非常に熱心に教えていました。
実際に振り分けられた症例を下記に示します
1. 41歳男性、3日間の及ぶ発熱、上気道症状
2. 23歳男性、2か月に及ぶ発熱、呼吸苦
3. 19歳男性、5日間の発熱、発疹、結膜充血
4. 28歳女性、6日間の発熱、発疹、倦怠感、リンパ節腫脹
5. 23歳男性、2か月前からの発疹、発熱、下痢
6. 30歳男性、2か月前より発熱、頭痛が出現し、意識障害が進行している症例
7. 34歳男性、3日間の発熱、発疹
8. 53歳男性、6日前からの発熱、胸痛、徐々に進行する呼吸苦
症例にはデング熱、麻疹、水痘など典型手的な症例に加え、HIV/AIDSが疑われる症例や結核性髄膜炎が疑われる複雑な症例から、日本でも良く診る上気道炎なども症例に加えました。日本で良く診る症例でさえ、国や施設が違えばマネージメントは変わってくるため大変勉強になります。また、典型的と思える症例もイギリス人医師と共に違った視点でみることにより多くを学ぶことができました。また、HIVが疑われる症例では患者が検査を拒否しており、その他の日和見合併症を病歴聴取、身体所見から診断していく事が求められました。それらの症例からリサーチクエスションを導き出し、臨床研究の手法を検討します。多くの参加者が研究に従事した経験がなく難しい課題でしたが、リサーチにも熟練したイギリス人講師のサポートにより、臨床研究設計するところまで行う事ができました。参加者にはサンラザロ病院勤務医の前でのプレゼンテーションが課されました。皆、素晴らしい発表をみせました。リサーチクエスチョンまで考えるという方法はサンラザロ側にも新鮮であったようで、彼らにもいい影響を及ぼしたと思われます。
全体の感想:
内容が濃く、非常に忙しい1週間でしたが、受身の講義や見学のみの浅い研修ではなく、皆が積極的に学ぶことにより、より深い学びが出来たと思われます。また、Prof RobinやDr Chrisといった世界トップクラスの先生と症例診察、議論を行い、1週間常に一緒にいる事で彼らがどのように考え、どのようにマネージメントを行うかを身近に感じる事が出来たと思われます。今回は1週間と短い期間での開催でしたが、幅広い熱帯医学をより深く学ぶために今後はさらに発展した研修を行って行けたらと思います。

開会式の写真

Prof Robin Baileyによる講義

Dr Chrisによる講義

チームでの患者診察(Dr Chris)

チームでの診察(Prof Robin)

チームディスカッション(Prof Baily)

フィリピン人医師による講義
(Dr Dimaano)

全体での症例討論

担当患者さんとの写真1

担当患者さんとの写真2

夕食は一緒に

閉会式
サンラザロ病院研修感想文(2014年) 
長崎大学病院 熱研内科
医員 望月 恒太
2014年2月13日から3月13日までフィリピンのサンラザロ病院で日本ではみられない感染症の勉強をしてきました。滞在はとても有意義で勉強になりました。
疾患については、麻疹のkoplik斑、破傷風の開口障害、デング熱のrashなど各疾患で特徴的な所見を数多くみることができています。毎日の変化も追うことができ、全体像も具体的にイメージできとても勉強になりました。
また、日本の肺炎ガイドラインの発表をする機会をいただきましたが、discussionについてフィリピンとの違いでいくつか面白い話がありました。そのうちの一つですが、LVFXの使用について日本より神経を使っていることを感じました。結核の有病率が違うため耐性菌を作らないようにしているとのことでした。また、外来でCTRXの点滴をすることに驚いていました。フィリピンでは患者さんが面倒くさがってそのような方法は成り立たないだろうとのことで、システムや細菌の抗生剤への耐性度のみでなく、患者さんの性格もずいぶんと違うことを感じました。
もう一つ印象的だった話は抗結核薬についてですが、4剤がすべて同じ一つの錠剤に含まれていることでした(滞在中非常によく教えてくださったフェローの先生によると「ばらばらにしたら飲んでくれないよ」と)。良くも悪くも細かいことは気にしない国民性が出ているのではないかと思いました。同時に日本人はいろいろと几帳面だなと再認識しました。
うれしかったことは、サンラザロの先生方と同じタイプの白衣をオーダーさせてもらったことです。
心が折れそうになったことはアパート初日と最終日にトイレットペーパーが詰まって使えなくなったことです。やはり日本と同じようにはいきません。
滞在中フェローの先生方は疾患のことのみならず、普段の生活やちょっとした注意点など非常によく教えて下さいました。また、ナースの方や事務の方も皆フレンドリーでお世話になりました。一人で外国の環境にいると時にすごく心細く感じることがありますが、現地スタッフの方々のおかげで楽しく過ごせました。サンラザロ病院からの来客はもちろんですが、他国他施設からも今度日本にくる時は同じようにおもてなしをすることが恩返しになるのではないかと思いました。
サンラザロ病院における2症例(2014年) 
長崎大学病院 熱研内科
医員 望月 恒太
症例1) 31歳 女性
主訴)熱感、斑丘疹
現病歴)受診6日前熱感、寒気、鼻かぜ、結膜炎、咽頭痛、1日2回程度の軟便が出現した。受診5 日前湿性咳と黄色痰が出現した。受診3日前に斑丘疹が顔面に出現し、次第に体幹、四肢へと広がった。受診数時間前に呼吸苦を自覚しサンラザロ病院を受診した。
既往歴)特記事項なし
生活歴)職業歴:ハウスメイド、旅行歴:なし、Sick contact:2014/2/7自分の子供に麻疹ワクチンを打たせるため保健センターに行ったとのこと、淡水への暴露:なし、喫煙:なし、飲酒:なし最終月経、2014/2月最初の週
入院時現症)BT 39.4℃、HR 110、RR 26、BP 130/96、体重 64kg
両眼:結膜炎、貧血なし、黄疸なし、口腔: 扁桃軽度腫大、発赤なし、koplik斑点なし、胸部所見:呼吸音ラ音なし、心音雑音なし、顔面―体幹―四肢:斑丘疹あり、浮腫なし

斑丘疹

結膜炎
血液検査)WBC 5.30, neutro 56.9, lym 21.9, Eo 1.6, Mo 15.0, Ba 4.6, RBC 4.47, Hb 12.93, Hct 0.385, Plt 22.8, Na 129.2, K 3.33, TCa 2.35, BS 163
入院後経過)特徴的な斑丘疹と3c(cough, conjunctivitis, coryza)から麻疹と診断した。呼吸苦もあり、呼吸音は入院時清明だったが、同日両側下肺野にcoarse cracklesを聴取したため細菌性肺炎の合併が疑われ、補液、セフロキシム750mg×3で抗菌剤が開始された。また、ビタミンA 200000単位2日間も内服した。2病日には解熱したが、1日5回ほどの水様下痢が出現したため、止痢剤を開始しその後症状は軽快した。3病日にK 3.33と低カリウムが判明したため、経口で1日120mEqのKCL製剤を開始した。食事もとれており全身状態もよかったため、4病日に退院となった。退院後細菌性肺炎の合併についてはセフロキシム 500mg 2×7日間で加療継続となった。
症例について)子供の麻疹のワクチン接種に行き、自分が感染してしまったという一例です。
一般的な話ですが、麻疹の潜伏期は10-14日と言われています。症状は2-4日間の咳、鼻かぜ、結膜炎、発熱、不快感等の前駆症状ののちに、koplik斑が出現し、その直後に斑丘疹が現れるのが典型的な経過です。他人に伝染性があるのは症状出現の1-2日前から発疹4日後までとされています。ビタミンA 20万単位を2日間経口投与することで、2歳以下の乳幼児、栄養状態の悪い患者において麻疹の重症化を減少させるようです。
参考文献)Harrison 18th edition
症例2)23歳、女性
主訴)腹痛、水疱疹
現病歴)妊娠36週であり、妊娠7ヶ月までは定期受診など一切なかった方。受診3日前に熱感を感じた。受診2日前に腹部に水疱疹がわずかにあった。受診1日前に水疱疹が出現し、腹部から全身に広がった。症状が改善しないため近医を受診し、サンラザロ病院を紹介された。
既往歴)初期結核(幼少時、6ヶ月間の抗結核治療)
生活歴)渡航歴なし、喫煙6本5年間、飲酒毎日ビール1-2本ボトル
入院時現症)BT 37.0℃, HR 110, RR 24, BP 120/80
腹痛で叫んでいた。
呼吸音:ラ音なし、心音:雑音なし
腹部:球状に膨隆、顔面、体幹、四肢:水疱疹を多数観察
血液検査)WBC 12200(neutro 76.3%、lymph 14.7%、Eosino 0.6%、mono 7.7%、Baso 1.40%)、RBC 341万、Hb 10.5、Hct 0.32、MCV 94、MCH 30.9、MCHC 32.99、Plt 18.8万
入院後経過)当日は午後11時頃に入院し、水疱疹から水痘の診断でアシクロビル800mg5× 5日間の治療を開始した。入院時から腹痛を認め、翌日午前2時頃に自然分娩があった。2.4kgの女児で、Apgar scoreは8-9点で羊水混濁がみられたため、AMPC、GMの投与が行われ経過良行とのこと(同院小児科で加療された)。母親については、細菌感染予防のため、AMPC/CVA(4/1) 425mg 2×を7日間投与された。その後合併症もみられず、水疱も痂皮化し、7病日に退院となった。
症例について)水痘は1歳未満あるいは15歳以上では重症化しやすく、妊娠第三半期では特に重症肺炎の合併のリスクが高く、死亡率も高いと言われています。免疫を持っていない妊婦はvaricella zoster Immunoglobulin(VZIG)の暴露後投与が推奨されます。暴露後72-96時間以内に投与されれば、発症率を下げると言われています。しかし、治療的な効果はないとされ一度発症すれば無効となります。治療は水疱出現から24-72時間以内にアシクロビル 500mg 5T5×を開始します。妊婦への薬剤の安全カテゴリーはBとされ、妊娠20週以内であればメリットが大きければ使用を考慮します。
参考文献)Pregnancy and varicella infection. 2013; 79; 2; 264-267 IJDVL
サンラザロ病院 院長Go先生 来日(2014年) 
熱帯医学研究所 臨床感染症学分野
大学院生 齊藤 信夫
2014年2月18日、19日長崎大学の学術提携病院であるサンラザロ病院より院長Go先生、臨床検査部長Tria先生、フィリピン保健省Marilyn Go先生の3名が来日されました。サンラザロ病院は首都マニラ北部にある病床数500床程の国立感染症専門病院です。当科との関わりは、若手医師の熱帯感染症研修病院として、毎年1か月に及ぶ研修を依頼しているほか、結核、レプトスピラ症、腸チフス、不明熱、デング熱などの共同研究をこれまで行ってきました。
今回の来日の目的は、今後熱帯医学グローバルヘルス校開設にあたり、教育や研究の海外拠点として、これまで以上に強力で、具体的な協力関係を構築する事を目的としています。
2月18日に来院され、長崎大学学長表敬訪問、熱帯医学研究所所長表敬訪問、長崎大学病院教育センター訪問、大学病院見学など過密なスケジュールを過ごされました。大学病院見学では、教育センター浜田教授、宮本先生より、最先端の教育システム(シュミレーター)や救急部などの見学を行い、非常に興味深く見学されておられました。18日にはフィリピンにおける災害後の対策、台風被害後の保健省の対策、現在起きている麻疹の流行に関する講義を行って頂きました。
19日には、当科有吉教授、鈴木先生、佐藤先生を交えて、今後の協力体制に関してざっくばらんな意見交換を行いました。サンラザロ病院としては、長崎大学と協力体制をさらに強化したいという意志があり、熱帯医学グローバルヘルス校への協力をぜひ進めて行きたいということでした。両校より、率直な意見交換を行い、今後の関係強化にむけて、具体的な方針などを協議する事ができ、大変有意義なものとなりました。今後は、昨年末より取り組み始めている、リサーチラボの施設強化を進めて行く予定です。

学長表敬訪問

熱帯医学研究所所長表敬訪問

フィリピンでの麻疹流行
台風災害後の影響などの講義

熱帯医学研究所の前で

今後の協力関係に関して意見交換

会議後、有吉教授と
2013年フィリピン台風30号被災民支援活動報告 
長崎大学病院国際医療センター感染症内科(熱研内科)
助教 神白 麻衣子
このたび、NPOジャパンハートの活動と大学からの派遣を兼ねて、フィリピンを襲った巨大台風後の被害に対する医療支援に参加する機会を得ましたので、報告させていただきます。
<概要>
1)活動名称:フィリピン台風30号Haiyan(Yolanda)被災民支援活動
2)活動団体:特定非営利活動法人ジャパンハート(共同:CEMIJ, Amity)
3)活動地:フィリピン Panay島Capiz州 Panay町・Roxas市Olotayan島
4)活動内容:台風被害が甚大で交通アクセスの悪い沿岸部集落・離島における巡回診療
5)活動期間:2013年11月29日〜12月1日
<スーパー台風Haiyan(Yolanda)について>
2013年11月8日、猛烈な台風30号Haiyan(フィリピン名Yolanda)が、最大風速296km/h(82m/s)の勢いで午前4時40分のフィリピンサマール島ギワン上陸を皮切りに、レイテ、セブ、パナイ島を通過した。
被害はフィリピン全土81州中44州におよび、死者5,632人、傷病者26,136人、行方不明者1,759人を出し、被災民の合計は2,376,217世帯11,236,054人に達した(12月1日現在)。

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<活動の経緯>
私が属するNPO法人ジャパンハートは、通常ミャンマー、カンボジア、ラオスを活動地とし、医療保健活動を行っているが、同じ東南アジア内の被害であることから、台風被害に対する医療支援活動を行うこととし、11月14日にフィリピンに先遣隊を派遣、ロジスティクス担当の災害救援安全管理員、現地の消防団Amityスタッフの協力を得て現地調査に当たった。最も被害が大きいレイテ島への自力での上陸は困難と判断、同じく台風の通過域となったパナイ島カピス州ロハス市に本拠を置き、活動地としてロハス市に隣接するパナイ町沿岸部の医療機関アクセスが困難な島状バランガイ(集落)を選定し、11月19日から11月30日まで巡回診療を行った。
私はジャパンハート理事として活動終了を見届ける目的を兼ね、11月29日から巡回診療に合流し、12月1日に活動終了後の報告・現地への申し送りを行い、12月2日支援チームが解散するまで、短期間ではあったが支援活動に参加する機会を得た。


<現地の状況と活動内容>
私がロハス空港に到着したのはすでに台風通過から3週間が経っていた。空港は飛んだ屋根部分をシートで覆い、周りじゅうを修繕工事しながら営業しており、東日本大震災後の仙台空港を思い出させた。


ロハス市内では倒れた木や電柱は脇に寄せられ、多くの建物の屋根は修繕されるかシートが掛けられ、新たに電線が張られて電気がつきはじめており、調査開始時に現地から送られて来た写真と比較すると確実に復興の兆しが見えていた。
11月29日はパナイ町のAgojo(アゴホ)というバランガイ(集落)で巡回診療を行った。パナイ町に入ると、多くの木が根こそぎ倒れ、倒れた電柱からは電線がぶら下がり、全壊した木造家屋が散見され、残っている木は枝がすべて同じ方向を向いていた。





11月30日は1時間20分の船旅の末、Olotayan島で巡回診療を行った。
被害は暴風より高潮によるものが大きく、建物(倒壊しなかった建物は10棟未満)や船、農水産業の被害はもとより、飲料水の被害も甚大であった。生活用水用の貯水タンクが破壊され、井戸も海水をかぶって汚染されたためである。当初は水の確保が緊急の課題であったが、現在はカナダ軍などのヘリコプターで飲料水や物資が時折届けられていた。






屋根を修繕された教会を使用して診療を行った。一部のメンバーは島の裏側の集落へ訪問診療に赴いた。合計122名の診療を行った。巡回診療を終了するにあたり、残った診療材料等をヘルスセンター(倒壊)に寄付し、記念撮影後島を後にした。




診療の様子
患者症状内訳:両集落とも上気道炎症状が大部分(約6割)を占めた。その他、血圧上昇、不眠、食欲不振、頭痛、関節痛等の被災後ストレスに起因すると思われる症状も目立った。喘息患者、皮膚疾患も散見されたが、外傷は少なかった。
最初から活動しているメンバーによれば、当初は発熱や下痢、また日陰の不足から熱中症様の訴えもよくみられたが、徐々に慢性的な症状が増加してきたとのことである。
<診療以外の活動>
毎日巡回診療終了後には、Capiz州全体の支援団体担当者が集まるミーティングに参加した。医療関係の支援団体のみが集まるミーティング(医療クラスターミーティング)の後に全体ミーティングが行われた。医療クラスターミーティングではWHO西大西洋事務局(WPRO)からの介入があり、各団体に対して毎日の患者数報告を求められるなど、感染症アウトブレイクなどが早い段階で察知されるよう対策がなされ始めていた。全体では州と国連関連の担当者がミーティングを運営しており、適宜アップデートされた情報が共有されるようになっていた。当初からの活動者によれば、活動団体が少ないうちは、医療のみならずすべての団体の情報を共有して活動地や活動内容を決めていたが、団体が徐々に増え情報が膨大になり、全体ミーティングとクラスターに分かれたミーティングの形になったとのことである。
ミーティングを通じ、災害救援活動においては、各団体は活動そのものだけでなく、現地各地を調査しモニターするという役割もあるということ、国際機関や他国の団体と協調して動くためには、相当な英語力がなければ厳しいことをひしひしと実感した2時間であった。(フィリピン人はそれを難なく出来る)


ロハス市内の病院が機能を取り戻したこと、地元カピス医師会をはじめとする他団体が活動を拡大して来たことから、11月30日をもって私たちの巡回診療は終了となった。
活動終了時にはPanay町役場で町長に感謝状を授与された。 Panay町は3週間経ってもなお停電が続いているらしく、発電機を回している役場に多くの若者が携帯電話を充電に来ていた。



最後はCapiz州議事堂・保健局にて活動報告を行い、薬品をCapiz保健局に寄付して活動を終えた。
<おわりに>
今回の活動は、われわれ医療従事者のみならず、ロジや通訳を担当してくれた隣島の消防団Amityのメンバーをはじめ、地元保健局など多くの人との共同作業で初めて成り立つものであった。団体としては災害支援について、安全管理、通信、言語、滞在場所、薬剤の選定や調達管理、事務局との連絡方法など、様々な問題に直面し、学ぶ事も多かった。
また、台風被害の甚大さに驚いた。風雨よりも高潮による被害が大きく、その風景は東日本大震災の津波被害を思わせたが、私は2008年5月のミャンマーのサイクロンナルギス後(13万人以上が死亡・行方不明)の風景と同じであると感じた。当時も高潮被害で多くの命が奪われたが、その教訓は活かされたのだろうか。
現地滞在中には感染症アウトブレイクの報はなかったが、上記2つの災害後と同様、心身ともに長期的な影響が懸念される。そんな中でのフィリピンの人々の明るさは印象的であった。自身が被災しつつも他団体の支援に対し協力を惜しまず、今回はその国民性を見直す事が多かった。これからもその被害状況、復興に対して注視していこうと思う。
急な活動参加にもかかわらず、大学の業務として、医局の先生方が快く活動に送り出してくださったことに感謝いたします。
熱帯地域感染症専門病院における研修(2009年) 
長崎大学病院 熱研内科
後期研修医 加藤 隼悟
私は2009年12月14日からフィリピン・マニラにあるサンラザロ病院での研修を開始しています。これまでの簡単な経緯と、同院での研修の特徴、今後の抱負などを報告します。
私は初期研修を終えて2009年4月から後期研修医として熱研内科での研修を開始しています。熱帯医学に興味を持ち、熱帯地特有の感染症も含めて、熱帯地域で遭遇する様々な疾患を勉強したいと考えて当科での研修を希望しました。まずは大学病院で感染症や呼吸器疾患の診療を通して研修を行い、折に触れて長崎大学大学院熱帯医学修士課程の講義の一環として、熱帯感染症ケースカンファレンスでのプレゼンテーション(スライドと発表を英語で用意)させて頂いたり、時にはロンドン大学衛生熱帯医学校よりお招きした教授に熱帯感染症のレクチャーをして頂く機会もありました。
当科では例年後期研修医や新入局員のうち熱帯医学に興味があるものは熱帯地における研究やフィールドワークを体験する機会がありました。これは例年では2週間程度の短期間であったが、今年度からは2~3ヶ月程度の期間を設けて、見学だけに終わらずに研修として熱帯地における臨床または研究に深く関わることで、研修生にとって生きた経験となり後々のキャリアデザインの一助になることが期待されています。研修先は様々ですが、本年はベトナム・ニャチャンのカンホア省立病院における保健プロジェクトおよび呼吸器感染症調査、ガンビアの英国医学研究協議会(MRC)研究所におけるフィールドワーク、フィリピン・マニラのサンラザロ病院における熱帯感染症臨床研修および肺結核調査などがあります。私はこのうちのサンラザロ病院における研修に参加することとなり、2009年12月10日からマニラでの生活を開始しています。
サンラザロ病院では既に当科の氏家医師が10月から臨床研修と並行して、台風通過後の洪水後に認めたレプトスピラ症のアウトブレイクに関する臨床研究に携わっていました(別項参照)。サンラザロ病院の職員の皆様には快く歓迎して頂き、非常に親切に対応して頂いているほか、氏家医師からの指導も頂き、サンラザロ病院での研修は充実したものになっています。特に、感染症専門病院であるため、日本では滅多にみることのできない熱帯途上国にみられる感染症(デング熱、狂犬病、破傷風、腸チフス、ジフテリア、住血吸虫症、髄膜炎菌症、結核、麻疹など)を数多く認めます。このような症例に対して、入院後から退院までの診察・検査・アセスメント・治療などの一連のマネジメントを、現地スタッフとともに議論しながら自分なりのマネジメントをシミュレーションすることもできます。病院の敷地内に宿舎を用意して頂いているため、研修においては非常に便利です。可能な検査が限られていて、患者さんの殆どが診療費を払えないといった社会的問題もある中で、どのような診療が可能であり、どのようなプランが現実的に妥当となるのかなど、日本では経験できない診療スキル、アセスメントを経験できます。感染症を通して熱帯地における地域医療、プライマリケアを経験する上では最適な環境といえます。
研究に関してはアウトブレイクの収束もあり、先行していたレプトスピラ症の調査は一段落しています。今後は同院と当科との間での共同研究として、新たに肺結核についても調査していくこととなっています。肺結核は同院においてデング熱についで症例が多く、死亡者数も多くなっており、科学的介入による改善の余地が見込まれています。同院における肺結核患者数や死亡数の推移などの疫学的調査や、肺結核症例のマネジメントにおける要点、医療従事者の予防行動、病棟管理体制などに着目し、同院における肺結核診療を更に向上させることを目指して、今後のスタディデザインが構築されていく予定です。まず私は結核病棟での患者診療に携わり、現場の状況を把握するとともに、同院における肺結核の患者数と死亡数の年次推移を抽出する作業に取り組んでいます。引き続き研修期間中には今後の研究の足がかりになる事象抽出に取り組んでいく予定です。
休暇にはフィリピン観光も可能です。ただし、病院周辺はマニラでも特にスラム街に近い状況で注意も必要です。日中外出してみると路上生活者や物乞いの人々を見かけたり、屋台やバイクタクシーで生計を立てている人々の生活を見て、社会勉強になることは多々あります。フィリピンの社会問題や衛生・保健の問題をリアルに目の当たりにすることができます。また、郊外に足を運べば綺麗な海も山もたくさんあります。フィリピンは多数の島からなる国家で、民族も実に様々で地域によって文化の違いがあるそうです。私は約2ヶ月間の研修予定ですが、ある程度まとまった期間であるため、休暇に病院外での貴重な経験をすることもできそうです。
本稿記載時は研修を開始して2週間弱の時点ですが、今後更に研修内容は充実したものになっていくと予想されます。同院は教育指定機関でもあるため、医学生やレジデント、フェローも多く、スタッフはとても教育的です。症例の充実もさることながら、病院の雰囲気も非常に研修に適しているといえます。より多くの症例を経験し、教科書や最近の知見と照らし合わせてじっくりと熱帯感染症の勉強に取り組みたいと考えています。熱帯医学、特に臨床熱帯医学に関心がある人にとっては最適の研修であると断言できます。ただし、日本と比べると生活上の不便は少なからずありますが、十分適応可能な範囲であり、これもまた熱帯医学を学ぶ上での良い経験と考えられます。私は氏家医師が先に現地入りしていたお陰で、非常に助かりました。今後、当科から研修へ伺う場合は、事前に経験者から情報を得ておくことで生活上の困難は改善しやすくなると思います。
大学を卒業した時点では3年後に熱帯地域で臨床医学に関われるとは思っていませんでした。こうしてフィリピンの人々に囲まれながら、慣れない英語を駆使してなんとかコミュニケーションをはかり、診察したり、スタッフと一緒に食事をしたりしていると、実際に海外で勉強して働くという夢の小さな一歩が踏み出せたことを実感します。この経験は今後さらに熱帯医学、国際医療協力を学ぶ上で役立つであろうと思いますが、日本における診療でも社会的問題、地域医療、感染症診療の場面では役立つものと考えられます。今回、このような貴重な経験を与えていただいた皆様に感謝するとともに、今後につながる有意義な研修となるように一層の精進をはかることを確認し、報告とします。

同行した氏家先生

フィリピンの美味しい料理

フィリピンの民族舞踊の衣裳
サンラザロ病院での活動の紹介(2009年) 
長崎大学病院 臨床医学分野
COE研究員 氏家 無限
2009年10月より3ヶ月間、フィリピンのサンラザロ病院にて、研究活動及び臨床研修をさせていただいています。今回はその活動の一部を紹介させていただきます。
サンラザロ病院は首都のマニラ北部にある病床数が500床程の国立感染症病院です。フィリピンでは健康保険制度が十分に普及していないため、高い治療費を払うことのできないたくさんの人たちがサンラザロ病院を頼ってやって来ます。そういった患者さんの病気をみると、肺炎や急性腹症などの一般的な感染症の他、フィリピンで大きな問題になっている結核、日本では流行のないデング熱、腸チフス、狂犬病等、さらにはワクチンの普及で日本では少なくなった破傷風、ジフテリア、麻疹、水痘といった様々な感染症が日常的に治療されています。実際の患者さんを目の前で診療することは、教科書を読んで病気を勉強するよりもずっと分かりやすく、また印象深く学ぶことができ、普段日本で診療を行っている私にとって、普段診療することのできないたくさんの病気を学ぶことができて、とても良い経験になりました。
サンラザロ病院の検査施設は日本と比較すると十分に整っているとは言えず、例えば画像検査はレントゲンの機械が1台あるのみで、CT検査やMRI検査は隣の病院まで患者さんに行ってもらわなければ検査できません。高価な検査がなかなかできない分、患者さんの話、ひとつひとつの症状や身体所見が、病気を診断して治療するうえでとても重要になってきます。サンラザロ病院の先生に患者さんの様子を伝える時には、例えば頭痛の症状ひとつとっても、どの場所がどのような性状でいつからどの程度痛いのか、その症状が他の症状とどのように関係しているのかを考えながら伝えることが要求されます。日本では早々と「じゃあ、検査をしてみましょう」となって確認できることも、ここでは患者さんから情報をできるだけ集めて、推察することしかできません。この患者さんを直接診るという最も基本的な診療行為の重要性も、サンラザロ病院で改めて確認することができました。
検査が制限されることで診察の技術がより重要になりますが、臨床診断を確認するための検査ができないことで、診断が本当に正しいのか、特に治療がうまくいかなかった時には困ることもあります。注意深い診察に基づいて下される臨床診断もその答え合わせ(確定診断)が必要になります。また正しい情報をたくさん蓄積することで、さらに詳しい病気の傾向やより良い治療方法が考えられて、また将来の臨床診断の役に立ちます。この診断を確定する、情報の蓄積する、評価をするという部分こそ、長崎大学熱帯医学研究所がサンラザロ病院に対して最も貢献できる分野だと考えています。
私の滞在直前にはフィリピンで過去40年の中で最大の台風被害があり、マニラの大部分が洪水で浸かり、400万人以上の人々が避難する等の影響を受けました。その後マニラでは、レプトスピラ症という汚染された水から人に感染する病気の数が急激に増えて、私がサンラザロ病院に来た時にはレプトスピラ症の患者さんで病院が廊下まで溢れかえっていました。当時のサンラザロ病院には、検査でレプトスピラ症を確認することができず、患者さんからこの病気に関する必要な情報を集めるシステムもなかったため、私の滞在期間中にはレプトスピラ症専用の調査用紙を作成したり、患者さんの情報や検体を集めてまとめたりする手伝いをさせていただきました。このような調査の結果が病気のより詳しい特徴を理解して、さらに良い診断方法や治療方法を考えるための役に立つはずです。
サンラザロ病院と長崎大学熱帯医学研究所の協力関係はまだ始まったばかりですが、今後も長い時間をかけてお互いを理解していくことで、臨床医療と医療研究の両分野においてお互いになくてはならない自転車の車輪のような関係を築いていけることを強く願っています。最後にこのような貴重な経験を与えていただいた長崎大学熱帯医学研究所臨床医学分野、並びにサンラザロ病院のスタッフの先生方に感謝を申し上げて、マニラからの活動報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。

サンラザロ病院ゲートにて

小児科スタッフと

病院カンファレンスでの発表
21世紀COEプログラム、熱帯感染症研修コース(フィリピン)に参加して(2007年) 
長崎大学病院 熱研内科
後期研修医 齊藤 信夫
平成19年9月3日より9月21日まで3週間、フィリピン、サンラザロ感染症病院で熱帯感染症研修を行ってきました。感染症についての研修は主にサンラザロ感染症病院で研修を行いました。その他、セントルーク医療センター、WHO、National Children Hospitalでの研修。
サンラザロ感染症病院概要:サンラザロ感染症病院はフィリピンのマニラ市にある感染症病院でセンターは,1577年に設立されました。病床数500床の感染性,伝染性疾患に対する第三次救急病院です。病棟は小児、青年、大人、ICU、TB、AIDSに分けられています。ぼくが訪れた9月はデング流行時期でデングの患者が廊下にまで溢れかえっていました。
比較的多く診ることができた疾患:デング、レプトスピラ、チフス、小児下痢、結核、破傷風 数例だが見ることが出来た疾患:狂犬病、ジフテリア、マラリア、フィラリア、住血吸虫、AIDS
感想:
学生時代より、熱帯医学に興味を持っていたのですが、今まで実際に熱帯感染症を診療したことはほとんどありませんでした。かねてより熱帯感染症の研修を行いたいと考えており、本プログラムに参加させてもらいました。サンラザロ感染症病院に着いた時は、正直驚きました。信じられない数の多種多様な熱帯感染症がこの病院には集まっていました。廊下にはデングの患者が溢れ帰り、鉄格子の部屋には狂犬病の患者がいました。どの疾患をとっても今まで教科書の中でしか見たことのないものでした。多くの患者が毎日入院してきて、劇的な経過をたどっていきます。なかには、今まで元気であった30代の男性がレプトスピラで急性腎不全になり、入院後数日で死亡していく例もありました。
病棟ではフィリピン人の感染症専門医と一緒に1例1例丁寧に診て行きます。毎日数多くの熱帯感染症を診ている専門医と一緒にみることで、彼らの診療テクニック、熱帯感染症に対する考え方を学ぶことができます。気になる患者がいたら、毎日、診察に行き経過を診て行く事ができます。午後からは、私達に対して、専門医による講義が行われます。実際に多くの経験をしてきた、専門医の講義があり、講義の後、実際にベットサイドで患者を診ながら、レクチャーがあります。知識不足であった僕にとっては大変勉強になりました。空き時間は自分の気になる患者がいたら、診に行ったり、外来の見学をしたり、もっとみたいと思う疾患をみたりします。毎日新しい患者が運ばれてくるので興味が尽きません。3週間という期間はあっというまですが、日本ではあまり見ることができない熱帯感染症を短期間に集中的に、しかも専門医の指導の下で勉強することができました。
温暖化の進行する地球環境において、日本においても今後、熱帯感染症が流行する日が来るといわれています。このような状況において、熱帯感染症を現地で勉強するという貴重な経験をすることができました。

デング出血熱の子供、デングラッシュ

デング熱で入院となった子供に
ターニケットテストをしているところ

サンラザロ感染症病院にて

ベットサイドにてレプトスピラの患者を前に
ミニレクチャー
活動:フィリピンにおけるデングの臨床的研究
期間:1998年~ 現在は大阪大学微生物病研究所(大石和徳教授)で続行中 

1577年に設立され,現在はフィリピンにおける国立感染症専門病院として機能している.慈善病院でもあり,雨期のデング熱流行期には毎月数百人ものデング熱患者が入院する.
(こちらも併せてご覧下さい)



デング熱,デング出血熱において解熱後によく見られる
四肢の紅斑.紅斑の中に,島状の蒼白部を認める.





