本施設は,熱帯性病原体に関する研究に必要な,動物実験および病原体の株保存などを行うことを目的として1978年に建築された。その後1988年に増築工事が行われ,建面積198m2,延面積488m2の鉄筋コンクリート3階建からなっている。
施設内は,3段階の空気調整がなされている。室内には高性能のHEPAフィルター等を設置して,使用病原体や感染動物の外部への拡散・漏出・逃避,すなわちバイオハザードの防御を最大の目的としている。SPF飼育室のほかに,P3レベル実験室及び飼育室を有しており,実験動物の飼育や,各種病原体の感染実験を行っている。
動物実験を実施する際に,遵守すべき事項,および動物福祉の観点から,その倫理性に配慮した適切な実験を,長崎大学動物実験指針に準拠して行っている。
平成11年度の本施設の利用状況と研究活動は,次の通りである
研究分野(部門名) | 研究課題 |
分子構造解析 (ウイルス) |
日本脳炎ウイルスのマウス感染実験(マウス) フラビウイルスの病原性の解析(マウス) ニパウイルスに対する抗体作成(マウス) デングウイルス1型(望月株)の継代(マウス) |
病原体機能解析 (病原細菌) |
コレラ菌,および産生毒素の腸管毒性試験(ウサギ) コレラ菌及び大腸菌由来毒素の皮膚毛細血管透過性亢進試験(ウサギ) コレラ発症機構に関する研究(マウス) |
感染細胞修飾機構 (原虫学) |
原虫の病原力の解析(マウス) クリプトスポロジウム症の研究(マウス) マラリア感染の解析(マウス) マラリアの防御免疫の研究(マウス,ラット) |
寄生行動制御 (寄生虫学) |
住血吸虫セルカリア皮膚侵入機序(ハムスター) ジエチルカルバマジン耐性Brugia pahangi株作成(スナネズミ) 抗糸状虫剤の作用機序(Ae. aegypti,B. pahangi,スナネズミ) 住血吸虫ミラシジウムの繊毛運動制御機構(ハムスター) ビルハルツ住血吸虫の実験室内維持(ハムスター) |
炎症細胞機構 (感染生化学) |
宿主抵抗性における活性酵素および活性窒素の役割(マウス) |
感染症予防治療 (臨 床) |
ステロイド投与による易肺炎発症機構の解析:炎症性サイトカインの影響(マウス) マウス実験肺炎モデルにおけるgrowth factorの役割(マウス) マウスを用いた誤嚥性肺炎の病態生理の解析(マウス) |
疾病生態 (疫 学) |
紫外線照射による免疫抑制が寄生虫感染へ与える影響(マウス) |
施設 | 病原性(腸管出血性)大腸菌O157,および赤痢菌の線毛発現とその諸性状の研究 |
使用個体数 | 安楽死数 | 飼育延数 | ||
ウイルス | マウス | 123 | 38 | 8,127 |
細菌 | ウサギ マウス |
2 120 |
2 120 |
287 2,765 |
原虫 | マウス | 1,407 | 1,178 | 134,897 |
寄生虫 | 貝 スナネズミ ハムスター マウス |
110 1,357 968 276 |
0 733 711 213 |
32,480 228,291 137,571 34,468 |
生化学 | マウス | 838 | 801 | 81,158 |
臨床 | マウス | 1,445 | 1,366 | 35,154 |
疫学 | マウス | 61 | 61 | 3,367 |
計 | 6,707 | 5,223 | 698,565 |
職 務 | 延人数 |
教授 教官・医員 大学院生・留学生 研修生 技官・技能補佐員 補助員 見学者 |
79名 1,625 1,288* 25 532 947 12 |
計 | 4,508名 |
部屋番号 | 利用分野・目的 | 延人数 |
101/102 103 104 201 202 203 204 205 206 207 301 302 303 304 |
準備・洗浄室 寄生虫・疫学・飼育 寄生虫・恒温飼育室 臨床・実験・飼育 原虫・寄生虫・実験 寄生虫・飼育 原虫・飼育 寄生虫・飼育 原虫・臨床・飼育 細菌・実験・飼育 P3実験室・ウイルス 生化学・実験・飼育 生化学・実験・飼育 P3実験室・施設 |
2,073名 605 728 1,003 1,772 759 527 640 2,327 825 267 629 492 251 |
利用者総計 | 12,898名 |
1.展示室の利用
又,大分医科大・感染予防医学講座との共同研究から,長崎県雲仙と多以良の未吸着幼虫恙虫からのツツガムシ病リケッチアの分離をPCR法により行い,フジツツガムシ,オガタツツガムシからリケッチアを分離し,前者はGilliam型,後者はKawasaki型と判別された。
b. ユスリカの分類及び生態学的研究