細菌学分野

本研究分野は、腸炎ビブリオを主体に、コレラ菌やサルモネラを含めた腸管病原細菌の環境における疫学的調査から感染発症機構の分子生物学的解析まで幅広く研究対象にしている。現在、薬剤耐性菌が世界で急速に広がっており、2050年には現在の10倍以上の1千万人が年間に死亡すると予想されている。私達の研究成果が抗菌薬に頼らない治療法、ワクチンの開発や感染コントロール対策に役立つことを期待して研究を進めている。2020年の3月に発足したばかりではあるが、今後国内外問わず多くの共同研究を通じて、グローバルに活躍できる優秀な研究者を育成することを目指している。

スタッフ

教 授
児玉年央
助教(有期)
日吉大貴
助教(有期)
寺島浩行
事務補佐員
松本由美子

研究活動

  • 腸炎ビブリオの病原性発揮機構の解明
    腸炎ビブリオが保有する2セットのIII型分泌装置(T3SS1とT3SS2)のうちT3SS2が、感染患者の下痢発症に必須であることを見出してきた。さらにT3SS2から分泌されるエフェクタータンパクの同定と生物活性の決定、それら遺伝子群の発現誘導機構を解明してきた。また、腸炎ビブリオ発見当初から知られていた溶血毒(TDH)が分泌経路の違いにより異なる病原性に寄与することを報告した。しかしながら、本菌がどのように宿主腸管内に定着し、下痢を誘導しているのか、詳細なメカニズムは未だに明らかでない。現在、新規動物感染モデルの構築、生体内におけるT3SS2遺伝子群の発現機構やエフェクターの生物活性の解析および腸内細菌との相互作用等、多角的な視野から解析を行うことで腸炎ビブリオの下痢誘導活性の全容を解明したいと考えている。
  • ビブリオ属の感染流行地域での疫学調査および流行株出現の原因究明
    腸炎ビブリオやコレラ菌を含む病原性ビブリオ属菌を、感染の多いアジア流行地域の患者や、環境水および汚染が疑われる食品から分離し、病原性ビブリオ属菌の流行株の動向をゲノム疫学的な解析により理解することを目指す。またそれらの解析から、世界的な拡散に起因する因子を同定し、機能的な役割を明らかにしたいと考えている。
  • サルモネラの病原性発揮機構の解明
    チフス菌やパラチフス菌、または一部のそれ以外の血清型のサルモネラが、どのように全身感染を引き起こすのかについて、様々なin vitroの実験やネズミチフス菌・パラチフスC菌を用いたマウス全身感染モデル、または遺伝学的・疫学的背景を含めた総括的な解析を行うことで明らかにすることを目指している。全身感染に必須であるサルモネラ病原性遺伝子島2( SPI-2)上にコードされる3型分泌装置(T3SS-2)のエフェクタータンパクの分子生物活性を決定することで、サルモネラがどのように好中球やマクロファージ等による自然免疫に抵抗し全身感染を起こすのか解明することを目指している。これらにより得られた知見を元に抗菌薬に頼らない治療法およびワクチン開発に結び付けたいと考えている。

最近の主な業績

  1. Yamazaki et al. Virulence 2020;11(1):840-848.
  2. Kashimoto et al. BMC Microbiol 2020;20(1):69.
  3. Matsuda et al. Microbiol Immunol 2020;64(3):167-181.
  4. Okumura et al. Mucosal Immunol 2020;13(1):75-85.
  5. Matsuda et al. Nat Microbiol 2019;4(5):781-788.