Molecular Parasitology Workshop

Programs/Reports (MPW 15th, 2007)


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Content #1 印象記 #2 プログラム・写真

「第15回分子寄生虫学ワークショップ印象記」
順天堂大・医・熱帯医学寄生虫病学 案浦 健

 

   ベストプレゼンテーション賞を頂き、今大会の印象記を書くという大役を仰せつかりました。印象記を書くにあたり、“はて、誰にむけて書くんかな?”としばし悩みました。そこで、この印象記では、本当は参加したかったけど尻込みしてしまった人、参加したけど凹まされてしまった人などへむけて、今の私の歳と立場から(これまでに散々凹まされてきた私だからこそ:笑)、感じたこと、伝えたいメッセージを込めた文章を、印象記として綴ろうと思います。【会の具体的な内容などは、過去の印象を読んで頂ければと思います。とても丁寧に書かれています。】

   今年も多数の初参加者を迎え、初日から最後のセッションまで大変充実した討議が行われました。(参加者48名、@草津セミナーハウス)この会では“学生だろうが、教員だろうがScienceの場ではすべての人が平等であり、率直な議論が必要である”ということを大事なコンセプトの一つとしています。このような“言いたい放題の会”は稀で、白熱する討論は、セッション終了後アルコールを伴って再開し、深夜遅くまで続きます。当然、付け焼刃的な研究や“先生に言われたので…”というような研究を発表した場合には、ボコボコに凹まされます。本当に容赦がなくてびっくりするほどです。
   今年も凹まされて、とても落ち込んでいる初参加の人が数名見受けられました。ある学生さんはあまりにも凹まされて自信を失い、博士課程への進学をやめようかと悩んでいるようでした。私もこれまで 「なにが面白いのかわからん」「なぜそんな研究をやるの?」といつも言われ、毎回凹んで帰っていました。ただ、私自身は“この研究がとても面白い!だからやっている!”と思っていました。だから“次こそは!”と意気込んでは、毎回敗れ続けていました。
   でも、なぜここまで激しい討論をするのでしょうか?ただ虐めたいだけ?嫌がらせ?答えは“それがScienceに必須だから”かな?と私は思います。Scienceとは、これまでに誰も知らなかった真実を明らかにし、世に知らせることです。つまり、明らかにした本人以外は、その新たな真実を知らない(理解していない)わけです。他の研究者に、未知の研究内容を理解してもらうのは大変なことです。ましてや、自分が面白いと思ったポイントを、共感してもらえる様に説明することは極めて困難です。しかし、この“理解してもらう”プロセスは、とても重要で、学会だけに限らず、論文投稿や競争的研究費獲得の際にも同様に必要とされ、研究のあらゆる局面で要求されます。つまり、激しい討論は、その“コアのトレーニング”であると私は思います。(まぁ言うまでも無いことかもしれませんが、大学院生の時などはあまり気付いてないように思います。)
   しかしながらこのトレーニングは、研究者の多くが大人(紳士・淑女)であるため、通常の学会などでは各々の立場などに配慮し、相手を傷つけない(あるいは自分の無知を曝さない)ように接しているので、なかなかできません。でも参加者がまるで“子供に還る”この会は別です。それは、今回初参加のある若い人が「この会に参加している○○先生(教授)は子供(に還った)のようですね」と言ったコメントに象徴されているように思います。つまり、参加者は子供のように“Pure”に“真摯”にScienceと向き合い、真剣に討論を行い、楽しむ、その“コアを鍛える”環境がこの会にはあるように思います。
   ただ、あまりにも厳しく突っ込まれるとさすがに凹み、泣きそうになるのも事実です。そこで、この会におけるソフトボールやBBQといったレクリエーション企画の出番です。厳しく突っ込んできた人と、青空の下、大声を出し、汗をかきながらスポーツをしたり、がははと笑いながらビールや肉を飲み食いしたりすると、不思議と親近感がわき、温泉などで「いや〜実はあの内容は・・・」などと踏み込んだ話が出来るものです。まさに“裸の付き合い”、“同じ釜の飯を食った・・・”という感じです。
   もちろん、全ての研究者にこの会が合うとは思っていません。合宿形式のこの会では期間中はプライバシーがあまり無いのも事実ですし、体力的に辛いときもあります。“静かな炎を燃やすタイプ”には、疲れる環境かもしれません。でもScienceが好きで、自分の研究に思い入れが深い人であれば、一度は飛び込んでほしいと思います。きっと楽しめると思います。また今回凹まされた人は、凹まされたポイントをクリアできたら、確実に一歩前進したことになります。そして、それは“自分のScience”と向き合えたことになります。また、この会での厳しい突っ込みを経験していれば、他の学会での指摘・意見に対する恐怖心が薄れるように思います。私は、これまでに非常に多くの方から厳しい質問をしていただき、その度に凹まされてきました。そのお陰で、最近ではようやく自分のScienceと正面から向かい合えるようになってきました。まだ自分でも納得 いかない点が多くあり、今回のプレゼンについても改善すべき点が多々あると思っています。ただ、夜の総合討論やBBQなどの時に「案浦さんの研究、おもしろいですね」と若い同世代の人から声をかけてもらったのが、とても嬉しかったです。“私の熱い想いが伝わったんだ”と、とても嬉しく思いました。
   科学者(研究者)とは、自分の発見した新たな真実を“世に伝える困難”と“伝わった時の喜び”に一喜一憂する職業なのかなと私は思います。その自分のScienceをブラッシュアップするために、この会はとてもいいきっかけを与えてくれます。是非若いうちから参加し、己を研くクセを身に着けて欲しいと思います。必ず今後の研究者人生に活きてきますので。私もまだまだ自分を鍛える為にもこの会に参加していきたいと思います。
   今回は、最終日に群馬県西部2万3千世帯が停電(もれなく草津セミナーハウスも全館停電)という“オチ”のついた印象深い会となりました。そのような会の印象記として私の文が適切かどうかわかりませんが、私と世代の近い“若い研究者へのエール”と“この先の自分への戒め”を込めて綴りました。また来年、是非みなさんとお会いして、新たな参加者とともにScienceを楽しめることを心待ちにしております。
最後に、この会を企画・運営して下さった世話人(スタッフ)の皆様に、心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

案浦 健【まだ(もう?)31歳】

 

平19年度プログラム

       
1日目   夕食
1日目 18:50-22:15 セッション1  寄生虫症の免疫1
セッション2 バベシア
セッション3 マラリア1
     
22:30- ミクスチャー
 
2日目 9:00-11:50 セッション4 原虫の分子生物学1
セッション5 寄生虫学と蛋白質構造生物学との接点
セッション6 腸管寄生虫
     
13:00-14:35 セッション7 トキソプラズマ
15:00-17:00 ソフトボール大会
   

   

19:00-22:10 セッション8 マラリア2
セッション9 寄生虫の治療薬
セッション10 寄生虫の分子生物学
22:30- ミクスチャー
3日目 9:00-12:45 セッション11  マラリア3
セッション12 原虫の分子生物学2
セッション13 寄生虫症の免疫2
   

 

13:00-17:00 BBQ
   

 

17:00-19:00 フリータイム
   

 

19:00-21:20 セッション14 ベクター
セッション15 マラリア4
 
21:30 ベストプレゼンテーション賞
  順天堂大学・医・熱帯医学寄生虫病学講座  案浦 健 
 
22:00- ミクスチャー
4日目             -9:00 後片付け

付記:草津温泉地域大停電 


参加者(48名、そのうち大学院生・ポスドク21名)

参考:
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