人類生態班フィールド便り3
母子保健・栄養ユニット
「子どもたちは何をどのくらい食べているのか?」

イエローカードに記録されたある子の成長曲線

 母子保健・栄養ユニットでは、今年11月に、サバンナケット州、ソンコン郡の6村の全5歳未満児を対象に健康・栄養状態と食事調査、食事に関わる要因についての調査を実施する予定である。ニュースレター1号で紹介された老年医学班と同じ地域での調査である。その打ち合わせと調査方法の検討、既に実施されている栄養プログラムの把握のために8月15日から1週間ラオスに滞在したので報告したい。写真は、ソンコン郡のある子の成長曲線である。母子保健や子どもの栄養は、一般的に保健分野の国際協力では中心的課題であり、多くのプロジェクトが実施されている。ラオスにおいてもFAO、ユニセフを始め、諸外国からのプロジェクトが入っている。
 その上で、この研究がラオスのHealth Developmentにとってどのような意味があるのか、さらに生態史プロジェクトの中でどのような意味があるかを考えなくてはと思いながら、村人、関係者への質問を繰り返した。それらからわかったことは、「低栄養と判定される子が30〜40%いることはいくつかの調査で共通の結果が得られているが、その原因についてはわかっていない」ということであった。この写真の例では生後8ヶ月ごろから体重増加が鈍っているが、このあたりがクリティカル・ピリオドなのだろうか。これらの低栄養の原因のモデルを考える場合、身体に入り、出るという直接的な要因を押さえるのを基本とし、それに影響する要因を段階的にモデル化していくことになる。現地のカウンターパートに聞いてみたところ、やはり栄養状態(身長や体重)の調査はしているが、身体に入るもの、すなわち食事の調査はほとんどされていないとのことであった。自分たちでもできるようにしたいし、興味があるので、一緒にやりたいと言ってくれた。食事の調査方法の検討のために、実際に乳幼児5人の食事の聞き取り調査をしてみたところ、出生後すぐにもち米飯を噛んで与える、2歳まで母乳のみなど、日本の常識では「ええっ!」という食事をしている子が少なからずいる。それが身体の発育や栄養状態にどのような影響を及ぼしているのかはわからないが。
 さらに、食事は環境と人間の繋がり方を示してくれる。環境が変わり、人間の生活(環境への働きかけ)、身体がどのように変わっていくのかという課題に答えを出すためにも、食事の把握は重要であろう。この国の栄養状態や食事調査をきちんと継続的にしていくこと、そのための人材育成とシステム開発は、Health & Nutrition transitionを捉える上でも、Health Developmentを考える上でも基本的かつ重要なことだとあらためて感じた。

(新潟医療福祉大学 村山伸子)