情報について国際的組織とどのように協力できるか?


畠 一彦  川崎医療福祉大学


●本音と建前は日本ばかりではない

日本が 感染症対策に熱心なことは世界でも認識されてきている。感染症情報ネットワークに関心を持つ者は世界で数万人とみられている。
    
感染症の世界状況を把握する義務をもつのはWHOであるにもかかわらず、実際にはCDCなど各国厚生省が先行する行動を、遅ればせながらキックオフする傾向があった。

政府機関の慎重な行動に飽き足らず民間独自のネットワークを走らせるNGOもある。

建前では、お互いに牽制し合う関係でありながら、本音では互いのエネルギーを高く評価し合っている、こんな図式でこのネットワーク関係者間の関係を表現できる。

●実績はものを言う

従って、その力関係は、各活動グループの実績によってダイナミックに変化している。例をあげると

★ CDCのMMWRがonlineに移行した一年後WHOのWERがonlineになった。

★ Jack WoodallのProMEDの宣伝を当時300人のtdr-scientistsネットワークが受け持った。

★ProMEDはいまや2万人のネットワークに成長 (tdr-scientistsは2000人)。
     
★日本の感染症ネットワークの活動は英語世界のリストとのかかわりによってのみ存在が知られているが志向性は見えない。

★ WHOのCDS(David Haymann, Guenael Rodier)は近年サーヴェイランス関係のネットワークの協調に特に努力している。ProMEDも認知された。

●ネットワークのネットワークは?

メーリングリスト利用のネットワークの数は増えている。Emerging diseasesを警告できる態勢にあるものまで含めると:
★ProMED
★PacNet
★agsnet
★[eurosurveillance]
★afro-net

しかし、The Network of the (Infectious Diseases Information) Networkは未だ存在しない。WHOのOutbreak Notification List 所謂"rumour list"はspecialcustomer list である。

●tdr-scientists リストの今後の運営

ギャップを埋める意味で畠が個人のinitiativeとして始めたtdr-scientistsリストはいまでもmulti-purpose announcement forumとして存在する。国連から引退した今、このWHOネットワークをどうするかは、いまだ検討中である。日本の熱帯病研究者組織のサーヴァーに移籍してもおかしくない。コンテンツをTDR diseasesから感染症全般に広げることも可能である。皆様のご意見をたまわりたい。 

●ネットワーク間の信頼関係はface-to-faceから

今日ここに集合したわれわれは、日本および世界の感染症リスクマネージメントをネットワークの方面で支えようと、個々に努力している点で一致する。

共通のネットワークが有りそうで無い現在、face-to-faceコンタクトは大切だ。フォーカスを絞って討議すれば共通認識と具体的な行動計画が生まれるだろう。

同様に、世界各地で努力しているグループともface-to-faceで苦労話を語り合うなかで、感染症ネットワークのネットワークとは結局人間のネットワークから始まることが認識されるだろう。

国際組織とのコンタクトもわれわれ一人一人の人脈を共通資産として利用すれば、より有効になろう。WHOに在籍する日本人職員のサポートもある。私もお手伝いしたい。

★日本がイニシャティヴをとってinternational symposium of network-players onemerging diseases(仮称)を企画してもいいのではないか。昨年春のWHOのワークショップに続くものとして、またさらにフォーカスを絞ったものとして。

長崎熱研がこのような歴史的に重要な会合をお世話下さったこと、深く感謝します。

 

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