W05 日本の感染症サーベイランスと熱帯病対策
日時: | 2006年10月11日(水)15:30-17:30 |
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場所: | 第4会場(会議室4-5) |
座長: | 吉村健清(福岡県保健環境研究所) |
W05-1
我が国の感染症サーベイランスについて
About Infectious Disease Surveillance in Japan
1国立感染症研究所感染症情報センター
[はじめに]
我が国における感染症発生動向調査(サーベイランス)事業は1)患者発生サーベイランス、2)病原体サーベイランス、3)感染症流行予測調査の3つの体系で行われている。この感染症サーベイランス事業は、1999年4月施行の「感染症新法」によって初めて法律に基づくものとなった。この3つのサーベイランスの体系について言及する。
[患者発生サーベイランス]
患者発生サーベイランスは現在1類から5類にまで分類されており、5類の定点把握対象疾患以外は発症例全例がサーベイランスの対象となっている。1類感染症は7疾患、2類感染症は6疾患、3類感染症は1疾患であり、医師はそれぞれの分類に応じて患者、無症状病原体保有者、擬似症患者等を診断後直ちに保健所に届け出なければならない。4類感染症は動物、飲食物等の物件を介して感染する30疾患よりなり、5類感染症には全数把握疾患14疾患と、定点把握疾患28疾患がある。
[病原体サーベイランス]
病原体サーベイランスの対象には、1)全数把握疾患における病原体の分離・同定、2)定点把握疾患における臨床検体からの病原体の分離・同定、3)感染症集団発生における病原体の分離・同定、4)検疫所における病原体の分離・同定、5)分離されたインフルエンザウイルスの遺伝子・抗原的性格の決定等があげられる。
[感染症流行予測調査]
インフルエンザ、急性灰白髄炎の血清抗体価や病原体検索、更にジフテリア、破傷風、百日咳、風疹、麻疹、日本脳炎等における血清抗体価の測定と疫学的解析等を実施し、長期的なワクチン事業の方針決定やインフルエンザワクチン株の選定に寄与している。
[最後に]
個人・地域から国のレベルまで、適切な感染症の治療・予防対策には疾患と病原体の動きを正しく捉える質の高いサーベイランスが必須である。そのためには医療関係者を含めた関係各方面の理解と協力が必要である。
我が国における感染症発生動向調査(サーベイランス)事業は1)患者発生サーベイランス、2)病原体サーベイランス、3)感染症流行予測調査の3つの体系で行われている。この感染症サーベイランス事業は、1999年4月施行の「感染症新法」によって初めて法律に基づくものとなった。この3つのサーベイランスの体系について言及する。
[患者発生サーベイランス]
患者発生サーベイランスは現在1類から5類にまで分類されており、5類の定点把握対象疾患以外は発症例全例がサーベイランスの対象となっている。1類感染症は7疾患、2類感染症は6疾患、3類感染症は1疾患であり、医師はそれぞれの分類に応じて患者、無症状病原体保有者、擬似症患者等を診断後直ちに保健所に届け出なければならない。4類感染症は動物、飲食物等の物件を介して感染する30疾患よりなり、5類感染症には全数把握疾患14疾患と、定点把握疾患28疾患がある。
[病原体サーベイランス]
病原体サーベイランスの対象には、1)全数把握疾患における病原体の分離・同定、2)定点把握疾患における臨床検体からの病原体の分離・同定、3)感染症集団発生における病原体の分離・同定、4)検疫所における病原体の分離・同定、5)分離されたインフルエンザウイルスの遺伝子・抗原的性格の決定等があげられる。
[感染症流行予測調査]
インフルエンザ、急性灰白髄炎の血清抗体価や病原体検索、更にジフテリア、破傷風、百日咳、風疹、麻疹、日本脳炎等における血清抗体価の測定と疫学的解析等を実施し、長期的なワクチン事業の方針決定やインフルエンザワクチン株の選定に寄与している。
[最後に]
個人・地域から国のレベルまで、適切な感染症の治療・予防対策には疾患と病原体の動きを正しく捉える質の高いサーベイランスが必須である。そのためには医療関係者を含めた関係各方面の理解と協力が必要である。
W05-2
地方感染症情報センターの役割
Role of local infectious disease surveillance centers.
1東京都健康安全研究センター
【目的】1999年4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では感染症の発生情報の正確な把握と分析,その結果の国民や医療関係者への的確な提供,公開(感染症発生動向調査)が大きな柱となっている。
「地方感染症情報センター」は自治体における感染症情報の拠点として都道府県,政令指定都市の地方衛生研究所等に設置され,医療機関,保健所,中央感染症情報センター(国立感染症研究所)との連携を図り,感染症情報の収集,解析,提供の機能を担っている。地方感染症情報センターの役割について,東京都などの取組から考察する。
【概要】感染症発生動向調査は,「感染症発生動向調査事業実施要綱」に基づいて全国規模で実施されている。事業の実施にあたり、保健所,地方感染症情報センター,中央感染症情報センターを結ぶ「感染症サーベイランスシステム(NESID)」が構築され,患者の発生状況,病原体検査情報などの情報共有が図られている。
東京都感染症情報センターでは,都内の患者発生情報や健康安全研究センターでの検査情報をまとめた「東京都感染症週報」を発行している.また、東京都感染症情報センターホームページ(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/)を開設し、「Web版感染症発生動向」のページから詳細な情報を公表し、「感染症トピックス」など様々な感染症の情報を医療機関、都民に向けて迅速に提供している。
【まとめ】感染症の大規模な発生を未然に防止し,その危険がある場合には速やかな対応ができるように,地方感染症情報センターは平常時の感染症の発生動向を的確に把握し,状況の変化を少しでも早く探知し,異常があった場合には速やかに対応できる体制を整備しておくことが求められている。
「地方感染症情報センター」は自治体における感染症情報の拠点として都道府県,政令指定都市の地方衛生研究所等に設置され,医療機関,保健所,中央感染症情報センター(国立感染症研究所)との連携を図り,感染症情報の収集,解析,提供の機能を担っている。地方感染症情報センターの役割について,東京都などの取組から考察する。
【概要】感染症発生動向調査は,「感染症発生動向調査事業実施要綱」に基づいて全国規模で実施されている。事業の実施にあたり、保健所,地方感染症情報センター,中央感染症情報センターを結ぶ「感染症サーベイランスシステム(NESID)」が構築され,患者の発生状況,病原体検査情報などの情報共有が図られている。
東京都感染症情報センターでは,都内の患者発生情報や健康安全研究センターでの検査情報をまとめた「東京都感染症週報」を発行している.また、東京都感染症情報センターホームページ(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/)を開設し、「Web版感染症発生動向」のページから詳細な情報を公表し、「感染症トピックス」など様々な感染症の情報を医療機関、都民に向けて迅速に提供している。
【まとめ】感染症の大規模な発生を未然に防止し,その危険がある場合には速やかな対応ができるように,地方感染症情報センターは平常時の感染症の発生動向を的確に把握し,状況の変化を少しでも早く探知し,異常があった場合には速やかに対応できる体制を整備しておくことが求められている。
W05-3
感染症情報を用いた地方自治体の感染症対策
Infectious disease measures of local government that uses infectious disease information
1佐賀県健康福祉本部健康増進課
【はじめに】 地方自治体における感染症情報収集、解析、発信については、感染症法第15条に基づき実施している感染症発生動向調査が、主体となっている。実施機関は、定点報告医療機関、管轄保健所及び、本庁感染症担当部局、主に各自治体の地方衛生研究所に設置されている「地方感染症情報センター」である。 今回、各機関の主な役割と対策の実際について概要を述べたい。
W05-4
熱帯感染症対策における検疫所と自治体との連携
Cooperation with the quarantine station and health divisions of prefectures in the measure against a tropical infectious disease
1厚生労働省仙台検疫所
デング熱、マラリアなどに代表される熱帯感染症については、国内での感染事例ないことから医療現場での臨床経験が乏しく、又、検査に関しても十分な対応できているとは言えない。一方、検疫所では、国内に常在しない病原体の海外からの侵入を防ぐことを業務とし、港や空港で患者の監視が行われ、疑い患者に対する検査を実施している。その検査には国内であまり実施されていないデング熱やマラリア、ウェストナイル熱などの熱帯感染症が含まれており、これらの感染症に対する検査のノウハウが検疫所には十分蓄積されている。このような現状の中で、検疫所が持つ検査技術等を自治体での不十分な検査体制の支援に向けることは、専門家などの人材育成や検査に要する資材の有効活用など、迅速な対応を取るためにも意味のあることと考える。そのような観点から東北地域では、検疫所と厚生局が主催する東北ブロック感染症危機管理会議において、感染症対策での自治体間の連携、協調を図ってきた。そのため、東北地域での熱帯感染症に対する検疫所、自治体、医療機関などの協力体制は構築されており、デング熱、マラリアを疑う患者への診断、治療などで迅速かつ適切な対応を進めている。
W05-5
感染症対策における大学と行政との役割
Role of university and administration in the control of infectious diseases
1新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学講座
現在世界的には新興・再興感染症が大きな問題となっている。この根底には、抗生物質の発見による感染症の激減から、感染症対策への目安が着いたとの錯覚が指摘されている。このことを反映し、大学においても感染症への情熱は失せ、研究・教育においては長い間の低調な時代を過ごし、この方面における指導者の育成を怠ってきた。例えば現実的には、1950年代に育成された優れたウイルス学指導者の殆どが退官を迎え、その補充がままならない事が日本だけでなく欧米でも発生していることはよく知られている。 大学が、感染症対策への教育・研究への人的な人材育成のみならず、その分野の実際的な指導性が発揮できる状況にあるかが現在問われている。この1−2年、文部科学省は「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」において、主に熱帯地域においての新興・再興感染症の基礎的研究を通して、この分野おいて将来活躍する人材育成を目的とする事業が開始されるなど、新しい動きが見えてきた。 本ワークショップでは、これらの新しい動きも踏まえ、大学と行政の連携の現状と将来について述べる。
(オーガナイザー:吉村健清)