W04 臨床熱帯感染症 -ケーススタディ-
日時: | 2006年10月11日(水)16:00-18:00 |
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場所: | 第3会場(会議室1-3) |
座長: | 大石和徳(大阪大学微生物病研究所感染症国際研究センター),中村哲也(東京大学医科学研究所) |
W04-1
2週間遷延する間欠熱に急性呼吸不全を合併した一例
A case of intermittent fever, which persisted for 2 weeks, with acute respiratory failure
1東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
症例)30歳男性(フィリピン人,マニラ在住)
主訴)発熱
既往歴/家族歴)特記事項なし
現病歴)
2週間 (第0病日) 前より悪寒を伴う間歇熱(39℃台)および悪心が出現した.1週間前(第7病日)に近医を受診し,貧血,血小板数の低下を指摘され近医へ入院した.入院中に,血小板8単位,FFP5単位,濃厚赤血球13単位の輸血が行われた.精査加療目的にセントルークスメディカルセンター(フィリピン,ケゾン市)に転院した(第14病日).転院時には腹痛,下痢なく,咳嗽も認められなかったが,胸部X線所見では両側広範に浸潤影を認めた.
主訴)発熱
既往歴/家族歴)特記事項なし
現病歴)
2週間 (第0病日) 前より悪寒を伴う間歇熱(39℃台)および悪心が出現した.1週間前(第7病日)に近医を受診し,貧血,血小板数の低下を指摘され近医へ入院した.入院中に,血小板8単位,FFP5単位,濃厚赤血球13単位の輸血が行われた.精査加療目的にセントルークスメディカルセンター(フィリピン,ケゾン市)に転院した(第14病日).転院時には腹痛,下痢なく,咳嗽も認められなかったが,胸部X線所見では両側広範に浸潤影を認めた.
W04-2
マラリア治療後の肝機能障害の一例
A case of hepatic injury after treatment for malaria
1東京都立駒込病院感染症科
マラリア治療後の肝機能障害の一例東京都立駒込病院 感染症科演者名;竹下 望症例:36歳 男性、国籍 バングラディシュ。【主訴】全身倦怠感、黄疸、呼吸苦【既往歴・家族歴】特記すべきことなし、【職業歴】専門学校生【現病歴】2000年より日本に在住している.2002年2月15日〜3月29日バングラディシュに一時帰国した。3月24日より発熱、悪寒、食欲低下を自覚し、3月26日現地医療機関受診し、三日熱マラリアの診断で、クロロキン、アモキシシリン、アセトアミノフェン投与された.その際の血液検査結果は、WBC 9000/μl、PLT 24.0×104/μl、T-Bil 2.8mg/dlであった。3月29日よりプリマキン投与され、症状が持続するものの、3月30日に再来日した。症状改善せず、他医療機関を受診し当院紹介となる。<入院時現症>血圧92/68mmHg、体温37.5℃、脈拍80/分、SpO2 92%(O2 3l)、意識レベル JCS 1〜2、羽ばたき振戦なし、顔面・頚部所見 眼球結膜に黄疸認める、胸部所見 異常を認めず、腹部所見 圧痛なし 肝・脾腫大を認めず、四肢所見 浮腫を認めず、皮膚所見 全身に黄疸認める。
W04-3
エジプト滞在中に発熱・肝障害をきたした一例
Acute Febrile Patient with Liver Injury being in Egypt
1東京都立墨東病院感染症科
【症例】57歳男性【主訴】発熱【既往歴】虫垂炎【現病歴】2004年11月よりエジプトに出張し、カイロ近郊で橋脚の建設指導に当たっていた。2006年2月6日頃より頭痛・発熱が出現し、連日38度台の発熱が持続した。2月9日に現地のクリニックを受診したところ肝酵素の軽度上昇が認められ、メトロニダゾール・シプロフロキサシンなどの投与を受けた。その後も症状の軽快がなく、日本で精査加療を行うことを希望したため2月15日に帰国し、空港よりそのまま当院外来を受診した。初診時の身体所見として発熱以外に特記事項なし。採血検査にてCRPと肝酵fの軽度上昇を認め、腹部超音波検査では軽度の肝脾腫大を認めた。現地の生活環境としては比較的乾燥した土地であり、橋脚建設に関わる日本人用の清潔な施設に入居し、食事は生ものの摂取などは極力避けていた。同様の症状をきたした同僚はいなかった。
W04-4
肝多房性嚢胞性病変を呈し、無症状で経過した肝蛭症の一例
Asymptomatic fascioliasis with multiloculated liver cysts, a case report
1東京大学医科学研究所感染症国際研究センター
2東京大学医科学研究所感染免疫内科
3東京医科歯科大学国際環境寄生虫病学
4宮崎大学医学部寄生虫学教室
我々は、肝多房性嚢胞性病変として無症状に経過した肝蛭症の一例を経験した。
症例)61歳、日本人男性。職業)発電所建設に従事。
生活歴)1975年から1985年にかけて中南米および中東に滞在歴あり。その後2003年までは、主に九州および沖縄での国内勤務。
現病歴)2004年1月から12月にかけてミャンマー滞在。特に自覚症状なく経過。帰国後の人間ドックで好酸球増多および腹部エコー上肝内腫瘤を指摘され前医を受診。2004年12月の腹部造影CT にて肝S5-8に径5cmの hypovascular massを認めた。精査目的で翌2005年1月に経皮経肝的肝生検を施行されたが、病理組織学的には正常の肝実質のみが採取されたため経過観察となっていた。その後も自覚症状なく、フォローアップの目的で2005年11月に施行された腹部造影CTでは、当初指摘された腫瘤の形態変化に加え、肝S6に新たに径4cmの多房性嚢胞性病変が出現した。1年の経過中に変動する肝内嚢胞性腫瘤の鑑別を目的に2005年11月当院に入院となった。
入院時現症)体温 36.8度, 肝脾腫なし, 浮腫を認めず, 貧血および黄疸なし。
入院時検査所見)便虫卵;陰性, 白血球数 7,030/μl (好酸球 1,019/μl), GOT 23IU/l, GPT 33IU/l, 総ビリルビン 0.7mg/dl, IgE 438mg/ml, 赤痢アメーバ抗体;陰性, 胸部レントゲン異常なし。Multiple-dot ELISA;肝蛭抗体陽性, 寒天ゲル内二重拡散法;肝蛭成虫抗原と明瞭な沈降線。
治療経過)血清学的に肝蛭と診断。トリクラベンダゾール(750mg)の投与を行い、好酸球数は減少、服用6週後の腹部CTでは肝嚢胞性病変は縮小した。
本症例では自他覚的に炎症所見に乏しく、肝実質の多房性嚢胞性病変を呈したことから肝蛭症を示唆する所見に乏しく、特に包虫症との鑑別が極めて困難であった。今回、本症例の画像所見を経時的に報告するとともに、他の肝嚢胞性寄生虫疾患との鑑別点について検討したい。
症例)61歳、日本人男性。職業)発電所建設に従事。
生活歴)1975年から1985年にかけて中南米および中東に滞在歴あり。その後2003年までは、主に九州および沖縄での国内勤務。
現病歴)2004年1月から12月にかけてミャンマー滞在。特に自覚症状なく経過。帰国後の人間ドックで好酸球増多および腹部エコー上肝内腫瘤を指摘され前医を受診。2004年12月の腹部造影CT にて肝S5-8に径5cmの hypovascular massを認めた。精査目的で翌2005年1月に経皮経肝的肝生検を施行されたが、病理組織学的には正常の肝実質のみが採取されたため経過観察となっていた。その後も自覚症状なく、フォローアップの目的で2005年11月に施行された腹部造影CTでは、当初指摘された腫瘤の形態変化に加え、肝S6に新たに径4cmの多房性嚢胞性病変が出現した。1年の経過中に変動する肝内嚢胞性腫瘤の鑑別を目的に2005年11月当院に入院となった。
入院時現症)体温 36.8度, 肝脾腫なし, 浮腫を認めず, 貧血および黄疸なし。
入院時検査所見)便虫卵;陰性, 白血球数 7,030/μl (好酸球 1,019/μl), GOT 23IU/l, GPT 33IU/l, 総ビリルビン 0.7mg/dl, IgE 438mg/ml, 赤痢アメーバ抗体;陰性, 胸部レントゲン異常なし。Multiple-dot ELISA;肝蛭抗体陽性, 寒天ゲル内二重拡散法;肝蛭成虫抗原と明瞭な沈降線。
治療経過)血清学的に肝蛭と診断。トリクラベンダゾール(750mg)の投与を行い、好酸球数は減少、服用6週後の腹部CTでは肝嚢胞性病変は縮小した。
本症例では自他覚的に炎症所見に乏しく、肝実質の多房性嚢胞性病変を呈したことから肝蛭症を示唆する所見に乏しく、特に包虫症との鑑別が極めて困難であった。今回、本症例の画像所見を経時的に報告するとともに、他の肝嚢胞性寄生虫疾患との鑑別点について検討したい。
(オーガナイザー:大石和徳,中村哲也)