※ これは9月20日現在の予定であり、予告なく変更されることがあります。

L 学会賞受賞講演: 世界規模でのフィラリア症根絶計画に寄与するための基礎的・応用的研究

日時:2006年10月11日(水)14:50-15:30
場所:第1会場(大ホール)
座長:竹内 勤(慶応義塾大学 医学部)
L-1
世界規模でのフィラリア症根絶計画に寄与するための基礎的・応用的研究
Basic and Operational Researches to contribute to the Global Elinination of Lymphatic Filariasis
木村 英作1
1愛知医科大学医学部寄生虫学   
1997年、WHO総会でリンパ系フィラリア症の根絶が決議された。2000年にはGlobal Programme to Eliminate Lymphatic Filariasis (GPELF) が開始され、2020年までに世界からのフィラリア症根絶を目指す。その基本戦略は流行地の全住民を対象とする集団治療(MDA)で、年一回実施し5年間繰り返す。治療薬はジエチルカルバマジン(DEC)+アルベンダゾ-ルである(但し、アフリカの一部ではDEC + イベルメクチン)。2003年までに世界の83流行国のうち36ヶ国でMDAが開始され、同年の治療者総数は7千万人である。(1)DECの年一回投与法 DEC治療は、1日6 mg/kg、12日間投与(総量72 mg/kg)が世界の基準であった。しかし、6 mg/kgを年に1回投与するだけで著明か効果がみられることは既に1962年以来ブラジル、フランス領ポリネシアで報告されていた。我々は、この事実をサモアで再確認するとともにサモア政府、WHOの支持を得て1982年より年1回MDAに基づく全国一斉のフィラリア症対策を開始した。MDAは1982、1983、1986年に実施されミクロフィラリア (仔虫) 陽性率は5.3%から2.3%に減少した。世界的根絶計画が開始される18年前に南海の小さな島国で現在と同じようなプログラムが進行していた。その後、南太平洋の国々ではWHO一盛和世博士の努力によりPacELFが開始され大成功をおさめた。(2)尿診断法とその応用 夜間採血による仔虫検査は住民側、検査者側共に辛い経験である。免疫診断の開発は昼間の検査を可能にしたが、やっかいな採血を避けて通ることはできなかった。我々は尿を検体とする免疫診断法を開発し、その野外応用を試みている。尿ELISA法は感度、特異性ともにすぐれており、sentinel populationである子供達の検査が容易である。尿ELISAはMDA効果の判定、流行再燃の監視および根絶の確認に利用できる。