平成20年度は、人獣共通感染症研究のため熱帯医学研究所ウイルス部門にベトナムからの博士課程大学院生を1名受け入れた。加えて同研究所臨床部門と細菌学部門にはそれぞれ博士課程大学院生が現在在籍中である。また病害動物学部門では、一人が蚊の幼虫を補食するミジンコの研究で博士の学位を得てNIHEに戻り部長に昇進した。
招聘研究者も若手中心とするよう申し合わせており実行されている。
日本からも人獣共通感染症、マラリア、媒介蚊研究に日本人の博士課程大学院生がベトナムでの共同調査・研究に参加した。
当研究課題はもともと研究成果の社会還元をめざしており、参加研究者全般にその意識は強い。またフィールド調査の遂行に住民の協力を要する場合も多く、医療行為や保健衛生行為を通じて住民に接する機会も多い。今年度中の活動でも下記の事例が報告されている。
マラリア研究グループでは、陽性者には症状の有無にかかわらず治療を施し、地域のマラリア罹患率の減少を図っている。
寄生虫グループでは、調査の機会に住民や学童、さらには教師に対して健康意識の向上を目指した啓発活動を実施している。これらを通じ住民の健康意識の向上による寄生虫の有病率低下を期待している。
デング熱媒介蚊調査では、古タイヤからの蚊幼虫採集時に出会う住民には意識的に媒介蚊発生源除去の必要性や効率的な除去方法、殺虫剤の功罪などについて解りやすく説明するよう心がけている。
コレラでは、Thai Binh, Hai Phong両省の予防医学センターでセミナーを行ってきた。NIHEでもコレラの集中講義を行って、コレラに関する理解をさらに深めるのに協力した。
本事業は平成21年度で終了するが、この10年間で日越双方に熱帯病・新興感染症領域の若手人材が相当数育成された。特に、NIHEを中心としたベトナム側研究機関は、積極的な人材交流と長崎大学への大学院留学により目覚ましい成果を挙げることが出来たと高く評価している。このため本事業のようなプログラムをいましばらくは継続したいという強い希望が示された。以上の総括と希望は、全ての研究グループとベトナム側の主立った共同研究者から例外なく提示されたものである。したがって文科省の利用可能なスキームを使って、平成22年度以降も人材交流と留学生受け入れを可能にする方法をぜひ模索されたい。
マラリア

デング熱
