南部アフリカでは未だにマラリアや下痢症、HIV/AIDSに起因する呼吸器疾患といった感染症が高い水準の罹患率を示しています。アフリカ大陸でもっとも経済的に発展している南アフリカ共和国でも、貧富の格差に加えて、医療へのアクセスに大きな隔たりがあり、これらの感染症が生命を脅かすだけではなく、疾病からの回復や治療などにより経済活動を大きく阻害する要因となっています。一方、これらの感染症の中には、気候が流行に大きく影響を及ぼしているものがあり、特にマラリア、肺炎、コレラ等の下痢症と気候の相関関係に着目して、流行を予測することで罹患者を減ずることができないかとの発想に至りました。

長崎大学熱帯医学研究所では、ケニアをはじめ、アフリカ大陸における感染症研究が1960年代から行われ、アフリカでの感染症における十分な情報や研究活動実施の経験を有しています。また、本邦共同研究機関の(独)海洋研究開発機構は、平成22年度から平成24年度年にかけて、SATREPSプロジェクトで南アフリカCouncil for Scientific and Industrial Research(CSIR)と共同で高解像度大気海洋結合モデル(SINTEX-F)を用い、平成22年及び23年夏季降水量の異常な増加を正確に予測した実績を持っています。

また、本邦機関に加え、南アフリカ共和国側からも、上述CSIR、リンポポ州マラリアコントロールセンター、メディカルリサーチカウンシル(MRC)、プレトリア大学、ケープタウン大学、ウェスタンケープ大学、リンポポ大学といった学術領域を越えた機関との共同研究のもと、本プロジェクトではマラリア、コレラ等の下痢症、肺炎を対象に、気候予測に基づいた早期感染症警戒システムを構築し、必要な予防措置を講ずる行政機関に情報提供を行います。


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