熱帯医学研究所における教職員等を対象とした
SARSに関する暫定的渡航規則

長崎大学熱帯医学研究所
(平成15年4月28日)
所長 青木 克己

2002年11月、中国広東省において新型のウイルス感染による重症急性呼吸器感染症症候群(SARS)が出現した。SARSは2003年4月末現在で世界26カ国に伝播し、北京、香港、広東省を中心とした中国と、ベトナム、シンガポール、カナダ(トロント)では領域内での感染拡大が確認され、現在5000名以上の患者と300名以上の死亡者が発生している。

熱帯医学研究所はアジア各地において医学研究を行っており、またベトナムにおいては2000年度から日本学術振興会の拠点大学方式による日本・ベトナム学術交流事業を主幹しており、所内外から多くの研究者をベトナム、中国、その他のアジア諸国へ派遣している。

上記の様な現状に鑑み、派遣研究者の安全を最大限に確保し、かつ研究・学術交流活動への影響を最小限に留めることを目的として、SARSに対応した海外渡航規則を以下に定める。この規則は平成15年4月28日の熱帯医学研究所臨時教授会において承認され、この規則のもとで設置される熱帯医学研究所SARS対策委員会が活動終了を決定するまで継続される。この規則は熱帯医学研究所の研究・学術研究活動に関与する全教職員、学生に適用される。

  1. SARS 対策所内委員会
    所長は熱帯医学研究所教官を委員とするSARS対策所内委員会(以下SARS委員会)を設置する。委員長ならびに委員は所長が任命する。
  2. 伝播地域 (Affected areas) への渡航制限
    SARS委員会は国際機関、熱帯医学研究所の海外協力機関、厚生労働省などからの情報を総合的に判断し、対象となるSARS伝播地域を明確に指定する。伝播地域と指定された地域への所員の渡航は原則として禁止する。
    (ただしSARSに関する研究・国際協力のための渡航はこの限りではない。)
  3. 伝播地域の周辺国・地域への渡航に関する手続き
    伝播地域の周辺地域を含む伝播地域以外への渡航は原則として制限しない。伝播地域を経由しての旅行は原則として認めない。渡航に際しては搭乗する航空便を明記し総務係へ提出すること。また搭乗便に変更が生じた場合は直ちに総務係へ届け出ること。
  4. 予防教育とSARS情報の提供
    SARS委員会は伝播地域および周辺地域へ出張する研究者に対しては、SARSに関する最新の資料と予防に関する知識を提供する。
  5. 伝播地域および周辺地域への出張から帰国後の規則
    伝播地域および周辺地域へ出張した教職員、学生は帰国後、10日間、毎日、朝、晩の検温し38℃以上の発熱、咳き、息苦しさなどの自覚症状が発生した場合は直ちに電話・FAXにて所長に報告し、SARS委員会の指示にて個々の状況に応じた適切な対応をすること。また伝播地域から帰国した者については、この10日間の期間、他人との接触は必要最小限に留める事を原則とし、不必要な会合等への参加は控えること。できる限りマスク(N95以上の品質)を着用すること。また渡航地が滞在中に新たに伝播地域に指定された場合もこの規定に準じる。
  6. 航空機の移動においてSARS感染者と同乗が確認された場合
    渡航した教職員、学生が帰国後、渡航中に利用した搭乗航空機にSARS感染者が同乗していた事が明らかとなった場合、それが判明した時点で帰国後10日を経過してない場合は、帰国後10日を経過するまで自宅または適切な施設におけるQuarantineを義務づける。Quarantineの手引きは別途配布する。
  7. 規則の終了
    この規則はSARS委員会がその必要性が終了したと判断した場合、直ちに所長にその旨を根拠を明らかにして進言する。所長は委員会の進言を勘案したのち直ちに規則の継続あるいは終了の決定を行うものとする。

[付]SARS伝播地域からの研究所・国内協力機関への訪問者については別途規則を設ける。

現在、熱研では次のような具体的な影響を受けている。

  1. 海外渡航の一部を中止した。
  2. 搭乗する航空機の変更を余儀なくされた。(ルートの変更)
  3. その結果日程の変更をせざるを得なかった。