糸状虫症

本分野には、媒介蚊ネッタイシマカを用いたマレー糸状虫/パハン糸状虫・スナネズミモデルが継代維持されている。 海外調査研究は、これまでにアフリカ、中米、東南アジア等で行われた。近年の主たる研究成果を紹介する。

マレー糸状虫(済州島産・夜間出現型),パハン糸状虫および媒介蚊ネッタイシマカ(リバプール系)を実験室内で継代維持している。 近年の研究成果は次の通りである。

1.イベルメクチン(IVM)とジエチルカルバマジン(DEC)の簡便かつ高感度な血中濃度測定法の開発 :IVMとDECの化学構造を修飾しウシ血清アルブミンを結合させることによって両薬物に対する抗体を得た。 これを用いたEIAで5ng/mlのIVMとDEC血中濃度が測定できるようになった。

2.薬用植物からの抗糸状虫剤のスクリーニング: アフリカ産Vernonia amygdalina、グアテマラ産Neurolaena lobata、タイ産Cardiospermun halicacabumが in vitroで抗Brugia pahangi作用を有することが明らかとなった。

3.バンクロフト糸状虫症の疫学と対策:1990年より1996年までケニア中央医学研究所(KEMRI)と共同でケニア・クワレ地区で行った。 疫学相と病害の程度を明らかにし、DECに重曹を組み合わせた集団治療の成果を発表した。

4.糸状虫感染幼虫の血清への走化性:感染幼虫が血清への走化性を示すことを初めて明らかにした。 幼虫の走化性運動の特徴、走化性運動発現の情報伝達、走化性運動を惹起させる血清の特長を明らかにした。