感染生化学分野
本分野は,感染防御に必須である活性酸素生成酵素の構造と機能,および発現調節の研究により,感染症の治療に資することを目指している。
スタッフ
- 助教 藤井仁人
研究活動
細胞種特異的gp91phox の発現機構の解析
活性酸素を産生する食細胞NADPHオキシダーゼは細胞膜のフラボシトクロムb558(gp91phoxとp22phoxの複合体)と細胞質成分(p47phox,p67phoxなど)からなり,食作用刺激を受けると両者が緊密な複合体を作る。その結果,細胞内NADPHの電子がgp91phoxのFADとヘムを通り,細胞外(食細胞)の酸素分子へと渡されるようになる。したがってgp91phoxは最も重要な要素である。活性酸素を作れない慢性肉芽腫瘍(CGD)の患者の多くはgp91phoxをコードする遺伝子CYBBに異常がある。患者のCYBBの解析から,転写因子PU.1が5'上流に結合できなくなった点変異ではこの遺伝子が好中球・単球・Bリンパ球で発現されず,好酸球では十分発現されることが明らかになった。
CYBB5'上流のミスマッチを認識する新たなミスマッチ結合タンパク質nGTBP
遺伝子CYBBのプロモーターに結合する転写因子の解析の過程で,塩基部位177にG/Tミスマッチを導入したときに特異的に結合するnGTBPを発見した。ゲルシフトアッセイで,競合阻害鎖として177G/Cホモ二重鎖DNAを加えた時,極めて強いスーパーシフトバンドが見つかったのがきっかけである。ラベルされていない177G一本鎖DNAとラベルされた177T一本鎖DNAで177にG/Tヘテロ二重鎖DNAができていたのである。nGTBPは厳密にTRTGNB配列(R=purine, N=any base, B=notadenine, R=G paired with T)を中心に持つ14mer以上のヘテロ二量体DNAに結合する。Gはhypoxanthineでも良い事から,結合にはC6が脱アミノ化される事が必須である。塩基の脱アミノは高温環境で起こりやすいので,nGTBPは熱帯での脱アミノによる塩基変異を調節している可能性がある。ヒトゲノムにおけるGTミスマッチの約1~3%はnGTBPで認識されると思われ,その生理病理的役割の解明が必要である。p53腫瘍抑制たんぱく質の遺伝子では,むしろTRTGNBの2番目のRでの変異が高くなっており,p53の関る腫瘍化ではnGTBPの働きが弱くなっている事を示唆していた。また,食道ガンにおけるp53遺伝子エクソンのCpG以外の部位におけるトランジッションはブラジル南部のマテ茶愛飲者で高い事が報告されていることも興味深い。現在,その本態の解析を進めている。



