細菌学分野
病原因子機能解析分野は熱帯地に蔓延または熱帯地から伝播される細菌感染症とその原因細菌に
関する研究,とくに感染成立に関与する種々の病原因子の研究を展開している。
スタッフ
- 教授 平山壽哉
- 講師 和田昭裕
- 助教 江原雅彦
- 助教(有期) 中野政之
- 技官 岩見守
- 研究補助員 前田香代
- 研究支援推進員 橋口美鈴
- COE技術員 藤井麻美
研究活動
- ヘリコバクター・ピロリは消化性潰瘍,MALTリンパ腫,胃癌などの原因細菌であり,
熱帯地域を含む発展途上国においては20歳前に約80%のヒトが感染している。本菌の病原性
について,空胞化毒素VacA および4型分泌装置で宿主に注入されるエフェクター分子,CagA
の感染における役割を解析している。
VacA は空胞変性のみならずミトコンドリア障害(1)によるアポトーシス(2)など多様な毒性 を発揮する。とくに細胞接着に重要なGit1のリン酸化(3)およびp38MAP キナーゼ/ATF‐ 2経路の活性化は空胞変性とは関係しない(4)。 VacA の宿主受容体蛋白は2種の受容体型チロ シンフォスファターゼ(RPTP α とRPTP β )である事を明らかにした(5,6,7)。興味深い ことにVacA が胃炎や胃潰瘍などの胃粘膜障害を引き起こすためにはRPTP β との結合が必須であ る(3)。VacA が種々の毒性を発現するためには受容体との結合を介して脂質ラフトに集積する ことが必要であることも分かった(8,9,10)。
本菌感染時に,VacAおよびCagAが宿主転写因子(ATF‐2やNFAT)の本来の機能を撹乱するこ とが分かっているので,これら病原因子の相互作用を調べている。 CagA はそれ自体のリン酸化に は関係なくNFATc3の脱リン酸化を促し,その核移行を高め,p21発現を促進する。しかし, VacAはこのCagAに依存する一連の現象を阻害することが分かった(11)。 p21は細胞の増殖を 抑える働きがあるので,このようにVacAがp21の発現を阻害することは,CagAによる細胞増殖 を促進し,胃細胞の癌化を促進する可能性を示唆している。
参考文献:
(1)Microb.Pathog.31:29-36,2001,(2)J.Biol.Chem.281,11250-11259,2006,
(3)Nat.Genet.33:375-381,2003,(4)J.Biol.Chem.279,7024-7028,2004,
(5)J.Biol.Chem.278:19183-19189,2003, (6)J.Biol.Chem.279:51013-51021,2004,
(7)Cell Microbiol 7,1285-293,2005,(8)Infect Immun.74,6571-6580,2006,
(9)Infect Immun.75,4472-4481,2007,(10)J.Immunol.180,5017-5027,2008,
(11)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.102,9661-9666,2005.



