熱研生物資源室よりトピックスをお届けします

クルーズ・トリパノソーマ原虫に対する抗体検査 その二

====  ゲル沈法による抗体検査    ====


 当室で実施しているクルーズ・トリパノソーマ原虫に対する抗体検査法をご紹介しましょう.

 クルーズ・トリパノソーマ原虫に対する抗体検査は,シャガス病流行地のフィールド・ワークでも,医療機関の検査所でも,現在rapid ICTimmun. chromat. test)を実施するようになりました.指先をプリックして出血させた数滴の血液から10分間ぐらいで判定できます.
下の画像は,シャガス病流行地のフィールド実施した検査結果の一例です.赤い線2本は陽性,1本は陰性です.



当室では,国内の医療機関から依頼されたシャガス病を疑う被験者の抗体検査を請け負っています.5分以内に結果が得られる,ポリスチレン粒子を用いた凝集テストをまずはじめにおこない,その結果の再確認のために,ゲル内沈降テスト(二重拡散法immun. double diffusion test,いわゆるゲル沈)も重ねて実施しています.

ゲル沈で生じた陽性バンドは,一般に,未染色のまま間接的な光で観察したり,タンパク質染色後に確認しますが,弱い反応のバンドは見逃しがちです.当室では,CBB染色後に,やはり間接的な光を通して,効率よく陽性バンドを検出しています.ここにその画像を添付しています.この方法で観察する陽性バンドは,あたかも,宇宙の星雲のようです.陽性の度合いは,バンドの太さと本数からも確認できます.なお,使用している抗原(中心部に入れる)は,in vitro培養から得たtrypomastigote由来抗原【trypomastigotes 細胞全体の lysates 由来の可溶性タンパク質,いわゆる粗〔crude〕抗原】を使っていますので,他の原虫(たとえば,T. rangeli 原虫)との交差反応があることは否めませんが,粗抗原を使用することでクルーズ・トリパノソーマ原虫に対するポリクロナール抗体を引っかけやすくしています.一方,血清(画像では,1時,3時,5時,7時,9時,11時の位置)は希釈せずに使います.なお,当法では定量的な抗体価を得ることができませんので,ICTと同じく陽性か陰性かを判断できるにとどまります.

【テストした血清の説明】

ここに示しています画像の,バンド陽性者の血清は,その同一サンプルの血液培養からすべてクルーズ・トリパノソーマ原虫を分離した被験者のものばかりです.陰性対照は日本人の血清を使用しています.

 

 

このゲル内沈降反応を利用したクルーズ・トリパノソーマ原虫に対する抗体検査にご関心のある方は,当室へご連絡ください.protozoatm.nagasaki-u.ac.jpの○を@にかえて,お送りください.