熱研生物資源室よりトピックスをお届けします

アメーバ原虫の栄養体に前後があるか?
== 腸管内寄生アメーバ原虫の栄養体に、前(まえ)と後(うしろ)がある!! ==

 腸管内 寄生アメーバ原虫のシスト(嚢子)は、シスト壁に覆われていて、自ら動くことが出来ず、分裂増殖もしません。
 一方、分裂増殖する発育ステージの栄養体(栄養型、あるいは虫体とも呼ばれます)の形態(かたち)は一般に不定形で、いわゆるアメーバ運動をします。偽足(もしくは仮足 pseudopod または pseudopodium)という透明帯(細胞質の一時的な突出)を細胞の外に伸ばして移動しますが、栄養体の細胞のどちらが上下でどちらが前後とか、あるいは、偽足を伸ばし始める決まった部位があるように見えません。

【 ごく一般的な、腸管内寄生アメーバ栄養体の動き 】を動画で示しています。
 
                                 栄養体(虫体)細胞の中に赤血球を数個取り込んでいます。

 ところが、細胞の形が不定形(アメーバ様・アメーバ状)でなく、定まった形(一定の形状)を維持しており、しかも、細胞の向きに前後を備え、決まった方向にだけ移動する栄養体が集団の中に混在しています。アメーバの細胞体は軸対象(軸が存在)になっています。
その形は、いかにも、「鉛筆にかぶせるキャップ」に似ています。
この形状のアメーバ原虫の栄養体を、ここでは【鉛筆キャップ型栄養体】と呼ぶことにします。

【 鉛筆キャップ型栄養体 】の特徴は、
(A)細まっている末端で、どこかに付着できそうです。
(B)(A)と反対側の、広まっている部位だけに、透明帯があり、大きく口を開けているようです。
   開口部は、内部に通じる取込口のように見えます。
(C)開口部の透明体は偽足のように伸ばすことはしません。
(D)鉛筆キャップの、開口部の方向へ必ず移動し、逆の、細まった方へは移動しません。
   移動方向を前としますと、前への移動のみで、後退はしません。
   つまり、開口部の方向にしか動けないようです。


【 鉛筆キャップ型栄養体 】の形を静止画像で示しています。
HM-1と記載していますのは、E.histolytica HM-1株の画像です。
クリックしますと,画像が拡大します.
 


【 鉛筆キャップ型栄養体 】の形態は、次のところにも明確に掲載されています。
http://www.cdc.gov/parasites/amebiasis/
http://www.cdc.gov/parasites/amebiasis/pathogen.html

上の画像中や図中には、
栄養体(虫体)は、いわゆるアメーバ状の形態ではなく、鉛筆キャップ型で示され、一方、シストは円形で示されていますので、E.histolytica 原虫では、鉛筆キャップ型の形態もごく一般的で、アメーバ原虫がその形態になるのは既知の現象といえます。

腸管内寄生アメーバ原虫の形態が、いわゆる、ここで仮の名称をつけた「鉛筆キャップ型」になったり、虫体に前後の方向軸があるとかの知見をお持ちの方は、当室までご一報ください。
メールアドレス protozoa○tm.nagasaki-u.ac.jp ○を@に変えてお送りください。


鉛筆キャップ型栄養体の中には、途中でくびれて、つぼ型になっているものもあります。
これは、E.nuttalliの画像です。
クリックしますと,画像が拡大します.
 


【 鉛筆キャップ型栄養体 】の動きを動画で示しています。