熱研生物資源室よりトピックスをお届けします
[  素朴な疑問  : その三  ]
====    ある寄生虫が二つ以上の宿主を渡り歩くとき,どちらが中間宿主で,どちらが終宿主と決まるのでしょうか    ====

マラリア原虫を例に挙げて説明しましょう.

マラリア原虫は蚊によって媒介される寄生虫で,ヒトも含めて哺乳類(鳥類,は虫類)に感染しますが,固有宿主が決まっており,ある種のマラリア原虫は,どの動物にも感染しません,つまり,どの動物も宿主にすることができません.

ヒトに感染するマラリア原虫の媒介昆虫はハマダラカですが,マラリア原虫を保有しているハマダラカもマラリア原虫に感染しているわけですから,マラリア原虫の宿主です.では,ヒトとハマダラカのどちらがマラリア原虫の終宿主と言えばよいのでしょうか?

マラリア原虫は,ヒト体内で無性生殖だけを,ハマダラカ体内で有性生殖と無性生殖の両方をおこないますが,有性生殖をおこなうところが終宿主となりますから,マラリア原虫の終宿主は,ヒトではなく,ハマダラカということになります.ヒトの体内で,雄性生殖母体と雌性生殖母体がつくられて,ハマダラカの吸血時に,その両者がそろって血液といっしょにハマダラカに取り込まれて,ハマダラカの中腸内で,つぎの発育段階である雌雄の生殖体へそれぞれ変化して受精しますが,マラリア原虫の場合,受精とは言わずに接合と言います.いずれにしても,この過程が有性生殖ですから,マラリア原虫の終宿主はほ乳類ではなく,媒介昆虫のハマダラカ,ということになります.

さて,中間宿主であっても,終宿主であってもどちらでもよいように思いますが,どうなんでしょう?たとえば,Aさんがマラリア原虫に感染していたとしますと,このAさんの体内にあるマラリア原虫は,自分の子孫繁栄のために,どのようにして他の人に乗り移ることができるのでしょうか.Aさんの血液を他人に輸血などしない限り,Aさん体内のマラリア原虫は他人に乗り移ることができません.しかし,ヒト以外に別の宿主がいますとそれが可能になるのです.その宿主が終宿主で,その寄生虫が生きながらえるためには,つまり,ライフサイクル(生活環)を全うするためには,欠くべからざる宿主が終宿主ということになります.

雄性生殖母体から精子状の雄性生殖体がリリースされる画像をカタログのページの動画(マラリア原虫)と,トピックスの別のページ(ネズミ・マラリア原虫の鞭毛放出 ... )に掲載していますのでご覧ください.マラリア原虫がこのようなダイナミックな動きをするのを観察しますと,さぞかし驚かれることでしょう.

ところで,トキソプラズマ原虫を保有する動物種は,ヒト,ネズミ,ブタ,ヒツジ,キツネ,タヌキ,ネコ,クマ,アシカ.クジラなど多岐にわたっています.それでは,トキソプラズマ原虫の終宿主はどの動物でしょうか?