熱研生物資源室よりトピックスをお届けします
人の手を借りなければ, 生き長らえることができない原虫()になってしまったのは, なぜ?‼
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強毒株になっていったその経緯は?   ====


 
アフリカ・トリパノソーマ原虫の中で, monomorphism しか示さない Wellcome strain ように, 人の世話, つまり, 人の手を借りてはじめて自らが生き長らえるような, もはや後戻りができない, 原虫にとっては危険極まりない選択をなぜしてしまったのでしょうか?
この手の, 自然界には存在しない, 発育ステージ全部を全うしない手抜き原虫を, マウス等の実験動物に感染させた場合, 慢性的経過をとらずに, 急性期のうちにマウスを死に至らさせてしまう強い毒性にもはや変化しており,  (in vivo でも, in vitro でも) 人の助けなしには, すなわち人による継代なしでは, もはや自分自身を存続させることができません.
もちろん, 病原性が強い, という意味での強毒性の性格を持つ原虫が人の世話にならずとも自ら他に感染することが可能な株もあります.
ここでの強毒株とは, 実験動物に感染性がある原虫では, 感染後, 短期間に宿主を殺してしまい, 人が他の動物に注射器等で継代しなければ, 他に移る術がなく, 途絶えてしまう株を指します. 例えば, 他に感染するためには, 媒介昆虫を必要とする原虫にとっては, 感染後, 短期間で宿主が死亡するのであれば, 原虫にとって, これほど不利なことはなく, 原虫側に立てば, 慢性的に感染状態を続けていたいのです.
ところが, ネズミ・マラリア原虫の, ある株では, 感染1週後もすれば, どのマウスも死んでしまいますが, これでは, 人の世話なしでは途絶えてしまう運命にあります. in vitro の系でも, 早いスピードで増殖はしますが, 感染型 (forms) をもはや形成しない原虫が強毒株に当たります. すべての発育ステージを全うせずに, 例えば, 有性生殖ステージをスキップしたりして, 栄養体の増殖スピードが早いのが強毒株の一つの特徴です.


現在, 実験期間を短縮して早い決着を得たいとか, 実験に高い原虫濃度を要求するために, 実験材料には, 増殖スピードが遅かったり, 原虫濃度が低い, 自然本来の慢性的感染状態を惹起する原虫株よりも, 強毒株が好まれて使用されますが, それらの強毒株は自然界には存在しないことも研究者や実験者たちは念頭においておく必要があります.

その原虫のライフ・サイクルを全うするためには, 本来なら昆虫が介在するのが自然であるとき, 感染マウスから未感染マウスへ人が人為的に注射器でもって原虫を長期間に渡り何回となく繰り返すことで, その原虫のライフ・サイクルから昆虫に関わる発育ステージのプログラムが省略もしくは, 完全に抹消されてしまうことがおこるでしょうか?

全うなライフ・サイクルから, ある発育ステージをスキップしてしまうなどの簡略化ライフ・サイクルの短期間固定化(生物学的性状が変化したまま固まる)をご経験された方は当室までご一報ください.
メールアドレス protozoa○tm.nagasaki-u.ac.jp ○を@に変えてお送りください。