顧みられない熱帯病(NTD)Neglected Tropical Diseases

 顧みられない熱帯病(NTD)とは熱帯地域、貧困層を中心に蔓延している寄生虫、細菌感染症のことで、世界中で10億人以上が貧しい生活を余儀なくされ、健康な数百人以上が生活を脅かされている。これらの感染症は個人の貧困な状況を長引かせ、蔓延させるだけでなく、これら地域社会の貧困もまた悪化させ、長期化させる。

 顧みられない熱帯病(NTD)は3大感染症(エイズ、マラリア、結核)と比べて、世界からあまり関心が向けられず十分な対策がとられてこなかったが、1997年のG8北海道洞爺湖サミット首脳宣言(橋本イニシアチブ)を契機として、17の疾患群に焦点があてられるようになった。現在、149の国と地域で流行しており、少なくとも100の地域で2つ以上の疾病が、30カ国で6つ以上の疾病が蔓延している。顧みられない熱帯病(NTD)の多くは貧しい遠隔地や都市スラム、紛争地帯などに集中しているため、顧みられない熱帯病は脆弱な貧困層の貧困の象徴となり、MDGsや世界の開発目標達成を遅らせている。

 顧みられない熱帯病(NTD)の多くは、原生生物やゼン虫の寄生による寄生虫疾患であり、奇形、盲目、障害などの重症を患うことになる。また近年デング熱や狂犬病などは広く蔓延しており、新たな地域での感染が増加している。これらの大半は、生活水準・衛生環境の改善により予防と制圧が可能であるが、そのためには政府・ドナー・製薬会社・NGOを含む他機関等の連携による包括的な対策が必要である。

 WHOは下記17の疾患群を顧みられない熱帯病(NTD)として挙げている。

1.Dengue デング熱

2.Rabies 狂犬病

3.Trachoma トラコーマ

4.Buruli ulcer ブルーリ潰瘍

5.Endemic Treponematoses (including yaws) トレポネーマ感染症(イチゴ腫含)

6.Leprosy ハンセン病

7.Chagas diseases (American trypanosomiasis) シャーガス病(アメリカトリパノソーマ)

8.Human African trypanosomiasis (sleeping sickness) アフリカトリパノソーマ(睡眠病)

9.Leishmaniasis リーシュマニア症

10.Cysticercosis 嚢尾虫症

11.Dracunculiasis (guinea-worm diseases) メジナ虫症(ギニア虫症)

12.Echinococcosis 包虫症

13.Foodborne trematode infections 食物媒介吸虫類感染症

14.Lymphatic filariasis (elephantiasis) リンパ系フィラリア症(象皮病)

15.Onchoserciasis (river blindness) オンコセルカ症(河盲症)

16.Schistosomiasis (bilharziasis) 住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫)

17.Soil-transmitted helminthiases (intestinal parasitic worms) 土壌伝播寄生虫症(腸内寄生虫)

参考文献;World Health Organization 2010”Working to overcome the global impact of neglected tropical diseases” →WHOへリンク

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