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概要Outline

1.研究目的

 アフリカの多くの人々は、症状の類似する感染症にたびたび罹患し、しかも、有効かつ容易な診断法がないことから、適切な治療を受けることができない。それらの多くは先進国では問題とならない感染症であり「顧みられない熱帯病(NTD)」と称される。その対策の要となるはずである実態把握は、遅々として進んでない。昨今、multiplex解析技術が開発され、同時に100種類の抗原・抗体の測定が可能になった。しかし、この新技術をアフリカの感染症流行の実態把握に用いられた事例はない。本課題の目的は、この新しい技術を応用することにより、これまで不明であった熱帯病流行の状況の把握が可能な技術を開発することにある。

2.研究内容

 課題期間内に、multiplex解析法を各種熱帯感染症に応用するためのマイクロビーズへの抗原・抗体固定の手法を確立し、「顧みられない熱帯病」の一括診断用のmultiplex解析用マイクロビーズを作成する。さらには、ケニア中央医学研究所と長崎大学熱帯医学研究所ケニア教育研究拠点のフィールドにおいて、住民を対象とした熱帯感染症調査を実施し、開発した一括診断キットの評価を行う。

3.研究の意義等

・政策的ニーズ
  アフリカにおける「顧みられない熱帯病」対策は、G8北海道洞爺湖サミットにおいても、重要課題とされている。その課題に対応するための基礎技術の開発を行う研究であり、本研究の成果が対象国の感染症対策の推進につながり、両国政府間の協力関係が強化されるものと期待できる。
・共同研究内容の先進性
  感染症の実態把握は、アフリカにおける疾病コントロールのために必要であるにもかかわらず、容易な手法がないが故、未だ不明な点が多い。本研究は、それを可能とする新しい技術を実態把握に用いるという先進性を有する。
・制度の付加価値
  本技術を現場に適用することにより、多くのアフリカ諸国の感染症対策の問題を解決する糸口を見つけることができることだけではなくアフリカにおける「顧みられない熱帯病(NTD)」の実態把握に関する国際標準への発展、さらには、国境を越えた地球規模の課題である感染症対策への展開が可能となる。
・過去の蓄積
  長崎大学熱帯医学研究所は、これまで、熱帯病研究機関として、多くの研究を重ねてきた。ケニアにおいては、ケニア中央医学研究所(KEMRI)創設当時から国際協力機構(JICA)を介した事業協力並びに、研究協力を継続している。2005年には、ナイロビ研究教育拠点の設置に関してKEMRIの間で共同研究実施の協定(MOU)の取り交わしを行い、大学より常駐研究者を数名派遣、バイオセーフティ・レベル3ラボによる研究事業の展開、西ケニアのフィールド在住の全住民5万5千人の登録と追跡調査を基盤とした疫学研究事業を展開している。

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