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文部科学省広報誌「文部科学時報」11月号に掲載されました。
タイトル:「グローバルな健康問題に取り組む実務者養成をめざして」

長崎大学大学院国際健康開発研究科 研究科長 青木克己
長崎大学大学院国際健康開発研究科 教授 松山章子

長崎大学大学院国際健康開発研究科(入学者定員10名)は,地球規模での健康問題,特に開発途上国を中心とした保健医療問題の改善に貢献できる専門性の高い実践能力を備えた人材を育成することを目的として,平成20年4月に開講しました。課程修了者には,修士(公衆衛生学)(Master of Public Health, MPH)が与えられます。 本研究科の取り組み全体は,開講年度より「大学院教育改革支援プログラム(平成21年度に「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に事業名称変更」)に採択され,大学院教育の実質化に向けて種々の新しい取り組みを行っていますので,本研究科の概要と目的を達成するためのそれらの新しい取り組みを紹介します。

教育プログラムの概要

開発途上国の保健医療問題は貧困,紛争,環境破壊など地球規模で起こっている諸要因と,地域特有な風土的,文化的,社会的,経済的諸要因が錯綜して起こっています。そこでそれらの地域で活動する国際保健専門家には,母子保健や熱帯病の基礎知識の修得,保健医療問題を複雑にしている種々の要因の理解,その解決へ向けての学際的アプローチ能力,関係者との信頼関係を構築できる能力など,種々の知識,技術と能力を備えることが求められます。 本教育課程においては図1に示す教育目標を掲げ,欧米のMPHのカリキュラムに準じて体系的に構築された教育カリキュラムのもとで,学生にMPHに求められる知識と能力を涵養させます。 ※教育プログラムの内容(PDF)

教員組織と授業形態

教員組織は,本学の6部局(熱帯医学研究所,国際連携研究戦略本部,医歯薬学総合研究科,経済学部,環境科学部,留学生センター)より選抜された教員26名(内女性4名,外国人1名)及び学外非常勤講師3名(内女性1名)で構成されています。教員の多くは,国際機関での実務経験や開発途上国での豊富な調査研究経験を有しています。 短期フィールド研修先であるバングラデシュ農村部で、住民の生活の様子を視察(平成20年9月4日撮影) 上記教員による臨場感あふれる講義・実習・演習に加え,学生には国際保健の現場での実務体験と問題解決能力を身につけるための海外での短期フィールド研修と長期インターンシップ・課題研究が課せられます。この海外での研修研究は本研究科における最重要科目ですので,より強固な指導体制がとられています。外国の受け入れ機関との連絡調整を行い,短期フィールド研修への学生の引率等を担当する教員を配置する一方,海外での長期インターンシップでは複数教員による指導体制(指導主任,副主任,インターンシップ担当教員,外国人メンター)をしいています。1年生はバングラディシュにある国際的NGO, BRAC(Bangladesh Rural Advancement Committee)で3週間の短期研修を実施し,今年研究科として初めてインターンシップを経験する2年生は国際機関(国連児童基金,ケニア・ガリッサ事務所),JICAプロジェクトサイト(インド,フィジー,スリランカ,フィリピン),国際的NGO(ケニア・リバプール大学NGO,BRAC), 本学の海外研究拠点で8ヶ月の長期インターンシップを実施しています。多くの学生がインターンシップにより開発途上国の保健医療問題を多角的にとらえる目が培れつつあると報告しています。

学生のバックグラウンドと学生支援

入学者は平成20年度,21年度において各11名です。彼らのバックグラウンドは看護保健学,医学,獣医学,薬学,社会福祉学,理学療法学,地域開発学など多様です。19名が社会人入学者であり、海外に於いての実務経験を有しています。 教学支援として,保健医療の知識を欠く学生への基礎人間生物学の講義,ネイティブスピーカーによる英語力の強化が行われ,経済的支援としては,通常の授業料免除や奨学金の他に,海外研修時に於ける危機管理に係る費用の一部が補助されています。就職支援としては,JICAとの共催によるキャリアフェアーや国連,JICA,コンサルタント会社,NGO等との情報交換会を行っています。 本研究科の学生は,開発途上国からの多くの留学生が在籍する熱帯医学専攻修士課程(1年,医歯薬学総合研究科)の学生と同じ部屋を自習室として与えられていますので,国際的教育環境のもとで勉強しています。

教育プログラムの更なる改善に向けて

まだ新しい本研究科の教育プログラムをより精緻で質の高いものにするために,MPH教育プログラムに関連する分野で豊富な経験を有す国内外の専門家(ハーバード大学,ガーナ大学,世界銀行,BRACなどの国際NGOなど)より構成されたアドバイザリーボードを設置し,ボードメンバーには講義やワークショップを実施していただくだけでなく,改善に役立つ貴重な意見をいただいています。例えば,アジアを中心に現在MPHコースが増設されていますが,そのようなコースを持つ大学とさらに積極的にネットワークを広げていくこと,またインターンシップ機関をさらに拡充するためのいくつかの候補も提案してもらっています。

短期フィールド研修先であるバングラデシュの村で、BRACが養成したボランティアの女性によって健康教育を実施(平成20年9月4日撮影)

一方,学生の意見も改善の参考とするために,学生との意見交換も行っています。学生の要望を受け入れて,補講や実習が実施され,また登録外の学生もゼミへの参加が受け入れられています。学生は自らテーマを決めて行う勉強会を実施し,そこに教員も参加し支援しています。学生は教員のMPH人材育成への熱意を受け止め,協同して本研究科を育てるのだとの強い意志を持っているようです。

国際協力に強い関心と意欲,高いコミュニケーション能力を持つ学生に入学してもらうために,平成20年度から長崎,東京などで本研究科の進学説明会を開いています。毎年60名を超える人が参加しており,国際保健に対する近年の日本人の関心の高まりが伺えます。

世界を舞台に活躍する保健医療人材を育成するために,今後も教育プログラムの見直しと改善に取り組んでいきたいと考えています。

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