熱帯地域は、地球上で最も生態的変異に富んだ地域であり、熱帯病やその他の健康被害に常に晒されています。近年におけるめざましい国際交流の増加により、熱帯地域における問題は単にこれらの地域だけの問題ではなく、地球規模での問題として対処すべき必要性が増してきています。

長崎大学熱帯医学研究所病害動物学分野は、熱帯病のなかでも特に昆虫によって媒介される疾病とそれらを原因とする様々な健康被害の防除を目的として、1987年に発足し、以後国内外の様々な研究機関との協力の下に、疾病媒介昆虫の生態と防除に関する基礎的あるいは応用的な研究を行ってきました。

生物環境分野の目的とするものは、昆虫媒介性疾病の伝播に及ぼされる環境要因の解析と、親環境的な媒介昆虫防除戦略の実施です。その主な活動地域は、東南アジアおよび東アジアです。以下に生物環境分野で現在取り組んでいるプロジェクトについて説明します。

 

1. 環境変化とマラリア媒介蚊に関する研究

     ●東南アジアの数カ所のフィールドにおけるマラリア媒介蚊とその生息状況についての長期間にわたるモニタリング
     ●30年間に及ぶタイ北部でのマラリア媒介蚊発生に及ぼす環境変化についての調査

     ●マラリア疫学に関して蓄積されたデータベース分析
     ●マラリア媒介蚊の生存率や発育に関する室内実験

     ●環境と媒介蚊に関するシミュレーションモデルの研究


2. 疾病媒介蚊の生息場所選択に関する研究

 

     ●様々な疾病媒介蚊の生息場所の照度分析

     ●地理情報システム(GIS)および遠隔情報(RS)の利用

     ●生息地における蚊成虫および幼虫の採集


3. マラリア媒介蚊、特にコガタハマダラカ Anopheles minimus グループの地理的変異に関する研究

 

     ●近縁種の同定

     ●地域間での生態的生理的違いに関する研究


4. デング熱媒介蚊の生態に関する研究

 

     ●新しい幼虫指標を用いた、都市化に伴うデング熱媒介蚊の蔓延に関する研究

     ●都市化の異なる地域における、ネッタイシマカ Aedes aegypti とヒトスジシマカ Ae. albopictus 発生のモニタリング

     ●標識再捕法

     ●ピレスロイド剤に対する抵抗性調査

     ●ネッタイシマカとヒトスジシマカの寄主探索行動に関する研究


5. 水田生息性蚊類の生態に関する研究

 

     ●日本、タイ、ベトナムの様々なタイプの水田における蚊の生息密度に関する研究

     ●自然個体群における蚊成虫の行動に関する研究

 

6. 東南アジア諸国におけるマラリアの疫学調査

 

7. 化学物質を用いた新しい媒介蚊防除の試み

 

     ●室内実験 ・フィールド実験

     ●空間忌避剤・昆虫成長制御剤の効力評価

 
現在の研究活動