長崎大学熱帯医学研究所における、平成20年度実績 JSPS拠点大学交流事業の報告、および平成21年度実施計画概要をおこないます。

JPS拠点大学事業とは 長崎大学熱帯医学研究所JSPS活動概要 長崎大学熱帯医学研究所JSPS組織 長崎大学熱帯医学研究所JSPS研究交流実績概要 長崎大学熱帯医学研究所JSPS研究交流成果 長崎大学熱帯医学研究所JSPS総交流人数 長崎大学熱帯医学研究所JSPS発表論文 長崎大学熱帯医学研究所JSPS 平成21年度実施計画概要 長崎大学熱帯医学研究所
JSPS拠点大学交流事業 長崎大学熱帯医学研究所 平成20年度実績
研究の背景・目的
 かつて熱帯病は熱帯固有の環境にねざした風土病でした。また温帯も含めて感染症の流行には流行地特有の環境が指摘出来たものでした。ところがその様相は今後次第に変わる可能性が指摘されます。地球温暖化や人と物資の往来の頻繁化は、マラリアやデング熱など熱帯病の流行を北へと広げる危険性を孕んでいます。熱帯の国々における急激な近代化は、それに一歩先んじた日本など温帯先進国の感染症を普遍的に蔓延させる下地を整える結果に繋がります。また開発に伴い未知の病原体や変容を遂げた新しい病原体の株が人類の前に現れてきています。自然と社会の変容が病原体と宿主の関係を大きく変えつつあるといえましょう。アジアにおいてこの傾向は特に顕著です。いま温帯と熱帯、先進国と開発途上国にまたがった共同研究が緊急に必要となってきました。日本はアジアの一員でありこの問題に無関心ではいられません。また先進国なら進んだ科学技術によって問題解決の先頭に立つべき責任も負っています。一方ベトナムは熱帯アジアの中で開発と近代化が急速に進んでいる代表的な国です。この2国が協力して熱帯感染症が流行する根本要因を科学的に追求し、新しい防除対策を確立することをこの事業は目的としています。その結果、この事業は熱帯医学の発展を促し、また国際的な社会貢献として大いに意義深いものになると考えています。
ページトップへ
研究テーマ
 この事業の課題名は「熱帯性感染症の新興・再興の要因とそれに基づく防除対策」としています。しかし熱帯性感染症として思い当たる疾病はあまた有りますからその全てを研究対象とする訳にはいきません。そこで、1蚊媒介性疾患に関する研究、2急性呼吸器感染症に関する研究、3腸管感染症に関する研究、4人畜共通感染症に関する研究の4小課題にグループ分けを行いました。次に、メジャーな感染症であること、両国の研究者間に研究の素地があり関心の深い感染症であること、両国にとって重要な感染症であることを条件として、グループ毎に両国で話し合い、各小課題における優先順位を決めました。「1蚊媒介性疾患に関する研究」では、マラリア、デング熱、日本脳炎、「2急性呼吸器感染症に関する研究」では、SARSを含む呼吸器感染症、「3腸管感染症に関する研究」ではコレラと土壌を介して感染する消化管の寄生虫、「4人畜共通感染症に関する研究」では狂犬病、ハンタウィルスなどについて、環境と変異の関係を意識しつつ疫学的アプローチが試みられています。
ページトップへ
全期間を通じて研究目標
 ベトナムにおける熱帯性感染症のうち蚊媒介性疾患、急性呼吸器感染症、腸管感染症、人畜共通感染症に注目し、この中から新興・再興感染症として特に重要であり、かつ両国に研究基盤の存在が認められる感染症について疫学的研究を行う。特に、発生と流行に係る病原体の地理的、年代的変異、並びに各種の自然的、社会的環境要因の解析に重点を置く点で個性化を図り、国際的レベルの成果を目指す。得られた研究成果に基づいてこれらの感染症に対する効果的な防圧方法を考案、提言する。

ページトップへ