新開発の西ナイル熱ワクチンの有効性を確認
現在実用化に最も近い

(21世紀COEプロジェクト「熱帯病・新興感染症の地球規模制御戦略拠点」)

長崎大学熱帯医学研究所 分子構造解析部門
森田公一 (2003年8月23日)

長崎大学熱帯医学研究所、(財)阪大微生物病研究会、(財)化学及血清療法研究所の3者は共同で、西ナイルウイルス感染症に対するワクチンを開発し、動物実験において有効性を確認した。このワクチンはわが国で臨床開発が進められている組織培養日本脳炎ワクチンの製造技術を応用して作製された不活化ワクチンである。

今回作製した西ナイルウイルスワクチンをマウスに1週間間隔で2回投与して、その後ニューヨークで分離された西ナイルウイルスで攻撃試験を実施した。その結果、ワクチンを接種されなかったマウスは、6匹全てが2週間以内に死亡したのに対し、ワクチンを接種されたマウスは6匹全てが感染を免れ、ワクチンの有効性が動物実験で証明された。

現在、米国を中心として世界で西ナイルウイルスワクチンの開発競争が行われているが、今回試作されたワクチンは日本国内で臨床開発が進められている組織培養日本脳炎ワクチンの製造技術を応用したものであることから、現在実用化に最も近い西ナイルウイルスワクチンである。

この結果は8月25日(月)〜28日(木)まで徳島県で開催される第三回あわじしま感染症・免疫フォーラムで発表される。(兵庫県立淡路夢舞台国際会議場)

(注)
西ナイルウイルス:
1937年にウガンダで発見された蚊で媒介されるウイルスである。おもに鳥と蚊との間で感染をくりかえすことで自然界の中で生きつづけるが、ヒトもウイルスに感染した蚊に刺されることで感染し、高熱や脳炎などの重い症状がでる。昨年米国では4156名の患者が確認され内284名が死亡している。ことしも米国では8月21日現在ですでに753名の患者と16名の死亡が確認されている。

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