宿主病態解析部門 エイズ感染防御分野

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本分野は,客員部門として昭和53年に新設され,教授,助教授は兼任で助手以下が固定という特殊な形態をとっている。

当分野はHTLV‐IやHIVといったレトロウイルス感染に関連した疾患の発症機序の解明を目指して基礎研究に取り組んでいる。下記の研究は1997年1月よりスタートしたものである。

研究活動

HTLV‐I TaxおよびHIV Tatによる細胞側遺伝子の活性化機構の解析

HTLV‐Iはヒト成人T細胞白血病(ATL)のそしてHIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスである。HTLV‐I TaxおよびHIV Tatはウイルスのコードする蛋白であるが,自身の転写活性化因子であるとともに,宿主細胞のゲノムに組み込まれてさまざまな細胞側遺伝子を活性化する。我々はTaxがIL‐1α,IL‐6,IL‐8,IL‐10などのサイトカイン遺伝子やICAM‐1のような接着分子の遺伝子を活性化することを明らかにしてきた。現在,TaxおよびTatによるIL‐8,IL‐10,ICAM‐1,iNOS遺伝子の活性化機構について国内および国外の研究グループと共同研究を進めている。

Tax非依存性のNF‐κB活性化機構の解析

HTLV‐I感染T細胞株においては転写因子NF‐κBが活性化していることが知られており,その活性化にはTaxが関与している。

生化学実験室

しかしながらATL患者より採取した白血病細胞はNF‐κBの活性化により誘導されたと思われるサイトカインやサイトカイン受容体を強く発現しているにも関わらず,Taxの発現をほとんど認めない。したがって,Tax以外のNF‐κB活性化誘導因子の存在が示唆される。目下,Taxの発現を認めないが,NF‐κBは活性化しているHTLV‐I感染T細胞株(TL‐Oml)を用いてNF‐κBの活性化機構の解析に取り組んでいる。

レトロウイルス感染によるアポトーシス誘導の解析

AIDSはCD4+リンパ球の減少に伴う免疫不全症である。HIVに感染すると,数年から10年という長い潜伏期間にCD4+リンパ球レベルが低下し,AIDSを発症する。現在のところ有効な治療法はなく,リンパ球減少の機序の解明が待たれている。このリンパ球の細胞死をもたらす機構として注目されているのがアポトーシスである。またATL患者末梢血白血病細胞は正常リンパ球に比べ,アポトーシスを起こし易く,HTLV‐I感染によるアポトーシスも注目されている。当分野はHIV,HTLV‐I感染リンパ球やTatおよびTaxを遺伝子導入したT細胞株を用いてアポトーシスに関わる諸機構の解析を進めている。

 客員教授   山 本 直 樹
 客員助教授  増 田 貴 夫
 助   手  森   直 樹
 技能補佐員  佐々木 昌 子

組織培養室