タイ

活動: DTMH, Faculty of Tropical Medicine, Mahidon University
期間: 2005年4月 ~ 2006年3月で終了 (斎藤 若奈)

マヒドン大学留学体験記

タイに一年暮らして、久々の学生生活を楽しんできました。いやあまさかこの年になって再び学生生活ができるとは大変嬉しいことでした。この1年で学んだことは、熱帯医学を一連に勉強できたことはもちろんですが、世界各国からのドクターと友達になり、文化の違いを乗り越えるような交流ができたこと、またそれが自分を見つめなおすきっかけともなり、自分に自信を持てたことだと思います。

大学はMahidol Universityといいます。マヒドン大学と読みます。Diploma of Tropical Medicine and Hygiene(D.T.M.H.)という資格を取るコースは世界各地にありLondon School of Hygiene and Tropical MedicineやLiverpool School of Tropical Medicineが有名ですが、普通3ヶ月で取得できるところをマヒドンでは6ヶ月でこの資格を取得します。このコースを受けてこられた方にお話を聞くことができ、とても面白かったと聞いて私も行くことに決めました。正直に言いますとTOEFLの点数が足りなかった、生活費が安い、日本から近いというのも理由でありますが。。

前半6ヶ月はD.T.M.H資格取得コースで、講義が主体でした。さらに顕微鏡実習、病棟・外来実習に加えてフィールド実習もありました。講義は主にタイ人の先生がTinglish(Thai-English;タイなまりの英語)で行います。わかりやすい先生とわかりづらい先生といろいろでした。ここのコースの強みは、なんといっても熱帯医学がある現場であるということ。マラリアはミャンマーとの国境近くから送られてきますし、デング熱やレプトスピラ症の患者などを実際に見ることができました。病棟に珍しい、または典型的な患者さんが来ると、その都度患者さんを見せてもらいました。顕微鏡実習でもうんこの検体は山のようにあるし、実習の時間が十分にとられているというのがいいところです。3回あったフィールド実習では地域のマラリア調査、小学校での検便、蚊の調査、それから地方の病院実習などがありました。患者さんを診るときはポリクリのようにグループで問診、診察などを行い、診断・治療までのプロセスを話し合ったりしました。

後半はM.C.T.M.コース(Masters of Clinical Tropical Medicine)に残ることにしました。後半ではよりClinicalに朝は病棟回診と講義、あとは論文批判会や一人一人トピックを選び発表することなどをやりました。最終試験はLong caseとOSCEで、緊張したけど、とても面白かったです。部屋に入ると2人の先生と患者さんがいました。机に「18years old, fever」と書いてあります。先生に通訳してもらいながら患者さんに問診を取り、そして診察を行います。それらの結果を元に鑑別疾患を挙げ、どんな検査をするか、そして治療はということを問われる口答試験でした。「診断には、まずマラリアの塗抹検査をする」と言ったら、「ではそこにある顕微鏡をみて答えなさい」と言われ、すでに標本が準備してありました。顕微鏡をのぞくとそこには三日熱の栄養体があり、やった見つけた!と喜び勇んで答えてゆくと、なんか先生は満足しない様子で、、、「もう一度顕微鏡にもどりなさい」といわれ、よーく覗いてみると、、そこには三日熱だけでなく熱帯熱も混在しており、なんと混合感染なのでした。。。

また、一人一人テーマを決め地方の病院に約2ヶ月行きそこで実習をしました。私はHIV/AIDSと結核をテーマに選び、バンコクから車で30分ほどのAIDS拠点病院に行き、タイでAIDSが爆発的に広がったときからずっとAIDSを診ているパイオニアであるAj.Somsitについて勉強することができました。午前中は先生の外来につき、外来の患者さんを診せてもらい、午後からは過去のカルテを引っ張り出して、ひたすらデータをとるという作業でした。タイではAIDSは2002年からNational Programで治療を行うことが可能となり、沢山の人が治療を受けられるようになりました。GPOvirというd4T, 3TC, NVPが1錠になったものがあり、それを主体に治療が行われています。治療を始めて以前は死を待つだけだった患者が劇的に助かるようになりました。現在はその感激の時期を越え、副作用や耐性化という新たな問題と直面しています。特にd4Tによるリポアトロフィーという問題により、今後の治療方針転換も迫られてきています。NVPについても、今では先進国ではほとんど使われなくなっていますが、タイでは積極的にNVPでポジティブデータを出してゆこう!という気運です。HIV/AIDS結核も頻繁に見られますが、これに対する治療でもNVPとRFPの併用は当然のように行われている治療であり(ガイドラインでは禁忌とさえ言われているにもかかわらず)、私はその状況下での結核の治療成績についてまとめました。データはカルテからレトロスペクティブに取りました。カルテを引っ張り出してもらい、“タイ語と英語が混じった手書きのカルテから情報を得る”という作業は頭が痛い大変な作業でした。日本語のカルテでも読めない字があってイライラするという経験はありましたが、ましてや今回はそれをさらにタイ人の外来ナースと解読して行くという根気の要る作業でした。カルテを読んでいると、自分で思わず勝手にストーリを想像してしまい、ああ!ここでリンパ節が再腫大して免疫再構築現象が起きたに違いない!と胸を躍らせ、先生に確認すると、「いいや、この前に治療自己中止をしているから、これは免疫再構築ではない」とあっさり言われてがっくりするなどの毎日でした。しかし、自分が日本人特有の粘り強い(?)性格の甲斐もあり、100人以上のデータをとることができました(居残りでやろうとしていると時間できっかりに帰るタイ人からは頭がおかしいのでは?とひんしゅくをかっていたと思われますが)。そんなこんなでデータを何とかとり、そこからまた論文を書く段階での英語との格闘が待っていましたが、それも何とかネイティブの友人や先生に助けてもらい、マスター論文が完成しました。途中こもる生活でうつ状態になりそうになりながらもできたのは本当に周りで支えてくれた方々のおかげだと感謝しています。

今回このコースで知り合った人たちは約15カ国から集まり、年齢・経験も様々、考え方も様々であり、その人たちとの交流が一番の宝だと思っています。はじめは英語もなかなかわからず恐縮していましたが、だんだんとようやく自分に自信がもてようになりました。授業のありかたひとつでも東洋と西洋の違いや、男女についての考えでも東洋、西洋、イスラム社会などいろいろな考え方がありました。時にはぶつかることもありましたが、それを話し合って乗り越えてゆくということで、お互いに学んだと思います。最終的に自分がたどりついたのは、自分はもっと日本の文化を大事にして、現在の自分に自信をもとう!ということです。今後もこの経験を生かしていけるようにがんばりたいと思います。

病棟実習風景
フィールド調査実習家を回り水がめのボウフラ
調査をさせてもらっているところ
住民のマラリア検査をさせてもらっている
ところ
顕微鏡実習風景、豊富な検体で実習時間が
とられている。
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