非感染症医・医学生のための1分で読める熱研感染症シリーズ

    当シリーズの解説

    長崎大学病院感染症内科(熱研内科)では常時複数名の医学生や研修医がトレーニングを積んでおります。医学生においてはトレーニング期間の最終週には担当患者様の病態を文献と共にまとめ、医学的にどのようにアセスメントする事でより良いサービスを患者様に提供頂できるのかを上級医と共に考察しています。その過程で学生や研修医が担当する感染症症例に関して作成した1分程度で読めるショートサマリーを公開しております。実臨床では複雑な病態も多く必ずしも教科書通りには解決できない状況も多くありますが、トレーニングの一環である事をご理解頂けると幸いです。

    文責 佐野正浩(2016年5月)

    1. 感染性脊椎炎 (Vertebral osteomyelitis

    < 疫学 >
    ・好発背景:50歳以上の成人、男性:女性=2:1 1)
    ・好発部位:腰椎(結核性では胸椎が多い)、椎間板を挟んで2椎体になることが多い 2)
    ・リスク:悪性腫瘍、腎不全、糖尿病、免疫能低下、透析など 4)
    < 感染経路 >
    以下のような先行感染があり、二次的に波及することがある。
    皮膚・軟部組織感染症、泌尿器・骨盤内臓器感染症、血管カテーテル関連感染症、IE、脊椎の術後 2)
    < 原因微生物 >
    ・黄色ブドウ球菌(40%) 、表皮ブドウ球菌(13%) 、大腸菌(11%) 、緑膿菌(11%) 2)
    ・表皮ブドウ球菌、Propionibacterium acnes(アクネ菌)では金属固定後の術後などに多い 1)
    ・緑膿菌やカンジダではカテ感染、麻薬者、術後などに多い 1)
    < 臨床症状 >
    ・腰背部痛(90%)、発熱 (50%以下) 、麻痺(15%)(特に頸椎で多い) 1)
    ※IEからの波及ならば心雑音や点状出血を認める 3)
    < 検査項目 >
    ・血液検査:血沈亢進、CRP上昇、白血球増多などの炎症所見
    ・血液培養:42%で陽性(脊椎カリエスでは極めて低くなる)、陽性の時はIEも疑う 2)
    ・組織/培養:骨生検は72%で陽性 2)
    ・画像診断:MRI(最も感度が高く、STIR像・脂肪抑制T2強調像で病変部の明瞭な高信号) 3)
    ※ただしMRIは寛解が遅れて認められることもあるので、臨床症状が大事である
    < 治療 > (原因微生物を採取して治療開始することを目指す)
    ・治療期間:培養結果に基づき抗菌薬を4~6w投与。 1)
    その後治療経過が不十分な場合や排膿できなかった膿瘍がある場合、透析患者である場合、MRSAが原因菌である場合などは期間延長する 6)
    ・効果判定:臨床症状やCRP・血沈の改善
    ※赤沈が投与開始後1か月で半減すれば治療失敗率12%、半減しなければ治療失敗率50%になる 2)
    ・外科的治療:①脊椎が機械的に不安定である場合(麻痺)②内科的治療が失敗した場合
    ③診断が不明確である場合④傍椎体膿瘍、硬膜外膿瘍が大きい場合など
    < 合併症 >
    ・整形外科:硬膜外膿瘍、傍椎体膿瘍、腸腰筋膿瘍、椎間板の融解・椎体破壊による脊椎変形
    ・その他:IE(31%)、薬剤投与による肝腎機能障害、褥瘡、膀胱直腸障害など 2)

    【参考文献】
    1)青木眞:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 862-863
    2)上田剛志:ジェネラリストのための内科診断リファレンス667-670
    3)上谷雅孝:脊椎感染症 臨床画像vol.28 No.4増刊号2012 134-142
    4)石川雅之:感染性脊椎疾患の治療 骨・関節・靭帯 1090-1095
    5)Frederick Southwick:Infectious Disease A Clinical Short Course Third edition
    6)Clinical Infe Dis2016;62(10):1262-9

    作成 森田航司(長大医学部6年) 監修:熱研内科 佐野正浩(2016.05.15現在)

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