マラウイ

期間: 2008年1月〜2011年2月 (宮城 啓、氏家無限、山田晃嗣)

-活動を終えて-

2011年2月 山田晃嗣(記) / 宮城啓

今回、最後の調査活動を終えた。三年にわたる活動のなかで、活動開始当初、55.0%であったマラリア迅速診断キット(Rapid Diagnostic Test (RDT))陽性率が、最後の今回、23.3%と半分以下に低下した。特に5歳以下の小児での陽性率は64.4%であったものが27.4%と、大幅な低下を認めた。殺虫剤屋内残留噴霧(Indoor Residual Spraying(IRS))も昨年、一昨年の12月に施行されており、蚊帳を配布した成果だけではないが、いずれにしても一連の活動により、マラリアをとりまく状況が改善していることをうれしく思う。

ただ楽観できることばかりではなく、今後活動が終了した後、現地の人が引き続き継続して蚊帳を使用してくれるかどうか、課題が残る。使用しなくなってしまえば、数年で元の状況に戻ってしまう可能性もある。住民の方々が自発的に使っていってもらえるよう、Health Surveillance Assistant等、現地スタッフの今後の活躍に期待したい。

この地で近い将来、『マラリア?ああ、昔そんな病気もあったね』といわれるようになることを夢見つつ、活動を終わりたいと思う。

受付風景
処方風景
破れた穴を修繕して使われていた蚊帳
風船?
スタッフ一同

マラウイにおける医療活動7 -ンコタコタの人とともに-

2010年11月 山田晃嗣(記) / 宮城啓

今回はInsecticide Treated Net(ITN)を配布してから二回目の乾期の調査であった。配布後約2年が経過していることから、使わなくなってしまったり、ネットの消耗などの理由から、調査前はマラリア迅速診断キット(Rapid Diagnostic Test (RDT))の陽性率が前回に比べ上昇しているのでは、と懸念していたが、結果はこれまでで最多の1280人が参加し全体で陽性率35.0%と、年齢構成や対象地域外からの参加者がいたため前回との単純な比較はできないが、概ね大差はなかったと考えられた。

地域の人たちが約2年経過したにも関わらず、引き続き継続してITNを使用していることが、この結果に繋がっているのだとほっとした半面、陽性率がそれ以上、下がらないことに対しても、不安を抱いた。ITNだけでは、マラリア罹患率をゼロにすることは困難であり、他のアプローチも重要なのではないか。特にITNは蚊帳の中での就眠時のみ有効であり、マラリア媒介蚊であるハマダラカが活動する夜間の、蚊帳の外での生活には効果がない。このため、すでに同地域ではIRS(Indoor Residual Spraying)があわせて導入されているが、行動習慣の改善、軒下等家の隙間をITNで覆うハウススクリーニングの併用など、複合的なアプローチがマラリア撲滅には必要であると考えられた。

ただ実際にそれらのことを施行するには相当の予算が必要となり、また陸続きの地域では人の出入りが多く、多くの困難をともなうため、道のりの厳しさを改めて痛感した。それでも今回一定の成果が得られたことは、着実に歩みを進めている結果であり、今後に繋がるものと信じている。

学校帰りに受診した子ども達
迅速診断検査の施行風景
診察風景
重度の貧血を伴ったマラリア患児
活動の源?
ミーティング風景

マラウイにおける医療活動6 -スコールに追われて-

2010年1月 山田晃嗣(記) / 宮城啓

前回に引き続き、今回もわたくし山田が調査に参加させていただいた。今回はInsecticide Treated Net (ITN) を地域住民に配布した後の、初めての雨季の調査とあって、どのような結果がでるか期待と不安が入り混じりながらの調査となった。しかしながら前回の11月の調査後にITNに加え、Indoor Residual Spraying (IRS) が対象地域に導入されていたため、良い結果が出るだろうとの期待があった。

結果としては、参加者1218名中468名(38.4%)がマラリア迅速診断キットで陽性であり、ITN配布前の雨季の52.8%に比べると減少していたが、前回11月のITN配布後乾季(33.4%)と比べると増加していた。降雨量等ITNの以外の要因が関与している可能性も考えられるが、一部の住人がIRS導入後はITNを使う必要はない、との誤った認識をもっており、そのことが影響していた可能性もある。今後もITNの使用状況の継続的なモニタリングをしていていきたい。

首都リロングウエの上空より
処置風景
同級生?
住民宅を訪ねて

マラウイにおける医療活動5 -マラリア患者ゼロを目指して-

2009年11月 山田晃嗣(記) / 宮城啓

わたくし山田は今回が初めての本調査への参加となった。私事で恐縮であるが、35年前に南アフリカで生まれて以来、その後アフリカの地を踏んだことがなく、今回たっての希望により参加させていただくことができた。遠い記憶の中にあったアフリカ大陸が今回の調査への参加により、鮮明なイメージとして心に残すことができ、大変感慨深かった。

調査の結果であるが、今回はITN(Insecticide Treated Net)を住民に配布した後の初めての調査となり、マラリア迅速診断キットによるマラリアの陽性率は、全体で55%が33%に、5歳以下の小児では72%が39%に減少していた。気候の影響・環境の変化等の関与も考えられ、一回の結果のみでは評価できないが、ITNに予防の一定の効果があることが予想され、今後も引き続き調査を継続し、その有用性を検証していきたい。また今回、蚊帳の使用率も調べているが、住民の使用率はほぼ100%であり、マラウイの人々の素朴で実直な性格を反映していた。

前回同様、マラリア迅速診断キット陽性者には抗マラリア薬を処方したが、調査日5日間の間に、2名の重症マラリア患者(いずれも5歳以下の小児)が当調査に訪れ、地域病院へと搬送することとなった。このような機会がなければ命を落としていたかもしれない症例であり、訪れてもらえてよかったと思う反面、この国のまだ発展途上にある医療の現実の厳しさを知らされた。

この国からマラリア患者がいなくなることを願いつつ、今後も調査を継続していきたい。

受付風景
診察風景
はしゃぐ子供たち
主食のNshimaを食べる
参加したスタッフ∔α
配布した蚊帳

マラウイにおける医療活動4 -再びマンゴーの木の下で-

2009年2月 氏家無限(記) / 島崎貴治 / 宮城啓

前回報告でも述べた通り、引き続き2009年1月29日から2月4日にかけて、マラウイのンコタコタ県にある村で、雨の多い季節(雨季)にはどのくらいの村人たちがマラリアに感染しているのか(罹患率)調査を行った。前回の調査では強い陽射しを避けてマンゴーの木の下で診療活動を行ったが、今回は雨季の調査のため、時にはマンゴーの木の下で雨を避けながら、前回同様(身体計測やマラリア検査、検査結果や症状に応じた医薬品の処方)の医療活動を行った。

雨が降れば自然に村人の足が遠のくことも考えられるため、今回の調査では現地のスタッフの提案で、Disc Jockeyに、活動の参加を呼びかけるマイクパフォーマンスとみんなが好きな現地の音楽を大音量で流すことをお願いした。結果、多くの村人が調査に興味を持ち集まってもらうことができ、周りで踊る子供達とリズムを取りながらの楽しい診療となった。

雨のために予定していた日程の1日間は活動ができなかったにも関わらず、音楽と現地スタッフの献身的な働きのおかげで、最終的には前回の調査とほぼ同じ数(1200人以上)の村人に参加してもらうことができた。マラリア迅速診断キットによるマラリア陽性率は全体では、前回とほぼ変わらない約53%の陽性率であったが、5歳以下の子供だけをみると72%が陽性となり、雨の少ない季節(乾季)には64%であった陽性率と比べて、マラリアにかかっている子供の数がやや増えていた。一般にマラリアは小さな子供や妊娠をしている女性にかかりやすく、また重症となりやすいため特に注意が必要となる。

今回の調査後に調査対象の全世帯に対してマラリアを予防するための蚊帳を配布する予定である。蚊帳を配布して、村人に蚊帳を使ってもらい、蚊に刺されないようにすることで、どの程度マラリアにかかる人の数を減らすことができるのか、今後も調査活動を続けていく。

雨の中での診療
今回から村人への活動参加を呼びかけたDJ
踊る子供たち
子供たちとのダンス
診療活動の風景
マラウイ湖で漁をする船、
対岸に見えるのはモザンビーク

マラウイにおける医療活動3 -雨季の調査-

2009年1月29日 氏家無限(記) / 島崎貴治 / 宮城啓

昨年の11月にNICCO(NGO) / 関西医科大学と合同で行われた、マラウイにおけるマラリア実態調査(前回レポート参照)に引き続き、雨季におけるマラリア調査を行うために、現在、マラウイの首都リロングウエに来ている。一般的にはマラリア感染の原因となるハマダラカは、繁殖するための水溜りが豊富となるため雨期に数が増えて、それに伴いマラリア感染も増加する。前回の調査では半数以上の村人たちがマラリアの迅速診断検査で陽性となっていたが、今回の調査では実際の村人たちの雨季の生活とマラリア感染における問題点を調査し、前回調査との比較を行う予定である。

雨季であることから屋外での活動が制限されたり、2回目であることから村人たちの足が遠のいたりといった不安はあるが、現地スタッフと協力してしっかりとしたデータ収集を行いたいと考えている。また今回調査後には調査対象の451世帯、2120人の村人たちに蚊帳を配布する予定である。

最後にNICCOによる今後の活動の方針として、マラウイで最も問題となっている感染症であるHIV感染についての活動を検討しており、現在情報を収集中である。

マラウイにおける医療活動2 –マンゴーの木の下で–

2008年12月 氏家 無限 宮城 啓


2008年11月に熱研内科より2名の医師がマラリア調査のためマラウイのンコタコタ県に派遣された。これは京都にあるNGO、社会法人 日本国際民間協力会(NICCO)がマラリアで苦しむマラウイの住民に対して、マラリアを媒介する蚊から身を守るため「長期有効な防虫処理をした蚊帳」を無料で配布する感染対策を計画し、関西医科大学公衆衛生学教室と共に現地でのマラリア感染の実態を調査することを目的とされた。

マラリアを診断するためには、通常は採血された血液をスライドグラスの上で染色して顕微鏡を使って血液の中のマラリア原虫を見つける必要がある。しかし、実際には普段住民が受診する診療所(ヘルスセンター)には顕微鏡がないため、頭痛や発熱などの臨床症状でマラリアを診断し抗マラリア薬を処方している。そこで、迅速診断キットを使って現地の人たちが実際にはどのくらいマラリアに感染しているかどうかを調査した。

各村の広場で行われた身体計測やマラリア検査、検査結果や症状に応じた薬剤の処方と配布には、5日間で1200人以上の村人たちに参加してもらうことができた。迅速診断検査では約55%の人たちが陽性の結果となり、必要に応じて抗マラリア薬や解熱薬等の処方を行った。今回の調査は乾季に行われたが、次回調査では蚊が増加する雨季に同様の調査を行い、その後に各家庭に必要な蚊帳を配布する予定である。このような活動を通じて少しでも多くの村の人々がマラリアの予防に関心を持ち、マラリアで苦しむことが少なくなれば幸いである。

村のマンゴーの木の下で、
今回の調査は行われた
処方箋の発行
身体計測
マラウイの空
マラウイ湖から上る朝日

マラウイにおける医療活動

熱研内科は2008年1月、京都にあるNGO日本国際民間協力会(NICCO)の要請を受け、関西医科大学公衆衛生学教室と共にアフリカのマラウイで保健医療活動の予備調査を行った。マラウイでは全外来患者の40%がマラリアであり、また、5歳以下の小児の入院の40%がマラリアである(マラウイ保健省の資料より)とされており、マラリアは同国における最重要疾患の一つとなっている。今後パイロット地区におけるマラリア原虫の感染対策の一つとして各家庭に蚊帳を配布する予定である。また、今後、当科から年に2回(乾季、雨季1回ずつ)それぞれ2人の医師を派遣し、関西医大公衆衛生学教室の先生方とともに、マラリアや住血吸虫症の診断、住民に対する診療活動などを行い同時に蚊帳の評価を行っていく予定である。

首都リロングウエからンコタコタ県へ
向かう際の風景
村の訪問
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