講演会・セミナー・学会など

集中治療部(ICU)の関野先生による敗血症管理のレクチャー

3月29日に当科の医師向けにICUの関野先生による敗血症管理の講義をして頂きました。当科の松井先生からの依頼でもありました。敗血症の病態、治療戦略の話を最近出たガイドラインの内容も交えながらわかりやすく概説があり、ガイドラインでは対応できない状態に関しての病態解説や、ICUで研究が進行中の小腸粘膜障害と重症敗血症の話や、gut-theoryの免疫の話など多岐にわたる内容を非常にわかりやすく解説して頂きました。感染症治療でこれからもお世話になるICUとの関係は重要です。今後もこのような交流ができればと思います。

文責 田中健之





平成28年度 HIV感染者の地域支援に関する研修会

3月13日に県央保健所にて「平成28年度HIV感染者の地域支援に関する研修会」が開催され( プログラム )、感染制御教育センターの泉川先生、地域連携支援センターの原口さん、熊脇さんと一緒に講演をしてきました。このメンバーで行脚する研修会が昨年から始めて3回目となりました(他の主催の関連の研修会も含めると6回目)。今回の会には実際の症例の受け入れでお世話になった施設のスタッフの方たちも参加され、会場からの質問では、「今後も受け入れで手を挙げた施設には大学病院から個別対応のミニ研修会を出張講義も含めて対応可能なのか」という質問もあり、現場の認識が徐々に上がっていることを実感しました。この地味な活動は今後も繰り返し継続することが重要であることを改めて現場で感じました。多忙なスケジュールの中、音頭をとって頂く泉川先生に感謝します。

2017年3月14日 文責 田中健之

上五島で行ったインフルエンザワクチン研究について

齊藤信夫

我々は、長崎県の離島である上五島で、2009年から3シーズン分のデータを集め、インフルエンザワクチンの効果をみる研究を行い、研究結果がVaccine誌に掲載されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28043738
主な結果を以下に示します。

【主な結果】
インフルエンザワクチンは2シーズン連続して接種すると効果が落ちる
これは前シーズンにインフルエンザA感染が認められなかったグループで認められ、感染がみられたグループでは認められなかった。
インフルエンザAに前シーズン罹った人は、翌シーズンにインフルエンザAに罹りにくい

【インフルエンザワクチンと今回の研究について】
インフルエンザウイルスは毎年12月頃から1月にかけて流行し、猛威を振るいます。ワクチンは非常に重要な予防法のひとつです。
インフルエンザワクチンは予防効果の持続時間が短く、ウイルスが毎シーズン少しずつ性質を変化(抗原連続変異)するため、毎シーズンワクチンを接種するのが良いと考えられています。シーズン毎に連続してワクチンを接種することの影響は以前から研究されていますが、はっきりした結論は未だに出されていません。
最近、連続してワクチンを接種すると効果が落ちることがアメリカのコホート研究で発表されました(参考文献1~3)。しかし、この研究では過去のインフルエンザ感染を考慮しておらず、さらに詳細な検討が必要と我々は考えました。
また、インフルエンザに感染した人は、強い免疫がつくられますが、どの程度の防御効果があるのかを疫学的に示した研究はあまりありません。詳細なワクチン効果を検討するうえで、この自然感染からつくられる防御効果を考慮したうえでワクチン効果を計算することは非常に大切だと我々は考えました。

【研究概要】
われわれのグループは、長崎県上五島病院でこれらの疑問を解決するための研究を行いました。(本研究は長崎大学熱帯医学研究所倫理委員会と上五島病院倫理委員会の承認を得て行っております。)
新上五島町は、長崎港から船で約2時間かかる離島であり、人口は約2万人です。上五島病院は唯一の有床病院であり、約7割のインフルエンザ患者が上五島病院で診断されています(図1)。多くの住民は発熱すると継続してこの上五島病院を受診すると想定され、過去のインフルエンザ感染が正確に把握できると考えられました。
信じられないかもしれませんが、上五島病院では、発熱患者の診察を一人の医師(小児科小森先生)が担っていました(平成28年まで)。非常に丁寧に診療にあたっておられ、とても正確なデータを収集することができました。
我々は、テスト陰性症例対照研究という手法を用いて、ワクチン効果を算出しましたが、この手法ではインフルエンザ陽性患者だけでなく、インフルエンザ様症状での受診データすべてを対象とすることが非常に大切でしたが、上五島病院ではこのデータ収集が見事になされていました。

図1 上五島と上五島病院位置。有症診療所は上五島病院のみである。
N. saito et al, Vaccine Dec. 2016

【主な結果】
今回我々の研究では、2009年インフルエンザシーズンから3シーズンを解析の対象としました。7352回のインフルエンザ症状の受診があり、5838回の受診を対象としました。
前シーズンにインフルエンザAと診断されたグループは翌シーズンインフルエンザAに対するリスクが診断されなかったグループより、62%低いことがわかりました(adjusted odds ratio: 0.38, 95% CI: 0.30-0.50)。過去のインフルエンザ感染のリスクを臨床疫学的に数値としてあらわした研究はほとんどなく、非常に貴重なデータといえます。

我々は、この過去の感染を補正、層別化したうえで、ワクチン効率を算出しました。2シーズン連続してワクチンを接種したグループのワクチン効率は2%(95%信頼区間, -17~17) であるのに対して、前シーズンワクチンを接種せず、今シーズンのみワクチンを接種したグループのワクチン効率は46%(95%信頼区間 26~60)であり、ワクチンの連続接種によりワクチン効率が低くなることが示されました(P value < 0.05)。層別化による解析では、これは過去にインフルエンザAによる受診が認められグループで認められ、感染がみられたグループでは認められませんでした。しかし、感染が認められたグループでは、症例数が少なく、今後の検討が必要であります。

図2 インフルエンザワクチン接種歴とワクチン効果
(過去の感染を含む各種交絡因子補正)

【本研究結果からの課題】
ワクチンの連続接種によるワクチン効果の減衰は、現状のワクチン(不活化ワクチン)の欠点である可能性が示されました。
しかし、我々の研究は、インフルエンザワクチンが有効ではないといっているものでは決してありません。連続してワクチンを接種しても、防御効果は認められ、ワクチンを接種しなかったグループもしくは前シーズンのみ接種グループよりも高い予防効果がみられております。また、過去に感染がみられたグループではワクチン接種により、非常に高い予防効果が認められました。現状では、インフルエンザウイルスの流行予防にはワクチンを毎シーズン接種していくのが最善であると考えられます。
しかし、今回の研究の結果より、現状のインフルエンザ不活化ワクチンは連続して接種すると効果が落ちることが示されましたし、現状のワクチン効果は、非常に高いとは、残念ながら言えません。今後、改良もしくは別のタイプのワクチンの開発(生ワクチン、サブユニットワクチン、インフルエンザ亜型によらないユニバーサルワクチン、経鼻ワクチンなど)によりより流行予防効果が高く、連続して接種しても効果の減衰しないワクチンが望まれます。

    (参考文献)
  1. Ohmit SE et al. Influenza vaccine effectiveness in the 2011–2012 season: protection against each circulating virus and the effect of prior vaccination on estimates. Clin Infect Dis 2014;58(3):319–27.
  2. Ohmit SE et al. Influenza vaccine effectiveness in the community and the household. Clin Infect Dis 2013;56(10):1363–9.
  3. Ohmit SE, et al. Influenza vaccine effectiveness in households with children during the 2012–2013 season: assessments of prior vaccination and serologic susceptibility. J Infect Dis 2015;211(10):1519–28.
   ・本研究はJSPS科研費 15K19245 の助成を受けたものです。

アメリカ熱帯医学会総会2016に参加して

2016年アメリカ熱帯医学会総会に2016年11月14日から16日まで参加しました。アメリカ熱帯医学会は、毎年アメリカで開催される熱帯医学会としては世界で最も大きな学会です。今年はアトランタで行われました。初めての参加だったのですが、学会の大きさと内容の濃さに驚かされた3日間でした。
今回、私は「フィリピン・マニラにおいて、発熱した人々が、どの程度病院受診前に抗菌薬を内服しているかを調べる研究」の結果を発表してきました。研究結果は40%程の患者が抗菌薬を内服しており、収入が低い患者ほど抗菌薬を乱用していることがわかり、貧困層での抗菌薬の乱用が示されました。ポスターでの発表でしたが、多くの研究者が関心を示してくれました。また、現在進行中である菌血症研究についても、多くの議論をすることができ今後の共同研究に繋がるものと考えています。

学会は非常に巨大で参加人数の多さに驚きました。
シンポジウムや発表は、マラリア関連が多くを占めていました。そのほかにはZIKA熱、難民問題、寄生虫関連のトピックが多かったです。シンポジウムの多くは、ビルゲイツ財団のサポートを受けた大規模研究の発表が多く、学会自体もビルゲイツ財団のサポートを受けているようで、非常に影響力が大きいものだと思いました。
我々の教室の研究トピックである、発熱疾患、肺炎、リケッチア、レプトスピラ、腸チフス、抗菌薬耐性などは、この学会ではややマイナーなのだと驚きました。また、アフリカでの研究が多くを占めており、東南アジアや南アメリカはどちらかというとマイナーな部類にあるようでした。

私が一番楽しみにしていたのは、熱性疾患のシンポジウムでした。
初に、熱性疾患研究で多くの総論を執筆しているJohn Cramp(University of Otago, Dunedin, New Zealand) が熱性疾患研究のトピックや問題点(標準化されていない)を示しました https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26633014
http://www.wwarn.org/non-malarial-febrile-illness-nmfi-map (マラリア以外の熱性疾患患者をマッピングしたウェブサイト)
次に、最先端の診断方法をEric R. Houpt(University of Virginia, Charlottesville, VA, United States)の公演がありました。彼らはTaqman array cardという技術を使い多種類の病原体を直接検出する(real-time PCR)測定方法を開発しておりました。まだ、in house methodで販売はされていませんが、数十種類を70ドルほどで検出できるようです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26491176
3番目に、 Yoel Lubel(Mahidol Oxford Tropical Medicine Research Unit, Bangkok, Thailand)が途上国の資源が限られた環境において、point of care test としてCRPを測定すると抗菌薬の処方を減らせるという研究を発表されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Yoel+Lubell+lancet+global
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4743113/
ベトナムの研究が論文化され、現在はミャンマーやタイの医療資源が限られた地域で行っているとのことでした。

そのほかのセッションで面白かったのはレプトスピラ症についてでした。レプトスピラ症に関する発表は少ないですが、多くの熱帯地域の研究者がその重要性を認識していることが実感でき、今後注目の分野であることは間違いありません。
我々の研究サイトであるフィリピンでもレプトスピラ症は非常に重要な問題として研究を進めています。
なかでも面白かったのは、ブラジルの研究サイトからの発表でした(Yale School of Public Health, New Haven, CT, United States,)。この研究グループは、ブラジル北部のスラム地域である特定の地域を研究対象に絞り、全住民に年3回の抗体調査(MAT)を行い地域全体での感染を把握していました(写真)。

また、特定の人にGPS装置(写真)を24時間持たせ、住民の行動範囲を特定し、レプトスピラ症に罹る人の行動範囲によるリスク因子を解明しようとしていました。現時点での結果は、男性は女性に比べ行動範囲が広く、行動範囲が広かった男性のほうがレプトスピラ症に感染しやすかったという非常に興味深いデータでした。 また、同地域でネズミの生息率の多さとレプトスピラ発生率の関連性を空間解析で検討していました。ネズミの生息数の測定は、足跡を見つけることができる板を地域に数多く設置し、測定するという面白い手法でした。

小児肺炎の大規模研究(世界5地域)、PERCH projectの研究成果の報告がありました。
PERCHstudyでは一般的なサンプル採取に加え、Lung aspirates from patients with pneumonia and/or lung biopsies をレントゲン透視下で行っているとうのは驚きでした。

臨床的な内容のセッションも多くあり、参加できなかったのですが、難民キャンプでのケースディスカッションなどもありました。臨床的な内容では、アメリカでの旅行外来をされている先生などが多い印象でした。

非常に多くのことを吸収することができ、多くの人々と会うことができた学会でした。ぜひ定期的に出席したいと思う学会で、来年はトロントで開催されますのでぜひ参加したいと思います。
アトランタはとてもきれいな街でとても好きになりました、またぜひ行きたいです。

2016年11月17日 文責 齊藤信夫

看板 学会風景 ポスター発表

Asian Pacific Society of Respirology (APSR2016)

11月12日ー11月14日までタイのバンコクで開催されたAsian Pacific Society of Respirology(APSR2016) に参加してきました。自分の口演は遺伝性肺胞蛋白症の報告でした。アメリカでの国際学会以外にはこれまで参加しておりませんでした が、今回、APSRに初めて参加しました。アジア各国の呼吸器学のボトムアップには非常に重要な学会であると感じました。結核のセッションもいわゆるlow income contriesの最前線で診療しているインド、フィリピン、タイなどの呼吸器科医の意見を直接耳にする機会があり、興味深かったです。
第二外国語としての英語という位置づけの学会なので、若手の先生が演題出すには非常に良い機会ではないかと感じました。

田中 健之

夕食を知り合いの先生方と一緒に。左から順に、 私(田中)、森本先生(当科)、星野友昭先生(久留米大学)、石井晴之先生(杏林大学)、田坂定智先生(弘前大学)、大河内眞也(東北大学)、井上義一先生(近畿中央胸部疾患センター)、宮原信明先生(岡山大学) Critical Care sessionの招請講演のコロラド大学呼吸器科のDr.Marc Moss(次期ATS president)
偶然会場で会った当科同門の聖路加国際病院の中岡先生と一緒に 私(田中)

介護福祉法人白之会 みぎわほーむ 職員研修会
2016年6月23日

医療法人白髭内科医院の白髭豊先生より昨年に引き続き職員研修会での講演を当科に依頼がありました。昨年は加藤隼悟先生が地域医療とHIV/AIDSのテーマで啓蒙活動も含めて講演され、今年は私(田中)が講師として”地域医療と感染制御;最近の耐性菌の話題と結核の現状について”というテーマで講演させて頂きました。長崎市の在宅医療ネットワークを確立され、現在も全国各地で地域医療、在宅医療について講演されご活躍されている白髭先生から毎年お声をかけて頂き、当科としても大学として地域医療への貢献をどのような形で可能なのかを模索する中でこのような依頼を毎年頂き、大変ありがたい機会と思っています。

文責 田中健之





Daniel Paris先生によるリケッチア感染症レクチャー

2016年5月11日にMahidol Oxford Tropical Medicine Research Unit (MORU)からDaniel Paris先生をお招きし、熱研内科の若手医師向けにリケッチア感染症のレクチャーを頂きました。前年11月にOne Healthカンファレンスでお越し頂いた際のレクチャーが大変奥深く、臨床医にも研究者にも刺激的な素晴らしいレクチャーでしたので、今回も若手臨床医に対してリケッチア症やツツガムシ病の疫学、臨床、診断に関してはもちろん、ベクターであるダニに関しても網羅し、MORUの最新の研究成果や、数少ない世界各国からの新たな知見を教えて頂きました。現在投稿中の最新データも含めて惜しみなく披露して下さり、大変勉強になりました。また、レクチャーに先立ち大学院生の加藤、山藤とは長時間にわたり各自の研究テーマに沿ってリケッチア症の臨床研究を大いに議論して頂きました。大学院生の研究指導における支援も特筆すべきもので、これからも引き続き熱研内科とMORUの指導者・研究者同士の交流が活発に続いていくだろうと感じられる機会でした。

Daniel Paris先生は翌日には午前中に3時間たっぷりとMTMや博士課程のリーディング大学院生向けの授業でも講義されました。リケッチア感染症における免疫機構やダニの中での感染保持機構、新たな診断検査の開発やワクチン開発など、若手研究者を大いに刺激するアドバンストな内容を盛り込みつつ、学生と活発に質疑応答をしながら精力的な講義をされていました。高等教育の神髄を垣間見ることのできる素晴らしい講義でありました。同日午後には有吉教授とともに東京へ移動し、19時から国立国際医療研究センター(NCGM)と長崎大学TMGH校共催の熱帯感染症セミナーに参加されました。NCGMで経験したMurine typhusの症例プレゼンテーションと、Paris先生からのリケッチア症に関する特別講義で21時まで他施設の方も含め、多くの方にご参加頂きました。疫学、臨床、診断を主に据えたダイジェスト版の講義でしたが、ご参加いただいた先生方にはとても新鮮な学習になったようです。その後はNCGMの国際感染症センター、大曲貴夫センター長や忽那賢志先生をはじめ、若手医師の皆様と懇親会の機会も設けて頂き、大いに語り合っていらっしゃいました。

出張日程最終日の5月12日には有吉教授と加藤と一緒に国立感染症研究所のウイルス第一部第五室(旧リケッチア・クラミジア室)を訪問し、安藤秀二室長に施設紹介と日本におけるリケッチア症・ツツガムシ病の研究ネットワークや最新の知見をご紹介頂き、小川基彦主任研究官らとともにParis先生のデータも紹介しつつ活発な議論をされていました。ここではParis先生から新種認定間近の病原性Orientia、Orientia Chutoの話題に及び、安藤先生がその命名の発案者であったことが判明し、感動していました。今後のリケッチア研究における国際的協力の第一歩が踏み出されたように感じられる機会でした。

総じて、内容の濃い密な出張日程でしたが、どの場面でも臨床感染症医でありながらリケッチア感染症に関する基礎医学、公衆衛生、臨床、ベクターなど全てを網羅する幅広く深い知識と研究成果を見せて頂き、改めてDaniel Paris先生の凄みを感じる機会でした。一連の行事にご協力頂いた関係各位に深く感謝いたします。

平成28年5月13日 加藤 隼悟 記

熊本震災医療支援活動

2016年4月14日・16日に熊本でおきた最大震度7の震災に関連し、国際医療ボランティア団体であるNPO法人・ジャパンハートの活動に参加した。ジャパンハートはASEAN諸国における医療が届いていない地域・人々に医療支援を行い、大規模災害時には国際緊急救援も行っている団体である ( http://www.japanheart.org/ )。活動範囲は海外に限らず、東日本大震災においても医療支援を行い、現在も東北の地域医療支援を行っている。今回の熊本震災に対しては、4月19日にジャパンハート医療支援部隊派遣が決定となり、4月20日から25日まで第一陣、22日から25日まで第二陣、24日から29日まで第三陣、28日から5月3日まで第四陣、5月2日から7日まで第五陣、5月6日から9日まで第六陣を順次派遣することになった。当科の元助教・病棟医長であった神白麻衣子先生がジャパンハートの理事を務めており、個人的に神白先生から第三陣の派遣医師として参加可能かどうか問い合わせを頂き、初めてジャパンハートの活動に参加させて頂くこととなった。神白先生ご自身は第一陣リーダーとして現地入りし、同じく4月20日に熱研内科の日帰り先遣隊(鈴木先生、田中先生、伊藤先生、加藤)と避難所となっていた熊本大学体育館で情報共有できた。初期アセスメントの結果、ジャパンハートは熊本市南区の避難所アセスメント及び巡回診療を継続していくこととなった。また、グループホーム南阿蘇の関連施設において夜勤も含めた看護業務支援もニーズが高いと考えられ、隊を2つに分けて2区域で活動することとなった。加藤は南区診療班の一員として4月24日から28日まで巡回診療に従事した。( http://www.japanheart.org/rescue/report/ )

南区医療支援については、県の災害対策本部からの支援として沖縄県医師会(JMAT沖縄)から診療チームと統括コーディネートチームが派遣されており、その他の実働診療班となる複数の支援チームや、保健師チーム、災害派遣精神保健チーム(DPAT)などが分担して避難所を巡回することとなっていた。避難所としては学校の体育館や教室などが利用されていたが、スポーツセンターや大規模プール施設などの公的施設に加え、公民館や団地の集会所、公園の広場のテントや車中が利用されていた。活動期間中は震度1~3程度の余震があり、小さいものは数えきれないほどであった。特に被害が及ぶ規模のものは無かったが、余震のたびに被災者は不安と恐怖を抱えて辛い思いをされていた。そのため、夜間は車中泊の避難者がかなり多かったが、日数経過とともに漸減していった。日中は大半の人が出勤や自宅の片づけなどで避難所にはおらず、残されるのは学校再開していない子供や高齢者、ADL障害のある方々に限られていた。夜間になると自宅で寝るのが怖いという人々が多く集まり、屋内にいることすら恐れる場合や夜泣きをする乳児またはペット連れの被災者が車中泊を続けていた。被災から1週間程度で市内の大半の医療施設は通常業務に復帰していたため、避難所の医療ニーズはかなり限られていたが、少数の移動手段の無い人々や障害を持つ人々など、いわゆる災害弱者が残されており、健康相談や生活指導、静脈血栓予防などの対応を必要とした。また、精神的に急性ストレス反応による症状に苦しむ人や、元々ある精神疾患の状態が不安定になっている人もあり、随時保健師やDPATへのコンサルトも必要とした。巡回中に出会う乳児連れの家族に対する母子保健や、要介護者を抱える家族に対する福祉サービスへのアクセスも整える必要があった。南区役所スタッフや医療統括コーディネーター、他支援団体と毎日朝夕にミーティングを行い情報共有し、連携をとりながら活動を行った。幸い、活動中に緊急処置や投薬を要するほどの患者はなかったが、夜間など訪問時以外に救急搬送された事例は散見された。避難所の収束と現地医療システムへの業務移行に伴い、ジャパンハートは5月2日まで巡回診療に参加して南区を撤収し、以後は南阿蘇の活動に集中することとなった。

学校再開に伴い避難者数、避難所数ともに日ごとに減少してきているものの、依然として避難生活を続けている方々は残っている。特に目立つのは、自宅の損傷が著しい帰宅困難者や、倒壊は免れたものの屋内の片づけができない高齢者・障碍者など災害弱者、精神的に恐怖感から帰宅困難な人などが残っている。このような方々は避難生活がある程度長期化する恐れがあるため、その間に健康問題が増大しないように引き続き保健・福祉の面でサポートのリンクを断たぬようにしておくことが重要と考えられる。医療については必要時に通院できるようにしておくことが重要で、避難所診療を常態化することは却って本来の医療システム復帰に支障をきたす可能性があることに注意が必要である。特に高齢者の自宅の片づけについてはボランティアのサポートも重要であり、精神面ではボランティアによる傾聴や気分転換なども有効かもしれない。気丈に周囲の世話をしてきた人々や小児においては、日常生活に戻ってきた時点でもPTSDに注意しておく必要があり、他者が互助精神を持って気がけてあげることが望ましい。まだまだ被災地の奮闘は続くが、非日常の象徴的舞台となっていた学校が再開し、子供たちが元気に登校して学び舎に集う姿は、間違いなく復興の一つの兆しであろう。被災者の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、現地における皆様のご尽力に敬意を表し、本稿を閉じる。

平成28年5月2日 加藤 隼悟 記

ガンビアにおける双子新生児の死亡リスクに関する論文要旨

The large contribution of twins to neonatal and post-neonatal mortality in The Gambia, a 5-year prospective study.
Reiko Miyahara, Momodou Jasseh, Grant Austin Mackenzie, Christian Bottomley, M. Jahangir Hossain, Brian M Greenwood, Umberto D’Alessandro, Anna Roca.
http://bmcpediatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12887-016-0573-2

アフリカでは、他の地域(ヨーロッパやアジア)と比べて、双子の出生率が2倍高く、それによって、低出生体重児で生まれるリスクや、出産時の合併症が増え、全体の死亡率を押し上げる要因の一つであると言われています。 西アフリカのガンビアにあるBasseという地域の、2009年から2013年のデータを用いて、32436人の単胎で生まれた子供と1083人の双胎で生まれた子供を比較し、新生児期(生後28日以内の死亡)とそれ以降(生後29日から1年以内の死亡)の死亡の危険因子に違いがないかを検討しました。
結果、死亡率は、新生児期でオッズが4.33倍上昇し(補正オッズ比 4.33, 95%CI: 3.09-6.06), それ以降では、2.61倍(補正オッズ比2.61, 95%CI: 1.85-3.68)上昇していました。また、女児、乾季に生まれたこと、清潔な水を使用できない環境であることが、新生児期以降の双子の死亡のリスクを上げていたことがわかりました。
双子の高い死亡率は、双子をターゲットに、1歳までの新生児期、乳児期に、栄養や成長をサポートする介入が必要であることを示唆しています。

宮原 麗子


ガンビアの舗装されていない道

乳児検診風景

第40回 長崎感染症研究会開催報告

去る3月26日に長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科棟(TMGH校)大セミナー室において第40回長崎感染症研究会を開催致しました。本会では長崎大学において感染症の研究、臨床に従事している教室が持ち回りで幹事となり、年に一回研究発表や講演会を行っています。今年は当科の有吉紅也教授が代表世話人となり、医局員で総力を挙げて幹事を務めました。3つのセッションを用意し、第一セッションでは国立国際医療研究センター病院・国際感染症センターの忽那賢志先生をお招きし、当科の齊藤信夫先生がファシリテーターを務め、感染症ケースディスカッションと教育講演を行いました。症例はフィリピンのサンラザロ病院で1カ月研修を終えたばかりの小林典子先生がデング熱の症例を2例、さらに齊藤先生からチクングニヤ熱の症例を1例提示し、忽那先生から症例ごとにコメントやDCCにおけるマネジメントなどをご教示頂きました。引き続き忽那先生からはジカウイルス感染症について教育講演を頂き、活発な質疑応答も行われました。第二セッションは一般公募演題で前半4題を森本浩之輔准教授、後半4題を田中健之医局長に座長を務めて頂きました。幅広い分野の多彩な研究発表で活発な議論がありました。当科からは柿内聡志先生が国内の肺炎球菌肺炎の診断検査について、宮原麗子先生がベトナム・ニャチャンにおける小児の受動喫煙リスクを解析した研究を発表されました。第三セッションでは有吉教授が座長を務め、二演題の特別講演を頂きました。一演題目はロンドン衛生熱帯医学大学院・長崎大学TMGH校のSharon Cox教授から熱帯医学・感染症における貧血について、これまでのアフリカにおける研究や最新の鉄剤補充治療戦略についての講演を頂きました。二演題目は東京大学・長崎大学TMGH校の北潔研究科長からご自身の研究ヒストリーやNeglected tropical diseasesと最新の治療薬の創薬研究についてご講演頂きました。いずれも大変勉強になる内容で、多くの参加者が大いに学びを得て頂けたかと思われます。ちなみに、今回の出席者は合計63名で、過去40年の中でも参加者の多い盛会となったようで、この場を借りてご尽力頂きました皆様に御礼申し上げます。

平成28年3月27日 加藤 隼悟 記

Mahidol Oxford Tropical Medicine Research Unit における研修

H27年11月~12月にかけて2週間タイのバンコクにあるMahidol Oxford Tropical Medicine Research Unit(MORU)を訪問し、リケッチア感染症診断検査について研修させて頂きました。この研修は、これまで当科がベトナムのハノイにあるBach Mai病院のInfectious Disease Departmentで行ってきた2年間にわたる診断未確定発熱性疾患の前向き観察研究に関連するものです。日本ではツツガムシ病や日本紅斑熱で知られるリケッチア感染症は、温帯~熱帯地において診断未確定発熱性疾患群の中に少なからぬ割合で含まれていると考えられます。しかし、その診断は容易ではなく、依然として感度と特異度が優れた万能の検査は存在しません。これに対し、複数の検査を組み合わせたり、病歴・身体所見も組み合わせたりしたCriteriaを用いて診断精度を上げよう試みられています。MORUはこれまでタイ、ラオス、カンボジア、バングラデシュなど、アジア諸国における臨床研究で様々な実績があり、リケッチア感染症の診断と特に臨床研究への応用については正にエキスパート集団です。今回、長崎大学TMGH校のChris Parry教授によるご紹介や、先日のOne Health Conference in Nagasakiの際に出会ったDaniel Paris先生の歓迎も頂き、貴重な研修の機会を得ました。また、Bach Mai病院のリケッチア感染症に取り組むにあたり、ハノイのNational Institute of Hygiene and Epidemiology (NIHE) からもリケッチア検査に従事されているPham Thu Hang先生に同行して頂き、一緒に研修を受けて頂きました。

なんといっても印象深かったのは、MORUはシステムが洗練されていて数々の検査のStandard operation protocolが度々更新され、MasterやPhDの大学院生からポスドク、Research technicianの皆さんまで研究チーム内でリケッチアの検査に精通している方が多くいたことです。Oxford UniversityやMahidol Universityの優秀な学生、研究者、教官が絶えず研究を活性化している印象でした。外部との交流も盛んなようで、特に東南アジアにあるOxford Universityの協力施設からは定期的に研修の受け入れもしており、国際研究ステーションとしての役割も担っているようでした。今回の研修ではImmunofluorescent assay (IFA)やReal-time PCRの実践、その他の検査方法(ELISA、LAMP、Nested PCRなど)の紹介もして頂きました。特に有意義であったのは、当科からちょうど有吉教授と安波先生が出張でバンコクに来られた際に、MORUでDaniel Paris先生と一緒に検査方法やハノイで収集した臨床検体の検査計画などを議論できたことです。Daniel Paris先生は幾度か議論の機会を設けて下さり、最終的には今後の検査計画が明確になり、かつMORUで実践されている検査の適用を快諾して下さいました。また検査導入後の問題点や他の方法についても検討したければ再度MORUを訪問するか、場合によってはMORUから長崎やハノイに出張して交流を続ければ良いという心強いお言葉も頂きました。引き続き発展性のある協力関係が築けることを期待します。

なお、MORUでの研修に続けて2週間ハノイにも滞在し、習得した検査をNIHEでも実践できるように準備を開始しました。MORU、NIHEの皆様の温かいご支援とHang先生の多大なご協力に感謝申し上げます。

平成27年12月末日 加藤 隼悟 記

One Health Conference in Nagasaki と熱研内科Case discussion

H27年11月6・7日に長崎大学医学部でOne Health Conference in Nagasakiが開催されました。世界各国からグローバルヘルスに携わるエキスパートが多数参加し、それぞれの領域におけるホットな話題を共有し、議論を交わす、まさに国際的なカンファレンスでした(http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/onehealth/index.html#Welcome)。当教室からも、座長を務められた有吉教授をはじめ、当教室で行っているレプトスピラ症の研究について発表した鈴木先生や、大学院生がカンファレンスに参加していました。特に、有吉先生と長崎大学TMGH校のChris Parry教授が座長を務めたセッションでは、鈴木先生の他にリケッチア感染症(Mahidol Oxford Tropical Medicine Research UnitのDaniel Paris先生)や熱帯地における非マラリア性発熱性疾患に関する最近の知見(University of OtagoのJohn Crump先生)、SFTSの最近の知見(国立感染症研究所の下島昌幸先生)などが発表され、非常に興味深い内容でした。また、上記の先生方には特別に時間を割いて頂き、夕方に長崎大学病院国際医療センター3階カンファレンス室までおこし頂き、当科の興味深い経験症例(EHEC感染後HUS症例、SFTS入院症例)を柿内先生と北庄司先生から発表して頂き、議論を交わしました。さらに、当科医師に向けて特別にDaniel Paris先生からMORUにおけるリケッチア研究の概要や熱帯地の実地臨床に直結する最近の知見をレクチャーして頂きました。多くの若手医師、大学院生の参加もあり、あっという間に時間が過ぎて議論の尽きない白熱した会でありました。有難いことに、先生方はその晩の懇親会にもご参加下さり、普段はなかなか聞けないような経験談やこれからの研究における要点、国際学会やフィールド、各先生方のラボのご様子なども聞くことができて、若手メンバーは(むしろ教授までも)大いに刺激を受けた一日でした。

加藤 隼悟 記

「 医局説明会 ~臨床・研究のできる感染症内科医育てます~ 」 の報告

伊藤博之

7月22日に医局説明会を行いました。総勢18人の研修医と学生のみなさんにご参加いただきました。

始めに有吉教授より御挨拶と当科の今後の方針や研究についての説明をさせていただきました。加藤先生より当科の大学病院における臨床について、若手医局員より当科の協力病院の紹介をさせていだたきました。最後に当科の若手医局員がおのおのに作ったスライドを用いて、神白先生が主観を交えながら、若手医局員の個別事例を紹介させてもらいました。

全体が約2時間と長丁場になりましたが、みなさん最後まで熱心に御参加いただきました。

今後も一人でも多くの研修医や学生のみなさんに当科について興味を持ってもらえるよう情報発信してまいります。

なお、当日の説明会の前半部分を録画した動画を視聴できるように準備致しました。公開期間は半年~一年程度になります。視聴ご希望の方は以下の要領でご利用下さい。視聴には最新版にアップデートされたAdobe flash playerが必要になります。後半部分につきましては、スライドのみの公開となりますが、よろしければ併せてご覧下さい。

  1. 次のサイトにアクセスします。 授業配信システム ログイン画面
  2. つぎに出てきたログイン画面に以下のIDとパスワードを入力します。
    ログインID : netunaiintro
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    (パスワードは大文字小文字を識別します)
  3. カレンダー画面で7月22日のシンポジウムを探し、当日のタイトルをクリックします。
    (動画再生後は画像をクリックすると選択した画像を最大化して見られます)

当日の発表スライド

江別市立病院・長崎大学病院感染症内科共催「感染症疫学セミナー」

森本浩之輔 鈴木 基

7月10日、北海道江別市の江別市立病院で、感染症疫学セミナーを開催しました。第1部では、MERSの臨床と感染対策についてのレクチャー、第2部では、いま話題の高齢者肺炎球菌ワクチンについてのワークショップを行いました。

司会の濱口医師(同院教育研究センター長)から、肺炎球菌に関する基本的な解説のあと、「外来で66歳の患者が肺炎のワクチンをうって欲しいといってきた」というシナリオが提示されました。続いて当研究室の森本と鈴木が、プレベナー派とニューモバックス派の立場からプレゼンを行い、参加者はグループに分かれて、このケースに対してどう対応するのかについてディスカッションをしました。それぞれのワクチンの利点と欠点、日本におけるエビデンスの不足をめぐって、議論は大いに盛り上がり、会は2時間半にも及びました。

若手医師にとって、米国や国内学会の推奨や、企業からの情報だけにとらわれず、自分でエビデンスを吟味すること、必要なエビデンスを作り出すことに貢献することの重要性を学ぶ機会になったと思います。

緊急シンポジウム開催報告
『韓国MERSアウトブレイク:グローバル化時代の感染症対策』

70年目の沖縄戦終結の日とされる2015年6月23日、夕方4時30分から6時30分まで2時間にわたり、当科主催で緊急シンポジウムを開催致しました。韓国におけるMERSアウトブレイクの話題を中心に、グローバル化時代の感染症対策について、東北大学大学院医学系研究科微生物学分野の教授であられる押谷仁先生、厚生労働省東京検疫所の所長であられる田中一成先生、韓国から長崎大学熱帯医学研究所臨床小児感染症学分野へ疫学研究に来られているPost-doctoral fellowのKim Yoonhee先生をお招きし、当科より森本浩之輔准教授、田中健之講師と合計5名の各領域専門家によるセミナーとパネルディスカッションが行われました。MERSの臨床と病態、韓国のアウトブレイクの現状と課題、日本の防疫体制、自治体と医療現場の体制、感染症アウトブレイクに対するグローバルな対応と日本の課題などについて、各先生からわかりやすく要点を紹介して頂きました。パネルディスカッションは当科の有吉紅也教授がファシリテーターとなり、London School Hygiene and Tropical Medicineおよび長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH校)のChris Parry教授にもパネリストとして加わって頂き、更に議論を深めて頂きました。日本のみでなく、韓国、イギリスそして中東や西アフリカなど、世界各地で様々な感染症のアウトブレイクが起こり得る状況で、それは容易に遠隔地まで拡散する時代であり、各国それぞれの課題のみならず、世界規模で協調して対策を整えていかねばならないことが実感される議論の内容でした。日本は韓国のMERSアウトブレイクから学び、備えるために何が必要なのか、明確になった点も多かったことと存じます。特に、検疫官や実地疫学者、アウトブレイク制御に専門性を発揮できる専門家の養成が、まだまだ不足しており、急務であるということは強調される点でありました。

今回の緊急シンポジウムは、文字通り急な開催決定で準備期間も告知期間も短かったにも拘らず、当日は留学生も20名強を含み、100名近くの方々にお集まり頂きました。当日のアンケートには約55名に回答頂き、高評価を頂戴致しました。皆様とも、今後も同様の会があれば参加したいとお答え頂き、非常に励みになりました。お集まり頂いた皆様のご関心の高さからは、今後長崎大学熱帯医学研究所、TMGH校における教育が、グローバルな感染症対策や国内の感染制御・疫学に取り組むプロフェッショナル養成に、何らかの形で貢献していけるようになるだろうと期待できるのではないかと感じられました。

なお、今回のシンポジウムの詳細なプログラムはホームページ上に別途掲載しております。また、終了後1ヶ月間の期間限定ではありますが、当日の模様を録画した動画を視聴できるようにしております。下記の手順をご参照下さい。

  1. 次のサイトにアクセスします。 授業配信システム ログイン画面
  2. つぎに出てきたログイン画面に以下のIDとパスワードを入力します。
    ログインID : merssympo
    パスワード : KtyGuhx7
    (パスワードは大文字小文字を識別します)
  3. カレンダー画面で6月23日のシンポジウムを探し、当日のタイトルをクリックします。
    (動画再生後は画像をクリックすると選択した画像を最大化して見られます)

2015/6/25 加藤隼悟 記


シンポジウム会場の模様

田中一成先生の発表

押谷 仁先生の発表

パネル・ディスカッションの模様

緊急シンポジウム 『韓国MERSアウトブレイク:グローバル化時代の感染症対策』

西アフリカで発生したエボラアウトブレイクに続き、韓国で発生したMERSアウトブレイクは、新たな国際保健上の脅威となりつつあります。次々と襲うグローバルな感染症の脅威をまえに、私たちは医療者、研究者として何を考え、どう行動するか。各界の専門家とともに考えます。

日時 : 6月23日 午後4時30分~午後6時30分
場所 : 長崎大学グローバルヘルス総合研究棟1F 大セミナー室
参加 : 登録不要、無料
言語 : 英語、日本語(随時、通訳が入ります)
主催 : 長崎大学熱帯医学研究所 臨床感染症学分野

プログラム
第1部

16:30~16:40 「はじめに」 有吉紅也(長崎大学熱帯医学研究所教授)
16:40~16:55 「臨床と病態」 森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所准教授)
16:55~17:10 「韓国の現状と課題」 キムユンヒ(長崎大学熱帯医学研究所研究員)
17:10~17:25 「日本の防疫体制」 田中一成(東京検疫所所長)
17:25~17:40 「自治体と病院の体制」 田中健之(長崎大学病院感染症内科講師)
17:40~17:55 「グローバルな感染制御」 押谷 仁(東北大学医学系研究科教授)

第2部
18:00~18:30 パネル・ディスカッション「グローバル化時代の感染症対策とアカデミアの役割」
司会 有吉紅也(長崎大学熱帯医学研究所教授)
パネラー(五十音順)
  押谷 仁(東北大学医学系研究科教授)
  キムユンヒ(長崎大学熱帯医学研究所研究員)
  田中一成(東京検疫所所長)
  田中健之(長崎大学病院感染症内科講師)
  Chris Parry(長崎大学熱帯医学グローバルヘルス研究科教授)
  森本浩之輔(長崎大学熱帯医学研究所准教授)

お問い合わせ : 長崎大学熱帯医学研究所 臨床感染症学分野 TEL 095-819-7842
担当 : 鈴木基 (mosuzuki@nagasaki-u.ac.jp)

Robin Bailey 教授によるclinical case conference

平成27年6月18日に長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科(以下TMGH校)と学術提携を結んでいるLondon School of Hygiene and Tropical Medicine(LSHTM)のFaculty of Infectious and Tropical Diseasesに所属されているRobin Bailey教授をお招きして、長崎大学病院国際医療センター1階カンファレンス室でclinical case conference を開催しました。Robin先生はUniversity college London Hospitals付属のHospital for Tropical Diseases(HTD)で感染症・熱帯医学の専門医として勤務されている臨床医でもあり、当科には1年おきに招聘し、レクチャーを頂いている常連のプレミア・リーガー医です(実は長崎出身の吉田麻也選手が所属するプレミアリーグSouthamptonのファン)。また、LSHTMでは修士課程のMSc-Tropical Medicine & International Healthのコース・オーガナイザーであり、当科の関係者にはRobin先生のコースでMScを学んだ医師が複数います。毎回新鮮な議論を提供して下さるRobin先生ですが、今回は当科で経験した播種性結核感染症・結核性多発骨髄炎および咽後膿瘍の症例を福島県立医大2年目初期研修医で当科にて1ヶ月間研修中の鈴木友先生に提示して頂きました。初めての英語でのプレゼンテーションでしたが、チームの上級医にサポートしてもらいつつ、立派にプレゼンして頂き、Robin先生との質疑応答では有吉教授の参加もあり、大いに盛り上がりました。引き続き、Robin先生からはHTDで経験された19歳のソマリア難民学生における多剤耐性結核の症例についてプレゼンして頂き、英国における薬剤耐性結核の問題と移民、刑務所囚人など高リスク集団における結核蔓延についてのミニレクチャーを頂きました。カンファレンス後にはご同行頂いた奥様と共に、当科の若手医師、大学院生、研修医などと会食にもお付き合い頂き、楽しいお話と真面目なお話を織り交ぜつつ、あっという間に時間が過ぎていきました。今回は限られた時間でしたが、Robin先生はこの一週間に当科におけるカンファレンスの他に、TMGH校で修士課程学生向けの講義や、共同研究に関するミーティングなどもあり、ご多忙なスケジュールであったものの、相変わらずパワフルで明るく優しいお姿はご健在でした。早くもまた次回おこし頂ける日が楽しみです。

※ 写真は“University College London Hospital” のウェブサイトより

2015/6/19 加藤隼悟 記

HIV/AIDS出張講義

当科は従来HIV感染症に対する診療に携わっております。近年では、長崎県内の新規HIV感染/AIDS発生件数の報告が年間10件を上回っており、累計患者数は増加の一途を辿っています。加えて、治療の進歩により長期生存が可能になったおかげで、治療中の患者さんの年齢層は徐々に高まってきています。そのような状況で、高齢HIV患者さんの今後の療養や、地域における医療・保健・福祉サービスの享受といった問題が、次第に大きくなってきています。この問題はHIV/AIDSに限らず、本邦では全国的な高齢化に伴う問題です。しかし、HIV感染症があるというだけで、いかに治療経過が落ち着いていて、血液中にウイルスが検出不可能な状態であったとしても、他の高齢者と同様に慢性疾患患者として受け入れて頂くことや、同様なサービスを享受する機会が得られなくなる現実があります。その背景には、根強い偏見や、知識不足からくる恐怖感、または単純に不慣れな疾患を有する患者さんのケアに対する不安があるようです。こういった問題を解消するために、当科では少しでも情報提供、啓蒙活動に役立つよう努めたいと考えております。

  • 2014年11月12日 於 長崎市立図書館多目的ホール
    長崎市包括ケア まちんなかラウンジ オープンカンファレンスにて
    地域医療連携センターと合同で『地域医療とHIV/AIDS』について講義
    長崎市内及び市外も含む病院、診療所、療養施設、訪問ステーションなどの職員や、保健師、介護・福祉関連職員を対象に、基礎知識から喫緊の課題まで紹介
    講師:加藤隼悟・田中健之・古本朗嗣
     
  • 2015年1月31日 於 長崎県医師会館
    長崎県医師会 HIV医療講習会にて
    HIV/AIDSにおける『長崎県の現状について』を講義
    県内の医師会員のほか、近郊の医療施設からご参加頂いた看護師、助産師などコメディカルスタッフも対象に、近年の長崎県におけるHIV/AIDSの疫学、県内拠点病院の状況、急性HIV感染症診断の重要性、事例に基づく高齢HIV患者さんに差し迫った療養上の問題、地域の医療・介護施設に期待される役目などを紹介
    講師:加藤隼悟・古本朗嗣・有吉紅也
     
  • 2015年5月28日 於 介護福祉法人白之会 みぎわほーむ
    医療法人白髭内科医院の白髭先生からお声かけ頂き、同施設における研修会にて『地域医療とHIV/AIDS』について講義
    HIV/AIDSについての基礎知識から長崎県の現状、大学病院の取り組み、事例に基づく高齢HIV患者さんに差し迫った療養上の問題、地域の医療・介護施設に期待される重要な役目、職業上曝露による感染リスクの低さと曝露後予防などを紹介
    講師:加藤隼悟・田中健之・古本朗嗣
     

第三回熱研内科研究集会プログラム
2015年5月9日 16時30分〜
長崎大学医学部 良順会館1F專齋ホール

    1. 症例報告 16:30-17:00 (発表8分、質疑応答4分)  座長 麻生憲史先生
      1. 左下腿腫脹を主訴に受診した転移性骨腫瘍の症例
        松井昂介先生
      2. メキシコ帰りに発症した三例の急性肺ヒストプラズマ症
        小林典子先生
    2. 研究1 17:00-17:50  座長 吉田俊昭先生
      1. 成人肺炎患者から分離された肺炎球菌の抗菌薬感受性と分子疫学的検討
        柿内聡志先生
      2. リベリアでのエボラ対策活動報告
        鈴木 基先生
    3. 研究2 17:50-18:30 座長 田中健之先生
      1. 睡眠呼吸障害診療の現状と展望
        吉嶺裕之先生

    今回の全員同門会賞の候補者は松井先生と小林先生と柿内先生です。
    同門会賞審査委員:力富直人先生 吉田俊昭先生 隆杉正和先生 有吉紅也先生

    研究集会終了後の新入局員歓迎会(ホテルニュー長崎)への移動はタクシーを用意します。

読売教育ネットワーク「エボラ熱最前線」

当科の鈴木基助教が、平成27年4月25日(土)に東京都立西高校において読売教育ネットワークの出前授業を行いました。

読売教育ネットワークのホームページに掲載されていますので、お知らせします。

   長崎大学熱帯医学研究所「エボラ熱最前線」

第二回熱研内科研究集会プログラム
2014年12月20日 16時00分〜
長崎大学熱帯医学研究所 大会議室

    1. 症例報告(発表6分、質疑応答4分)  座長 隆杉正和先生
      1. 野外活動歴の全くない重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の一例
        山本優美先生
      2. ステロイドで改善した尿路結核による尿管狭窄の症例
        松井昂介先生
    2. 研究1(発表15分、質疑応答5分)  座長 古本朗嗣先生
      1. フィリピン国立感染症病院に入院した肺結核患者における細菌混合感染に関する前向き研究
        島崎貴治先生
      2. 当院で経験したESBL 分離症例の現状と対策
        西山 明先生
    3. 研究2(発表20分、質疑応答5分) 座長 高木理博先生
      1. 上五島におけるインフルエンザ研究
        斎藤信夫先生
      2. 全国成人肺炎研究 繰り返し肺炎入院の危険因子
        石藤智子先生

    今回は全員同門会賞の候補者です。
    同門会賞審査委員:力富直人先生 高橋淳先生 隆杉正和先生 宇都宮嘉明先生 有吉紅也先生

    研究集会終了後の同門会総会、忘年会への移動はタクシーを用意します。

Tom Doherty先生 来日レクチャー

去る2014年12月4日から12月11日までロンドンからDr. Tom Dohertyを招き、熱帯感染症レクチャーや当科で診療している感染症ケースについてSmall group case discussion、Interactive case discussionなど、様々なスタイルで感染症について学ぶ機会を設けて頂きました。Dr. Tom Dohertyは長年ロンドン大学病院(University College London Hospital)の熱帯病病院(Hospital for Tropical Diseases)で熱帯感染症専門医として勤務され、ロンドン衛生熱帯医学校(London School of Hygiene and Tropical Medicine: LSHTM)の修士課程(Tropical Medicine & International Health)やディプロマコース(Diploma in Tropical Medicine & Health: DTMH)で教鞭をふるっていた人気講師です。特にDTMHでは前コースオーガナイザーであり、数多くのレクチャーを担当され、その講義は人気ナンバーワンの熱帯医学領域におけるドクターGです。
Tom Doherty先生はこれまでも何度も長崎を訪問されていて、大リーガー医ならぬプレミアリーガー医(実際プレミアリーグ観戦も好きなようです)を招いて行うレクチャーやカンファレンスも回を重ねて参りましたが、今回は特に連日工夫をして、Small groupで一層対話しやすい形式にしてみたり、レクチャーやディスカッションの合間にホワイトボードでFigureや日本語による解説を交えてみたりして、参加者の理解を更に深めるように協力して頂きました。Tom Doherty先生は教え好きで、ただ講義するよりも、工夫をして講義中の議論を更にファシリテートするパートナーや参加者と掛け合いをしたり、時には相手を選んで巧みにイジったりして空気を盛り上げます。参加者の理解を深め、印象に残るような学びの機会を提供することを心がけて、ご自身も教育を楽しむスタイルで当科でも人気講師です。
今回はマラリア、数々の寄生虫疾患、リケッチア症、尿路結核、ヒストプラズマ症、多発膿瘍など様々なトピックスから、ディスカッションの中では更に日頃目にする機会の稀な熱帯感染症の知識を幅広く提供して下さいました。学生や研修医など若手にとっては英語でのディスカッションは難しくなる事もありますが、良い刺激になったのではないかと期待しています。
当科では引き続き海外からの講師を招聘し、若手をはじめ多くの医局員や学生、研修医が学べる機会を提供して参ります。

2014/12/19 加藤隼悟 記

第一回熱研内科研究集会プログラム
2014年5月10日 17時00分〜18時50分
ベストウェスタンプレミアホテル長崎 ゴールド

    開会の挨拶 吉嶺裕之先生

    1. 症例報告(発表時間7分)  座長 土橋佳子先生
      1. 〇ATL急性型から急性肝不全となった一例
        上五島病院 松井昂介先生
      2. 〇腸チフスの一例
        熱研内科 山本優美先生
      3. 〇偽膜性腸炎治療中にサイトメガロウイルス腸炎を合併した一例
        熱研内科 岩田知真先生
    2. 研究報告  座長 森本浩之輔先生
      1. セロトニンと炎症(Efferocytosisの観点から);コロラド大学呼吸器科留学でのプロジェクトより
        熱研内科 田中健之先生(25分)
      2. 〇レプトスピラ蔓延地におけるrecombinant leptospira immunoglobulin –like (Lig) A protein を用いたELISA検査法の有用性
        熱研内科 北庄司絵美先生 (15分)
    3. 病院紹介と症例/研究報告 座長 高橋 淳先生
      1. 両側血胸を呈した胸膜血管肉腫の1例
        長崎川棚医療センター 山領豪先生 (20分)
      2. 佐世保労災病院 池田徹先生(10分)
      3. 海外SASプロジェクト(仮題) 井上病院 吉嶺裕之先生 (20分)

    閉会の挨拶 有吉紅也 教授

    注意
    発表予定の方は、極力集会開始15分〜5分前にデータを会場に持参ください。
    歓迎会の受付は、18時30分まではゴールド前、18時30分以降はアメジスト待合で行います。

    〇:同門会賞 対象演題
    同門会賞審査委員:力富直人先生 井手政利先生 高橋淳先生 有吉紅也先生
    審査時間 18時50分〜19時まで

第6回 IDATEN、熱研内科合同、熱帯病クリニカルカンファレンス報告

齊藤 信夫

今年で第6回を迎えるIDATENとの共催クリニカルカンファレンスを2013年5月18日東京で行いました。(GSKスポンサー)
当日は5月にも関わらず、蒸し暑いなか、50人程の参加者が来場いただき、盛り上がった会になりました。
特別講演には、有吉教授の親友でもあるロンドン熱帯医学校教授Robin Bailey先生に「Risks of Visiting Friends and Relatives(VFRs)- Migrant health in the UK」とうい題でご講演頂きました。
イギリスでは約40%の住民が、海外からの移民でしめられ(図1)ています。移民やその子孫などが地元(アジアやアフリカなど)に帰国した際、感染症にかかって帰国するケースが多くあります。ロンドンが働いておられるHospital for Tropical Diseases ではおそらく、世界でも最もVFRs診療を行っている施設であり、それらの経験をもとにVFRsのリスク、診療などを詳しく、わかりやすく説明して頂きました。実際の症例を3症例提示頂き、フロアからも活発な討議ができました。

1症例目パキスタン出身の両親をもつ17歳男性、パキスタンに葬式のために6週間滞在、イギリスに帰国30日後発熱が出現、肝機能上昇もみられ、抗体検査よりA型肝炎と診断

2症例目バングラディシュ出身34歳男性。18歳の時よりイギリスに移住。身内見舞いのためバングラディッシュに5週間滞在、イギリスに帰国後16日目に体調不良があり、22日目に病院受診、脾腫を認めた。血液培養より腸チフスが陽性となりAZMで治療を行った症例

3症例目両親がナイジェリア出身のイギリス生まれの18歳女性。ナイジェリアの身内のもとに2週間滞在後、イギリスに帰国。帰国後14日目に発熱、黄疸、意識障害にて搬送。血液塗抹より熱帯熱マラリアの診断となり。アーテスネートで治療するも、死亡した症例

どの症例も、滞在前に旅行外来の受診がなかった。移民などの場合、渡航前に旅行外来を受診しない事も多い。3症例ともにワクチン予防可能な疾患(A型肝炎、腸チフス)、マラリア予防内服などを行っておらず、かれらにも旅行前に旅行外来を受診させることが重要であると説明。

Robin先生の講演の後、2症例の症例討論を行いました。

1症例目長崎大学病院感染症内科(熱研内科)大澤玲奈先生
「フィリピンより帰国、発熱、筋肉痛、関節痛」
発熱、左右非対称の関節痛、皮下結節、腱鞘炎という、難しいプレゼンテーションできた症例でありましたが、関節液より淋菌と診断し、播種性淋菌感染症の症例でした。
症状の経過が非特異的で、渡航地での性行動もはっきりしなかったため、診断に難渋した症例でした。

2症例目は神戸大学医学部付属病院感染症内科 松尾裕央 先生
「北兵庫の田舎の発熱」
興味深い題名で、北兵庫の不明熱といえばE型肝炎?と思われたのですが、詳細な病歴よりマラリア罹患リスクの高い熱帯地への渡航歴が1年以内にありました。これらより三日熱マラリアの診断となりました。三日熱マラリアは潜伏期間が長く1年以内の渡航歴の重要性を勉強しました。また、松尾先生より、再発予防のためのプリマキン治療の重要性やなぜ三日熱マラリアで潜伏期間が長いのかなど、詳細なレビューをして頂き、大変勉強になりました。

また、来年も今年とは違った内容で、行いたいと考えております。多数のご来場をお待ちしております。

Robin先生まとめ
  Robin先生まとめ
有吉先生より熱帯医学についてのお話し
有吉先生より熱帯医学についてのお話し
Robin先生の熱い講義 Robin先生の熱い講義
Robin先生の熱い講義
大澤先生症例発表 松尾先生症例発表
大澤先生症例発表 松尾先生症例発表

IDSA(米国感染症学会)に参加して

島崎 貴治(記) / 谷口智宏(沖縄県立中部病院、2011年熱帯医学修士課程卒) / 古本 朗嗣

10月16日から21日まで、アメリカ サンディエゴにて開催されたIDSAに参加してきました。今回はIDSA、SHEA、HIVMA、PIDSとの合同学会で、計86か国から約7000人の参加者が集まる大きな会でした。セッション、ポスター発表も1800近くと全てを見ることは到底不可能なほど、規模の大きい学会でした。その内日本人は約60人と年々参加者は増えているようです(18日には日本人食事会にも参加してきました)。学会期間中は朝7時から夕方6時まで細かくスケジュールが組まれており、日本とは幾分時間配分や形式が異なっており、初日(自分にとって)は不完全燃焼のスタートでした。

当科からは「The influence of bacterial co-infection on mortality among hospitalized patients with pulmonary tuberculosis in the Philippines」と題し、2010年よりフィリピン、マニラ市内の国立感染症病院であるサンラザロ病院と結核患者を対象に行っている臨床疫学研究の経過報告を行いました。ポスター発表の多くは臨床に基づくデータであり、今後日本でも日々の臨床業務に加えて、疫学研究を行える環境が整っていく必要性を感じました。

インタラクティブセッションでは、病院内感染を0にできるかできないか、HIVの曝露前予防内服、MRSA感染に対するバンコマイシン投与は時代遅れ?などのテーマを2名の論者にProConスタイルでの講演はなかなか興味深いものでした。また、エキスパートによる症例カンファレンスもあり、日本でなかなかお目にかかれない症例も提示されおり、米国での感染症臨床、研究の実情が垣間見ることができ刺激的な毎日でした。HIV関連、抗菌薬適正使用、院内感染対策、熱帯医学、その他症例検討など盛りだくさんの内容でした。国際学会への参加は視野が広がるとともに、日々の診療業務・研究活動へのモチベーションも高めてくれるものだと感じました。毎年、とは言わないまでも2年に一度は大学病院(感染症内科)及び研究所(臨床感染症学分野)からの参加を継続していければと思います。

IDSA1 IDSA2
   
IDSA3 IDSA4
   

第5回 熱研内科・IDATEN合同 熱帯病カンファレンスの報告

2012年5月19日土曜日、東京、キャンパスイノベーションセンターにて第5回 熱研内科、IDATEN合同 熱帯病カンファレンスを行いました。IDATEN側のオーガナーザーとして都立墨東病院感染症科、岩渕千太郎先生に運営、症例募集をして頂きました。

当日は参加者60人を超える参加者があり、大変盛り上がったカンファレンスを行う事が出来ました。

特別講演として、University college London Hospital, Consultant Physicianである Tom Dohety先生にご講演していただきました。「ロンドン大学病院熱帯病病院(Hospital for tropical disease: HTD)における熱帯感染症診療の実際」HTDはおそらく世界で一番輸入感染症症例が多い病院であります。その第一線で働いているTom先生の講演は、大変興味深いものでした。中でもHTDにおいて、過去10年間で診た症例の豊富さには驚きでした。以下HTDにおける10年間の症例を示します。


具体的に、三日熱マラリア、熱帯熱マラリア、急性住血吸虫症(Katayama fever)を具体的な症例を示しながら、HTDにおける蓄積された症例を提示して下さりました。なかでもKatayama feverは住血吸虫流行地では現地の住民にかかることがなく、渡航者に発症する疾患であり、これだけ多くのKatayama feverをみている病院はないと思われました。

Tom先生が来日する2週間程前に実際に診た症例を挙げて下さりました。38歳男性、マリより帰国後5週間目より、発熱(1か月間)、全身性の膨疹、咳嗽のを主訴にHTDを受診しました。患者はマリの湖で、水泳をしたとのことで、実際にその写真を患者様の承諾を得て、湖で泳いでいる写真を示して頂きました。血液検査では好酸球増多を示し、住血吸虫抗体検査が陽性となったことより、急性住血吸虫症(Katayama fever)の診断となりました。写真や説明などがとても具体的で、実際の雰囲気が伝わり、大変勉強になりました。

Tom先生の講演のあと、2症例の症例提示をして頂きました。1症例目は岩手県立釜石病院 米田哲先生が提示して下さりました。症例は、タイ-ミャンマー国境のNGOで診療されていた時に経験された症例でした。7歳男子、突然の不随運動を示してクリニックを受診しました。実際の不随運動の動画を参加者に提示しましたが、全く見たことのない不随運動であり、参加者もまったく見当がつかないというものでした。これは舞踏病といわれる不随運動で、意識は清明ですが、特徴的な不随運動を繰り返すというもので、リウマチ熱により起きる病態です。リウマチ熱は抗生剤の使用頻度が高い日本ではほとんどみる機会がない疾患です。しかし、ほっておくとリウマチ熱性心疾患を合併する可能性があり、見落としてはいけない重要な疾患と思われます。熱帯地域ではまだ、多くのリウマチ熱、リウマチ性心疾患により苦しんでいる人達がたくさんいます。
このような日本であまりみる事ができないが、重要である疾患を多くの医師達と共有する事がこの会の目的であり、素晴らしい症例提示であったと思います。

2症例目は国立国際医療センター、杉原淳先生に提示頂きました。53歳男性パプアニューギニアに渡航後23日目に発熱が出現しました。肝逸脱酵素の上昇を認め、A型肝炎を疑い、抗体検査(IgM)を実施されましたが陰性でした。その後、やはりA型肝炎が強く疑われるということで再検査したところ、抗体検査でA型肝炎が陽性となり、A型肝炎の診断となりました。A型肝炎の抗体検査は感度がほぼ100%であるといわれているため、普通は抗体が陰性であれば、A型肝炎は否定できると言われています。発症初期のA型肝炎抗体検査が陰性であっても、その後抗体が陽性になる症例があるという、大変貴重な症例でした。

今年も、Tom先生、素晴らしい症例の提示して下さった米田先生、杉原先生、オーガナイザーである岩渕先生、スポンサーであるGSK様のおかげで素晴らしい会を開くことができました。また、来年も普段なかなか診る事ができない、熱帯感染症、渡航者感染症を勉強する会として、継続していきたいと考えております。

齊藤 信夫

第10回アジア太平洋国際エイズ会議(ICAAP)に参加して

土屋菜歩

ICAAPは2年に一度開催されるアジア太平洋地域を中心とした国際学会です。WHO,UNAIDS,UNICEF,UNDP等の国際機関を始め、各国の臨床家、行政関係者、公衆衛生専門家、NGO、そしてHIV感染者の方々まで各方面からの参加者が顔を合わせて互いの経験や課題を討議し合う貴重な機会となっています。今回はエイズ予防財団からの助成を受け、発表者として参加しました。6年前、神戸でのICAAPが臨床疫学研究でHIV/エイズに関わるきっかけとなり、前回のバリ、今回の釜山でのICAAPに発表者として参加することができ、非常に感慨深いものがありました。今回のICAAPで印象に残った点について報告させていただきます。

1.自分の研究の関連分野について
 北タイランパン県ランパン病院で行ってきたコホート研究から、口演、ポスター1題ずつ発表しました。口演はタイのジェネリック抗HIV薬による治療導入後の治療薬変更とその原因について、ポスターは多剤併用療法導入前後の死亡率と通院患者数の変化について検討したものです。口演では治療開始から副作用出現までの時期やWHOのガイドライン変更による現在の変更状況と今後の見通しについて質問、議論がありました。タイでこれまで第1選択薬として使用されてきたd4T/3TC/NVPの組み合わせは、アジア太平洋諸国を含む他の途上国でも広く使用されていますが、長期使用により生じる副作用やその危険因子についての情報を他の参加者と共有することができたのではないかと思います。治療の成否を規定する因子としてアドヒアランスやピアサポート、経済的な負担や地理的な理由などが他の発表で多数指摘されており、治療の成否、それによる薬剤変更の規定因子が臨床的、生物学的な因子のみならず社会的、経済的因子も同様に重要であることを再認識しました。
 また、今後自分が関わる予定の研究分野として、薬剤静注者(IDU)のリスク行動と夫婦間感染についてベトナムを中心に発表を見てきました。運良く発表者の方とセッション後に話す機会を得、今後の研究、プロジェクト計画の際に考慮する必要がある情報を得ることができました。

2.印象に残ったセッション、発表
①抗HIV薬の予防的投与についての話題
CAPRISA004,iPrEX、そしてつい最近発表されたHPTN052の結果から抗HIV薬の予防的投与でHIV感染を減らせることが明らかになり、今年3月のCROI,7月のIASではその話題で持ち切りでした。今回のICAAPでもplenary sessionでPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis), TnT(Test and Treat)が取り上げられていました。これまでのHIV予防対策の流れからPrEP, TnTに至るまでの経緯、治療開始時期の考え方をまとめた発表があり、その後PrEPの特性や実施に際しての注意点、懸念等が発表されました。アジアではタイで大規模臨床試験の一つが進行中であり、来年以降の結果が待たれるところです。同じセッションの中で、開発中の薬剤や新しい治療について最新の知見が発表されたのも興味深く聞きました。1つ残念だったのは、PrEPのコストの問題についてあまり深く触れられていなかった事です。誰が払うのか、という疑問の提起で終わるのでなく、どうやって費用を捻出し、維持していくのか、費用対効果を考えてどの地域のどの集団に対して行うのか、ということを現実的に考える時期がすぐそこまで来ていると思います。
②アジアHIVデータハブの設立
欧米やアフリカ諸国に比較して、アジアからの大規模研究や報告は数が少なく、情報を集めるのにいつも苦労します。アジア諸国の最新情報が1か所から得られ、比較もでき、誰にでもアクセスできるというこのデータベースができたことは、患者さん、医療者、HIV/エイズ対策に関わる全ての人々にとって大変ありがたいことです。知り合いにも紹介し、今後大いに活用させていただくと思います。データの収集、管理方法、データの質など気になったところについても非常に活発な議論が交わされていました。使用者の側からもフィードバックをしながら、データベースの質を高めていくことができるのではないでしょうか。大いに期待しています。

3.会議全体をふりかえって
2年に一度のICAAPは、古くからの友人や思わぬ人と再会したり、情報交換をし合う中で新しい友人ができたりする貴重な場です。また、様々な参加者と意見を交わすことで、自分が普段携わっている研究や医療という視点以外でHIVを見つめなおすことができる機会でもあります。今回もその2つの点でいろいろな方から刺激を受け、また頑張ろうという気持ちになることができました。途中、活動家の逮捕や警察の介入によるセッションの中断、開催者と当事者による陳情など波乱もありましたが、そのことで感染者やそこに関わる人達の人権について参加者全体の意識が高まり、むしろまとまりが出たようにさえ感じました。
 HIVを取りまく状況は日々変化しています。私は臨床疫学の研究者という立場から今後も関わっていくことになりますが、常に現場の生の声とそこにいる仲間達の思いに向き合って研究し、それを還元していきたいと考えています。


会場にて、他国からの参加者と

感染症モデリングの世界 ~ロンドン大学短期留学で学んだこと~

高橋健介

2011年6月23日から8月5日までの1ヶ月半あまり、ロンドン衛生熱帯医学校(LSHTM)に留学する機会をいただいたので、その報告と「感染症モデリング」の紹介をする。

今回ロンドンに短期留学した経緯は、現在ベトナムで進行中の呼吸器感染症の研究データをモデルに応用する話が以前からあったが、そもそもモデリングの基礎すらわからない状態では話にならないので、これを勉強するため、感染症モデリングが専門のJohn Edmunds教授を有吉教授に紹介してもらったのがきっかけである。2011年6月27日~7月8日までロンドン衛生熱帯医学校で開催された2週間の「感染症モデリングショートコース」に参加し、その後コースの主催者の一人であるJohnの下で4週間、感染症モデリングの基礎を学んだ。

ロンドン衛生熱帯医学校(ロンドン大学) 1

ロンドン衛生熱帯医学校(London School of Hygiene and Tropical Medicine, LSHTM)はロンドン大学群のひとつで、公衆衛生と熱帯医学を専門とする大学院大学である。マンソン住血吸虫の名前の由来ともなっているPatrick Mansonによって1899年に設立されて以来、160以上の国と地域に多くの卒業生を輩出しており、卒業生の中には黄熱ワクチンの研究でノーベル賞を受賞したMax Theiler, 昆虫学の世界的権威といわれ200以上の昆虫の学名に名前が冠されているHarry Hoogstraal, 世界で始めてHIVウイルス量を測定することに成功したKoya Ariyoshi、各国の保健省大臣やWHOの重職についたものなど、そうそうたる面々がつらなっている。2008年にはイギリスの大学を総合的に評価した雑誌Times Higher Educationでトップ3にランクされており、こと公衆衛生や熱帯医学に関する教育では世界でも有数の大学である。
そもそも熱帯地から遠く離れたイギリスでなぜ熱帯医学が研究されているのかというと、大英帝国として世界に君臨していた時代、多くの植民地が熱帯地にあったために、その統治者や労働者の治療のため熱帯地域特有の疾患について研究、治療法の確立が必要だったため、1899年に設立されたのが始まりのようだ。
生徒、スタッフともに多国籍で、100以上の国と地域からおよそ4000人の学生が在学しており、40%がヨーロッパ以外の地域から来ている。今回僕が参加したショートコースは40人ほどのクラスだったが、4割がアフリカ系、4割がヨーロッパ系、アジアからの留学生は1割程度で日本人は自分だけだった。


LSHTMの前でクラスメートと

感染症モデリングとは?

Concise Oxford Dictionary によると数学におけるmodelとは「計算や予測を補助するために全体像や過程を簡略化した表現」( “A simplified description, especially a mathematical one, of a system or process, to assist calculations and predictions.)であると記載されている。では感染症モデリングとはどんなものでどのように使われるのだろうか?
例えばインフルエンザの流行を考えてみよう。一年のある時期になるとどこからともなく流行が広がり、老人ホームでの集団感染や学校閉鎖など社会的センセーションを巻き起こした後に自然と患者数は減っていく。広がったインフルエンザが一年中蔓延するわけでもなく、また今年罹患したからといって来年かからないという保障はない。また全員が感染するわけでもない。どこからともなく始まりいつの間にか収束するこの感染症の現象は、ウイルスが季節風に乗ってくるからだとか、渡り鳥が媒介しているとか、これまでさまざまな憶測がされてきたが、はっきりと説明できるものはなかった。感染症モデルはこのインフルエンザの季節性を説明する一つの仮定を提示することができる。

SEIRSモデル

感染症モデルの基本は、病原体の保持し感染源となる集団(I)と感染に感受性のある集団(感受性宿主、S)と感染に免疫を持っている集団(R)を想定することにある 1,2。感染しているけど発症していない集団(潜伏期、E)を加えることもある。これらの集団間で一定の法則で人数が移動することにより、感染症が流行したり収まったりする現象を説明することができる 2,3
先にあげたインフルエンザの場合、感受性宿主(S)が感染すると潜伏期(E)になり、感染源(I)から免疫状態(R)へ移動する。免疫状態は生涯続くわけではなく、一定の割合でまた感受性宿主へと戻る(SEIRSモデル)。インフルエンザは人から人へ移る病気なので、感染源(I)と接触するまた感受性宿主(S)が多いほど、また病原体固有の感染力が強ければ強いほど、新たに感染する人の数が多くなる。図1に人口100,000、出生率 = 死亡率 = 1/平均寿命の集団に感染力0.003/days-contact 潜伏期3日、感染源(I)3日、感染後の免疫の持続365日と設定した場合、集団の中に感染者が1人発生した場合の感染者数(I)と感受性宿主(S)、免疫状態(R)の時間的推移を示した。


図1. 感受性宿主(S)感染者(I)免疫状態(R)の時間的推移
X軸は時間(日)、左軸はSとRの数、→軸にIの数をおき、
初期値S0 = 100,000,  I0 = 1, R0 = 0 と設定した。
設定値の詳細は本文参照。

このグラフが示すのは、一人の感染者から感染症が広がり感染者数は急激に増加するが、ある点まで来ると感受性宿主が減少することによって感受性宿主と感染源の接触が減り、新たな感染者数が減少に向かい、やがて感染者数がゼロに近づく、すなわち感染の流行が収束するという現象である。感染の流行が無い期間、感受性宿主(S)が増加していき、ある点まで来ると再び感染症の流行が起こる。この現象が一定間隔で繰り返される。これはインフルエンザの季節性に非常に良く似ている。つまり、季節性に起こるインフルエンザの流行は鳥が運ぶものでも風が運ぶものでもなく、感受性宿主と感染者、免疫状態の数のバランスから生まれているという仮定をこのモデルから推測することが可能なのである。
ちなみに一人の感染者がある一定の時間の間に何人に感染させうるかを示した数字のことをReproduction number(再生産数、Rn)といい、これは感受性宿主(S)の数と病原体の感染力に依存する。Rnが1以上のとき感染者数は増加し、1未満のとき感染者数が減少する。ワクチンなどの政策で感受性宿主の数を減少させればRnが減少し、感染症の流行を防ぐことができ、ひいては病気の撲滅につなげることができる。

感染症モデリングの応用

先に挙げたのはごく簡単な一例で、実際のインフルエンザ感染には、インフルエンザウイルスの変異や年齢ごとに違う接触頻度(contact pattern)、人口の流動などさまざまな要素を考えなくてはならない。どんなに詳しく条件を設定しても結局モデルは現実世界を簡略化したものであり、必ずしも正しいとはいえない。

おわりに

感染症モデリングは「臨床内科」としての研究よりはむしろ公衆衛生に近い分野かもしれない。また、医学の知識よりも数学やプログラミングなど、久しく触れていなかった分野の知識が要求されるため、当初は高校時代の教科書をひっくり返しながら錆びついた頭を動かすのが大変だった。しかし、今回の短期留学で少なくとも感染症モデリングの基本的な考え方を学ぶことができ、彼らがどんな考えで感染症モデリングを作っているのか、その現場に触れることができたことは自分にとって大きな収穫だったと思う。

    (参考文献)
  1. London School of Hygiene & Tropical Medicine website; http://www.lshtm.ac.uk/
  2. H Nishiura, H Inaba. Prediction of Infectious Disease Outbreak with Particular Emphasis on the Statistical Issues Using Transmission Model. Proceedings of the Institute of Statistical Mathematics, Vol. 54, No.2, 461-480, 2006.
  3. E Vynnycky and RG White (2010) An introduction to infectious disease modelling. Oxford University Press.
  4. Christophe F et al., Pandemic Potential of a Strain of Influenza A (H1N1): Early Findings. Science, vol.324, 1557, 2009.

American Thoracic Society International Conference(ATS) 2011 in Denver等への参加報告

高木 理博

2011年5月13日から18日まで米国コロラド州デンバーで開催されたATSに森本浩之輔准教授と共に参加してきました。思い返せば2年前、新型インフルエンザ(H1N1)のpandemicによる海外渡航禁止令のために直前でATSへの参加のキャンセルを余儀なくされ、入国すら出来なかった米国。2回分のATS参加料に見合うだけの収穫を得るため、5月12日に意気込んで米国へと旅立ちました。ATSに先立って5月13日はサンフランシスコで行われた肺胞蛋白症の会議にも出席しました。当科で同期の田中健之先生が2010年に世界初のCSF2RB遺伝子欠損による肺胞蛋白症として報告した症例の追加研究結果を発表し、森本准教授も肺胞蛋白症のバイオマーカーについての発表を行いました。田中先生はサンフランシスコから直接日本に帰りましたが、私と森本准教授はそのままATSが開催される標高 約1600mの都市、マイル・ハイ・シティー デンバーに入りました。5月14日にはATSの会場近くで開催されたi-CLIIP 2011(International Conference on Lung Innate Immunity and Pulmonology)に参加しました。今回のi-CLIIP 2011のテーマはInfection, Inflammation and Efferocytosisであり、apoptosisやnecrosis、NETosis(Neutrophil Extracellular Traps:NETsによる細胞死)といった様々なタイプの細胞死と肺の炎症との関係、さらには炎症終息に深い係わり合いを持つapoptosis細胞の貪食除去機構であるefferocytosisに関連した演題が多数あり、最後にこの分野における第1人者であるNational Jewish Medical and Research CenterのPeter Henson教授が「Lifetime achievement: A personal perspective on the immune systems and efferocytosis」の演題で公演を行いました。当科でも近年は炎症終息機構をテーマにefferocytosisに関連した研究も行ってきており、最近それに加わって研究を始めたばかりの自分にとっては鼻息が荒くなるようなとても有意義な会でした。5月15日からは覗き込む巨大なブルーベアーがシンボルマークのコロラド コンベンションセンターで行われたATSに本格的に参加しました。15日のポスターディスカッションでは森本准教授が「Production Of Hepatocyte Growth Factor By Alveolar Macrophages That Have Engulfed Apoptotic Cell Is Impaired In Streptozotocin-Induced Diabetic Mice」の演題で発表を行いました。その後の数日間は個人的な興味で間質性肺炎のセッションを中心に、ポスターやオーラルでの発表を見てまわりました。2000年にATS/ERSが合同で発表したIdiopathic Pulmonary FibrosisのInternational Consensus Statementの改訂版として、2011年にATS/ERS/JRS/ALAT合同のOfficial Statement(Guideline)が発表されたばかりではありますが、2012年には2002年に発表されたIdiopathic Interstitial PneumoniasのInternational Multidisciplinary Consensus Classificationが改定されるということで、その進捗状況などの報告があり、興味深く聞いてきました。また、我々が日常診療の中で疑問を持った症例に関して、国際的な研究者に直に相談することも出来て、全世界の研究者が集まる国際学会に参加することの重要性も感じることが出来ました。

今回のATSは森本准教授が以前留学していたコロラド大学の地元での開催であり、そのときの森本准教授の多くのご友人達とも交流させて頂きました。見るからに人の良さがあふれ出ているWilliam J Janssen先生との食事に連れて行っていただいたり、上司であるR William Vandivier先生のホームパーティーに招かれてアメリカンな雰囲気を味わえたりと、初めて行った米国で言葉の壁を痛感はしましたが、楽しいひと時も過ごすことも出来ました。また、ATSに参加されていた高知大学の横山彰仁教授やNational Jewish Medical and Research Centerで長年喘息の研究を続けておられる武田先生達とも食事をご一緒させていただきました。准教授のご友人でペルー人のEdith夫妻にはバッファローやエルクが食べられる地元で最も古いレストランでの食事につれて行っていただいたり、現地を車で案内していただいたりと大変お世話になりました。 今回、初めて参加したATSでは私自身は発表する知識も機会も持って無かったわけですが、世界の研究者が自分達のポスターの前で自信満々で前のめりになって質問を待っている様子は非常に刺激的でした。次来るときはこの場で発表できるデータをもって来ることを誓いつつ、日本への帰途に就いたのでした。

メータオクリニックにて

リバプールでの1年間の修士課程を終え、多くの学んだ知識を現地で活かしたいと考え、2010年10月よりタイのミャンマー国境付近にあるメータオクリニックにて働き始めました。
メータオクリニックはミャンマーからタイへ逃れてくる難民に対して、無料で医療を提供しているNGOです。Drシンシアというカレン族の医師が始めたクリニックで20年以上続いています。
メータオクリニックホームページ http://maetaoclinic.org/

メータオクリニックの内科病棟で現在勤務しています。病棟は50床でメディックが30人程働いています。病棟といっても、大きな掘立小屋に木でできたベッドが並んでいる質素なつくりです。医師は僕一人で、メディックと呼ばれる医療従事者が医師と同じ仕事内容をしています。

ミャンマー国境付近はマラリアの流行地でこのクリニックには多くのマラリア患者が運ばれてきます。脳性マラリアなどの重症マラリアもここではそれほどめずらしくありません。発熱があれば、すべてマラリアと考え、血液塗沫はほぼすべての患者に行います。
マラリアだけでなく、多種多様な感染症があり、大変勉強になります。デング、レプトスピラ、チフスなどが比較的多いです。また、さまざまな箇所の膿瘍形成がおおく、毎日どこかの穿刺を行っています。
腰椎穿刺、胸腔穿刺、腹腔穿刺など日本でも比較的よくしましたが、関節穿刺、肝膿瘍穿刺、心嚢穿刺などあまりしなかったものもこちらではせざるおえない機会があります。
また、HIV感染症や活動性結核が比較的多く頭を悩ませる症例が多いです。メータオクリニックでは新規の結核、HIV感染症患者への治療はできず、他のNGOでも受け入れることができない症例が多いためです。ほとんどのHIV陽性患者が活動性結核を発症しており、大きな問題となっています。

以前他のNGOがHIV治療を提供していたのですが、そのNGOが撤退したため、当院からそのNGOに通っていた患者に対しては当院で継続してHIV治療を提供していくことが最近決りました。(HIV治療薬、検査代等はタイ政府が提供)その外来診療に携わる事になり、日本ではあまりみる事のできない、HIV診療についても今後多くの症例を経験していきたいと思います。

感染症だけでなく、日本で遭遇する多くの内科疾患の対応も重要です。喘息、高血圧、慢性腎不全、肝硬変、心不全など多くの症例がやってきます。慢性期の治療が重要なのですが、患者は外来に定期的に通えない方が多く、重症になってから運ばれてきます。

ここのクリニックではほとんどの検査が出来ず、診断に苦労します。出来る検査は、マラリア血液塗沫、血算、尿検査、HIV検査、梅毒検査、B型肝炎検査、ターニケットテストなどです。

他の病院に送れば、喀痰検査、レントゲン、生化学検査など行えますが、予算が限られているため、レントゲン一枚オーダーする時もどうしても必要な患者に限られます。身体所見と病歴がここでは何よりも重要です。また、診断できない場合が多く、考えられる到死的な病気をとにかく治療していきます。診断にはそれ程お金はかけられませんが、最低限の治療薬は整っているため、治療薬に関してはそれ程不便はありません(HIVと結核以外)。

私の仕事は、内科病棟の患者の治療方針の検討とメディックへの教育です。メディックへは日々の診療の中での教育だけでなく、定期的に感染症学や内科学を講義しています。
また、このクリニックには携帯型の超音波があり、大変診断に有用です。しかし、私が赴任する前はだれも使っていませんでした。今後、メディックに超音波の使い方を教育するのが私の仕事になると思います。
レントゲンがこの病院にはなく、レントゲンの導入、指導なども検討しています。
検査室のスタッフへは現在、オーストラリアからの技師と2人でグラム染色と寄生虫の糞便検査を指導しています。(グラム染色液は熱研内科渡辺 貴和雄先生より頂きました。)赴任中にこれらの検査をかれらに行えるようにできればいいと思います。

1カ月が経過しましたが、多くの難渋する症例があり、内科医としては大変勉強になります。タイの田舎での生活は日本での忙しい毎日と違い、のんびりしていて僕にあっています。メディックはみんな親しみやすく楽しい毎日です。週2回のサッカーにも参加しています。
また、今後研究をしていく場合にも、小さな田舎のクリニックでの現状を学ぶ事はおおいに有用だと思います。こういった場所で何か必要か、こういった所で本当に役に立つ研究は何かを考えて行きたいと思います。
半年間こちらで働き、その後は熱研内科の博士課程を履修する予定としています。博士課程では結核、HIVなどを中心に研究できればと考えています。

齊藤 信夫

クリニックの様子 クニリック内の屋台
クリニックの様子 クニリック内の屋台
内科病棟、働くメディック達 メディック達とサッカー
内科病棟、働くメディック達 メディック達とサッカー

リバプール大学熱帯医学校修士課程を終え

1年間に及ぶ、リバプールでの留学生活を終えました。臨床からはなれ、勉強に明け暮れた毎日でしたが、とても充実した1年間をおくる事ができました。英語や様々な苦労がありましたが、世界中から来たクラスメートに囲まれなんとか乗り切る事が出来ました。テストや小論文の課題が結構あり、正直大変でしが、熱帯感染症と研究の基礎を学ぶことができとても満足しています。

以下私が履修したコース内容です。

9月、10月 (月曜~木曜) 臨床熱帯感染症学(DTMと同じコース)
熱帯感染症、熱帯寄生虫学、熱帯昆虫学、HIV、結核、顕微鏡実習など
課題:筆記テスト(4回)、小論文2つ
選んだ小論文テーマ:「Strongyloides Stercoralis hyperinfection in HIV positive-patient」
「Can interferon gamma release assays be used to rule out TB disease?」
11月12月  国際小児学(月曜、火曜)、熱帯地方慢性疾患(non-communicable disease水曜木曜 )
課題:小論文2つ
  選んだ小論文テーマ「Strategy of childhood pneumonia in Vietnam」
「Asthma in developing countries」

1月 ワクチン、免疫学(月曜、火曜)、疫学(水曜日、木曜)
  課題:テスト
2月 院内感染 (月曜~木曜)
  課題:筆記テスト、小論文1つ
  選んだテーマ
「Control and prevention of health care associated drug resistance TB」
9月~2月(金曜日)統計学、疫学、研究方法論
3月 統計学
課題:小論文
4月~7月 修士研究
  研究テーマ
4月末より5月末までタイ保健省にてランパンコホート(熱研内科)の検体を使い実験
6月解析、論文書き上げ
7月10日提出

齊藤 信夫

修了式、クラスメート達と 指導教官のDr Gavinと
修了式、クラスメート達と 指導教官のDr Gavinと

研究会、学会などの報告(田中健之、医員)

2008年4月:気道分泌研究会(東京)

口演:アポトーシス細胞貪食除去(efferocytosis)におけるMonocyte Chemoattractant Protein-1(MCP-1/CCL2)の役割

2008年9月:メキシコ国立呼吸器疾患研究所を訪問

口演 Perez先生
口演 Perez先生(メキシコ国立呼吸器疾患研究所所長、
ラテンアメリカ呼吸器学会会長)

2009年1月:九州肺分子病態研究会(福岡)

口演:アポトーシス細胞貪食除去(efferocytosis)におけるMonocyte Chemoattractant Protein-1(MCP-1/CCL2)の役割

2009年4月:呼吸器学会総会(東京)

ポスター発表:肺の炎症巣でのアポトーシス細胞貪食除去(efferocytosis)におけるMCP-1/CCL2の役割

2009年5月:ATS 2009 San Diego

ポスターディスカッション:MCP-1/CCL2 (Monocyte Chemoattractant Protein-1/CC Chemokine Ligand-2) enhance apoptotic cells removal(efferocytosis) through activation of Rac1

2010年1月:九州肺分子病態研究会(福岡)

口演(奨励賞受賞):未分類肺胞蛋白症の病態解析

九州肺分子病態研究会 九州肺分子病態研究会

2010年4月:呼吸器学会総会(京都)

ポスター発表:未分類肺胞蛋白症の病態解析

2010年5月:ATS 2010 New Orleans

ポスター発表: A novel pathological mechanism of an unclassified pulmonary alveolar proteinosis(PAP)

ATS 2010 New Orleans

2010年6月;コロラド大学呼吸器科ラボ(Dr.Vandivier Lab)への短期派遣

(海外派遣による自立した若手生命医療科学研究者育成支援プロジェクト)

ATS 2010 New Orleans

第三回長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンスの報告
2010/5/29

柿内聡志

2010年5月29日、福岡市のTKP博多駅南第1会議室で、当科・日本感染症教育研究会(IDATEN)・グラクソ・スミスクライン株式会社共催で、第3回熱帯病ケースカンファレンスが開催された。今回は例年より2カ月ほど早く開催されたが、熱帯医学に興味のある、また熱意のある先生方にお集まりいただき、活発な議論を交わす場となった。

特別講義では、University College London Hospital, Hospital for Tropical Disease (HTD) Consultant physicianのDr. Tom Dohertyに、「ロンドン大学熱帯病病院における熱帯感染症診療の実際」について講演していただいた。日本ではなかなか見ることのできない症例を、どこを旅行してきたか、どのようなエピソードがあるか、という視点から、鑑別を挙げ、実際の検査結果を確認するという、ケースカンファレンス形式で講演はすすめられた。比較的平易な英語による講演であったこともあり、フロアからは様々な意見が飛び出し、Dr. Tom Dohertyも含めて活発なディスカッションを行った。

また、「感染症疫学のピットフォール」という題で、Department of Infectious Diseases, London School of Hygiene and Tropical Medicine, Research FellowのDr. Wolf-Peter Schmidtによる講演も行われた。感染症を考える際に、必ず話題に登る疫学について、その考え方を麻疹やインフルエンザなど、具体的な疾患にあてはめて丁寧に解説していただいた。疫学について造詣の深いフロアの先生方も新鮮な視点からの講演に耳を傾けていた。

休憩をはさんで、IDATEN側から2名の先生(国立国際医療研究センター病院 国際疾病センターの竹下望先生、神戸大学医額部感染症内科/神戸大学都市安全研究センターの大路剛先生)にお越しいただき、症例検討を2例、行った。

1例目は神戸市立医療センター中央市民病院 内科の王康治先生による、重症熱帯熱マラリアの症例であった。本症例では近隣の大学病院の協力もあって、救命できているが、都市部であっても、現在の日本においてマラリアの診断・治療がなかなかスムーズにいかないであろう現実について、深く考えさせられる症例であった。

2例目は長崎大学病院 感染症内科(熱研内科)の柿内聡志から、腸チフスにG群溶連菌感染を合併した症例(フィリピンサンラザロ病院からの症例)を呈示させていただいた。1例目ではMRIなどを駆使し、診断に至っていたのだが、実際の熱帯地域では高度な検査は行えず、症状・迅速診断キットが主で、たまに血液培養を行うくらいの診療で患者を治療するという、日本とは異なる環境での症例であったため、現地の雰囲気を感じ取っていただけたのでは、と思う。

今年で3回目となった熱帯病ケースカンファレンスであるが、今年も例年と遜色ない活発な意見交換の場となった。また、多くの先生方に福岡の地まで足を運んでいただき、熱帯病への関心は衰えるどころか、ますます高まっていると感じた。国際化社会となった現在において、我々医療者が日本ではみることのない疾患を診療する機会は増加している。そのような状況の中、熱帯病について活発な議論を交わす場があることは大変素晴らしいことであると感じた。今後も、このようなカンファレンスを継続していき、日本国内における熱帯病への知識を深めていきたいと思う。

長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス
長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス
長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス
長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス

第2回高知県感染症ケースカンファンレスを開催しました

石田正之 古本朗嗣

12月12日(土)、高知県の高知医療センターくろしおホールで第2回高知県感染症ケースカンファレンスを開催したいました。

今回は佐賀大学医学部附属病院感染制御部部長の青木洋介先生を特別講演にお呼びして「Bcteremic Sepsisの臨床推論」の講演をいただき、その後青木先生、幡多けんみん病院川村先生、当教室の古本先生をコメンテーターに、3症例のケースカンファレンスを 行いました。

ケースカンファレンスは近森病院研修医の近澤悠志先生から脾摘後の患者さんに生じた成人GBS髄膜炎の症例を、JA高知病院内科の中野万有里先生から新型インフルエンザ感染後に生じた細菌性肺炎の症例を、当科石田正之より当初インフルエンザと診断された確定診断まで時間を要した三日熱マラリアの症例、以上3例を提示していただきました。どちらの症例も非常に興味深く、 また会場からは非常に熱のこもったディスカッションが展開され、非常に盛り上がりました。

今後も定期的にカンファレンスを開催し、地域の感染症教育・診療の活性化寄与して行きたいと考えています。

日本呼吸器学会・日本結核病学会九州支部秋季学術講演会の報告

石田正之

平成21年11月26日~27日北九州国際会議場にて日本呼吸器学会・日本結核病学会九州支部秋季学術講演会が行われ、当教室や協力病院から多数の演題発表を行いました。

協力病院の井上病院吉嶺裕之呼吸器内科部長より「睡眠時無呼吸症候群を合併した急性大動脈解離の一例」。当教室の土橋佳子講師より「関節リウマチ、シェーグレン症候群に合併したLIPの一例」。

最近当教室で積極的に行っている気管支鏡検査(気管支腔内超音波断層法、極細径気管支鏡)に関連した演題で、石田正之より「当科における気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)の実際と有用性の検討」、泉田真生後期研修医より「極細径気管支鏡(XP260F)を用いて肺化膿症の空洞病変内を観察した一例」、初期研修医の伊藤博之先生より「EBUS-TBNAによって診断し得た前立腺癌縦隔リンパ節転移の一例」、同じく初期研修医の高松由基先生より「PET/CT所見とEBUS-TBNAで診断に相違を認めた縦隔リンパ節腫脹を伴う肺悪性腫瘍の一例」の演題を発表いたしました。

当教室はこれからも、教室の3本柱である、熱帯医学、感染症、呼吸器のよりいっそうの充実を目指し診療のみならず、学術活動を行っていきます。

第79回日本感染症学会西日本地方会学術集会の報告

古本朗嗣

11月19日(木)、20日(金)の2日間にわたり福岡市の九州大学医学部百年講堂にて第79回日本感染症学会西日本地方会学術集会が「持続感染症への対応」をテーマに開催されました。当科からも4演題を発表いたしましたので、簡単に報告いたします。

Capnocytophaga属は動物咬傷に関連した細菌で、特に脾摘後の患者さんでは敗血症を来すことで知られていますが、一方で人の口腔内にも存在する菌種もあり、最近では呼吸器感染症での報告例も散見されるようになりましたが、今回気管支鏡で空洞性病変を採取しその組織培養で同菌が同定され起炎性が考慮されたため、当科医員松木 啓医師より「肺癌の空洞性病変に合併したCapnocytophaga属による肺化膿症の一例」として報告しました。尚16SrRNA遺伝子解析よりCapnocytophaga gingivalisと判明しました。

GBSとして知られているStreptococcus agalactiaeは新生児の髄膜炎の起炎菌として知られていますが、成人の髄膜炎として起炎菌の頻度としては1%程度と頻度は低いものとされています。当初髄液のグラム染色で肺炎球菌が示唆されたものの、培養結果ではStreptococcus agalactiaeによる髄膜炎と判明した脾摘後の症例について当科ローテーション中の釜谷寛之医師より「脾臓摘出後にStreptococcus agalactiaeによる細菌性髄膜炎を発症した一例」として報告しました。肺炎球菌など莢膜を有する細菌は脾摘後敗血症を生じるものとして知られています。Streptococcus agalactiaeによる髄膜炎の症例のレビューでは疾患のリスク因子として糖尿病が報告されていますが、一方脾摘との有意な関連は認められていません。

黄色ブドウ球菌は組織侵襲による感染症のみならず、同菌により産生される毒素に由来するものもあります。その一つとしてTSS(Toxic shock syndrome)が知られていますが、今回、当院形成外科に熱傷で入院中の方がMRSAによるTSSを発症し、再燃も認めたため、TSST-1に対する血清抗体価の経時的検討を行いました。当科後期研修医の加藤隼悟医師より「熱傷患者に生じたMRSAによるTSS(トキシックショックシンドローム)の一例」として報告しましたが、本症例においては経時的な抗体価の評価では回復後も抗体価の上昇は認めず、再燃の一因として考えられました。

最近数年間、新規HIV患者報告数は1000人を超え、更に増加傾向を示しています。自治体による無料匿名検査の全国的な普及も報告数増加の一因と考えられます。受検者に便利な検査体制を構築することも重要な課題であり、当科は長崎県の依頼を受け長崎市において土曜夜間の迅速検査を昨年度より始めています。その1年間の状況を当科助教古本朗嗣医師より「長崎市における土曜夜間HIV即日検査について」として報告しました。

今回は地方会ということもあり、若手の先生方に研修の一環として発表していただきました。今後も若い先生方には学会での症例報告を通じて、文献検索とレビュー、論文作成、プレゼンテーション能力を高めていただきたいと考えています。

ICAAP IX (The 9th International Congress on AIDS in Asia and the Pacific)に参加して
2009/8/9-13

8月9-13日、インドネシアのバリ島で開かれたICAAPに出張中のタイ国ランパンからDr.Panitaと2人で参加させていただきました。

ICAAPは2年に一度開催されるアジア太平洋地域を中心とした国際学会です。WHO,UNAIDS,UNICEF,UNDP等の国際機関を始め、各国の臨床家、行政関係者、公衆衛生専門家、NGO、そしてHIV感染者の方々まで各方面からの参加者が顔を合わせて互いの経験や課題を討議し合う貴重な機会となっています。今回は” Empowering People, Strengthening Networks” をテーマに数々のシンポジウム、ワークショップ、HIVのフィールドツアーと2000以上のポスター発表、300以上のオーラルディスカッションと多様なプログラムが組まれ、会場は連日活気にあふれていました。

私が関わらせていただいている北タイのランパンコホートからは、”Over ten years of experience in treating HIV infected patients at a government hospital in northern Thailand; mortality rate declined but new problems are emerging” (Dr.Panita)と”Opportunistic infections before and after the national antiretroviral program in northern Thailand”(土屋) の2つをオーラルディスカッションで発表させていただきました。途上国の中で最も早く国を挙げてのHIV対策、治療普及を進めてきたタイ、そのタイでもHIV罹患率がtop 5に入るランパン県の臨床の現場でこの10数年にわたりDr.Panitaが経験されてきたことをまとめたものですが、会場からも多くの質問、コメントをいただきました。抗HIV治療の普及に伴い、先進諸国では用いない安価な1st regimenに起因する短期、長期の副作用の出現、限られた2nd regimenの選択枝、既存スタッフのワークロードの増大、と他地域でもランパンと同じ問題を抱えていることが分かりました。一方、いまだにコスト、インフラ、偏見等により治療へのアクセスが限られていたり、national guidelineやモニタリングシステムが確立されていなかったりする地域も多く存在することが分かり、地域格差を改めて実感しました。

途上国における1st line regimenの導入、治療効果の評価方法、2nd line regimenの選択枝と薬剤変更のタイミングについてはシンポジウムが組まれており、興味深く聞いてきました。途上国での先行、現行の研究結果や来たる9月に改定されるWHOのガイドラインの情報などをDr.Praphan, Dr.Davidを始めとするフロントラインの研究者から聞くことができ、非常に勉強になりました。現在ランパンで自分が行っている、長期抗HIV薬内服患者の副作用、薬剤変更に関する情報収集の有用性、方向性も明らかになり、研究への意欲がますます高まりました。他には、ランパンコホートのサブスタディーにもなっている、エイズ孤児に関する発表やシンポジウムに参加したり、会場で知り合った様々な参加者と意見を交わしたりしましたが、そこでは予防や社会的サポートの重要性を再認識することとなりました。

HIVを取り巻く状況は日々変化しています。既存の問題が解決しないうちに新たな問題が生じてくることも、特に途上国においては往々にして見られます。変化する状況の中でこれからも勉強を続け、今何が問題となっているのか、常に現場のスタッフや患者さん達の情報からくみ取り、evidenceを持って還元できるような形で発信していきたいという思いを強くしてタイに帰国しました。最後に、このような機会を与えて下さいました有吉教授、熱研内科の先生方、長崎大学gCOEプログラム、そしてランパン病院のスタッフと患者様に厚く御礼申し上げます。

土屋菜歩



セキュリティチェックの非常に厳しい学会会場
セキュリティチェックの非常に厳しい学会会場

Dr.Panitaと
Dr.Panitaと

第24回日本国際保健医療学会総会の報告
2009/8/5-6

8月5日、6日の2日間仙台で第24回日本国際保健医療学会総会が開催された。当科からも以下の3題を発表した。

  1. 長崎大学における医師の熱帯医学教育―熱帯医学修士課程―(氏家無限)
  2. バンコクにおける邦人の医療事情:三大私立病院を通して(宮城 啓)
  3. マラウイ共和国ンコタコタ県におけるマラリア罹患率(氏家無限)

演者以外に、高橋健介先生、加藤隼悟先生も参加し、国際保健医療分野の知見を深めた。主なセッションとしては、人材育成、母子保健、緊急援助、感染症、学校保健、保健システム強化などがあった。本学会は、海外で活躍する様々な職種の方からの演題が多く、実際に今現地で起きていることに関して生の情報が得られる点が非常にありがたい。国際保健医療協力は、臨床、公衆衛生、疫学、基礎研究、災害医療、行政など様々な分野で実施可能であり、我が熱研内科も各分野で研鑽を積んでいきたい。

宮城 啓

第二回長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンスの報告
2009/7/11

昨年に引き続き当科並びに日本感染症教育研究会(IDATEN)、グラクソ・スミスクライン株式会社共催にて熱帯病カンファレンスを7月11日博多サットンプレイスホテルにて開催しました。今回の特別講演はProfessor,Department of Infectious and Tropical Diseases,London School of Hygiene and Tropical Medicine並びにロンドン大学病院熱帯病病院コンサルタントであるDr. Robin Baileyによるロンドン大学熱帯病病院の症例、アフリカでの症例の提示をしていただき、日本の臨床現場ではなかなか経験できないような急性肺ヒストプラズマ症(以前当科でもマレーシアのジャングル内の高級ホテルに一緒に滞在していた3名の日本人の方に両側肺にび慢性の小粒状影を呈した症例のコンサルトを受けたことがありました。)、眠り病として有名なトリパノソーマ症ですが、急性トリパノソーマ症の症例、知っていればsnap diagnosisが可能な皮膚炭疽、前額部の皮下腫瘤を形成した接合菌の一種であるConidiobolomycosisなどの興味深い症例に加え、実際のメキシコ渡航歴のある患者さんを提示した上でイギリスでの新型インフルエンザの状況もお話していただきました。ユーモアを交えた講演は楽しく非常に有益なものでした。

その後、3症例の検討会を行いました。症例1は座長を神戸大学都市安全研究センター/神戸大学医学部付属病院感染症内科 大路 剛先生をお願いし、4月まで当科に勤務していた国際医療センター 国際疾病センター 氏家無限先生に症例を提示していただきました。シエラネオラからの帰国した熱帯熱マラリアの症例で、日本における治療における問題点についても討論が行われました。

症例2は座長を総合病院国保旭中央病院 内科 岩渕千太郎先生の下で、症例発表者は神戸大学医学部付属病院感染症内科 菅長麗依先生により、海外渡航歴のない農婦の国内発症のワイル病の症例を検討しました。昔からレプトスピラ症は秋疫として知られていたものですが、ネズミとの接触、ネズミの糞尿で汚染された水との接触歴などが重要な問診のポイントとなります。Fever without localizing signを起こす感染症として熱帯地でも重要な疾患の一つで、途上国では水系感染としてのアウトブレイクを起こすこともあります。

症例3は座長を国際医療センター 国際疾病センター 竹下 望先生にお願いし、昨年に引き続き沖縄県立中部病院 感染症内科 椎木創一先生に症例提示していただきました。通常はリンパ節腫大を呈することはマラリアではないのですが、悪性リンパ腫(Diffuse Large B cell lymphoma)に合併したタイに渡航歴のある三日熱マラリア症例の検討を行いました。熱帯地であっても、国内であっても内科診療のスタイルは変わらないことを再痛感させられる症例でした。日本ではマラリア診療に慣れていない医療施設が多いことが想像に難くないですが、そういった施設でのマラリアの診断、治療の現状についての討論も行われました。

今年は日本各地から58名の方の参加があり、昨年に比べて更に活発な討論が行われ、有益なカンファレンスを多くの皆様のご協力により行うことができ感謝しております。来年もまた同様のカンファレンスを開催したいと考えております。

長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN熱帯病ケースカンファレンス

熱研内科 古本 朗嗣

押谷仁先生の講演会を開催しました
「インフルエンザA(H1N1)によるパンデミックにどう対応すべきか」
2009/7/2

平成21年7月2日、当教室と熱研ウイルス学分野、長崎市医師会と合同で東北大学大学院医学研究科微生物学分野の押谷仁先生の講演会を開催しました。元世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局・感染症地域アドバイザーでSARSのコントロールで陣頭指揮をとられ、現在も新型インフルエンザについてWHOで重要な役割を演じておられる高名な先生であり、またテーマが新型インフルエンザと関心の高いものであったこともあり、当日は申し込みだけで500名を超える盛況となりました。新型インフルエンザの最新のデータ、話題を中心に、それから予想できる今後の流行、そして我々が備えておくべきことについて、詳しく、またわかりやすくご講演いただきました。

岩田健太郎先生と症例討論会を開催しました 2009/7/1

平成21年7月1日、熱帯医学修士課程の講義のため来崎された神戸大学感染症科教授・岩田健太郎先生をお招きして、感染症症例検討会を開きました。当日17時の長崎空港着で、そのまま症例検討会の臨んでいただいたにもかかわらず、いつものように快活で、奥の深い議論をしていただきました。昨年より、当科の若手医師を中心とした小規模でより身近に岩田先生のご指導をいただく会として始めましたが、昨年同様、他科をローテート中の研修医や集中治療部の先生もご参加くださり、良い会ができたと思っています。

症例は神経梅毒、結核性腹膜炎、ブドウ球菌による毒素性ショック症候群を取り上げ、今春より当教室員となった宮原、高橋、加藤がそれぞれプレゼンをしました。高橋先生の感想は以下のとおりです。

森本浩之輔

「岩田先生のカンファレンスに参加しました」

去る7月1日神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授であり、IDATENの中心的存在である岩田健太郎先生をお招きして、感染症ケースカンファレンスが熱帯医学研究所の会議室で開かれました。

参加者は熱研内科医員、研修医、学生、ICUスタッフなどを含めた15名ほどで、少人数ながら活発な議論が展開されました。当院で経験した3症例を提示し、岩田先生がそれにコメントを加えながら鑑別を考えていくという方式で、皆でディスカッションしました。

1症例目は宮原先生からの症例提示で、「数ヶ月まで光覚弁まで視力低下した51歳女性」。眼窩周囲・副鼻腔・視神経の解剖が話題となり、診断に苦慮する副鼻腔炎として蝶形骨洞炎・後篩骨洞炎などが鑑別に挙がりました。神経を冒す病原として、梅毒は必ず鑑別に入れるべきとのことになりました。非感染症疾患では多発性硬化症などの変性疾患、眼動脈閉塞など血管のイベント、ほか糖尿病など代謝性疾患、あるいは遺伝性疾患の可能性などについても言及されましたが、症状や経過、所見をあわせると梅毒が疑わしいと岩田先生の結論。そしてそれは見事に的中していました。STDは複合感染していることが多く、他の梅毒を見つけたら他のSTDについても検索が必要であることを強調しておられました。

2症例目は私、高橋からの症例提示で「慢性の経過で腹水貯留を認めPET/CTにて腹膜・卵巣に集積所見を認めた55歳女性」。糖尿病の既往がある55歳の女性が3ヶ月前から徐々に増加する腹水の精査の過程で、PET-CTで卵巣・腹膜に集積を認め、卵巣腫瘍マーカー上昇の所見から卵巣癌腹膜播種を疑われ腹腔鏡を施行したところ、腹腔内に多発する結節性病変を認めた症例です。

鑑別としては癌性腹膜炎、結核性腹膜炎、サルコイドーシス、クローン病などが挙げられましたが、組織培養より結核菌が検出され、結核性腹膜炎の診断となりました。

腹水や胸水を見たときにはまず結核を思い浮かべること、また前医の腹水検査でADA 72.9 U/Lという値が見逃されていたことから、ADAの値については採取部位によって基準値が違うので、電子カルテなどで異常値を示す赤や青などの色分けがされないことが多く、見逃してしまうことがあることも教わりました。さらに感染症のケースカンファレンスでは、梅毒・結核・HIVを挙げておけば当たることが多いという裏話(!?)も教えてくれました。

3症例目は加藤先生からの症例提示で、「熱傷治療経過中にショックをきたした26歳男性」。生来健康な26歳男性が体表面積の4%の熱傷で植皮し、受傷後11日目に悪寒・発熱・水様性下痢が出現、血圧94/59mmHg、HR140bpmとショックに陥り、さらに悪心・嘔吐、球結膜の充血、皮膚の発赤と掻痒感が出現した。抗生剤治療に反応せず、当科に紹介となった症例です。鑑別として感染症としては緑膿菌や溶連菌によるsepsis、偽膜性腸炎、壊死性筋膜炎、腸チフスや髄膜炎などがあがり、非感染性のものとしてはSteven-Jonson 症候群や成人still病、成人川崎病などが挙がりました。

ショックの割にはsepticな所見に乏しく鑑別に苦慮しましたが、最終的な診断名はブドウ球菌によるToxic shock syndoromeでした。
鑑別疾患を考えるよいトレ-ニングになりました。

このケースカンファレンスを通して病歴と全身所見をとることの大切さを学びました。臨床力というのはいかに多くの鑑別疾患を挙げられるかにより、それらの鑑別疾患を念頭に置いた上で病歴聴取・全身検索を行うことが診断への近道であるということを改めて知りました。不明熱を見ることが多い感染症専門医は、感染症のみならず膠原病や悪性腫瘍そのほかの疾患についても幅広い知識があり、解剖学や生理学についても考察することが必要になります。自分に足りないものは何か(足りないことだらけですが)ということを知ることができただけでも大変実りの多い会でした。

ご多忙の中、遠く長崎まで来てくださった岩田先生、本当にありがとうございました。

長崎大学熱研内科 高橋健介

第1回高知県感染症ケースカンファンレンスを開催しました! 2009/6/20

石田正之

6月20日(土)、高知県の近森リハビリテーション病院会議室で第1回高知県感染症ケースカンファレンスを開催したいました。

この会は、約1年前より、当教室の協力病院である近森病院の医師と、高知県の主な研修病院で感染症診療および研修医の指導に当たっている先生方と協力し、地域に根ざす臨床感染症教育を!という考えで、IDATENのケースカンファレンスを参考に準備を進め、各方面の協力・賛同を得て実現いたしました。

会は本会の代表の高知大学総合診療部准教授の武内世生先生の挨拶から始まり、静岡県立がんセンター感染症科部長の大曲貴夫先生の特別講演「感染症診療の基本的考え方」、休憩を挟み、大曲先生、亀田総合病院の細川直登先生、当教室の古本先生をゲストコメンテーターにお呼びして、2症例のケースカンファレンスを行いました。

ケースカンファレンスの1例目は当教室の泉田真生先生から診断に苦慮した結核性腹膜炎の症例を、2例目は佐野内科リハビリテーションクリニックの佐野良仁先生から喀痰グラム染色・培養で同定された百日咳の症例を提示していただきました。どちらの症例も非常に興味深く、また会場からは非常に熱のこもったディスカッションが展開され、非常に盛り上がりました。

当日は70名を越える参加を得て、会場は立ち見が出るほどで、参加者も高知県内だけでなく、近隣県からの参加者もあり、非常に盛況のうちに会を終わることができました。

本会は今後年3回程度の開催を予定しており、次回は10月に開催予定です。検討症例も時事募集しています。会に関するご意見やご質問は以下のアドレスにお願いいたします。

Mail:kochi.infection@gmail.com

第1回高知県感染症ケースカンファンレンス 第1回高知県感染症ケースカンファンレンス

第20回臨床寄生虫学会報告 2009/6/20

石田正之

平成21年6月20日大阪阪急エキスポパークで行われました第20回臨床寄生虫学会が開催されました。今回の学会は当教室の前准教授で、現在大阪大学微生物病研究所の特任教授の大石和徳先生が学会長をされ、一般演題24題、ランチョンセミナー、シンポジウムが各1セッション、ICD講習会と非常に盛りだくさんのプログラムでした。

当教室からは石田正之が、「形態学的に分類が困難で、遺伝子検索で日本海裂頭条虫症が疑われた一症例」の発表を行いました。

第49回日本呼吸器学会学術講演会 報告 2009/6/12-14

石田正之・森本浩之輔

平成21年6月12日~14日東京国際フォーラムで行われました第49回日本呼吸器学会学術集会総会に当教室からも演題の発表を行いました。

一般演題では、当科で積極的に導入、施行してきているEBUS-GSに関して石田正之より、「当院及び協力施設におけるガイドシース併用気管支内腔超音波検査(EBUS-GS)の使用経験
土橋講師より昨年当院で行った生体肺移植症例に関して、「生体肺移植に至った治療抵抗性肺胞蛋白症(抗GM-CSF自己抗体陰性)の一例
これまで継続的に当教室が進めている炎症終息の研究に関して田中健之より「肺の炎症巣でのアポトーシス細胞貪食除去(Efferocytosis)におけるMCP-1/CCL2の役割
ベトナムで行われているmultiplex-PCRを用いた大規模研究に関して森本准教授より「ベトナム中南部カンホア県病院に入院した小児呼吸器感染症958症例における呼吸器ウイルス性病原体の関与に関する研究
有吉教授が以前より研究を続けてきているHIVのフィールド研究の中から土屋菜歩より「北タイHIVコホートにおけるHAART療法導入前後の結核罹患率の推移に関する研究
また各協力病院から、十善会病院の島崎貴治から「肺非結核性抗酸菌(NTM)症患者における治療効果に影響する因子の解析」、
近森病院中間呼吸器科科長より「当院における外科的気管切開術(ST)と経皮的気管切開術(PT)の検討」「経皮的気管切開術におけるラリンゲルマスク(LM)を用いた気道確保の有用性の検討」、
井上病院吉嶺呼吸器内科部長より「睡眠時無呼吸症候群患者に対する側臥位支援枕の有用性」、
長崎川棚医療センターの川上総括診療部長より「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用効果に関する検討
以上10演題の発表を行いました。

また最終日の症例検討には、石田正之より「悪性関節リウマチ(MRA)治療中に急速な経過で発熱・呼吸不全を呈し死亡した,胸部多発結節影症例の一剖検例」の症例提示を行いました。

今回の学会は呼吸器学会としては初めての開催となるハンズオンセミナーの企画がされるなど、様々な新しい試みが行われました。これからも当教室では、熱帯医学・感染症・呼吸器診療を継続的に行い、それらより得た知見を発表してまいります。

報告者:石田正之

恒例の日本呼吸器学会総会が平成21年6月12日から三日間、東京国際フォーラムで開催された。一般演題だけで1000を超える発表があり、臨床から基礎研究までその多様性が広がったような印象であった。土日を含む開催であり、開業医や一般病院からの参加がしやすく、日常臨床に密着した演題が増えたことがその理由の一つとも考えられ、そういう意味では好ましい方向性ともとれたが、一方で近年若手医師の基礎研究への指向性が乏しくなっているとの指摘を思い出し、多少寂しい感もあった。

講演やシンポジウムは、東北大学の押谷仁先生の新型インフルエンザに関する緊急報告をはじめ、興味深いものも多かったが、参加者が多く希望する講演を聴かれないこともあり、その点は残念であった。

当科からは今年も積極的に演題を出し、海外のコホートのデータから臨床データ、基礎研究データと多彩な発表を行うことができた。

引き続き、研究と臨床の両面で積極的に学会参加して様々な専門分野の医師と交わり、より質の高いものを求めていかなければならないと痛感した。

2009/06/16
文責 森本浩之輔

第49回日本肺癌学会九州地支部総会報告 2009/7/10-11

石田正之

平成21年7月10日・11日長崎大学医学部良順会館で第49回日本肺癌学会九州地支部総会が行われました。本会は当院腫瘍外科の永安武教授が学会長をされ一般演題75題、特別講演が4つ、市民公開講座という内容で行われました。

当教室の中岡大士より「肺扁平上皮癌の下垂体転移により中枢性尿崩症を呈した一例」を、協力施設の近森病院中間呼吸器内科科長から「淡明細胞癌優勢の肺原発混合型腺癌の一例」以上2演題の発表を行いました。

ATS(American Thoracic Society) International Conference 2009に参加して
2009/5/16-20

5月16日から20日まで米国サンディエゴで開催されたATSに参加しました。当初は当科森本準教授と高木理博先生(近畿中央胸部疾患センター病理部に出向)と3人で参加予定でしたが、新型インフルエンザ流行の影響で当科の方針で最小限の人数での参加が望ましいとのことで、結局、私一人で参加してきました。ポスターディスカッションでの私の演題「MCP-1/CCL2 (Monocyte Chemoattractant Protein-1/CC Chemokine Ligand-2) enhance apoptotic cells removal(efferocytosis) through activation of Rac1 」とポスターセッションでの森本先生の演題「Viral Etiological Agents and Clinical Features of Childhood Acute Respiratory Infection in Vietnam」を発表しました。ポスターディスカッションでは森本準教授が以前研究で所属していたコロラド大のDr.Vandivierとのディスカッションや我々の研究手法に興味を持った研究者等からの細かい質問などを受け、大きな刺激になりました。世界中から毎年15000人ほどの呼吸器科医、ICU医、基礎研究者などの参加者がある巨大な学会で、連日興味があるセッション(特に自分の研究分野に近いものなど;マクロファージ、気道炎症など)をチェックして各会場に足を運びました。その他に当教室として関連があるようなトピックス(HIV-related pulmonary complicationsなど)のセッションもありました。時期的にトピックスであった新型インフルエンザの緊急セッションも急遽組まれ、メキシコ市の国立栄養科学研究所附属病院(今回のメキシコ市でのアウトブレイクで重症患者を治療にあたった4つの機関病院の一つ)のICU部長、US-CDCの研究者、UC Davis獣医学部のインフルエンザ専門家などのプレゼンテーションなど最新の情報も含めた話を聞くことができました。5日間の参加でしたが、臨床でも研究でも日々勉強であることを改めて肝に銘じての帰国でした。

 

日本での異常な新型インフルエンザの報道や反応に比べて、ニュースなどで聞いてはいましたがサンディエゴの街内ではインフルエンザのイの字も聞かない状況で、ATSの会場であった巨大なコンベンションセンターでは入り口に小さなアルコール手指消毒器が1個設置してあるだけでした。また、幸い知り合い家族(US Navy SEALs所属、グリーンベレーやデルタフォースと並ぶ米軍特殊部隊)がたまたまサンディエゴに引っ越していて、ついでに特殊部隊基地の見学(たぶんマニアにはたまらない,私はそこまで正直言って興味はなかったのですが)やNavyのマッチョ達とのバーベキューなども楽しみました。サンディエゴはメキシコ国境の町(国境まで車で10分)でもあるので、メキシコ側の国境の町ティファナ入り口(immigration)までついでに行って来ました。その時期はちょうど長崎大学が職員のメキシコ渡航を禁止していたので、メキシコまで行って本場のおいしいタコスを食べに行こうと一瞬魔が差しましたが、、、(ご想像におまかせします)。

 

平成21年6月5日
田中健之

第二回熱帯病ケースカンファレンス 長崎大学熱研内科・IDATEN主催 2009/7/11

日時:7月11日 土曜日 12:30から17:30
場所:博多サットンプレイスホテル(地図:http://www.thehotel.co.jp/jp/sutton_hakata

〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前3-4-8
TEL:092-433-2305 FAX:092-433-2307

12:30 受付開始
13:00~13:15 製品説明 グラクソ・スミスクライン株式会社
13:15~14:30 特別講義
「熱帯感染症診療:熱帯地とロンドンの相違(仮)」
座長 有吉紅也教授
長崎大学熱帯医学研究所臨床医学分野;長崎大学病院感染症内科(熱研内科)
演者 Robin Bailey教授
Professor, Department of Infectious and Tropical Diseases, London School of Hygiene and Tropical Medicine, University of London; Consultant, Hospital For Tropical Diseases, University College London Hospitals, London, UK.

休憩(14:30から14:45)

各病院からの症例検討(3症例)
有吉教授、Bailey教授をコメンテーターとして
14:45 症例1 
15:35 症例2
16:25 症例3

17:30 閉会

共催:
長崎大学 熱帯医学研究所 臨床医学分野(熱研内科)
IDATEN(Infectious Diseases Association for Teaching and Education In Nippon)
グラクソスミスクライン株式会社

第一回高知県感染症ケースカンファレンス開催について 2009/6/20

臨床における感染症教育の充実がさけばれて久しいですが、今回当教室の協力病院であります近森病院を含め、高知県内の主だった病院の特に感染症診療に従事されている先生方の有志により高知県臨床感染症研究会が起ち上がり、6月20日に研究会の第一回目として講演とケースカンファレンスが開催されることとになりました。

当教室も本カンファレンスには全面的にバックアップを行い、地域における感染症教育の充実の実現に寄与していきたいと考えています。

現在以下の通り症例を募集中です。興味のある方、お近くの方、ご参加頂ければ幸いです。

- 第1回高知県感染症ケースカンファレンス検討症例募集のお知らせ -

臨床の現場に則した感染症教育・診療の重要性が言われる昨今ではありますが、まだまだ教育・診療の環境は十分とはいえません。

今回実際の症例を、時間をかけて参加者全員で吟味し、お互いに意見を交わす事で、感染症の知識・理解をより深めていく事を目的に、高知県臨床感染症教育研究会を立ち上げ、ケースカンファレンスを開催することといたしました。つきましては、会の当日に検討いたします症例を広く募集いたします。症例は珍しい症例である必要ありません、日ごろ診療している中で判断に迷っている症例、是非皆さんに知っておいてほしい症例などなどございましたら、この機会に是非皆さんで検討してみませんか?

ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。

開催日:平成21年6月20日 土曜日 午後2時から
場所:近森リハビリテーション病院 7F

ケースカンファレンスに先立ち、静岡県立静岡がんセンター感染症科部長の大曲貴夫先生の特別講演「感染診療の基本的考え方(仮)」を予定しています。

【ケースカンファレンス・コメンテーター】

  • 静岡県立静岡がんセンター 感染症科部長 大曲貴夫先生
  • 亀田総合病院 感染症科部長代理、感染管理室室長兼務 細川直登先生
  • 長崎大学病院 感染症内科(熱研内科)助教 古本朗嗣先生

日程
2:00~3:00 「特別講演」
3:00~3:20 休憩・企業からの製薬情報
3:20~4:20 ケースカンファレンス1
4:20~5:20 ケースカンファレンス2

症例をお持ちの方は、疾患名、簡単な臨床経過、検査画像所見などの要点を記載し、添付ファイル(Wordもしくはテキスト形式)で以下のメールアドレスにお送りください。

なお、今回検討できなかった症例に関しましては、特に支障がない場合は、次回以降に検討させていただく事になる事がありますことをご了承ください。

担当:石田正之(kochi.infection@gmail.com
高知県臨床感染症教育研究会 代表世話人 武内世生(高知大学医学部 総合診療部)

第83回日本感染症学会総会に参加して 2009/4/23-24

4月23日から24日までの二日間、東京京王プラザホテルにて第83回日本感染症学会総会が「感染症教育を考える」というメインテーマで開催されました。特別講演やシンポジウムも教育や感染症医の育成などをテーマするものが多く、他の学会同様昨今の医学教育における問題が日本における医学、医療問題の一つであることを再認識いたしました。当科からもシンポジウム、口演、ポスター発表を下記のとおり行いました。

シンポジウム

  • 感染症をどのように学ぶか.-若手へのsuggestion-
  • 有吉教授「開発途上国での経験を含めて-熱帯地(開発途上国)で感染症を学ぶ~アフリカ・アジアの経験から」

口演

  • 土屋菜歩先生「北タイにおいてGBvirus-C共感染がHIV感染者の予後に及ぼした影響について」
  • 松木 啓先生「In Silico 手法を用いたHIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)認識エピトープのFine Mapping」
  • 森 正彦先生「タイ国HIV-1CRF01_AE感染長期未発症者における新たなHLA拘束性Gagエピトープの同定」
  • 原田正高先生「Multiplex-PCRを用いた本邦の小児急性呼吸器感染症におけるウイルス感染症の検討」
  • 古本朗嗣先生「当科がコンサルトを受けた化膿性脊椎炎症例の検討」

ポスター発表

  • 森本浩之輔先生「ベトナム政府系病院へ入院した小児重症呼吸器感染症患者におけるMultiplexPCRを用いた呼吸器ウイルス感染症の検討」
  • Huong Thi Thu Vu先生「Measurement of Bacterial Loads in Nasopharyngeal Sample and Its association with Pediatric Pneumonia in Vietnum」
  • 島川祐輔先生「タイ北部におけるモン族難民キャンプ内NGO診療所で経験した水痘アウトブレイクの報告」
  • 石田正之先生「当院で経験したdrug-Induced Hypersensitivity Syndrome(DHHS)3症例の検討」

以上、今回は多くの発表を行いました。当科の特徴である熱帯地での研究として、タイで行われているHIV感染症に関する研究、ベトナムの住民コホートでの小児の呼吸器感染症における研究など海外での現地スタッフとの共同研究の結果が集積され始めており、また、国内での臨床症例、開発途上国における感染症診療における問題点などを通じて感染症に対する新しいアプローチを構築など今後も逐次発表していく予定です。

文責 古本 朗嗣

Keystone Symposiaへ参加して・・・

3月23日より26日まで米国コロラド州Keystoneにて開かれたKeystone symposia学会へ有吉教授と一緒に参加しました。

近年発展途上国においてもHIV治療薬が普及しHIV感染者の死亡率は減少しています。しかし、根治薬ではないことによる感染者の蓄積、医療費及び医療従事者の負担増加、長期副作用や薬剤耐性ウイルスの出現と、新たな課題が発生しています。従って、世界のHIV・エイズ問題を克服する為には、「予防」のみならず「治療」にも効果のあるワクチン開発が全世界で求められています。しかし、ワクチン開発に関しては未だ成功には到っていません。そこで今回私が参加したKeystone symposiaでは、一年に一度HIV・エイズワクチン開発に携わっている世界中の著明な研究者たちとワクチン開発の基礎となるHIV免疫生物学研究に携わる基礎研究者たちがロッキー山脈の山の中に集まり、5日間かけて最新の研究発表や講演が行われます。アジア・アフリカからも大勢参加していました。

私が発表した演題は“Overlapping CRF01_AE Gag peptide identified several novel CTL epitopes in long-term slow progressors in northern Thailand(Gagオーバーラッピングペプチド実験によりタイ国HIV-1 CRF01_AE感染長期未発症者において発見した複数の新たな細胞傷害性T細胞認識エピトープ)”です。HIV感染者には感染後間も無くAIDSの段階になり様々な日和見感染症を発症する人もいれば、感染後10年を経てもAIDSにならず全く症状のない人がいます。この経過の差を生み出すものは何か;ウィルスの違い?人の免疫能力の違い?この原因究明がワクチン開発への鍵となります。タイ国で発見した私たちのデータが少しでも役立てばと思いました。幸運にも本演題に対し、米国国立衛生研究所(NIH)から奨学金を頂けることとなりました。

発表後、実験方法や他国での実験結果の相違につきディスカッションを行いました。他の会場では論文の執筆者へ直接質問をさせて頂き、論文からでは分かり得ない研究の背景・執筆者の考えを聞くことができました。

また研究は世界との競争でもあることを肌で感じました。自分が行っている研究内容は新しいものなのか、方向性は正しいのか、競争相手はどこにいるのか、何より患者さんへ貢献できるものなのか、自身の、世界での「立ち位置」を見つめ直す絶好の機会となりました。これは国際学会へ参加することのもう一つの大きな成果でした。まさに
知彼知己、百戦不殆。
学会会場でこの言葉が浮かびました。

Keystone symposiaは1972年に始まり、私が参加したHIV部門は今年で25年を迎えるそうです。今回はこの学会の発祥の地であるKeystoneが会場となりましたが、長崎からは実に18時間の移動と15時間の時差、そして会場は標高2,000mに達します。出発前、同じコロラド州デンバーで研究をされていた森本准教授より現地につき事前情報を頂いていたのですが、それでもKeystone到着後間も無くは頭痛・吐き気・不眠と高山病の症状に悩まされました。同じく参加されておられた東大の岩本愛吉教授よりパルスオキシメーターを拝借し測定させて頂いたのですが、SpO2が90%未満とはこれ程苦しいものなのかと身を持って知りました。会場には高山病対策の水が大量に配られていました。

ただし決して苦しいことだけではありません、世界中の著明な研究者たち(今年の基調講演は、HIVウイルスの発見者で昨年ノーベル賞を受賞されたF. Barre-Sinnosi教授でした)と至近距離で出会うことができます。また、ここKeystoneにはロッキー山脈の雄大な自然が有り、最終日の午前中にはスキーをひと時させて頂く機会も頂きました。

高山病になってでも参加する価値が有る

それがKeystone symposiaです。

学会期間中、時同じくしてLos AngelesではWBC:World Baseball Classicが行われ、日本代表の活躍を同じアメリカの地で目の当たりにしました。世界と勝負をすること・日本人として海外で発展途上国で仕事をすることの意義を再認識しました。

最後になりましたが、今回の海外出張の機会を下さいました有吉紅也教授、長崎大学熱帯医学研究所並びに熱研内科の皆様、タイ国保健省並びにLampang hospitalの皆様、そして何より血液検体を提供下さいました患者様に御礼申し上げますと共に、HIV根絶の為、研究への一層の精進をここにお誓いし、学会報告とさせて頂きます。

2009年3月26日
Keystone, Colorado states, U.S.A.
森正彦

第78回日本感染症学会西日本地方会学術集会の報告 2008/12/5-6

2008年12月5日、6日の1日半に亘って広島市の広島国際会議場にて行われました。当科並びに当科関連施設より下記の8つの演題を報告しました。

起炎菌としては頻度の低いグラム陰性桿菌であるChryseobacteriumによる肺炎、腹膜炎症例の報告として医療法人近森会近森病院 内科 濱田佳寿先生より「Chryseobacterium meningosepticum敗血症を合併した市中肺炎の一例」

同じく医療法人近森会近森病院 内科 近澤悠志先生より「Listeria髄膜炎の治療中にChryseobacterium indologenes腹膜炎および敗血症を合併した一例」

小児においてマクロライド耐性のMycoplasma pneumoniaの報告は最近増加していますがが、成人症例ではほとんど耐性症例はありませんが、分子生物学な手法も用いて証明しえた症例を井上病院 呼吸器内科 五十棲理恵先生より「Macrolide-resistant Mycoplasma pneumonia(MRMP)による成人市中肺炎の一例」

医療従事者の各種ウイルスに対する抗体価の把握を行い、院内感染対策の一助になると考えられていますが、職員検診を利用して同意の得られた職員の麻疹、風疹、水痘、ムンプスに対する抗体価の測定、並びにそれによって得られた問題点を検討した国立病院機構長崎神経医療センター 呼吸器科 川上 健司先生より「当院の医療職における麻疹、風疹、水痘、ムンプス抗体価の保有状況に関する検討」

抗けいれん薬や一部抗菌剤の投与に加え、更にHHV-6などのヘルペスウイルス属が関与する全身に拡がる皮疹を特徴としたDrug-induced hypersensitivity syndromeは最近注目されていますが、医療法人近森会近森病院 呼吸器科、当科 石田正之先生より「剖検にてCMV再活性化を証明したDrug-induced hypersensitivity syndrome(DHS)の一例」

非結核性抗酸菌による皮膚軟部組織感染症としては、Mycobacterium fortuitumなどrapid
growersが多いとされていますが、非HIV患者では世界的にも報告数としては少ないMycobacterium intracellulareの症例を当科 島崎貴治先生より「Mycobacterium intracellulareによる皮膚・軟部組織感染症を呈した健常人の1症例」

口腔底感染症は時に気道狭窄を生じ、早期の治療介入が必要となりますが、急激に進行し心肺停止に陥ったものの蘇生した症例について医療法人近森会近森病院 呼吸器科 中間貴弘先生より「急激な気道狭窄により心肺停止し、心肺蘇生した口腔底蜂窩織炎の一例」

化膿性関節炎の起炎菌としては黄色ブドウ球菌や淋菌が重要なものでありますが、頻度が低いものの肺炎球菌も細菌学的には鑑別すべき細菌ですが、国立病院機構長崎神経医療センター 呼吸器科、当科 小山和彦先生より 「肺炎球菌による右膝関節炎、右大腿筋炎を呈した一例」の報告をいたしました。

今回の発表は症例報告が中心でしたが、今後は症例報告に加え、海外での臨床研究も随時発表していくようにしております。

学会講演 第49回日本熱帯医学会・第23回日本国際保健医療学会 合同大会

当教室の氏家無限医師が第49回日本熱帯医学会・第23回日本国際保健医療学会 合同大会において、当教室で取り組んでいる若い医師の国際医療活動の支援、教育システムについて、自身の経験をもとに発表をし、特に若い医療関係者の方から大きな反響がありました。


氏家医師の発表スライド



抄読会 2008/11/28 熱研内科の論文抄読会(ジャーナルクラブ)について

当科では3種類の論文抄読会をおこなっております。

  1. NEJM/LANCET クラブ
    毎週火曜日午前8時から、New England Journal of Medicine とLancetの最新号のレビュー(当番制で感染症、呼吸器の専門領域に限らず、医学全般的に重要な論文やreview論文を紹介する)
  2. 若手ジャーナルクラブ
    不定期。大学院生や3年目〜7年目の、これから論文を書く立場の教室員が、一つの論文を取り上げて詳読し、批判を加えるなどして、「論文を読む技術と核技術」を習得する。事前に教授が指導をする。
  3. 専門領域ジャーナルクラブ
    研究分野や臨床分野の専門性にグループ分けし、そのグループ単位でトピックスとなる論文を持ち寄って紹介し合う。

学会講演 2008/11/6-7 第61回日本呼吸器学会・日本結核病学会九州地方会

2008年11月6日、7日にわたり沖縄コンベンションセンターで行われました、上記学会に参加いたしました

今回はシンポジウム2つ、セミナーが5つ、招請講演、特別講演、教育講演が各1つと言った内容で、画像診断、呼吸器感染症、肺癌、インフルエンザ、間質性肺炎の血清マーカーと様々な広範なテーマにわたる講演がありました。特に特別講演の徳島大学酵素研の木戸先生のお話は、インフルエンザの重症化特に脳症の発症をエネルギー代謝酵素の側面からの病態解について説明され、日本人に多いエネルギー代謝酵素の熱不安定性に由来する高熱時のミトコンドリアエネルギー産生障害が脳症の発症につながるとお話、インフルエンザ予防のための粘膜ワクチンのお話され、非常に興味深いものでした。

当教室及び協力病院からは合計5題の演題を発表しました。研修医の中岡医師より、比較的稀ではありますが、見逃していけない疾患として、「急性呼吸不全を呈したルミエール症候群の一例」を、井上病院の齊藤医師から「Oxaliplatinの関与が強く考えられた、薬剤性好酸球性肺炎の一例」を、研修医の泉田医師と石田医師の方からこれまで当教室で積極的に導入を進めてきているEBUS-GSについての演題「当科におけるガイドシース併用気管支内腔超音波検査(EBUS-GS)の使用経験」「ガイドシース併用気管支内腔超音波内視鏡による肺生検(EBUS-GS-TBB)により確定診断に至った肺クリプトコッカス症の一例」を、松木医師の方から、我が国初の肺胞蛋白症に対する生体肺移植術を施行した症例「不可逆的な肺線維化が進行し、最終的に肺移植が必要になった治療抵抗性肺胞蛋白症の一例」を報告いたしました。

当教室ではこれからも学会発表等を通じて積極的な学術活動を進めていきます。

2008/11/28 「鈴木基先生のNHKラジオインタビュー」

「国境なき医師団」のホームページに鈴木基先生のNHKラジオインタビューが公開されています。

鈴木基先生のNHKラジオインタビュー

学会講演 2008/10/28 
有吉教授執筆の新興・再興感染症研究拠点形成プログラム「Newsletter創刊号」のエッセイがダウンロードできます。

新興・再興感染症研究拠点形成プログラムホームページにて、有吉教授が執筆した「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム Newsletter創刊号」のエッセイ「熱帯地でサイエンスを活かす~英国MRCガンビア研究所での経験から~」がダウンロードできます。

新興・再興感染症研究拠点形成プログラムホームページ「Newsletter創刊号」

学会講演 2008/10/27 「有吉教授の日本エイズ学会学術集会総会における講演」

第21回日本エイズ学会学術集会・総会」のホームページに「有吉教授の日本エイズ学会学術集会総会における講演」が公開されています。

有吉教授の日本エイズ学会学術集会総会における講演

研究会 2008/10/4 東京びまん性肺疾患研究会

2008年10月4日東京の笹川記念会館で行われました、第10回東京びまん性はい疾患研究会に参加してきました。

本研究会は、年1回行われ、毎回あるテーマを掲げ、そのテーマに沿った症例を多数集め、検討を行うといった方針で、今回のテーマは、上葉限局型(網谷病)、上葉優位型肺線維症その後という内容で、以前本研究会で同様の内容で検討が行われましたが、そのときに上葉限局もしくは優位と診断された症例、及び、その後新たに診断された症例を最近の知見も踏まえて、再度検討を行い、日本全国から集まった計34症例について検討が行われました。

また会に先立ち、上葉限局型肺線維症(網谷病)を最初に報告された、大阪赤十字病院の網谷先生より、網谷病発見の契機、概念、最近の動向についての講演がありました。

私自身は、上葉限局・優位型の肺線維症というものになじみが薄く、しっかりと系統的に学んだもの初めてであり、しかも、一時に多数例の検討をすることで、症例の骨格がつかめた感じがあり大変有意義でした。また本疾患の概念はまだ流動的であり、今後も症例の解析・検討が必要な領域であると思われました。

研究会 2008/8/27-29 大阪呼吸器疾患シンポジウム

2008年8月27日から29日まで、現在当教室員が、北市正則先生の元に病理の研修に行っている、NHO近畿中央胸部疾患センターの講堂にて、第3回大阪呼吸器疾患シンポジウムが開催され、国内外の著名な呼吸器科医、放射線科医、病理医が一同に介し、活発なdiscussionが行われました。

今回のテーマはNSIP up-to-date、過去に外科的肺生検にて、NSIPと診断された症例(特にidiopathic NSIPを中心に)の長期的な経過がどのようになっているのかの検討と、近年nudifferentiated connective tissue disease(UCTD)の概念が提唱され、これまで、idiopathic NSIPといわれていた症例のほとんどは、UCTDの範疇で考えられる、考えるべきではという意見もあり、その様な観点での症例の見直しを中心に会は進行し、8月29日の午前には、Dr Brent Kinderから“Is Idiopathic NSIP an Autoimmune Pneumonitis?”との演題で特別講演もありました。

計40例の症例が検討され、当教室からも、外科的肺生検にてNSIPの診断がなされ、長期経過が追えている2症例について症例呈示を行いました。

びまん性肺疾患の分野では先端を行く方々のdiscussionは非常に興味深く、また内科、放射線科、病理が一同に介し、同じ症例を各々の立場から検討し、disucussionが行えるという貴重な時間を過ごしことが出来ました。なおこの会に引き続き8月30日に行われました、第121回大阪びまん性肺疾患研究会にも参加しました。

研修医優秀演題賞受賞 2008/7/18-19

2008年7月18日・19日に高知市のかるぽーとで行われました、第43回日本呼吸器学会中国四国地方会において、当科の協力病院であります近森病院の内科初期研修医の濱田佳寿先生が発表された「当院(近森病院)における呼吸管理チーム(RCT)の活動とNPPVの有用性」という演題で研修医優秀演題賞を受賞しました。

近森病院では2005年7月に当科のDrが呼吸器科を立ち上げ、同年10月より集中病棟を中心に、適切な呼吸管理、早期の呼吸器離脱を目的、医師、看護師、理学療法士、臨床工学士からなる呼吸管理チームを立ち上げ、NST等との協力体制をとりながら、活動を行っており、NPPVによる呼吸管理も積極的に行ってきています。今回はその活動が対外的にも評価されたものと考えています。今後もより一層質の高い呼吸管理を提供できるように考えています。

研修医優秀演題賞受賞

講演会 2008/7/12 熱研内科/IDATEN合同カンファレンス in Fukuoka

福岡市の南近代ビルにおいて熱研内科と日本感染症教育研究会(IDATEN)、グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)との共催で症例カンファレンスを開催しました。ロンドン大学熱帯病病院のDr.Doherty、有吉教授の特別講演と、輸入感染症の3例の症例検討会を行いまいた。専門家の意見を交えての症例の検討、活発な討議は大変有意義なものでありました。多数のご参加まことにありがとうございました。来年も予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

取り上げられた症例

  • マラリア
  • HIV感染症患者のデング熱
  • 腸チフス
 

呼吸器内視鏡学会優秀演題賞(大畑賞)受賞 2008/6/13-14

2008年6月13日・14日に大阪市の大阪国際交流センターで行われました、第31回日本呼吸器内視鏡学会学術総会にて、当科石田正之医師が発表しました、「近森病院における経皮的気管切開術(PT)と外科的気管切開術(ST)の検討」の演題にて、本学会の優秀演題賞に当たる大畑賞を受賞しました。

経皮的気管切開は、従来の外科的気管切開に比べ、簡便で、合併症の発生も外科的気管切開に比べ同等もしくは少ないといわれ、外科を専門としない医師でも施行可能という利点があり、近年その有用性が認められてきています。本手技を施行するに当たり、気管支鏡の補助を用いることにより、合併症の発生を低減させ、より安全に施行できるものと考えられます。今後も症例の集積を重ね、長期的な有用性の検討も考えています。

呼吸器内視鏡学会優秀演題賞(大畑賞)受賞  呼吸器内視鏡学会優秀演題賞(大畑賞)受賞

症例検討会 2008/5/12 岩田健太郎先生(神戸大学感染症科教授)を迎えて

非常勤講師の岩田健太郎先生を迎え、若手医師や学生に感染症の基礎的なアプローチを学んでもらう目的で症例検討会を開きました。感染性心内膜炎、伝染性単核球症、化膿性関節炎の3症例をもとに内容のある講義をしていただきました。

講演会 2008/2/23 遠藤和郎先生(沖縄県立中部病院内科・感染症グループ)を迎えて

遠藤先生より沖縄県立中部病院での症例を提示していただき感染症診療の実際についてと同院での院内感染対策についてお話していただきました。そのお話の中で同院でのバイオグラムを利用した適切な抗菌剤の選択が行われていることは、改めて同院での感染症診療の質の高さを再認識することとなり、非常に示唆に富むものでした。

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