教授挨拶2006年

「熱研内科教授就任1年を振り返って」

教授就任挨拶を昨年5月に書いてから早1年が過ぎました。この1年間熱研内科に起きた出来事を振り返りつつ雑感を綴ってみました。

教室はひとをつくる場であり、またその教室は人がつくるものです。昨年より新生熱研内科に頼もしい教室員が増えたことは、この1年間を振り返って最も大きな出来事でした。まず教員スタッフとして、米国で豊富な内科臨床経験があり、ロンドン大学大学院にて公衆衛生学を習得した松林先生が特任講師として、英国育ちでリバプール大学にて医学教育と臨床研修さらに修士課程で熱帯医学を学んだ中岡先生がCOE助手として、ラオスで4年間のフィールド経験がある宮城先生が助手として、ミャンマー出身(今年日本に帰化)の医師であり分子生物学者のレイ・ミント・ヨシダ先生が特任助手として、オーストラリア育ちで、ロンドン大学大学院にて修士を終えた西村生さんがCOE研究員として、新たに加わりました。さらに都立墨東病院の大西健児先生、亀田総合病院の岩田健太郎先生、London School of Hygiene and Tropical MedicineのDr. Tom Doherty、International Vaccine InstituteのDr. Paul Kilgoreに非常勤講師としてご協力いただくことが出来ました。1年間私を支えてくださった大石和徳前助教授(現熱研内科非常勤講師)が大阪大学微生物病研究所の教授に就任され、後任として米国デンバーで呼吸器免疫学を勉強し帰国して間もない森本先生が熱研内科の若手助教授として就任したことも大きな出来事でした。今年4月からそれぞれとてもユニークな経歴を持つ若手医局員が新たに3名入局しました。ベトナムとタイから博士課程大学院留学生が、薬学部から2名の薬学部修士課程大学院生が新たに加わりました。またケニアで活躍していた熱研内科出身者が再び医局へ戻ってくれました。これらの新たな教室員が、これまで熱研内科の基礎を築き上げてきた渡辺講師、土橋医局長、黒木新病棟医長、渡辺助手らと協調し新生熱研内科を盛り立てています。

研究面での目立った出来事としては、海外研究活動としてベトナム中部における地域住民35万人を対象にした住民ベースの臨床疫学研究がスタートしたことです。これは昨年度から始まった「文部科学省:新興・再新興感染症研究拠点形成プログラム」の一環で、ベトナム国立衛生疫学研究所(National Institute of Hygiene and Epidemiology)と元国連研究機関の国際ワクチン研究所(International Vaccine Institute)との共同研究で、松林講師を中心とする熱研内科スタッフが現地に常駐し現地の中核病院をベースとして本格的な海外フィールドの構築を目指しています。さらに本年3月には、長年私と一緒に共同研究を続けてきたタイ国立衛生研究所(National Institute of Health)の友人たちが来崎し、タイ保健省医科学局と長崎大学の間で学術協定が結ばれました。その他タイのHIV研究に対して文部科学省国際基盤研究Aが採択されるなど、タイにおけるHIV研究環境も整いました。これらベトナムやタイのフィールドは、熱研内科が以前から活動しているフィリピンのフィールドに加えて熱帯医学を志す医師を育成する修練の場となるでしょう。教育面での目立った出来事としては、本年より長崎大学大学院に熱帯医学修士課程(全講義を英語で行う1年コース)が新たに設置されたことがあげられます。熱研内科は各種臨床講義のほか、アフリカ・アジア・中南米から集まった医師たちと熱帯感染症に関する臨床カンファレンスを担当しております。

以上は、これまでの熱研内科の研究・教育活動に新たに加わったものばかりで、成果を出すのはこれからです。昨年書いた教授就任挨拶のなかで、私は、熱帯医学を標榜する日本で唯一の臨床教室である熱研内科が負うべき使命とは、「熱帯地域(発展途上)で活躍できる臨床医・臨床研究者を育成すること、そして、公益性の高い医学研究を通じてグローバルな医学・医療問題解決に貢献すること」にあると述べました。1年という準備期間を経て、昨年掲げたこの目標に向けて新たな一歩を踏み出したというのが実感です。

さて、14年間海外で活動をしてきた私にとって、当初は日本の診療と途上国での診療現場との違いに圧倒されることが多々ありました。しかし病棟回診や外来診療を通じて多くの長崎の患者さんたちに出会い、さらには関連病院で働く熱研内科出身の先生方の活躍を知るにつれ、つくづく感じるのは、本当に大切なこと、すなわち医療の原点は世界中どこへ行っても共通しているということです。昨年の挨拶のなかで私は、「病に苦しむ患者さんを臨床医として、あるいは研究者として救いたいと思う気持ちは、海外でも国内でも同じであり、我々の教室は海外のみならず国内での呼吸器・感染症内科として地域医療に貢献する努力を惜しまない」とも述べましたが、1年を経てその考えは確信となっています。今年から早朝回診と感染症カンファが開始され、重症カンファが充実してきました。森本助教授をリーダーとする呼吸器免疫グループが立ち上がり、そこへ若手医局員が加わって新たな研究活動が展開しつつあります。さらに良い医療と医師が提供できる医局にするにはまだまだ改善の余地があります。私は、その目標に向かって今後も精進してゆきたいと思います。

最後になりましたが、熱研内科教室員と同門会の諸先輩方は、このような私を一貫して支援して下さいました。また、私の家族もすっかり長崎に溶け込み、家庭内で長崎弁が飛び交うようになりました。新参者である私や私の家族を受け入れてくれた長崎という地と熱研内科の教室員に心から感謝しています。また今年から始まった「長崎さるく博」を通じて長崎の歴史に触れ、子育てを通じて長崎の自然に触れ、長崎にさらに親しみを感じているところです。より魅力的な教室に育ててゆくには、私たちと共に教室づくりに参加してくれる仲間がまだまだ必要です。興味をもたれた方は、是非ご連絡下さい。

平成18年5月14日
長崎大学熱帯医学研究所 感染症予防治療学分野(熱研内科)教授 有吉 紅也



2006年5月13日新入医局員歓迎会にて

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